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吟剣詩舞の若人に聞く[第57回]
神尾 龍くん
 
服部怜海さん
 
神尾龍くん(九歳)●愛知県安城市在住
(平成十五年度全国剣詩舞コンクール決勝大会剣舞幼年の部優勝)
母・・神尾由美さん
祖母・・加藤みや子さん
師・・杉浦盛容さん(北辰神明流分家)
総範・・杉浦英容さん(北辰神明流分家)
 
服部怜海さん(十歳)●愛知県知多郡在住
(平成十五年度全国剣詩舞コンクール決勝大会詩舞幼年の部優勝)
母・・服部朱海さん
祖母・・尾嶋サカエさん
師・・大日方佳容さん(北辰神明流分家)
分家家元・・杉浦容楓さん(北辰神明流分家)
 
真剣な眼差しに、剣詩舞への気持ちが伝わる
 
師の杉浦盛容さん(左)より指導を受ける神尾龍くん(右)
 
 剣舞優勝の神尾龍(りょう)くん、詩舞優勝の服部怜海(さとみ)さん。幼少年ながら、その演舞には人を魅了するレベルの高さを感じます。そのお二人に、ご家族、師、総範を交えて、剣詩舞のこと、コンクールのことなど、興味深いお話をお聞きしました。
 
――剣舞幼年の部優勝の神尾龍くん、詩舞幼年の部優勝の服部怜海さん、優勝おめでとうございました。さっそくですが、神尾君からお話をお聞きしたいと思います。剣舞は何歳ころから始めましたか?
「三歳の頃からです」
――それはどんなきっかけからですか?
「お婆ちゃんがやっていたからです」
――三歳といいますと、幼稚園ですか?
盛容「もっと前のような気がしますね」
――刀を振り回して面白かった?まだ三歳だったから分からなかった?
「はい」(笑)
――全国大会に出場するのは、今回がはじめてですか?
「八歳のときに一回挑戦して中部大会で落ちてしまいました」
――では全国大会は今回が初めてなわけだ?
「はい」
――優勝できたのは、どこが良かったと思いますか?
「最後のところが気持ちよく踊れたことが良かったと思います」
――先生からご覧になって龍くんは、どんなお子さんですか?
盛容「始める前は、いま本人が言った通り、きっと意味も分からなかった。でも男の子だから、刀を振りまわして勢いよくしているところに、魅力を感じたのではないでしょうか。とにかく練習を始めるまでに随分時間がかかりました。でも、根気よくやっていれば、ずっと続けさせていけば、この子はなんとかなるなと思いました。龍くんは眼がよかったですね。話をしていても、一瞬、キラッとするものがありました。普通の子でしたら練習に入る前に脱落していったでしょう」
――お母さんも詩舞をやっていらっしゃるのですか?
「はい」
――発表をお聞きになったときには、いかがでしたか?
「正直、心配でいっぱいでした。優勝の発表を聞いて喜びでいっぱいになりました。周囲の方も喜んでくれて本当に嬉しかったです」
――龍くんが舞っていたときは舞台の袖にいたのですか、会場にいらしたのですか?
「会場で見守っていました」
――見ていてどう思われました?
「出番が一番でとても緊張しているように見えました」
――一番だったの!
「はい」(笑)
――今年は先生のところは一番という数は、縁起がいいですね。長沢理絵さんといい、龍くんといい。
盛容「この子の場合は、初めてださせてもらって、出番が一番でよかった。何人か後だと、いろいろなことを考えてしまうでしょう。一番だと、よし、という気持ちが入ったままで行けますから。技術的なことは英容に指導してもらえばいいと考えました」
――どうでした一番にお孫さんが出たときは?
祖母「落ち着いて舞っていたと思いました。優勝するとは本当に思ってもみませんでした」
 
インタビューを終わって服部怜海さん(前列左)と神尾龍くん(同左)を中心に記念撮影。後列左より右へ怜海さんの祖母尾嶋サカエさん、母の服部朱海さん、師の大日方佳容さん、杉浦容楓分家家元、杉浦英容宗範、龍くんの師の杉浦盛容さん、母の神尾由美子さん、祖母の加藤みや子さん
 
