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きちんと抗議すれば相手も変わる
 それに「暴力、暴力」と言うが、東京の街を歩いていての暴力の問題は、日本人ではなく外国人です。「中国人犯罪が多いというが、証拠はあるのか」と中国が言うと、今まで日本は事を荒立てないようにしていましたが、この二、三年、自民党の要人、あるいは警察の要人その他が中国に対して堂々と「警視庁の統計がある」と言うようになりました。勇気をもって公式統計に国籍別犯罪を発表し、それを見せたら、中国はなにも言わなくなった。日本から抗議をしたら、ご承知の福岡の家族殺害事件、その犯人を向こうが捕まえるようになった。そして向こうで刑務所に入れるようになったのです。これは大変な抑止力になります。
 日本の法務省は予算が削られて、拘置所も刑務所も定員いっぱい。中国人を筆頭に外国人だらけ。これが厚かましくて、みそ汁なんか飲めるか(笑)。「日本語で言われてもわからない」と言うから通訳をつける。ものすごく金がかかるものですから、警察は「もう捕まえるな」となった。仕方がないから国外追放すると、大喜びで帰ってしまう。そしてまた来る。中には運悪く刑務所に入っても、そこは天国である(笑)。中国の刑務所は殴られ蹴られ、ワイロを取られたりするが、日本はそういうことはまったくなくて、「歯が痛い」と言ったらタダで治してくれる。むしろ健康になって帰ってくる。
 これは十年前ですが、沖縄で二等兵だったか一等兵だったかが少女を暴行殺人した。そのとき裁判権が日本にあるのかアメリカにあるのか。アメリカへ行ったら間違いなく死刑です。ところが日本では懲役七年ぐらいで済む。「それなら日本で裁判してほしい」ということがありましたね。けしからんことで、もちろん死刑にすべきですね。
 ということを、日本人もだんだん考えるようになりました。そして、きちんと抗議すると向こうの態度が変わるということを、この一、二年大いに経験しています。
 言わないといけない、言わなくとも察してくれるということはない、言えば変わる。変わらせるだけの実力が日本にある。日本人が怒れば相手は変わる。もし日本人がへこむのであれば、そこにつけ込んで厚かましく振る舞う。国際社会はそもそも悪い奴が多い、ということを世論ベースでわかってきました。
 一般国民が世論としてそう思うようになってきました。
 国際友好親善が大切で、相手を刺激するな、反発を招くな、などとそんなことを言っている人は、もう今は後ろから石をぶつけられます。正面からぶつけられる日は近い(笑)。本当にそういう雰囲気ですよ。
 「日本は暴力とセックスばかりだ」と言われたら、「それはあなたたちが悪いのだ」と言い返してください。
 たまたま昨夜、『第三の波』の著者として有名なアルビン・トフラーさんと夕食をご一緒しました。するとトフラーさんがそれを言い出しました。「音楽にせよ、何にせよ、このロサンゼルスでつくっているエンターテインメントはセックスと暴力が多くて、アメリカは世界中から非難されている。しかし、六つある大メーカーのうち五つまでは日本資本が買っている。だからやっているのは日本だ」と言うのです。
 ですから「それは違う。誰の企業であろうと売れるものをつくるのであって、売れるのはマーケットのせいである。キャピタル(資本)はマーケットに従う。現に日本国内のマーケットでは、もっと穏やかな内容のものがたくさん売れている。それはヒット曲の歌詞を聞けばすぐにわかる。問題はアメリカのマーケットがそんなものばかり買うせいでしょう」と言ったら、「なるほど、そうだ」と答えていました。帰りがけには「今日は率直な会話ができて楽しかった」と笑顔で帰っていきました。だから、何か言われたら、すぐにきちんとロジカルに反論しないといけないですね。
 そのためには、日本人は聖徳太子の時代からずっと蓄積してきた知恵がある。だから自信を持て、と言いたいのです。
 今日はロサンゼルスですから、そのことを特に強調しておきましょう。
 実は先々週、台湾で「民主太平洋大会」という国際会議がありました。これがちょうど九月二十日でしたから、日本は自民党の総裁選挙の日で、自民党の国会議員はみんな行けない。来たのはアメリカの国会議員、それから太平洋の小さな国のバイスプレジデント(副総統)ばかりの会議です。これを主催したのは呂秀蓮という女性の副総統で、自分自身を宣伝したいという事情もあって、実質は“太平洋副総統会議”をやった。
 ところが日本は、さっき申し上げたような事情で国会議員が行かれません。私が代表でスピーチをいたしました。アメリカの民主主義より日本の民主主義のほうが奥は深い、という話をしました。その時、聖徳太子の十七条憲法の原文を台湾に渡しておいたところ、漢文ですから彼らはそのまま読める。なかなか一生懸命読んでくれるのです。
 さて、その場で「日本精神はいま、日本のマンガ、アニメによく表れている。たとえばこのように」という実例をいくつか話したところ、台湾の学生たちは日本のマンガをたくさん見ていますから、ある程度は頷いてくれました。
 まだまだ深いマンガが日本にありますが、いきなり話してもわからないと思ってあきらめたものがたくさんあります。文化を共有している日本人の皆さんならわかると思いますので、そのとき話すことをあきらめた例を言いますと、今から二五年前、東京大学の学生に「死んだとき、自分の棺桶に何を入れたいか」というアンケートをしたことがあります。欧米なら聖書やシェイクスピアとか言うのでしょうが、なんと第一位が『子連れ狼』だった。
 私は一九七十何年にその結果を見て、東京大学に来た学生はぜんぜんお父さんと口をきいたことがないのだなと思いました。お父さんは会社、会社、会社、残業、残業、残業。自分にはお父さんがいるのかいないのか。ひたすら勉強したが、その時『子連れ狼』というマンガを見て、父性愛の存在を知ったということでしょう。だから棺桶にはこれを入れたい、という孤児のような東大生。たぶんその父親らしき人もここにいるのかなと思いますが(笑)。
 マンガの効用はものすごいものだと思いました。いま『子連れ狼』がもう一回リバイバルして映画になったりしていますし、イタリアでは黒澤明の作風にそっくりの映画で、子連れ狼のお父さんはシシリー島のマフィアを相手に闘う(笑)。親子の愛は世界共通ですからね。
 小学館でピカチュウのアニメをつくっている人たちに聞くと、男女間のロマンスは国際商品になりにくいのだそうです。男女間の問題は民族によって習慣が違うから、アニメーションやマンガをつくって世界に売り出したいと思うなら、男女は避けて親子が良い。それから友情の方がみんなにわかりやすい。ビジネスとしてはそうなのだそうです。







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