日本財団 図書館


安田邸修復募金協力イベント
チャリティー落語会とお雛祭りの茶会
多児 貞子
たてもの応援団(文京歴史的建物の活用を考える会)
 
 たてもの応援団では、2月末から3月にかけて2週続けて安田邸修復募金協力イベントを行い、約20万円を集めることができた。去年の秋、トラスト事務局からたてもの応援団に募金の協力依頼があり、その第1回として2月22日に安田邸公開とチャリティー落語会、第2回目として3月1日〜2日にお雛様の公開とお茶会を開いた。募金というのは、単にお願いしますといって集まるものではなく、建物を見てその魅力にふれていただくことが大切だ。安田邸は見所の多い建物なので、ちょっとした工夫で見学者に感銘を与えることができるのだ。
 
安田邸公開とチャリティー落語会
 2月22日は朝10時に戸を開け放ち大掃除をする。掃除には近所の人たちが大勢手伝いにきてくれた。雑巾がけにはまだまだ水が冷たい時期なのに「楽しかったわ」とか「安田邸は地域の誇りですから」と言って帰っていかれたときは頭が下がる思いがした。と同時に文化財の保存活用のあり方を教えてもらった気がした。この日は建物の傷みを考えて13時から15時までの間、庭から見学していただき、落語会の会場はすぐ近くの島薗邸のお座敷を借りた。島薗邸は矢部又吉設計の住宅だが、所有者の熱意で修復保存されて、今は登録文化財になっている。
 午後4時過ぎ、三遊亭円馬師匠が高座にあがった。師匠曰く「日本一お金がかかった高座」という言葉に笑いがあふれた。高座はビールケースを並べた上にベニヤ板を置いて毛氈を掛けたものだからだ。でもすわり心地は良さそうだ。お客は小学生から年配者までいて、師匠は演目を何にするか迷ったようだが、噺はいつしか「時蕎麦」に移っていった。円馬師匠は以前千駄木に住んでいたことから、今回の企画に快く応じてくれた。また島薗さんはお払いした会場費を修復募金に寄付してくださるなど、地域の人たちの協力で楽しいスタートとなった。
 
2月に島薗邸で開催されたチャリティー落語会
 
安田邸のお雛様公開とチャリティー茶会
 3月1日は午前9時に集合してお掃除をし、お雛様の飾りつけ班とお茶会準備班に分かれた。お茶会は応援団メンバーの渡辺さんを中心に小堀遠州流社中が担当。飾りつけ班は去年、何十年ぶりかで試行錯誤で飾ったときのメンバーが今年も応援にきてくれた。記憶と写真を頼りに飾り始めたが、さらに心強い助っ人が現れた。応援団メンバーの土居さんだ。土居さんは何年か前に渋谷区の松涛美術館で人形展が開催されたときに監修をされた人だ。分からないことがあると、やさしく説明してくれる。このときは応援団メンバーの層の厚さに感心した。
 
安田邸「残月の間」で開いたお茶会
 
 また、メンバーの圓佛さんは、お雛様の作者「三世永徳斎」について調べている。三世永徳齋はセントルイス万博の時に、からくり人形に付き添ってアメリカに渡り、そのまま22年間も彼の地に滞在した人物のようだ。圓佛さんはアメリカヘの留学経験があるため現地の友人に調査を頼んでいるようで、さらに詳細が明らかにされるのが楽しみだ。
 一日目は雨にたたられ、玄関前には水溜りが出来るほどだったが、それでも80人以上の参加者があり、安田幸子様もお雛様にまつわる思い出などを親戚の方に話されながら、お茶会を楽しまれた。2日目は天候に恵まれ、さらに多くの方が訪れた。特にジャパンタイムスが安田邸の特集記事を掲載してくれたこともあって外国人の家族づれが多かった。どなたも茶道のたしなみがある様子だった。
 見学の際、応接間は傷みが進んでいるとのことで立ち入りを遠慮願ったが、ドアのところで応援団メンバーが家具や調度の由来について説明をしたところ興味深そうに聞き入る人が多かった。建替えてしまったけれど子供の頃育った家の様子に似ていると、懐かしそうに話してくれた人もいた。
 2日目の終了後、お雛様を元の桐箱に仕舞うのも神経を使う仕事だった。まず人形や調度と箱の組み合わせをして写真に記録した。撮影が終わると次回はいつ開けるかわからないので、防虫剤をいれ和紙で丁寧に包む。その箱を所定の位置に片付けて戸締りをするまでがイベントのすべてだ。朝から晩までの2日間は結構疲れたが、元気になった安田邸を見るのは嬉しい。
 お雛様を飾ってお茶会を開くと建物がいきいきとしてくる。参加された方からはお茶会に部屋を借りるときは何部屋借りることができますか、という質問をうけた。安田邸でお茶会を開きたいのだろう。
 修復が終わったあと、どのような活用計画が立てられているのか知らないが、文化財は使ってこそ命が吹き込まれ、魅力がますことをつくづく感じる。今後、長く維持していくには多額の費用がかかるが、安田邸は貸席とかお稽古の場とか伝統的な行事を行う場として使っていくことで、建物みずからお金を生み出すだけの魅力をもっていると思う。
 修復工事の無事と、完成後のよりよい活用を望みたい。
 
