■西王母は、ときに鳳凰に乗って空を飛ぶ・・・と信じられています→( 37)。鳳凰は、東王父に会いに行くときの乗り物だという。
西王母と鳳凰を描く図像は、中国では幸福と瑞祥を運び長寿をもたらすめでたいものとして、よく描かれています。
■さてこれまでに、西王母をキーワードとして、陸吾―虎―崑崙山―三層構造―天上界への梯子―不老不死―鳳凰・・・などが登場しました。じつはこれらのイメージは、建鼓の垂直方向の装飾にかかわるものです。
■柱を支える四匹の虎は、崑崙山の山麓を護る陸吾に結びつく。太鼓とその上の華蓋の飾りは、三層をなす崑崙山の象徴となるものです。陸吾がいる足まわりが第一の層。太鼓の鼓身が第二の層。華蓋の頂上が第三の層の頂点にあてはまる。
頂上に立つ白鷺は、さきほど述べた太鼓の精霊のイメージに加えて、西王母が東王父を訪ねるときに乗り物とする鳳凰をも象徴すると考えられる。また虎と鳥は、西王母にかかわりをもつ崑崙山の山麓と山頂という天と地を結ぶ垂直性をも暗示しています。虎は山麓。鳥は西王母が住む崑崙の山頂にあたる。
■こう見てくると、宇宙樹であり、生命樹であった建鼓の全容が同時に山でもあった。宇宙山・崑崙山をも象るものだと推定することができるでしょう。霊気をたたえた字宙山、峨峨たる山なみはときに激しく鳴動します。霊山の鳴動が天と地を包み、鳴り響く・・・。建鼓はそのような響きを打ち出そうとする、神秘的な太鼓であったのです。
山中に棲むこの天上界の最高神は、傍らに虎を侍らす。彼方には、夕日に輝く崑崙山の三山が、雲上に顔を見せる。
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―山文字形の三神山の山頂に座す西王母(右)と東王父(左)。
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東王父の山麓には青龍が、西王母の麓には白虎が跳梁し、守護獣としての力を示す。沂南・画像石。
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「護る」という強い力を秘めた×(バツ)印が二つの文字の骨格をなす。「吾」の字では、×印が二重に重ねられ、その下に (サイ)が添えられる。(白川静『字統』による)。
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(36)
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―建鼓の心柱は、地下界・地上界・天上界の三世界を一すじに貫き、天の梯子、生命樹を象徴する。さらに崑崙山をも象どるという。
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