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 (2)最近のVINASHINの事業活動 
 近年、VINASHINは高率の成長を遂げ、1997年の総建造能力は対前年比19.5%増、98年は同じく51.7%増、99年は24.0%増、2000年は32.8%増となり、この時期の平均年間成長率は30.0%に及んでいる。1996〜2000年に開発計画で設定された目標である(1)15,000DWT型までの船舶の修繕、(2)10,000DWT型までの船舶の新造、(3)漁船、海洋調査艇等の建造、(4)巡視艇、軍用艇の建造、(5)造船用資機材の一部製造と設置はほぼ達成されたこととなる。その間、VINASHINは383隻の船舶を建造し、1,264隻の船舶を修繕した。主な実績を以下に列記する。 
−6,500DWT型と11,500DWT型貨物船 
−3,500DWT型タンカー 
−1,300〜1,400HP級タグ 
−30ノット級アルミ製高速巡視艇 
−28ノット級アルミ製高速客船 
−輸出向け調査船 
−巡視艇 
−近海漁船(出力600HP以下) 
−引上げ能力8,500トンの浮ドック 
−1,200m3型LPDバージ 
−1,200〜2,500m3型LPG船 
−V61型高速水先案内艇 
−沿岸警備隊向けV56型高速巡視艇 
−税関向けV59型高速艇 
−K99型100人乗り高速客船 
−500T及び800T型貨物船 
−510HP及び3,200HP級タグ 
−1,000〜1,500m3/h級吸水式浚渫船 
−海洋調査艇 
−各種自航バージ 
−80,000T及び400,000T型ドック用扉 
 1999年1月には、VINASHINは韓国の現代重工業とVINASHINの合弁造船所のVLCC建造ドック用にゲート2基を建造、引き渡した。これにより同造船所は400,000DWT型までの船舶修理を実施できるようになった。さらに売上げを伸ばすために、造船以外の部門、すなわち港湾建設、土木・建設プロジェクト向けの鉄鋼構造物の製作、外資との資本提携によるプロジェクト向けにも受注を図っている。 
(4)主要造船所の最近の動向 
(1)バクダン(Back Dang)造船所 
 1961年に設立された造船所で、ハィフォン市にある。ヴィナシンに属する大型旧式造船所で、新造船と修繕船を扱い、理論上の建造能力は10,000DWT以下の貨物船。保有設備には、浮ドック5,500DWT(100m×23m)1基、内航船用小乾ドック800DWT1基、船台5,000DWT(120mx20m)1基及び1,000DWT(90m×16m)1基があるほか、新造船用に必要な内業工場一式がある。従業員は1,800名で、うち240名のエンジニア、70名の熟練溶接工を擁する。 
 2002年3月には、ベトナム国内で建造された船舶のうち3番目に大きい6,500トン級貨物船(3,600HP、12.4ノット)を完成した。日本の設計事務所による設計と監督のもと、6ヶ月で建造され、Vietnam Ocean-Shipping Company(VOSCO)に引き渡された。同造船所はこれまでVOSCO向けに同型の船舶2隻を納入しており、2002年に更に同型貨物船3隻の建造を計画している。 
(2)サイゴン造船所(Saigon Shipyard) 
 中東を本拠とする海事関連総合企業グループであるSeamer Holdings Ltdが100%保有する外資系造船所で1989年の操業開始以来、タグボート、調査船、クルーザー、河川プッシュボート、ヨットなどの新造・修繕のほか、鉄鋼構造物の組立など数多くのプロジェクトを手懸けている。同社はシンクロリフトの建設を計画しており、日本企業との資本提携、技術提携に大いに関心を寄せている。 
(3)ファルン(Pha Rung)造船所 
 1984年、ハイフォン市近郊でフィンランドの援助により設立された造船所で、1991年にフィンランドからの援助が終了し、それ以後、VINASHINのグループ企業の一つとして、独立した形態で運営されている。規模的にはバソン造船所に次いで国内第2の修繕造船所で、設備はベトナム国内最新鋭の16,000DWTの乾ドック(158m×25m×11m)を保有し、16,000DWTまでの一般貨物船、コンテナ船、オイルタンカー、冷凍船、客船、5,000馬力までのタグボート、浚渫船、漁船の修繕が可能となっている。従業員は850名で、うち150名のエンジニア、50名の熟練工を擁する。 
