(14)実家のある市町村の障害児のための施設に対する知識の有無
表2-18は、「あなたの実家がある市町村には障害のある人のため施設がありますか」という問いに対する回答の結果を男女別に示したものである。「知らない」または「未記入」の者が男女共に3分の1近くおり、11で述べた障害児のための学校に比べて、障害者のための施設に関する知識が少ない傾向がみられた。
表2-18 実家のある市町村の障害児のための施設に対する知識の有無
|
ある |
ない |
知らない |
未記入 |
計 |
男 |
25 (54.4) |
6 (13.0) |
15 (32.6) |
0 (0.0) |
46 (100.0) |
女 |
57 (58.8) |
8 (8.3) |
28 (28.9) |
4 (4.1) |
97 (100.01) |
|
82 (57.3) |
14 (9.8) |
43 (30.1) |
4 (2.8) |
143 (100.0) |
|
(15)障害児が社会に受け入れられているかどうかに関する考え
表2-19は、「あなたは障害がある子供が社会に受け入れられていると思いますか」という問いに対する回答の結果を男女別に示したものである。「あまり思わない」「全く思わない」とする回答が男女共に7割近くを占めており、ノーマライゼーションが進展してきているといわれる昨今ではあるが、大学生からみるとその状況は未だ不十分な状況であることが看取された。
表2-19 障害児が社会に受け入れられているかどうかに関する考え
|
とても思う |
少し思う |
あまり思わない |
全く思わない |
未記入 |
計 |
男 |
3 (6.5) |
11 (23.9) |
30 (65.2) |
2 (4.4) |
0 (0.0) |
46 (100.0) |
女 |
5 (5.2) |
26 (26.8) |
61 (62.9) |
4 (4.1) |
1 (1.0) |
97 (100.0) |
|
8 (5.6) |
37 (25.9) |
91 (63.6) |
6 (4.2) |
1 (0.7) |
143 (100.0) |
|
(16)障害児が健常児と活動することの可能性に対する考え
表2-20は、「あなたは障害がある子供が他の普通の子供と勉強したり、遊んだりすることができると思いますか」という問いに対する回答の結果を男女別に示したものである。「とても思う」「少し思う」を合わせると男女共に約8割が可能性を認めていたが、その傾向は女子学生に強く見られた。男子学生の場合は、「あまり思わない」「全く思わない」が3割以上おり、女子学生に比べてネガティブな考えを持っているようであった。
表2-20 障害児が健常児と活動することの可能性に対する考え
|
とても思う |
少し思う |
あまり思わない |
全く思わない |
未記入 |
計 |
男 |
9 (19.6) |
23 (50.0) |
12 (26.1) |
2 (4.4) |
0 (0.0) |
46 (100.0) |
女 |
25 (25.8) |
57 (58.8) |
13 (13.4) |
1 (1.0) |
1 (1.0) |
97 (100.01) |
|
34 (23.8) |
80 (55.9) |
25 (17.5) |
3 (2.1) |
1 (0.7) |
143 (100.0) |
|
(17)障害種別の区別の必要性に対する考え
表2-21は、「あなたは障害の種類を区別する必要があると思いますか」という問いに対する回答の結果を男女別に示したものである。「とても思う」「少し思う」を合わせると、8割近くを占めていた。障害のカテゴリーによる分類については、関係者の間で問題とされることもあるが、大学生の多くはその必要性を感じているという傾向が認められた。
表2-21 障害種別の区別の必要性に対する考え
|
とても思う |
少し思う |
あまり思わない |
全く思わない |
未記入 |
計 |
男 |
15 (32.6) |
20 (43.5) |
6 (13.0) |
4 (8.7) |
1 (2.2) |
46 (100.0) |
女 |
22 (22.7) |
56 (57.7) |
13 (13.4) |
4 (4.1) |
2 (2.1) |
97 (100.0) |
|
37 (25.9) |
76 (53.2) |
19 (13.3) |
8 (5.6) |
3 (2.1) |
143 (100.0) |
|
(18)障害種別の理解のしやすさに対する考え
表2-22は、「あなたは今までの障害の種類の区別が理解しやすいと思いますか」という問いに対する回答の結果を男女別に示したものである。「あまり思わない」「全く思わない」が7割近くを占めており、現在の障害カテゴリーが理解されにくい状況にあることが示唆された。
表2-22 障害種別の理解のしやすさに対する考え
|
とても思う |
少し思う |
あまり思わない |
全く思わない |
未記入 |
計 |
男 |
1 (2.2) |
9 (19.6) |
26 (56.5) |
8 (17.4) |
2 (4.4) |
46 (100.0) |
女 |
3 (3.1) |
22 (22.7) |
55 (56.7) |
8 (8.3) |
9 (9.3) |
97 (100.0) |
|
4 (2.8) |
31 (21.7) |
81 (56.6) |
16 (11.2) |
11 (7.7) |
143 (100.0) |
|
(19)障害児の普通学校での教育の可能性に対する考え
表2-23は、「あなたは障害がある子供が普通の学校で教育を受けることができると思いますか」という問いに対する回答の結果を男女別に示したものである。「とても思う」「少し思う」を合わせると4分の3以上となり、教員志望の大学生が普通学校における障害児の学習の可能性を認識している傾向が認められた。これは、近年のノーマライゼーションの理念の浸透によるものと推察される。
