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 2001年のスリランカの実質GDP成長率は前年比1.4%減(暫定値)と、1948年の独立以来、初のマイナス成長となった。
(1)先進国経済の減速や米国テロ事件による輸出の減少に加え、
(2)スリランカからの分離・独立を目指すタミル人武装勢力「タミル・イーラム解放のトラ」(LTrE)によるコロンボ国際空港等襲撃事件(2001年7月)による物流の混乱、観光客の激減(前年比16.7%減、暫定値)、
(3)干ばつによる農業生産の落ち込み(3.8%減)、電力供給不足などが経済に大きな打撃を与えた。
 2001年の貿易は、輸出が前年比13.1%減の48億1,600万ドル、輸入が18.5%減の59億6,400万ドルと、ともに2ケタのマイナスとなった(暫定値、調整値)。輸出を主要商品別に占ると、全体の48.5%占める衣料品(繊維製品を加えると52.8%)は前年比14.3%減少した。これは、
(1)主要市場である欧米諸国の景気減速(米国向け衣料品輸出が11.1%減、EU向けが21.2%減)、
(2)LTTEの空港等襲撃事件による貨物輸送保険料の引き上げ、顧客からの発注キャンセル、
(3)欧米市場での他国製品との競合の高まりなどによる。中央銀行によれば、2001年の繊維・衣料業界の設備稼働率は前年の88%から76%に落ち込んだ。
 農産物輸出は天候不順による収穫減で、前年比7.4%減少した。農産物輸出の74.0%を占める紅茶は、干ばつによる中・高地での不作、ドル建て輸出価格の下落に見舞われたが、在庫放出により1.7%の減少にとどまった。
 国・地域別(暫定値、未調整値)でみると、最大輸出相手国の米国向け(輸出総額の40.8%)は、同国の景気減速とテロ事件の発生により12.2%減少した。以下、英国(21.8%減)、ドイツ(13.8%減)、日本(19.1%減)、ベルギー(22.8%減)と、輸出相手国上位5カ国でいずれも大幅に減少した
 一方輸入は、資本財(輸入総額の18.0%)が37.7%減、中間財(同57.5%)が12.5%減、消費財(同18.8%)が11.2%減と、軒並み大幅に減少した。これは、
(1)生産縮小に伴う原材料需要の減少、
(2)国内経済の低迷、
(3)2001年1月に完全変動相場制に移行したルピーの対ドル為替レートの下落(通年で16.4%下落、期末値)などによる。
 商品別でみると、輸送機械はスリランカン航空がエアバス3機を購入した2000年に比べ75.4%減少した。また、2000年9月にピークに達した原油価格が2001年にやや下落したことから、石油輸入が19.2%減少した。国・地域別でみると、資本財、中間財が大部分を占める日本からの輸入が急減した(47.9%減)。最大の輸入相手国であるインドは、衣料品・繊維製品の原材料となる綿糸・綿織物、医薬品などが減少したが、砂糖やセメントが大幅に増加したため、前年比0.2%増と横ばいとなった。
 「インド・スリランカ自由貿易協定」(ILFTA)は2000年3月に発効した。2001年のスリランカによる対インド輸出のうち、ILFTAに基づく輸出は22.5%(1,623万ドル)と、前年の15.9%に比べ増加したが、依然として適用率は低い、また、品目も紙・古紙、くず鉄・金属廃棄物、同再処理品、大理石板など多様性に欠く。中銀によれば、2001年にILFTAを利用してインドに輸出された商品の15.4%が、銅やアルミニウムなど金属廃棄物の再処理品であった。スリランカは、対インド輸出が拡大しない理由について、
(1)主要輸出品である紅茶や衣料品に対するインド側の制限的措置(数量割当の設定、同割り当て内での50%の関税譲許、荷降ろし港の限定)、
(2)インド側での原産地証明審査の厳しさなどを指摘している。両国は同協定の包括的な見直しに向けた協議の開催に合意した。恒常的な対インド貿易赤字(2001年は貿易赤字全体の78%に相当する5億3,000万ドル)の是正も議題となる見通しである。