(4)バソン(Bason)造船所 
 1861年のフランス支配時代に設立されたベトナム最古かつ国内最大の造船所で、国防省管轄となる。保有設備には、浮ドック(揚能力:8,500GT)1基、浮ドック(揚能力:2,000GT)1基、乾ドック約12,000DWT(152m×21m)1基、小型船用船台があり、1万DWTまでの船舶の修繕と600DWTまでの小型船舶の新造が可能となっている。 
 同社はまたシンガポールのケッペル造船所と「ケッペル・バソン・シップヤード&エンジニアリング」という修繕船の合弁企業を設立している。 
(5)サイゴン造船会社(Saigon Shipbuilding Co) 
 VINASHINに属する南部大型造船所で1992年に設立された。1993年に米国Walashek造船所及びチェコスロバキアMasekグループとの資本・技術提携により、3〜5,000DWT船型の新造が可能となった。2001年2月にはデンマーク政府による2,150万米ドルの無償援助でメコンデルタで利用される旅客フェリー14隻の建造が同造船所で行われている。 
 同造船所は、2001年3月に247万米ドルを投じて国内最大級の10,000DWT乾ドック(159m)を建設するため、Saigon Water Construction Companyに建設工事を発注している。この乾ドックは2003年3月に完成する予定である。 
(5)ベトナム造船所の今後の方向性 
(1)建造計画 
 VINASHINは2002年に国内最大級船舶の建造を計画している。2002年の主な建造計画を以下に列挙する。 
−ペトロベトナム向け100,000DWT型原油タンカー 
−Vinalines向け4,000DWT型貨物船2隻 
−Marine Transport & Service Company向け6,300DWT型貨物船2隻 
−Vinalines 及びDanang Sea Transport向け6,500〜7,000DWT型貨物船5隻 
 これら順調な受注をもとに2002年度の売上は2001年度から51%増の1億9,200万米ドルを見込んでいる。同様に同社に勤務するワーカーの平均給与も2001年度の月間97万ドン(64.60米ドル)から110万ドン(73.30米ドル)に上昇すると見込んでいる。 
(2)投資計画 
 VINASHINは2000〜2005年までは、主として国内市場の船腹需要に対応する。VINASHIN傘下の特定の造船所において、国際基準に対応し得るように生産技術と経営システムを段階的に改善する(CAD/CAMシステム、ISO9001、9002)。新造船・修繕船産業のニーズに応えて、他の地場産業や外国資本と協力、共同生産を行う下請事業者を組織化する(小中型ディーゼル機関などの舶用機器、甲板機器、配電盤、航海機器などの一部を組み立て、製造)。 
 この開発期間中に、ベトナム造船業の知名度を高めるために、国際マーケティング活動、船舶輸出受注活動を展開する。2005年までに、これらの造船所は輸出船建造を主体とする。VINASHINは傘下各造船所の輸出受注を確保するために、持株会社と大手商社の役割を果たすことになる。 
 そのための重点的な投資計画として、以下のプロジェクトに重点的に努力を注いでいる。 
−Ha Long Shipyardの近代化。目標は近い将来に1,200TEU型多目的コンテナ船の建造能力を具えること。 
−Bach dang Shipyardの近代化。目標は近い将来に15,000DWT型の貨物船建造能力を具えること。 
−Ben Thuy ShipyardとNha Trang ShipyardでGRP(FRP)製の漁船とプレジャー・ボートを建造するための設備投資。 
−ハノイの船舶設計研究所の既存曳航水槽のグレードアップ工事。 
(3)国際提携 
 現在VINASHINは海外各国の50社と提携関係を結んでいる。提携と販売を促進するために、VINASHINはポーランド、ドイツなどに代表事務所を開設した。海外事務所は国内造船所に出資する見込みのある投資家、発注が期待できる船主と良好な関係を確立している。 
 VINASHINは現代重工との合弁会社を始めとする外国企業との合弁事業からの以下表(3)-4のごとく2005年までの売上を見込んでいる。 
  
