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イラン(Islamic Republic of Iran)
(1)一般事情
1. 面積:1,648,195km2(日本の約4.4倍)
2. 人口:6,490万人(2002年3月)(イラン中銀発表)
3. 首都:テヘラン
4. 人種:ペルシャ人(他にアゼリ系トルコ人、クルド人、アラブ人等)
5. 言語:ペルシャ語、トルコ語、クルド語等
6. 宗教:イスラム教(主にシーア派)、キリスト教、ユダヤ教、ゾロアスター教
7. 略史:アケネス朝ペルシャ(紀元前5世紀)、ササン朝ペルシャ(紀元3世紀)時代には大版図を築く。その後、アラブ、モンゴル、トルコ等の異民族支配を受けつつもペルシャ人としてのアイデンティティーを保持し、1925年にパフラヴィ(パーレビ)朝が成立。1979年、ホメイニ師の指導のもと成就したイスラム革命により現体制となる。イラン・イラク紛争(1980年〜1990年)及びホメイニ師逝去後、1989年にハメネイ大統領が最高指導者に選出され、ラフサンジャニ政権(2期8年)を経て、1997年にハタミ政権が発足。2001年第2次ハタミ政権が発足した。
 
政治体制・内政
1. 政体:イスラム共和制
2. 最高指導者:セイエド・アリー・ハメネイ師
3. 議会:一院制(議長メフデイ・キャルビ師)任期4年。
定数290名(うち女性12名)
4. 政府:大統領セイエド・モハンマド・ハタミ師
5. 内政:
(1)1989年6月3日、ホメイニ師死去。同4日、専門家会議においてハメネイ大統領が最高指導者に選出。
(2)1989年7月28日、憲法改正(首相職を廃止し大統領に行政権を集中化する等の内容)、国民投票により承認。同日の第5期大統領選挙でラフサンジャニ師が当選、8月ラフサンジャニ内閣が発足。
(3)1992年5月の第4期国会選挙で「左派」が大敗し、「左派」は大きく後退。
(4)その後「現実派」と「保守派」間の対立が浮上、「保守派」優位の中で、93年6月の第6期大統領選挙でラフサンジャニ大統領(「現実派」)が再選。10月第2次ラフサンジヤニ内閣成立。
(5)1996年3月の第5期国会選挙では「保守派」が優位を維持。
(6)1997年5月の第7期大統領選挙ではハタミ師が「保守派」候補を下し圧勝。8月には穏健でリベラルなハタミ内閣が発足し、市民社会の形成を目指す諸改革を推進。
(7)2000年2月の第6期国会選挙で改革派が圧勝。同年5月、改革派が過半数を占める第6期国会が発足。
(8)2001年6月の第8期大統領選挙でハタミ大統領が前回を上回る得票率で再選。8月、第2次ハタミ内閣発足。
(9)2003年2月の第2回地方評議会選挙では全国主要都市で保守派が圧勝。
6. 外交基本方針:緊張緩和を目指す対話路線
 最近の動きとして、ハタミ政権後、革命以降関係が悪化していた近隣諸国及び欧州諸国との関係改善が進んでいる。
 米国との関係修復の動きも見られるが、紆余曲折が予想される
7. 経済
1)主要産業:石油関連産業
2)GNP: 1,022億ドル(2000年)
3)一人当たりGNP: 1,650ドル(2000年)
4)GDP成長率:6.5%(2002/03年)
5)物価上昇率:15.3%(2002/03年)
6)失業率:16.1%(2000/01年)
7)総貿易額:
(1)輸出:283.5億ドル(2000年3月〜2001年3月)
(2)輸入:152.1億ドル(2000年3月〜2001年3月)
8)主要貿易品目:
(1)輸出:原油
(2)輸入:機械、食料、鉄鋼、車両
9)主要貿易相手国:
(1)輸出:日本、イタリア、韓国、フランス、シンガポール、フィリピン
(2)輸入:ドイツ、韓国、イタリア、中国、フランス、日本
10)為替レート:1米ドル=7,998リアル(2003年2月現在)
11)石油概況:
(1)確認埋蔵量897億バーレル(シェア8.7%)(2001年)(世界第5位)
(2)生産量368.8万B/D(01年)
(3)可採年数67.4年(01年)
(4)石油収入185.7億ドル(00年)
12)ガス概況:
(1)確認埋蔵量23兆立方メートル(シェア14.8%)(2001年)(世界第2位)
(2)生産量606億立方メートル/年(01年)(世界第8位)
(3)可採年数424年