 国内市場が小さい同国では、輸出拡大が経済発展の原動力となる。中でも衣料品・繊維製品は輸出の52.8%を占めており、極めて重要な役割を担っている。ところが、こうした製品は主要輸出先である米国やEU市場で、他国製品との競合に直面している。中央銀行は、EUに隣接する東欧諸国やトルコ、米国で関税が免除されるメキシコやカリブ海諸国、さらに価格競争力が強い中国などを競合国としてあげ、通商制度(FTA、特恵制度)やコスト面で、スリランカ製品の競争力低下に懸念を示している。中銀は労働生産性の向上や製品の高付加価値化(新製品開発や近代的な生産技術の導入など)などの対策が急務としている。
 こうしたなか、中銀は「弱体化した産業に関する調査」(Survey on Sick Industries Report)と題する報告書を発表し、経済活性化や投資環境の改善に向けた包括的な政策提言を行った。具体的には、
(1)企業経営者が大きな問題点としてあげる硬直的な労働規制の撤廃(柔軟な雇用調整を可能とする労働法の改正、雇用契約制度の普及促進など)、
(2)技術訓練、職業訓練制度の見直し、
(3)労働組合活動の制限、
(4)電力等インフラ整備、
(5)輸入原材料への関税・課徴金の廃止、
(6)貿易環境の改善(不正行為の取り締まり強化、24時間通関の導入、通関手続きの電子化、アンチダンピング法の整備など)など、多岐にわたっている。
 景気低迷下で行われた2001年12月の総選挙で勝利し、野党第1党として7年ぶりに政権に返り咲いた統一国民党(UNP)は2002年4月、2002年度予算(2002年7月〜2003年6月)を成立させた。同予算では、
(1)法人税減税(最高税率を2003年に30%、2004年に20%)、
(2)IT、エレクトロニクス、工作機械、食品加工などの特定分野、インフラ建設部門への投資に対する優遇税制(法人税免税を含む)の導入、
(3)衣料品原材料(織物)の取引にかかるGST(財・サービス税)の免除(2002年4月1日から)など、産業支援税制を打ち出した。
 政府は2002年2月、ノルウェー政府の仲介でLTTEと無期限停戦に合意した。今後、当事者間で和平交渉が進められる予定である。LTTEとの武力紛争は、軍事費支出の増加による財政圧迫や、散発的な爆弾テロ事件による外国投資家・旅行客の不安感増大の原因だっただけに、和平が実現すれば、投資環境の抜本的な改善につながるとの期待が高まっている。一方、インフラ問題は、一朝一夕には解決できない。水力発電が全体の約6割を占める同国では、2001年の干ばつで深刻な電力不足を引き起こした。計画停電が常態化し、最悪期には1日8時間にも及んだ。進出外資系企業は自家発電設備を保有しているため、大きな問題には発展していないが、自家発電機用のディーゼル燃料の価格が上昇するなどの問題が表面化している。
 2001年の日本の対スリランカ貿易を財務省統計からみると、スリランカヘの輸出は、重電機器(前年比62.7%増)を除き、主要輸出品目では軒並み減少した。全体の3割超を占める輸送用機械のうち、自動車は48.3%減(乗用車、トラックがともに40%台の減少)となった。一方、スリランカからの輸入をみると、衣類・同製品の増加により、繊維製品が前年比14.0%増(2,210万ドル)となった。このほかの主要輸入品はいずれもマイナスで、特に輸入総額の17.9%を占めるエビは28.3%減少した。2001年の日本の直接投資(認可ベース)は2000年の1億900万ルピーから2億6,300万ルピーへと倍増した。ペットボトルの再処理事業(1億2,490万ルピー、2002年6月時点で未実行)が認可されたためである。近年、ソフトウエア開発を目的に進出する日本企業がみられる。プリンターやファクシミリ機など電子機器用の制御ソフトウエア等を開発するメタテクノ(本社東京)は2001年1月、初の海外開発拠点をコロンボに開設した。スリランカ政府によるIT部門への投資優遇措置や、インドに比べ外国企業の進出が少なく、安定的な人材確保が期待できる点が進出の決め手となった。また、インターネット関連システムを開発する日本オプロ(本社東京)も、ソフトウエアの受託開発を行うため、全額出資会社を設立した(2002年5月)。一方、カジュアル衣料の「ユニクロ」を経営するファーストリテイリングは、中国で生産していた英国向け商品の生産の一部を、スリランカ企業への委託加工に切り替えた。EUでのスリランカ製繊維製品の輸入割り当ての廃止や、海上輸送期間の短縮が理由である。
 
