スリランカ(Democratic Socialist Republic of SriLanka)
(1)一般事情
1. 面積:65,607km2(北海道の約0.8倍)
2. 人口:約1,870万人(一部地域を除く)人口増加率1.4%(2001年)
3. 首都:スリ・ジャヤワルダナプラ・コツテ
4. 人種:シンハラ人(81.9%)、タミル人(9.4%)、スリランカ・ムーア人(8.0%)(一部地域を除く値)
5. 言語:公用語(シンハラ語、タミル語)、連結語(英語)
6. 宗教:仏教徒(76.7%)、ヒンドゥ教徒(7.9%)、イスラム教徒(8.5%)
ローマン・カトリック教徒(7.0%)(一部地域を除く値)
7. 国祭日:2月4日(独立記念日)
8. 略史:
紀元前483年ヴィジャヤ王子(シンハラ族の祖といわれる)スリランカ上陸
シンハラ王朝建設
紀元前250年仏教伝来
紀元1505年ポルトガル人来航
1658年オランダ人来航
1802年アミアン条約によりスリランカは英国植民地となる
1948年英連邦内の自治領として独立
1972年国名をセイロンよりスリランカに改称政体を共和制に変更
9. 政治体制・内政
(1)政体:共和制
(2)元首:チャンドリカ・バンダラナイケ・クマーラトンガ大統領
(3)議会:一院制
(4)政府:
(1)首相名ラニル・ウィクラマシンハ
(2)外相名ティローン・フェルナンド
(5)内政:昨2001年12月5日、国会議員選挙が実施された。開票の結果、最大野党統一国民党(UNP)が過半数には及ばなかったものの、与党人民連合(PA)に大差をつけ勝利した。クマーラトンガ大統領は、ウィクラマシンハUNP総裁を首相に、UNP系議員を閣僚等に任命し、実質的なUNP新政権が発足した。これにより、大統領と首相以下閣僚が対立政党出身という政治的ねじれ状況が生じることとなった。本2002年2月22日、スリランカ政府とLTTEは停戦合意文書に署名し、停戦合意は2月23日午前0時をもって発効した。停戦合意に基づいて北欧諸国からなる停戦監視委員会がスリランカに派遣され、活動を開始した。現在までのところ概ね停戦合意が遵守されている模様。ノルウェーの仲介により、9月よりスリランカ政府とLTTEとの和平交渉が開始され、和平プロセスが進展している。
10. 外交
1)外交の基本方針は非同盟である。隣国インドとは歴史的、文化的にも関係が深く、スリランカの政治・安全保障上極めて重要である。また経済社会開発の観点から日本を含む先進諸国との関係強化を重視している。
2)民族問題の交渉による解決のため、ノルウェー政府がスリランカ政府とLTTEとの仲介(facilitation)役となっている。またスリランカ政府はLTTEの戦争関連物資の購入が欧米諸国等のタミル人コミュニティ等から集められた資金によるとみて、海外でのLTTEの活動の取り締まり強化を要請。米国は97年10月テロ規制法に基づきLTTEをテロ組織として認定した。また印もLTTEの印国内での活動を禁止している。また英国は、2000年3月、新テロリズム法に基づき、LTTEを英国国内で非合法化すべき団体として指定した。更に、2001年、米、英、加、豪は国内でのLTTEの資産凍結措置を決定した。
3)南アジア地域協力連合(SAARC)の加盟国であり、発足当初よりその発展に積極的に関与してきている。98年7月にはコロンボにて第10回SAARC首脳会議を開催し、2001年12月まで議長国として、SAARCの正常化に尽力した。また最近東南アジア諸国やインド洋地域との協力関係強化にも力を入れている(スリランカは環インド洋地域協力連合(IOR-ARC)のメンバー)。
11. 経済
(1)主要産業: 農業(紅茶、ゴム、ココナツ、米作)、繊維製造業
(2)名目GDP: 156.7億米ドル(2001年、市場価格表示)
(3)一人当たりGDP: 836米ドル(2001年、市場価格表示)
(4)GDP経済成長: -1.4%(2001年)
(5)物価上昇率: 14.2%(2001年コロンボ消費者物価指数)
(6)失業率: 7.8%
(7)総貿易額(2001年):
(1)輸出:(FOB)48.1億米ドル
(2)輸入:(CIF)59.7億米ドル
(8)主要貿易品目:
(1)輸出:工業製品(繊維・衣類製品等)農産品(紅茶等)、宝石
(2)輸入:中間財(繊維関連等)、消費財(食料品等)、資本財
(9)主要貿易相手国:
(1)輸出:米国(39.9%)、英国(11.9%)、ドイツ(4.1%)、日本(3.8%)
