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日本ナショナルトラスト報 2003年11月号
Japan National Trust Magazine Nov 2003
 
第二次文化財取得保護計画にともなう募金のお願い
 
 
 財団法人日本ナショナルトラストでは、このたび、貴重な歴史・文化遺産であるモーガン邸を皆様からの募金により取得し、ならびにすでに寄贈いただいた安田邸及び駒井家住宅を修復し、保護資産として末永く、保存・活用することを目的に第二次文化財取得保護計画を開始することとなりました。
 モーガン邸は、旧丸ビルや日本郵船ビルの設計技師として来日し、東京や横浜を中心に多くの優れた建造物の設計を手がけたアメリカ人建築家J.H.モーガンの自邸です。遠く相模湾と富士山を望む藤沢市郊外の丘陵に昭和6年に建てられました。広大な2000坪に及ぶ敷地内には、スパニッシュ様式の建物や西洋式庭園などが今も当時のまま奇蹟的に残されています。
 今日、全国各地で開発などにより歴史的邸宅等が急激にその姿を消しつつあります。湘南地区でも例外ではなく、近年、特にこのような状況が顕著になっています。モーガン邸も敷地を細分化して宅地として分譲される計画が進行していました。ところが豊かな緑に囲まれ、歴史を育んできたモーガン邸を地域の宝物として何とか残したいとする「旧モーガン邸を守る会」、の市民運動が力を発揮し、モーガン邸の大切さを広く周知するとともに多くの賛同を得ました。
 また、この幅広い活動は、藤沢市役所や財団法人日本ナショナルトラストが保存に立ち上がる大きな原動力となりました。そしてついに三者はモーガン邸をわが国のかけがえのない歴史的遺産として保存することで合意したのです。
 現在、モーガン邸は株式会社整理回収機構の管理下にありますが、同社からの保存に向けての多大なご支援とご協力をいただき、財団法人日本ナショナルトラストでは、かけがえのないわが国の貴重な歴史的遺産として保護対象に認定し、募金による取得保存をめざすことになりました。取得後は、調査や修復事業をおこない、広く一般公開いたします。
 皆様の募金を心よりお待ち申し上げておりますので、よろしくお願いいたします。
財団法人日本ナショナルトラスト 会長
 
3億円の募金にご協力をお願いいたします!!
◆◆◆募金要項◆◆◆
■募金目標 総額 3億円
(1)旧モーガン邸の取得(神奈川県藤沢市) 2億2000万円
(2)旧安田楠雄邸の修理(東京都文京区) 5000万円
(3)駒井家住宅の修理(京都府京都市左京区) 3000万円
 
■募金期間 平成15年12月5日〜
*モーガン邸の取得の為の募金は、平成15年12月5日〜平成16年12月末日までです。
 
■募金方法
(1)1口 30,000円(口数はご随意)
*邸内に名前を刻ませていただきます。
 たとえば同年内に1万円づつ3回に分割する募金もお受けいたします。免税の関係もございますので、事務局までご相談下さい。
(2)30,000円未満の募金もありがたくお受けいたします。
 
■税制上の優遇
 財団法人日本ナショナルトラストは免税団体です。寄付金が1万円を超えた場合、特定公益増進法人(免税団体)への寄付は所得税及び法人税控除の対象になります。手続きに必要な証明書は当財団からお送りいたします。(本誌裏表紙をご参照ください
 振込用紙で郵便局より振り込まれる場合は「振込金受領証」を持って当財団の領収書に代えさせていただきますのでご了承下さい。
 
■寄付金の事業への使途について
 買い取り・修復工事などは、募金の状況に合わせて進行させます。大切な寄付金の投入をより効果的におこなうため、誠に勝手ながら寄付金の事業への使途は当財団に一任させていただきますのでご了承ください。
 
■送金方法
郵便振替口座番号:00120-2-106140
加入者名:財団法人日本ナショナルトラスト
*ご希望の対象名、または上記の番号をご明記いただければ、それぞれの対象募金とさせていただきます。
*駒井家住宅には募金箱を設置しておりますので、そちらでもお受けいたします。(毎週金曜日公開)
 
