日本ナショナルトラスト報 2003年8月号
Japan National Trust Magazine Aug 2003
特集 財団法人日本ナショナルトラストのヘリテイジセンター
米山 淳一
財団法人日本ナショナルトラスト事務局長
去る7月17日に北陸線電化記念館がオープンした。この記念館は、日本ナショナルトラスト(以下JNT)の7番目のヘリテイジセンターとして財団法人日本宝くじ協会の助成をもとにJNTが建設したもの。一昨年にオープンしているヘリテイジセンター「長浜鉄道文化館」に隣接するかたちで建てられ、長浜市におけるJNTのヘリテイジセンターは、2棟になった。
長浜鉄道文化館が明治期から今日に至るまでの鉄道や舟運等の交通史を中心とした展示であるのに対し、北陸線電化記念館その名の示すとおり、北陸線の電化、それもわが国初の交流電化に的を絞っている。
そして、その象徴ともいえる本物の交流用電気機関車ED70形1号を展示。さらにこれまで鉄道文化館の野外に野ざらし状態にあったD51形798号蒸気機関車をED70形1号と並べて展示してある。いわば、北陸線の交流電化時以降(昭和32年10月)とそれ以前の同線で活躍した花形車両2両が近代化遺産として静態保存されているのである。
建物の設計は、建築家の吉田桂二氏が当られ、外部からも2両の機関車がよく見られるよう、充分な配慮がなされている。木造のトラスを組んだ大きな車庫を思わせるが優れたデザインにより展示館的性格も合わせもっている。もちろん壁面を利用した展示スペースもあり、わが国の交流電化に関する資料として全国の電化状況地図、歴代交流電気機関車の写真等を展示している。
北陸線電化記念館開館式にてテープカットをおこなった |
また、1階には、JNTの鉄道資料室、2階には、目の前を走る北陸線の列車を見ることが出来る展望室とデッキがある。この展望室は英国のヨークにある国立鉄道博物館にあるものを参考に設け、子供から大人までが、過ぎ行く列車を楽しめるように考えられている。
さて、メインの展示物であるED70形1号交流用電気機関車であるが、昭和32年生まれのわが国初の営業用の交流電気機関車で、まさに歴史的車両と言っていい。昭和50年4月に廃車後は、敦賀第2機関区(福島県敦賀市)に野外保存展示されていた。30年近くに及ぶ展示で風雪にさらされ痛み激しかった。このたびJR西日本では、これを松任工場(金沢市)で完全に修復し、その後、JNTに寄贈してくれたのである。JNTでは、すでに保護対象に認定、保護資産として永久に保存することになった。
修理には、時間も費用も莫大な数字になったが、優れた技術とともにED70形1号の復元を成し遂げたJR西日本に大いに敬意を表すとともに感謝申し上げたい。
長浜市におけるJNTのヘリテイジセンターは2棟、そして鉄道記念物でもある旧長浜駅舎(明治15年)の3つの建物を含めて新たに「鉄道スクエア」として広くアピールすることでJNTと長浜市で合意している。ぜひ会員の皆さん訪ねてください。
杉浦JNT会長と坂田JR西日本専務取締役による製造プレートの取り付け |
多くの皆さんのおかげで美しい姿を取り戻した。この後北陸線電化記念館へ手動で搬入した。 |
ヨーク鉄道博物館(英国)にヒントを得て設けた展望台 |
松任工場への搬送開始。車体と台車を別々のトレーラーに乗せ、4日間を要した。 |
松任工場では大がかりな修復工事がおこなわれた。車体の傷みが激しく新しい鋼板を切り継ぐ作業が繰り返された。 |
長浜に無事到着し、修復された車体に台車を組み入れ完了。 |
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