(2)輸入:インド(10.0%)、香港(8.3%)、シンガポール(6.8%)日本(5.6%)
(10)通貨:ルピー
(11)為替レート:
1米ドル=93.2ルピー(2001年末値)
1ルピー=1.41円(2001年末値)
12. 経済概況:
スリランカ政府は1983年以降悪化した経済状況の建て直しを図る為、世銀・IMFとの合意に基づき1988年より財政支出の削減、公的企業の民営化、為替管理を含む規制緩和等を内容とする構造調整政策を実施。その後1990年代に入り国内(除く北・東部)の治安が回復したこともあり、民間部門を中心とする経済が活発化し、軍事費の増大等の事情はあったものの、1990年代は5%代の成長を記録。2001年のスリランカ経済は、世界経済の景気減速による製造業の輸出の減速、降雨不足による国内農業の低調に加え、7月に起きたLTTEによる国際空港襲撃事件、政情の不安定化、水力発電供給量の減少による計画停電の実施等特殊要因があり、実質GDP成長率-1.4%と独立後初めてのマイナス成長となった。
13. 日本・スリランカ関係
(1)基本的考え
アジアの伝統的友好国で、共通の文化的基盤を有する親日国。インド洋の日本シーレーン上の要衝、地政学上重要な位置にある国である。独立後一貫して選挙により政権交替が行われている民主主義国であり、民族紛争を抱えつつも、経済社会開発に自助努力を続ける国である。識字率、教育水準が高く、良質な労働力を有し、経済発展の可能性が高い国である。
(2)経済関係
1)貿易額は約7億米ドル(2000年)で、日本はスリランカにとって重要な貿易相手国(輸入、輸出とも第4位)。日本の輸出5.2億米ドル(2000年)(日本通商白書より)日本の輸入2.2億米ドル(2000年)(日本通商白書より)。日本の主要輸出品目は、輸送機械、一般機械、電気機械、繊維品。日本の主要輸入品目は、機械機器、紅茶、えび、繊維製品。
2)日本からスリランカヘの直接投資は、1999年度までの累計で162件777.9億円。(国別でシンガポール、豪、米、韓国、印に次いで第6位)
3)2001年10月現在、日系進出企業は56社。うち現地法人化されていない企業は25社(支店3社、駐在員事務所・出張所等22社)で、現地法人化された日系企業は31社(うち100%日系企業20社、合弁企業11社)。日本及び近隣諸国への製品輸出を目的とする製造業が多数を占める。主要進出企業は、ノリタケ、富士電気化学(現地法人FDKランカ)、NTT(スリランカテレコムに出資)、YKKや、三井物産、丸紅、伊藤忠等の商社、鹿島建設、三井建設等の建設会社など。
(3)経済協力
1986年以降最大の対スリランカ援助供与国。2000年DAC諸国合計に占める我が国対スリランカ援助の割合は68.1%(第2位独8.8%、第3位スウェデーン6.9%)。
2001年度までの援助実績(有償、無償はE/Nべ一ス、技協はJICA経費実績ベース)
有償資金協力5889.14億円(内2001年度実績461.30億円)
無償資金協力1596.30億円(内2001年度実績32.61億円)
技術協力462.99億円(内2001年度実績29.84億円)
(出典)外務省ホムページ
14. 貿易概況
2001年の貿易は輸出入ともに大幅に滅少した。先進国経済の減速や、国内の武装勢力による国際空港等襲撃事件、米国同時多発テロ事件などによるもので、経済は独立以来初のマイナス成長となった。2001年の対内直接投資額(認可ベース)は前年比17.7%増と、近年の減少傾向に一定の歯止めがかかった。投資分野は、建設、ソフトウエア開発などサービス業、また製造業では繊維・衣料品分野に偏重している。改府は2002年2月武装勢力との間で無期限停戦合意の覚書に署名しており、投資環境の抜本的な改善に期待が高まっている。
表1-(1)スリランカの主要国・地域別輸出入
(単位:100万ドル、%)
|
2000年 |
2001年 |
金額 |
金額 |
構成比 |
伸び率 |
輸出総額(その他含む) |
5,377.0 |
4,718.3 |
100.0 |
△12.3 |
米国 |
2,192.6 |
1,925.8 |
40.8 |
△12.2 |
英国 |
736.7 |
576.3 |
12.2 |
△21.8 |
ドイツ |
230.2 |
198.5 |
4.2 |
△13.8 |
日本 |
229.7 |
185.8 |
3.9 |
