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吟剣詩舞の若人に聞く 第54回
 
石渡千紘さん(左)、大野晶子さん(右)
 
大野晶子さん(十八歳)●愛知県刈谷市在住
(平成十四年度全国剣詩舞コンクール決勝大会剣舞少年の部優勝)
石渡千紘さん(二十三歳)●愛知県大府市在住
(平成十四年度全国剣詩舞コンクール決勝大会詩舞青年の部優勝)
和田彩楓さん(大野さんの母。本名大野奈緒美)
和田箔峰さん(大野さんの祖父)
師:杉浦英容さん
宗範:杉浦容楓さん(北辰神明流分家剣詩舞)
次代の剣詩舞を担う、才能豊かな若き力
 幼少年時代から、数々の優勝を経験している大野晶子さんと石渡千紘さん。
 お二人の剣詩舞感や、今後の課題などをご家族、師、宗範と共にお聞きしました。
――まず、年齢からおうかがいできますか?
晶子「十八歳です」
千紘「二十三歳です」
――お二人は何歳頃から剣詩舞を始められたのですか?
晶子「三歳からです」
千紘「私は二歳からです」
――始められたきっかけをお話ください。
晶子「祖父が詩吟の先生をしていまして、母も詩吟の先生をしています。そんな環境からでしょうか、私は詩舞を始めました」(大笑)
――詩吟はやっていないのですか。
晶子「詩吟もやっています」(笑)
――詩吟をやらせようとは思わなかったのですか?
彩楓「今も詩吟をやっていますが、成績がふるっていないということです(笑)。それに踊りの方が好きなようです。最初のきっかけですが、昌子は小さい頃、すごく引っ込み思案でして、なかなか私から離れない子でした。たまたま、杉浦英容先生から、教室には小さい子もいっぱいいるし、人に慣れる機会も多いから遊びにいらっしゃいと誘われたのが、そもそものきっかけです」
――引っ込み思案。人前に出るのが恥ずかしい?
彩楓「今は全然違いますが」(笑)
――千紘さんはいかがですか。
千紘「私は音楽に合わせて踊ることとか、歌うことが大変好きな子供だったようです。音楽に合わせて体を動かせるものとして詩舞が私には合っていると、母が考えたようです。母の直感がきっかけです」(笑)
――二人の踊りの特徴、資質についてはいかがですか?
英容「この二人の場合は、二歳三歳と幼い頃から入ってきていますが、やらされているというよりは、小さい子なりに、本人がやりたくてやっているという感じでした。親に連れてこられて、無理やりというのではなく、自分の意志でやりたいという気持ちが出ていました。晶子さんの場合は先ほどお母様のお話にもありましたように、どちらかというと引き気味の舞です。それが逆に、お客様に媚びないという踊りになりますが、アピールする面が少ないというか、特にコンクールなどでは弱く見られるという短所にもつながる長所であるわけです。その点、千紘さんの場合はアピールという面では強いものを持っています。特に幼少年で優勝させていただいていますが、子供らしいあどけない表現ができ、それをアピールできたからこその優勝ではなかったかと思っています」
――宗範はいかがですか、お二人の印象は?
宗範「晶子ちゃんの場合、いつの間にか、かわいい子が踊っているなという印象でした。千紘ちゃんの場合はいちばん最初に入会してきた頃から印象に残る子で、なんと小さい子が入ってきたのだろう、というのが第一印象でした。体も小さかったですし、全然しゃべれない子で、何を聞いても黙っていました(笑)。お母様が連れて見えて、よろしくお願いしますということで、舞を始めたのですが、最初から嫌がることもなく先ほど英容が申しましたように積極的でしたし、踊りが好きな子なのだな、という印象を受けました。そのうちお母様が妊娠されまして、照れ屋のお父さんに連れられて来るようになりました。いくら積極的とは言いましても、小さい子ですから踊る気が起こらないときもあります。そんな時、お父様が照れながら千紘ちゃんと一緒に踊っていたのが今でも強く印象に残っております」(笑)
 