表2-23 障害児の普通学校での教育の可能性に対する考え
|
とても思う |
少し思う |
あまり思わない |
全く思わない |
未記入 |
計 |
男 |
9 (19.6) |
25 (54.4) |
9 (19.6) |
2 (4.4) |
1 (2.2) |
46 (100.0) |
女 |
21 (21.7) |
54 (55.7) |
18 (18.6) |
1 (1.0) |
3 (3.1) |
97 (100.0) |
|
30 (21.0) |
79 (55.2) |
27 (18.9) |
3 (2.1) |
4 (2.8) |
143 (100.0) |
|
(20)在籍していた学校における障害児の存在の有無
表2-24は、「あなたの通っていた学校の普通学級には障害のある子供はいましたか」という問いに対する回答の結果を男女別に示したものである。「いた」とする回答が58.0%を占めており、これは、半数以上の大学生が学校教育段階で、在籍していた学校において障害児と何らかの関わりを持つ機会があったことを示唆しているといえる。また、男子よりも女子の方が「いた」とする回答が多かった。これは、他の項目の結果でも指摘されているように、男子の方が障害児に対する関心が低いため、実際に障害児が在籍していてもそのことに気がつかなかったという可能性も否定できない。
表2-24 在籍していた学校における障害児の存在の有無
|
いた |
いなかった |
知らない |
未記入 |
計 |
男 |
22 (47.8) |
22 (47.8) |
1 (2.2) |
1 (2,2) |
46 (100.0) |
女 |
61 (62.9) |
34 (35.1) |
1 (1.0) |
1 (1.0) |
97 (100.0) |
|
83 (58.0) |
56 (39.2) |
2 (1.4) |
2 (1.4) |
143 (100.0) |
|
(21)「インクルージョン」という言葉を聞いたことの有無
表2-25は、「あなたはインクルージョンという言葉について聞いたことがありますか」という問いに対する回答の結果を男女別に示したものである。「よくある」「少しある」という回答が5%弱であり、「全くない」とする回答が4分の3を占めていた。1994年のサラマンカ声明により、インテグレーションに代わる概念として提唱されたインクルージョンという新しい概念ではあるが、10年が経過した時点においてもほとんど浸透していないという実態が明らかにされた。
表2-25 「インクルージョン」という言葉を聞いたことの有無
|
よくある |
少しある |
あまりない |
全くない |
計 |
男 |
1 (2.2) |
2 (4.4) |
6 (13.0) |
37 (80.4) |
46 (100.0) |
女 |
2 (2.1) |
2 (2.1) |
24 (24.7) |
69 (71.1) |
97 (100.0) |
|
3 (2.1) |
4 (2.8) |
30 (21.0) |
106 (74.1) |
143 (100.0) |
|
(22)「バリアフリー」に関する知識の有無
表2-26は、「あなたはバリアフリーという言葉の意味について知っていますか」という問いに対する回答の結果を男女別に示したものである。「とても知っている」「少し知っている」を合わせると約85%となり、この概念は大学生の間でかなり定着しているようであった。これは近年、バリアフリーという用語が、新聞、雑誌、テレビ等で取り上げられることが多くなっているためであると思われる。
表2-26 「バリアフリー」に関する知識の有無
|
とても知っている |
少し知っている |
あまり知らない |
全く知らない |
計 |
男 |
11 (23.9) |
25 (54.4) |
8 (17.4) |
2 (4.4) |
46 (100.0) |
女 |
21 (21.7) |
64 (66.0) |
10 (10.3) |
2 (2.1) |
97 (100.0) |
|
32 (22.4) |
89 (62.2) |
18 (12.6) |
4 (2.8) |
143 (100.0) |
|
(23)障害者に関する法律に関する知識の有無
表2-27は、「あなたは障害のある人のための法律について知っていますか」という問いに対する回答の結果を男女別に示したものである。「あまり知らない」「ほとんど知らない」が95%以上を占めており、障害児者をめぐるシステムについてはほとんど知識がないという実態が明らかにされた。
表2-27 障害者に関する法律に関する知識の有無
|
とても知っている |
少し知っている |
あまり知らない |
全く知らない |
計 |
男 |
0 (0.0) |
2 (4.4) |
20 (43.5) |
22 (47.8) |
46 (100.0) |
女 |
0 (0.0) |
4 (4.1) |
57 (58.8) |
38 (39.2) |
97 (100.0) |
|
0 (0.0) |
6 (4.2) |
77 (53.9) |
60 (42.0) |
143 (100.0) |
|
4. まとめ
全体的にみて、大学生の障害児に関する意識や関心や理解は、相当高まっているという傾向が察知された。また、この傾向は、男子より女子の方に強く認められた。これらは、近年のノーマライゼーションの理念の浸透などの影響によるところが大きいと思われる。
その一方で、障害種別により知識や理解のレベルに差が見られたり、ほとんど情報が伝わっていない事柄もあることが明らかにされた。大学の教職科目において、障害児教育関連科目を設定する際には、これらの点を踏まえる必要があろう。
|