△19.1 |
アラブ首長国連邦 |
135.1 |
145.4 |
3.1 |
7.6 |
ベルギー |
155.8 |
120.3 |
2.5 |
△22.8 |
ロシア |
127.8 |
115.6 |
2.5 |
△9.6 |
フランス |
114.2 |
106.9 |
2.3 |
△6.3 |
インド |
58.0 |
72.0 |
1.5 |
24.0 |
EU |
1,518.4 |
1,258.7 |
26.7 |
△17.1 |
輸入総額(その他含む) |
6,297.1 |
5,399.1 |
100.0 |
△14.3 |
インド |
600.1 |
601.5 |
11.1 |
0.2 |
香港 |
515.9 |
500.3 |
9.3 |
△3.0 |
シンガポール |
496.0 |
410.4 |
7.6 |
△17.3 |
日本 |
646.1 |
336.9 |
6.2 |
△47.9 |
韓国 |
396.3 |
335.5 |
6.2 |
△15.4 |
台湾 |
390.4 |
322.8 |
6.0 |
△17.3 |
米国 |
254.9 |
265.5 |
4.9 |
4.2 |
イラン |
203.3 |
233.2 |
4.3 |
14.7 |
英国 |
311.4 |
220.6 |
4.1 |
△29.2 |
中国 |
251.1 |
220.4 |
4.1 |
△12.2 |
EU |
950.9 |
847.6 |
15.7 |
△10.9 |
|
出典)JETRO貿易投資白書2002年
注)2001年は暫定値、統計データは未調整である。
表1-(2)スリランカの主要商品別輸出入
(単位:100万ドル、%)
|
2000年 |
2001年 |
金額 |
金額 |
構成比 |
伸び率 |
輸出総額(その他含む) |
5,544.1 |
4,816.0 |
100.0 |
△13.1 |
工業製品 |
4,301.2 |
3,711.7 |
77.1 |
△13.7 |
衣料品 |
2,723.2 |
2,334.6 |
48.5 |
△14.3 |
糸・その他繊維製品 |
271.4 |
209.7 |
4.4 |
△22.8 |
機械・機器 |
245.4 |
245.0 |
5.1 |
△0.1 |
ゴム製品 |
196.9 |
172.5 |
3.6 |
△12.4 |
ダイアモンド |
179.2 |
166.0 |
3.4 |
△7.3 |
皮革・旅行用品・履物 |
176.7 |
150.0 |
3.1 |
△15.1 |
農産物 |
1,006.5 |
931.5 |
19.3 |
△7.4 |
紅茶 |
701.2 |
689.3 |
14.3 |
△1.7 |
鉱業品 |
97.0 |
85.8 |
1.8 |
△11.6 |
宝石 |
93.6 |
81.4 |
1.7 |
△13.0 |
輸入総額(その他含む) |
7,314.7 |
5,964.0 |
100.0 |
△18.5 |
消費財 |
1,263.9 |
1,122.1 |
18.8 |
△11.2 |
食料品・飲料品 |
566.9 |
544.8 |
9.1 |
△3.9 |
砂糖 |
142.2 |
115.1 |
1.9 |
△19.0 |
自動車・二輪車 |
185.1 |
99.4 |
1.7 |
△46.2 |
医療品・医薬品 |
95.6 |
94.1 |
1.6 |
△1.6 |
中間財 |
3,917.0 |
3,427.7 |
57.5 |
△12.5 |
繊維 |
1,469.9 |
1,320.4 |
22.1 |
△10.2 |
石油 |
902.4 |
729.5 |
12.2 |
△19.2 |
紙・板紙 |
180.2 |
160.8 |
2.7 |
△10.8 |
化学原料・コンパウンド |
147.2 |
141.5 |
2.4 |
△3.8 |
資本財 |
1,727.3 |
1,076.3 |
18.0 |
△37.7 |
機械・機器 |
785.7 |
607.5 |
10.2 |
△27.7 |
建設資材 |
304.7 |
247.8 |
4.2 |
△18.7 |
輸送機械 |
521.1 |
128.3 |
2.2 |
△75.4 |
|
出典)JETRO貿易投資白書2002年(スリランカ中央銀行Annual Report)
注)2000年は改定値、2001年は暫定値
|