――発表があったときはどう思われました?
祖母「信じられませんでした。皆さん、お上手でしたから」
――でも、お婆ちゃんが、龍くんに剣舞を奨めたのでしょう。優勝したのですから本望ですね?
祖母「なにより舞いをやって良かったです」
――剣舞で龍くんの一番よいとこはどこですか?
英容「目も含めて、全体的な気迫が非常に優れているところですね」
――「豪雄義経」ですよね、踊ったのは。先生はどの点を注意してご指導されたのですか?
英容「龍の場合は、正直言って、あまりこちらから教えなくても、なぜか、自分から不思議な力がでてくる子です。逆に、言ったことが意外にできない(笑)。ですから、単純なミスとか舞台の位置どりとか、初歩的なことを心配しました」
――龍くん、学校の友達や先生は、きみが剣舞で優勝したことを知っているの?
「知っている子もいるし、先生も知っています」
――文部大臣賞も取ったのだから、校長先生もびっくりしたでしょう?
「校長先生には教えていません」(笑)
――せっかく文部大臣賞を貰ったのだから、校長先生にも教えてあげればいいのに。どうもありがとうございました。
 さて、お待たせいたしました。詩舞幼年の部優勝の服部怜海さんです。優勝、おめでとうございます?
怜海「ありがとうございます」
――怜海さんは詩舞を何歳ころから始めたのですか?
怜海「三歳の頃からです」
――やっぱり、同じ三歳くらいから。それはどういうきっかけからですか?
怜海「お婆ちゃんが詩舞をやっていたからです」
――詩舞は楽しいですか、どんなところが面白い?
怜海「お扇子を使って踊ったりするのが楽しいです」
――扇子を舞台に落としたことが、ありますか?
怜海「はい、あります」(笑)
――前の晩はよく眠れましたか?
怜海「少し興奮気味でよく眠れませんでした」
――お母さんは、お姉ちゃんの幸美ちゃんのときに経験しているから、落ち着いていられたでしょう?
「そんなことはないです」(笑)
――幸美ちゃんと怜海ちゃんとは、性格的にはどうですか、似ていますか?
怜海「全然、違います」(笑)
「幸美は長女そのもの。曲がったことが大嫌いで、なんでも一生懸命に取り組みます。真面目です。怜海はその逆で、細かいことは気にしません」(笑)
――佳容先生は怜海ちゃんにどんな点を注意なされたのですか?
佳容「この子も龍くんと似ていて、天真爛漫な性格がそのまま出せればいいなと思っていました。この子の持っているものを引き出させることを一番に考えました」
――怜海ちゃんの一番いいところは何ですか?
佳容「おおらかなところです。」
 
師の大日方佳容さん(左)の注意を聞く服部怜海さん(右)
 
――先生から見て怜海ちゃんの舞の特徴はなんですか?
佳容「あまり細々としていなくて、表現力があること。おおらかであるということは、逆に小さいことにミスしやすいということで、昨年は見事に失敗しました」
――昨年は何位でしたか?
怜海「二位でした」
祖母「昨年のほうが今年よりも出来としては良かったです。昨年はほんのちょっと扇子をひっかけてしまいましたが、やはり、その点を減点されてしまいました。結果的には、落ちて良かったと思います」
――お婆ちゃん、幸美ちゃん、怜海ちゃんと優勝して鼻が高いでしょう?
祖母「もう先生たち、仲間同士が絶対に優勝させなければいけないといわれ、私もその気でした。怜海は今年が幼年の部最後ですから、もし落ちたら、兄弟の中で一生涯引け目を感じて暮らさなければならないので、なんとしても優勝させたかったです」
――怜海ちゃん、怜海ちゃんが優勝したことは学校の友達や先生は知っているの?
怜海「はい。学校で表彰してもらいました」
――お姉ちゃんはなんと言っていましたか?
怜海「良かったねと言ってくれました」
――やっとお姉ちゃんに追いついた感じですか?
怜海「はい」(笑)
――これからはどうするの?
怜海「群舞があるので、群舞でも優勝できたらいいな、と思っています」(笑)
――本日はお忙しい中、ありがとうございました。お二人の今後のご活躍を期待しております。







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