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新規範発見塾 レクチャー・メモ vol.15

 事業名 先駆的情報の創出・発信事業
 団体名 東京財団政策研究所 注目度注目度5


新規範発見塾
(通称 日下スクール)
vol. 15
KUSAKA SCHOOL
 
 本書を読むにあたって
 
「固定観念を捨て、すべての事象を相対化して見よ」
―日下公人
 これからは「応用力の時代」であり、常識にとらわれることなく柔軟に物事を考える必要がある。それには結論を急がず焦らず、あちこち寄り道しながら、その過程で出てきた副産物を大量に拾い集めておきたい。
 このような主旨に沿ってスクールを文書化したものが本書で、話題や内容は縦横無尽に広がり、結論や教訓といったものに収斂していない。
 これを読んだ人が各自のヒントを掴んで、それぞれの勉強を展開していただけば幸いである。
 (当第15集は、2002年12月から5回分の講義を収録している)
 
第75回 資本主義は、略奪主義へ戻る
PART1
(二〇〇二年十二月十九日)
特別行儀がよかった冷戦時代の資本主義
 ちょっと変わった題で話をさせていただきます。
 冷戦時代の資本主義は、歴史を振り返ってみれば特別お行儀がよかったのです。ソ連という手強い相手があるから、まあまあ慎み深かったということに気がつきます。ところがその重石が取れてしまったのです。
 フランシス・フクヤマという人が、冷戦が終わったとき『歴史の終わり』という本を書きました。ベストセラーになりましたので、ご記憶のことと思います。私は読みませんでしたが、いろいろと評判が聞こえてきました。こんな中身だったようですね。まず、「ソ連が崩壊した」。これは事実です。その理由が、共産党の独裁政治が悪かった、計画経済がダメだった。それに勝った国がある、それは我がアメリカだ。
 そりゃ、アメリカ人はそう言うでしょう(笑)。しかし、私は日本人ですからそんな簡単には考えません。たとえば、アメリカのどこが勝ったかというと、「民主主義と自由資本主義」だという。
 これは途方もない決めつけですね。本当に勝利者があるかないかはもっと時間が経たないとわからないが、あると決めつけて、その理由は民主主義と自由資本主義であるということにして、さらに「それで歴史が終わった。もうこれ以上の変化はない。これがもう最高、最善、究極の答である」という本のようでした。
 これは学者の言うべきことではありませんね。むしろ宗教であって、断定的なところはマルクスと一緒です。
 よくあることですが、アメリカ人は歴史コンプレックスが強いらしくて、歴史をからめて書くとベストセラーになる。ところが中を読んでみると、歴史のことをよく知らずに書いているなということが、歴史の長い日本人にはすぐにわかります。アメリカ人は自分自身に歴史がないから、そうなるのは仕方のないことで、そういう本の一つかなと思ったのです。ギリシャとかローマとかをパラパラッとちりばめておくとドクター論文になってしまう。ベストセラーになってしまう。ギリシャ、ローマと書いてあると、それを読んでいる自分は偉いと陶酔するのでしょうね(笑)。
 その点、日本人や中国人、あるいはインド人は何千年の歴史を持っていますから、「こんな決めつけを言うものではない。後でボロが出る。決めつけを焦るのは新興独立国とか歴史のない人たちだ」という姿勢が普通にあるわけです。
 ただし、日本の中でもインテリとかアメリカ帰りの人は、心の中がアメリカ人っぽくなって、アメリカっぽく振る舞っていると偉く見てもらえると勘違いしています。周囲は本当はバカにしているのですが、気がつかない。
 そういう人が多く集まって活字の世界をつくっていますから、活字の世界ではそういう輸入物がはやるというよくある話です。けれども、その頃「資本主義は、略奪主義へ戻る」などという本を書いても、アメリカ人と日本人は勝利に浮かれていますから誰も読んでくれるはずがない(笑)。と思っていると、ようやく去年あたりから、こういう本を書いても読んでもらえるかな、という空気になってきました。しかしまだ早い、この本を出すのは来年か再来年(笑)。今日はその半完成品をお話しして、ご批判を仰ぎたいと思っております。
 
ソ連が崩壊したため、かえって遠慮がなくなった
 まずアメリカの場合と、ローマの場合とあります。
 アメリカの場合は皆さんご承知のとおりで、資本主義が最終勝利とはアメリカ人自身もそろそろ思わなくなってきた。アメリカの資本主義はお行儀が悪くなった。それを略奪主義とまで言う人はまだいませんが、アメリカの道徳、道義が低下してきたことは認めざるをえないでしょう。
 エンロン、ワールドコムがわかりやすい例です。それから裁判社会。あるいは国連の会議をアメリカは欠席したり脱退してしまう。「わがまま勝手すぎるのでは」と、アメリカ国内からも多少反省の声が上がる時代が来ました。
 それはなぜかといえば、ソ連が崩壊したため、まわりに遠慮がなくなったのです。
 ソ連が怖い存在である間は、世界の国を味方につけなければいけない。アメリカ国内に貧乏な人がたくさんいると、これが共産党になる。実際、フーバー、ルーズベルト大統領のときはアメリカに共産党がありました。「ソ連に行けば失業者はいないそうだ。アメリカには二五%も失業者がいる。これではもう民主主義も資本主義も信じられない」という共産党員がアメリカに生まれ、また第三党の進歩党も生まれました。
 「これはいけない」とルーズベルトがニューディール政策を実行し、失業者をなくしたら話が片づいたという歴史があります。
 しかし、「失業者や低所得者を二〇%も出すとソ連に負けてしまう、貧乏人をあまりつくってはいけない」という自制心が、最近消えてきたのです。
 歴史を振り返ってみれば、冷戦時代の資本主義は特別お行儀がよかった。ソ連という相手があるから、まあまあ慎み深かった。ところが、その重石が取れてしまった。修正資本主義の時代は終わって、もとの資本主義に戻ります。
 言い換えれば、今まで支配階級はアメリカ人のことを「国民」と思っていました。アメリカ国として団結していないと、ソ連に負けてしまうからです。戦争をするときには国民の助けが要ります。
 ところが、そのソ連が消えてしまうと、ニューヨークなどにいる人たちの頭から「国民」という考えが消えてしまいます。「全部収奪の対象だ。何かを売りつけてやれ、何なら騙してやれ、がっぽりピンはねしてやれ」という人たちが現れて、実行し始めます。
 すると、なるほど金持ちになる。それを見ると、みんなが真似をする。自粛している中流、中産階級はバカに見えてくるという時代が始まりました。国民は要らない、資本家とお客と労働者しかいないという自由資本主義になってきます。なんだかマルクスの時代に戻ってくるわけです。さらには「福祉政策はもうやめた。貧乏なのは自己責任だ。頑張れ」と言い始めます。
 経済学の教科書の歴史を振り返ると、今までたくさん売れたのはまずアダム・スミスの『国富論』で、その次がマルクスの『資本論』で、その次はマーシャルの『経済学原理』です。『プリンシプル・オブ・エコノミー』。これを一生懸命教えているところは一橋大学です。二〇年か三〇年くらいの間隔で順番に出ているのが興昧深いのですが、その次がケインズになります。その次はサムエルソンですが、それ以降は数が増えて混乱しています。というよりは、私はサムエルソンで経済学は終わりだと思っているのですが、そんなことを言っても、まだ人は賛成してくれません(笑)。正確に言うと、教科書になるような経済学は・・・という意味です。







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