「残月の間」の床の間に飾られたお雛さま
 
公開
ヘリテイジセンター
「北陸電化記念館」開館
 3月号でお伝えしたように、財団法人日本ナショナルトラスト7番目のヘリテイジセンター「北陸電化記念館」が滋賀県長浜市に開館。これを機会に、現存する最古のものとしてしられる「旧長浜駅舎」、2000年にオープンしたヘリテイジセンター「長浜鉄道文化館」も含めた「鉄道スクエア」が誕生します。
▼開館 7月17日(木)より*一般公開は13時〜(年末年始は休館)
▼開館時間 9時〜17時
▼入場料金 大人300円、こども100円(20名以上は2割引)
▼所在地 滋賀県長浜市北船町1-41(長浜駅より徒歩5分)
 
公開
プロパティ
駒井家住宅の公開について
 昨年、当財団に寄贈いただきました京都市指定文化財「旧駒井家住宅」を週1回、一般公開します。公開については、ご案内を原則とさせていただきますので、必ず事前にお申し込みください。また、公開日にあわせて、邸内の掃除などをしていただけるボランティアを募集しています。お問合せは、電話・メールなどで事務局まで。
▼公開日 毎週金曜日
▼入館料 無料、修理などにあてますので、寄付をお願いします。
▼申込み希望日の週の火曜日までに、事務局、関西支部まで電話、FAX、メールでご連絡ください。折り返し、確認のご連絡をさしあげます。
 
報告書
村上の町家と町並みの景観
 表紙でも紹介したように、村上市は、江戸時代には越後最大の城下町として発展し、現在でも城下町の骨格が数多く残っています。
 本調査は、これまで詳細な調査がされなかった町家に絞って、広く詳細調査したもの。
▼A4判211頁
▼頒布2000円(会員1800円+送料310円)
▼当財団事務局までお申込みください。
 
よろしくお願いいたします
 2年間、アルバイトとして事務局で活躍してくれた前原紘司さんが、4月1日から、職員になります。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 
編集後記
 今月から5回連載で、宇高雄志さんにアジアの町並み保存の最新情報を伝えていただきます。宇高さんは現在、マレーシアに在住。隣町でSARS患者が出たとのことですが、厳重な手洗いで乗り切っているとのことです。
 
ご支援ありがとうございます
 
新入会(2月1日〜28日)
 
個人会員
<千葉県> 白松 絵美
<東京都> 有山 祥子、菅野 秀幸
<神奈川県>平野 雅道、上野 法広
<京都府> 小林 直正
団体会員
<岐阜県> 田中社寺(株)
 
寄付者(2月1日〜28日)
〔一般寄付〕
◎7,320円 中野 隆雄 ◎6,000円 向井 勇治
◎5,000円 おそど あきこ、児玉 愛子
◎3,000円 藤田 知生 ◎1,000円 福山 
 
〔トラストトレイン募金〕
◎60,000円 佐藤 進一
◎30,000円 臼倉 淳、小川 孝
◎12,000円 木村 和司
◎10,000円 西谷 眞一、村上 博
◎6,000円  阪本 伸彦、渋谷 善広、関 茂雄
  高橋 雄逸、西崎 泰広、早瀬 ミカ、
  横井 正義、吉田 勝
◎5,000円  伊藤 栄一 ◎4,000円 吉武 利明
◎3,000円  田中 実   ◎2,400円 児玉 基広
◎1,900円  中野 隆雄 ◎1,200円 辻 貴雅
◎500円   山田 寿夫
 
〔民家庭園募金〕
◎6,000円  河竹 明子、吉田 勝
◎3,440円  大阪府民家集落博物館友の会
◎3,000円  小林 一元 ◎1,500円 菅井 良幸
◎500円   勝見 紀子 ◎5,520円 駒井邸募金箱
 
〔巻機山〕
◎5,000円  伊藤 栄一 ◎2,000円 新都市設計(株)
                     <敬称略>
 
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TEL/FAX 0742-20-5060
【京都事務所(駒井家住宅)】(火・金曜日)
〒606-8256 京都市左京区北白川伊織町64
TEL/FAX 075-724-3115







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