表(3)-4 合弁事業によるヴィナシンの売上計画 
 
|  
 (単位:百万米ドル) 
 | 
 
 
 
 
 
 
|   | 
2001年 | 
2002年 | 
2003年 | 
2004年 | 
2005年 | 
 
 
| 現代VINASHIN | 
60 | 
80 | 
105 | 
135 | 
200 | 
 
 
| その他合弁事業 | 
10 | 
15 | 
20 | 
25 | 
45 | 
 
 
| 合計 | 
70 | 
95 | 
125 | 
160 | 
245 | 
 
 
 | 
 
 
 | 
 
 
|  
 出典)第25回アジア太平洋造船専門家会議資料より。 
 | 
 
 
  
VINASHINの合弁企業 
(1)Hyundai-VINASHIN Shipyard Company Ltd. 
 2001年、この合弁企業のパートナー両社は、1億5,000万米ドルヘの増資について合意した。現代VINASHIN社は新造船設備に投資する予定で、これにより2004年までに最初の新造工事に着手できることになる。 
(2)The Vietnam Korea Demolition Old Shipand Rolling Steel Joint Venture Company(VISKO Ltd. Co.)(ハイフォン)(韓国のSaeyang Globus Inc. Co.とVINASHINとの合弁企業) 
 この合弁企業は1994年に免許を受けた。資本金は200万米ドル、うち60%を韓国側が出資している。同社の事業内容は以下の通り。 
−内外の老朽船の解撤。 
−スクラップ鋼材の切削と圧延。 
−中古船、造船産業で使用された中古機器の輸出入。 
−スクラップ鋼材、切削・圧延鋼材、バージの輸出入。 
(3)Baican Shipping Company(BASCO)(ハイフォン)(ロシアのACFFSとヴィナシンとの合弁事業) 
 資本金500万米ドル、うち60%をロシア側が出資。BASCOは修繕船と貨客輸送の免許を受けている。 
(4)Shell Gas-Hai Phong joint venture Company(Shell Overseas Investment V.V. とVINASHINとの合弁事業) 
 資本金1,130万米ドル。Shell側が70%を出資。液化ガスと市場向けのガス供給に特化。 
  
  
表4-(1)ベトナムの漁獲量の推移 
 
|  
 (単位:mt) 
 | 
 
 
 
 
 
 
|   | 
1997年度 | 
1998年度 | 
1999年度 | 
2000年度 | 
 
 
| 合計(その他含む) | 
1,276,325 | 
1,293,954 | 
1,386,300 | 
1,441,590 | 
 
 
 | 
 
 
 | 
 
 
|  
 出典)FAO漁業統計2000年 
 | 
 
 
  
表4-(2)ベトナム船主の漁船保有状況 
 
|  
 (1,000G/T以上の鋼漁船) 
 | 
 
 
 
 
 
 
|   | 
2000年 | 
2001年 | 
 
 
| 船種 | 
隻数 | 
G/T | 
平均船齢 | 
隻数 | 
G/T | 
平均船齢 | 
 
 
| 漁猟船 | 
- | 
- | 
- | 
- | 
- | 
- | 
 
 
| その他漁船 | 
1 | 
1,498 | 
30 | 
1 | 
1,498 | 
31 | 
 
 
 | 
 
 
 | 
 
 
|  
 出典)ロイド統計 World Fleet Statistics 2000/2001 
  注)1999年以前は100G/T以上の統計となっているので比較の意味がない。 
 | 
 
 
  
表4-(3)ベトナム籍として登録漁船 
 
|  
 (100G/T以上の鋼漁船) 
 | 
 
 
 
 
 
 
|   | 
2000年 | 
2001年 | 
 
 
| 船種 | 
隻数 | 
G/T | 
平均船齢 | 
隻数 | 
G/T | 
平均船齢 | 
 
 
| 漁猟船 | 
60 | 
16,307 | 
24 | 
58 | 
14,909 | 
25 | 
 
 
| その他漁船 | 
2 | 
1,961 | 
36 | 
2 | 
1,962 | 
37 | 
 
 
 | 
 
 
 | 
 
 
|  
 出典)ロイド統計 World Fleet Statistics 2000/2001 
 | 
 
 
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