■お問合せ
財団法人日本ナショナルトラスト 米山、山本、前原
〒100-0005
東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル923区
Tel: 03-3214-2631 Fax: 03-3214-2633
E-mail: info@national-trust.or.jp
 
守ろう、旧モーガン邸
川村 恒明・元文化庁長官
 多くの人々の熱い思い・地道な努力と、藤沢市の深い理解に支えられて、ようやく旧モーガン邸の保存活用に向けて、大きな一歩が踏み出されることになりました。
 旧モーガン邸を守ることは、単に古い、珍しい建物を残すということだけではありません。自分たちの住む街の歴史と文化を市民の目線で見なおし、豊かな自然と調和した新しい街づくりを目指すことでもあるのです。保存が順調に進めば、この素晴らしい歴史遺産は、市民が憩い、交流し、そして創造活動の場として公開され、新しい生命をもつこととなるでしょう。
 これから始まる募金活動には、旧モーガン邸を本当に市民のものとすることができるための成否がかかっています。できるだけ多くの方々の暖かいご理解とご支援を心からお願いします。
 
いまこそ自分の足跡をふり返ってみよう
小池 滋・英文学者
 世の中がバブルとやらに浮かれて、前途はいつまでも右肩上がりと思い込んでいた頃、文化遺産を守ろうとか、過去の大切なものを捨てないで保存しようとか言われても、一人ひとりの個人には、あまりピンと感じることがなかった。オカミ−つまり国とか自治体−とか大会社とかお金のあり余っている人たちにやって貰えばいいんだ、と思っていた。
 いまやバブルははじけてお先真っ暗の時代になってしまった。オカミも大会社もお金のやりくりに四苦八苦。だからわたしたち一人ひとりが大樹に頼りっぱなしの甘い考えを捨てて、僅かな金でもいいから身ゼニを切らなくてはいけない。金が無理なら労力サービスや知恵を絞ることに時間を提供するよう努力しよう。ひとごとではなく。
 過去の遺産を守り、自分たちの足跡をふり返ってみるには、いまこそ絶好のチャンスと言うべきだろう。
 
第一次取得計画ダイジェスト
 第一次文化財取得保護計画は、昭和61年1月1日から2年間の計画でスタートしました。目標の3億2千万円のところ、約2億1千万円を全国の皆さんから賜わり、白川郷合掌造り民家旧松井家、旧寺口家の2棟、鉄道文化財としてC12型蒸気機関車と旅客車4両を取得しています。
 その後、募金により旧松井家は、JNTヘリテイジセンター「白川郷合掌文化館」として地域の交流拠点やイベント施設として改修し、一般公開しています。また、白川村指定文化財である旧寺口家は、現代生活のできる文化財として復元。C12形蒸気機関車と旅客車4両は、トラストトレインとして大井川鐡道(静岡県)で動態保存しています。
 第一次文化財取得保護計画の対象のうち、所有者の意向の変更などにより取得できなかった馬場屋敷(長野県松本市)、大平宿の民家6棟(長野県飯田市)は、いずれも後年、JNTにかわり地元行政が所有者となり保全しています。なお、名勝旧大乗院庭園(奈良市)は、現在もJNTが発掘調査、保存整備しており、庭園復元の大詰めを迎えています。
 
ヘリテイジャンター「白川村合掌文化館」
−昭和63年12月取得。平成5年、JNT創立25周年事業として開館。今年、9月には10周年イベントを開催した。
 
「旧寺口家」
−昭和62年9月取得。平成8年11月に修理。現在は地元のお年寄りが機織りをするなど随時開館。
 
「C12形蒸気機関車と旅客車4両」
−昭和62年2月取得。7月に大井川鐡道で発車式を行い、以降、毎年4月〜11月まで年8回トラストトレインとして動態保存している。
 
「旧大乗院庭園」
−昭和48年に文化庁より管理団体に指定後、保護管理員会で所有者・行政・専門家と調整しながら整備を進めている。







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