 スリランカ船主の保有(支配)船腹量(1,000G/T以上の鋼船)は、ロイドの統計World Fleet Statisticsによると2001年末現在6隻20,934G/Tである。
 これを船種別に見ると次の通りである。
 
表2-(1)スリランカ船主の保有船腹量の種類
(1,000G/T以上の鋼船)
船種 隻数 G/T 平均船齢
LNG運搬船 - - -
LPG運搬船 - - -
原油タンカー - - -
プロダクトタンカー - - -
ケミカルタンカー - - -
その他液体運搬船 - - -
バラ積み貨物船 - - -
バラ積み貨物・油兼用船 - - -
揚げ荷装置付バラ積み貨物船 - - -
その他バラ積み船 - - -
一般貨物船 3 16,983 19
貨客船 - - -
コンテナー船 - - -
冷凍貨物運搬船 - - -
RO/RO貨物船 - - -
RO/RO貨客船 - - -
クルーズ客船 - - -
客船 - - -
その他乾貨物船 - - -
漁猟船 - - -
その他漁船 - - -
オフショアー補給船 1 1,292 26
その他オフショアー関連船 - - -
調査船 - - -
曳船・プッシャー - - -
ドレジャー 2 2,659 15
その他 - - -
合計 6 20,934 19
出典)ロイド統計World Fleet Statistics 2001
 
 一方、スリランカ船籍として登録されている船腹は、同じくロイド統計資料によると2001年末現在69隻、153,708G/Tである。
 
表2-(2)スリランカ籍として登録船腹量の種類
(100G/T以上の鋼船)
船種 隻数 G/T 平均船齢
LNG運搬船 - - -
LPG運搬船 - - -
原油タンカー - - -
プロダクトタンカー 5 5,637 26
ケミカルタンカー 1 542 16
その他液体運搬船 - - -
バラ積み貨物船 1 77,191 17
バラ積み貨物・油兼用船 - - -
揚げ荷装置付バラ積み貨物船 - - -
その他バラ積み船 - - -
一般貨物船 16 53,883 30
貨客船 1 256 13
コンテナー船 - - -
冷凍貨物運搬船 - - -
RO/RO貨物船 - - -
RO/RO貨客船 - - -
クルーズ客船 - - -
客船 3 1,074 1
その他乾貨物船 - - -
漁猟船 15 3,510 29
その他漁船 - - -
オフショアー補給船 2 1,854 28
その他オフショアー関連船 - - -
調査船 1 103 5
曳船・プッシャー 16 5,490 14
ドレジャー 5 3,737 23
その他 3 411 8
合計 69 153,708 22
出典)ロイド統計World Fleet Statistics 2001
 
 1996年以降の保有船腹量の推移については、ロイド統計資料World Fleet Statisticsに記載がない。
 
表2-(3)保有船腹量の推移
(1,000G/T以上の鋼船)
隻数 G/T 平均船齢
1996 - - -
1997 - - -
1998 - - -
1999 - - -
2000 - - -
2001 - - -
注)ロイド統計World Fleet Statistics 2001に記載はない。
 
 ロイド統計によれば2001年末現在のスリランカ国の船主は添付Appendix Iに記載している12社である。







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