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日本ナショナルトラスト報 2004年1月号
Japan National Trust Magazine Jan 2004
 
特集(1)
全国近代化遺産活用連絡協議会
北海道上士幌大会
平成15年度総会及びシンポジウム報告
 平成15年度の全国近代化遺産活用連絡協議会の第6回総会・シンポジウムが去る7月2日(水)〜4日(金)、北海道上士幌町で開催され、同協議会に加盟している県・市町村・企業・団体等から約150名が参加した。
 上士幌町は、十勝平野の北に位置する小さな町で、大雪山国立記念公園の広大で豊かな自然に囲まれている。現在は廃線となっているが、かつて十勝北部の農産物の運搬や森林資源の開発に貢献した国鉄士幌線の鉄道遺産が糠平湖周辺には、今も数多く残されている。現在、近代化遺産の保存・活用については行政が中心となることが多い中で、熱心な住民運動によって遺産が残された事例でもある。
 基調講演では、「鉄道遺産の保存と活用」をテーマに、交通博物館館長の菅建彦氏のご尽力で、イギリスからリチャード・トルメイン氏(Heritage Railways Special Project Correspondent)を招聘して、イギリスの鉄道遺産の保存・活用について事例もふまえて講演いただいた。また、行政などの補助を受ける文化財としてではなく、民間のプロジェクトによって、近代化遺産を復元・活用する新しい事例として、当初、財団法人東日本鉄道文化財団の専務理事として旧新橋停車場(東京都港区)の復元の指揮をされていた菅建彦氏により、その復元・活用についてご講演いただいた。
 
真剣に聞き入る参加者たち
 
 つづいて、パネルディスカッションでは、北海道に残る鉄道遺産を中心にとりあげ、行政の取り組み、遺産を守るための住民運動やコンクリート橋梁保存の為の補強技術や方法など、会場からも多くの意見をいただきながら様々な角度から保存・活用について議論し、盛会となった。
 
第五音更川橋梁
 
旧幌加駅
 
音更トンネル
 
タウシュベツ川橋梁
 
三井金物店
 
 見学会は2日間に分けておこなわれた。3日には天候にも恵まれ、午前中から約60名が参加し、大自然の中に残る旧国鉄士幌線廃線跡の鉄道遺産を視察。駅舎は取り壊されているがプラットホームと線路が残る幌加駅や永久凍土の音更トンネル、糠平湖周辺に点在し、北海道遺産にも選定されているコンクリートアーチ橋梁群を見て回った。特にタウシュベツ川橋梁は、ダムの水かさの増減によって見え隠れし、「幻の橋」・「めがね橋」ともいわれるこのアーチ橋は四季折々で別の顔を見せてくれる。厳しい自然環境により、コンクリートが劣化し、今にも朽ちゆく姿に限りある命の美しさを感じることができる。
 4日は、明治初期より開拓が始まり、数多くの近代化遺産が点在する帯広市内を視察した。北海道で最古のレンガ造りである十勝監獄石油庫や、現在は美術館として活用されている三井金物店を見学した。また、全国的にも珍しいドーム屋根で、梅鉢式の間取りの双葉幼稚園では、園児たちによる歓迎の合唱もあった。
 来年度の開催は、我が国の近代化を支えた炭鉱施設が残る大牟田市(福岡県)で7月22〜23日に開催します。
(事務局)







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