師の杉浦英容さんより扇の演技指導を受ける石渡干紘さん
 
――続いているというのは、何が理由なの?
千紘「お稽古場では、年齢が離れた方と接することができるなど、ある意味で学校とは違う世界がここにはありました。私はそれが魅力だったと思います。うまくできれば褒めていただけますし、注意されることもありますが、問題をひとつひとつクリアしていく面白さを覚えたのも舞の世界だと思います」
――晶子さんはどうですか?
晶子「体を動かすことが好きです。音楽に合わせて体を動かすことがすごく楽しかったですし、千紘ちゃんが言ったように先輩もいれば、自分よりも年下の子もいますし年齢に関係なく同じ踊りを踊れるというのがとても楽しいです」
 
剣舞の演技に熱がこもる大野晶子さん
(後は演技指導をする師の杉浦英容さん)
 
――コンクールについてお聞きしますが、昨年、晶子さんが剣舞少年の部優勝ですね
――幼年の部はどうでしたか?
晶子「詩舞のほうで優勝しました」
――千紘さんはどうですか?
千紘「幼少年の詩舞で優勝です」
――幼少年とも優勝ですか?
千紘「はい。晶子ちゃんも幼少年を優勝しています」
――晶子さん、整理してもらえますか?
晶子「はい、幼年の詩舞と少年の詩舞と少年の剣舞をとりました」(笑)
――千紘さんはどうですか
千紘「私は幼年と少年と青年の詩舞です」
――全部詩舞ですか。
千紘「全部詩舞です」
――もう1回整理しますと、晶子さんが幼少年の詩舞と少年の剣舞を優勝し、千紘さんが幼年と少年と青年の詩舞を優勝しているのですね?
 
前列(右)石渡千紘さん、(左)大野晶子さん、後列右より師の杉浦英容さん、杉浦容楓宗範、大野さんの祖父の和田箔峰さん、大野さんの母の和田彩楓(大野奈緒美)さん
 
千紘「あと二人とも群舞の詩舞もとっています」
――もう二人とも名前が売れていますよね?
英容「かなり有名です。月刊吟剣詩舞の読者の方々なら、この二人だったら名前と顔がすぐに一致すると思います」
容楓「お母様のほうが一致しないね」(笑)
箔峰「いや、この二人よりも、月刊吟剣詩舞の読者には吟詠では母親のほうが有名だよ」(笑)
――吟のコンクールには出ないのですか?
千紘「中部大会止まりですね」(笑)
――もう少しお母様が鍛えないと?
彩楓「そうですね」(笑)
――時間も迫ってまいりましたので、最後の質問ですが、いままでずっと踊りを続けてこられてきたわけですが、これから自分の踊りのどこを良くしたいと考えていますか?
晶子「今までやった曲の選択が女の子らしいのを避けてきたので、今後は女の子らしい曲にも挑戦していかないといけないかなと思っています。これからは青年の部になるわけですし、とにかく先輩方をよく観察して女性らしい舞を身につけたいと思いますし、コンクールにも出てみたいです」
――千紘さんはどうですか
千紘「晶子ちゃんに限らず、多くの子が剣舞だけでなく、詩舞だけでなく、両方を頑張っているので、私も今年からは気持ちをリセットして剣舞のほうにも頑張ってみたいと考えています。」
――何か現状の課題みたいなものがありますか?
千紘「そうですね、教えてもらいたいことはいっぱいありますが、まず自分自身の内面というか中身が成長しないことには、なかなか得られないものがあるのではないかな、と思います」
――成長するようなことを何かやっていますか
千紘「最近は海外に出かけることが楽しいので、海外に行く機会があれば、その国の文化、歌や踊りを見てくるようにしています。韓国に行ったときは、韓国舞踊などを見ましたし、今あちらでは太鼓が盛んなので、その太鼓を現代風にアレンジした、ちょっとミュージカルのようなものも見ました。パリではムーランルージュを見にいったりしています。いろいろな文化や音楽を吸収し、それを剣詩舞に役立てようと思っています」
――本日はお忙しい中、ありがとうございました。今後のお二人のご活躍を期待しております。







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