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 また、2006年にはASEAN自由貿易地域(AFTA)形成に基づく関税引き下げが控えている。2001年には712品目が一時的除外品目(TEL)から適用品目(IL)に移行され、農産品(農産物・半加工)や飲料(ミネラルウオーター)の域内関税率が20%に引き下げられた。2002年に500品目、2003年には700品目がTELからILに移行される予定である。
 2001年9月にハノイで開催されたASEAN経済担当相会議において、2003年までに関税率0〜5%の品目数を最大化させること、2008年〜2010年までに情報通信技術製品の関税を段階的に撤廃することを決定した。
 情報提供面では、ホーチミン、ハノイで投資家向け関連ホームページを開設した。MPIも、投資関連情報を掲載した既存のホームページに加え、国際協力事業団(JICA)派遣の専門家が協力して日本人投資家向けに日本語のホームページを開設するなど、外国投資誘致に力を入れている。
 日本の通関統計によれば、2001年の日本の対ベトナム輸出は前年比9.9%減の17億8,540万ドル、対ベトナム輸入は同1.2%減の26億1,590万ドルと、いずれも前年から減少した。
 輸出を品目別に見ると、全体の52.2%を占める機械機器が前年比0.1%減と振るわなかった。内訳をみると、設備投資の拡大により電気機器(前年比19.5%増、シェア24.0%)、一般機械(47%増、19.9%)は引き続き増加したが、自動車、二輪車、船舶などの輸送用機器(36.9%減、8.3%)が落ち込んだ。
 
表1-(3)日本の対ベトナム主要商品別輸出
(単位:100万ドル、%)
  2000年 2001年
金額 金額 構成比 伸び率
一般機械 339.0 355.1 19.9 4.7
輸送用機械 234.8 148.1 8.3 △36.9
電気機器 358.7 428.7 24.0 19.5
金属・同製品 227.3 255.3 14.3 12.3
化学製品 163.0 144.2 8.2 △11.6
繊維・同製品 233.6 221.2 12.4 △5.3
非金属・銅製品 9.5 10.7 0.6 11.9
精密機器 27.1 28.3 1.6 4.3
食料品 14.5 15.2 0.9 5.3
その他 373.2 178.6 10.0 △52.1
合計 1,980.8 1,785.4 100.0 △9.9
出典)JETRO貿易投資白書2002年(財務省通関ベース)
 
 輸入については、シェア1位(24.2%)の繊維製品が前年比8.0%減、2位(20.7%)の食料品が2.5%減、3位(18.4%)の鉱物性燃料が19.6%減と、上位品目がいずれも減少した。食料品の半分以上を占めるエビが6.0%減少した。また、鉱物性燃料の9割を占める原油が国際価格の下落により20.9%減少した。一方、シェア4位(16.3%)の機械機器が20.9%増と、2000年の72.8%増に続いて大幅に増加した。これは、進出日系電気メーカーが対日輸出を伸ばしたことが主因と思われる。今後も進出日系企業による日本向け輸出は拡大することが見込まれる。
 
表1-(4)日本の対べトナム主要商品別輸入
(単位:100万ドル、%)
  2000年 2001年
金額 金額 構成比 伸び率
食料品 554.6 540.6 20.7 △2.5
金属・同製品 30.5 35.3 1.4 15.9
原料品 45.3 47.6 1.8 5.0
繊維製品 639.1 633.8 24.2 △8.0
機械機器 352.2 425.8 16.3 20.9
非金属鉱物製品 14.3 14.7 0.6 2.7
化学製品 34.2 45.8 1.8 34.0
鉱物性燃料 598.2 481.1 18.4 △19.6
その他 330.6 391.2 15.0 18.3
合計 2,649.0 2,615.9 100.0 △1.2
出典)JETRO貿易投資白書2002年(財務省通関ベース)
 
 2001年の日本からの対内直接投資額(認可ベース)は、前年比倍増(102.9%増)の1億6,350万ドルとなった。大型案件は、キャノンのインクジェットプリンター製造(投資総額7,670万ドル)、住友ベークライトのフレキシブル回路製造(3,500万ドル)、デンソーの自動車部品製造(1,272万ドル)など。
 これらはすべてべトナム北部地域への進出であり、全体でも認可額ベースで9割以上がハノイやハイフォンなど北部地域への進出であることが特徴となっている。北部地域へ投資が集中した要因としては、(1)工業団地の造成が進み、工場用地の確保が容易になったこと、(2)国際水準のホテルやコンドミニアムが相次いで開業し、外国人の居住環境が整備されたこと、(3)中国への輸出を視野に入れた場合、距離的に近いため輸送コスト・時間が抑えられることなどがあげられ、インフラ整備の進展や地理的優位性が投資家に好感されている。
 進出日系企業の多くは進出後5年ほどしか経過しておらず、本格的な操業はこれからの段階である。しかし、徐々に営業利益を計上する企業が増加しており、輸出増加、国内販売拡大の見通しから、2002年には営業損益が改善する企業が増加する見込みである。一方、進出日系企業が抱える主な問題点としては、(1)行政手続の複雑さ、(2)法制度やインフラの未整備、(3)現地調達の困難さ、(4)人材不足等があげられる。
 2002年4月にハノイで第3回日本・ベトナム投資・貿易ワーキンググループ(WG)が開催された。このWGは、99年3月のファン・バン・カイ首相来日時の首脳合意を基に設置されたもので、ベトナム投資環境改善のための包括的な意見交換を官民合同で行っている。
 今回のWGでは、99年9月の第1回、2000年11月の第2回会合で日本側から出された日本側からの投資環境改善要望に対するべトナム側の検討・進捗状況が討議された。
 ベトナム側で改善した点は、(1)新規投資における輸出義務規制(80%)の対象品目を24品目から14品目へ削減、(2)労働者給与のドン建てドン払いの適用拡大、(3)外資系企業による直接雇用の解禁、(4)国際会計基準に則った会計基準の作成、(5)外貨強制売却割合の40%への引き下げ、などである。
 一方、今後とも改善を要する点は、(1)国際通信料金、土地リース代、物流コストなど高いインフラコストの改善、二重価格制の完全撤廃(航空運賃など)、(2)外国人所得税最高税率(50%)の引き下げ、(3)新規投資における輸出義務の完全撤廃、(4)知的所有権の保護(二輪車など模倣品対策強化など)、(5)一層の金融規制緩和(株式発行規制、先物為替取引規制など)となっている。
 2002年4月末には小泉首相がべトナムを訪問、ファン・バン・カイ首相と会談し、日越投資協定の年内締結を目指すことで合意した。6月末にはハノイ・成田間直航便就航、さらにホーチミン・成田間定期便の増便が予定されており、日本からの観光客増加が見込まれる。なお、2003年は日本・ASEAN交流年と日越国交樹立30周年が重なることから、これを機に両国間の交流を一層活発化することが期待される。







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