13)経済概況:イランは世界第5位の石油及び世界第2位の天然ガス埋蔵量を有する有数の産油国である。民間資本は商業が中心であるが、農畜産業も盛んで食糧自給率は70%である。原油モノカルチャー経済からの脱却、及び市場経済体制への移行を目的とした構造調整政策を推進しており、2000年4月より第3次五ヵ年計画(〜2005年3月)を実施中である。2002年5月、新外国投資法が成立し、同年10月、同法施行法令が公布された。米国は1995年の大統領令で米企業によるイランとの取引を禁止し、1996年には、イラン向け石油・ガス開発投資を行った外国企業に対し制裁を課す対イラン・リビア制裁法(ILSA)を成立させて、対イラン経済制裁を実施し、2001年8月には、同法は5年間延長された。
8. 最近の日本・イラン関係
1)イランは資源大国(世界第5位の石油埋蔵量・世界第2位の天然ガス埋蔵量)である。日本は、輸入原油の1割以上をイランから購入している。一方、イランにとっても日本は最大の原油輸出先である。
2)イランは中東地域の大国であり、ホルムズ海峡を擁していて、イラク、アフガニスタン、カスピ海、中央アジアを結ぶ地政学的要衝に位置している。イランの動向は中東地域の政治的安定に大きな影響を有する。
3)日本は、原油の安定供給及び中東地域の安定確保の観点からイランとの関係を重視し、イラン革命後も一貫して友好関係の維持に努力している。特に改革派のハタミ政権が発足後は、同政権が進める国内改革及び国際社会との緊張緩和・関係拡大路線を支持・支援している。
4)他方、イランを巡る国際社会の懸念(大量破壊兵器開発、中東和平反対派への支援等)に関しては、懸念払拭のための具体的措置を講じるよう働きかけを行ってきている。
5)イラン南西部のアザデガン油田開発に関し、2000年のハタミ大統領訪日時に両国間で交渉開始に合意した。
(出典)外務省ホームページ
9. 貿易関連概況
 イラン暦2001年度(2001年3月21日〜2002年3月20日、以下2001年度)の輸出総額は、前年度比16.7%減の237億1,600万ドルであった。中央銀行は2001年度の実質GDP成長率を4.8%と発表しているが、これは好調だった前年度を0.9ポイント下回る数字である。イランの輸出の81.5%を占める石油の輸出価格が前年度の1バレル当たり平均26.69ドルから同23.61ドルに下落し、輸出量も前年度の日量平均249万2,000バレルから同224万4,000バレルに減少したことに起因している。
 イランは石油のほか、世界第2位の天然ガス埋蔵量を誇り、その輸出にも力を入れている。2001年12月には、1979年の革命以来中断していた天然ガス輸出をトルコ向けに開始した。初年度の天然ガス輸出額は未公表であるが、輸出量は計画では年間30億立方メートルとなっている。2001年度末までの天然ガス輸出量は8億立方メートル余りと推定されており、1立方メートル当たり10セントとして算出すると同輸出額は8,000万ドル前後となる。現段階では、石油輸出総額に占める天然ガス輸出の割合は低いが、計画では2007年までに輸出量を年間100億立方メートルに引き上げる予定である。
 輸出構成比の18.5%を占める非石油部門の輸出は前年度比4.7%増の43億7,700万ドルと好調だった。イランは第3次5カ年計画において非石油製品の輸出拡大を目指しており、非石油部門の輸出構成比は前年度実績(14.7%)を上回った。同国では主要伝統産品であるじゅうたん、ピスタチオ、レーズン、サフラン、キャビアなどがこれまで上位品目として並んでいたが、近年、伝統産品以外でも急速に輸出を伸ばしている品目がある。石油ガスや石油アスファルトなどの石油化学関連品目、熱間圧延酸洗鉄コイルなどの鉄鋼関連品目、羊なめし革などの皮革関連品目が例としてあげられる。
 2001年度の輸入総額は、前年度比20.2%増の181億3,800万ドルとなった。政府はこれまで中長期の対外債務返済を優先すべく、輸入向けの外貨割り当てを制限してきたが、貿易、経常収支ともに大幅黒字に転じた99年度以降は外貨準備高の増加を背景に割当枠を拡大し、輸入は増加傾向にある。この結果、2001年度は、貿易収支の黒字幅が前年度実績の133億7,500万ドルから55億7,800万ドルへと縮小した。イランの輸入品目は毎年、一般・電気機械の比率が最も高く、これに卑金属製品、化学工業生産品、植物性生産品を加えると全体の6割程度を占める。
 精米、大豆油、甘しょ糖、大麦・裸麦、播種用トウモロコシ、大豆、大豆油かすなどの農産品は自給が困難であるため、その大半を輸入に依存している。特にデュラム小麦の輸入額は大きい。2001年度の輸入増の背景には、外貨繰りが困難であった時期に購入が控えられていた設備投資関連の機械類、企業の生産活動活発化に伴う化学工業生産品、卑金属製品など中間品の輸入増加に起因すると考えられる。







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