3. 部会開催状況
(1)第1回船舶保守管理技術研究部会
日時:平成15年6月23日(月) 13:30〜16:00
場所:港区虎ノ門 海洋船舶ビル5階 (社)日本中小型造船工業会会議室
出席者:(順不同、敬称略)
吉田 信一 神戸船渠工業(株)・船舶グループリーダー
細谷 俊彦 向島ドック(株)・技術グループ統括マネージャー
笹井 稔雄 (株)三和ドック・造機部造機課課長代理
小川 和彦 西武造船(株)・工務部機関課機関係長
今澄 敏夫 宇部興産海運(株)・取締役船舶部長
東 伊一郎 (社)日本中小型造船工業会・常務理事
八木 繁 事務局
配布資料:
資料1-1 平成14年度日本財団助成事業「船舶修繕業における保船管理体制の調査研究」計画書案及び事業実施スキーム案
資料1-2 同事業受益者分担金徴収案
資料1-3 船舶保守管理研修現場教育
資料1-4 船舶保守管理手法テキスト(概要案)
資料1-5 遠隔診断カルテ標準フォームの作成について
資料1-6 外部委託発注仕様書案
(議事概要)
開会に先立ち東常務理事から本事業の実施に至る経緯と趣旨説明があった。また、内航海運業もISM認証取得等により生き残りを図る時代となり、今後修繕造船所はより高度な技術を求められる傾向にあり、こうした動きにはなんとしても対応すべく本事業を役立てたい旨の挨拶があった。
本部会は人数が少なく、名刺交換も終えていたため、委員自己紹介は割愛し、部会長の互選に移った。
1. 部会長の互選について
事務局より、本事業の参加会員は現在のところ5社であり、本日欠席の浅川造船(株)ご担当者を除き、修繕経験年数により決定してはどうかとの事務局案を提示した。これに対し、出席者の意見が交わされた結果、神戸船渠工業(株)・吉田氏が部会長に選出された。
吉田部会長より、近年船員も質的に変化してきており、機器の故障等が発生するまで判らない状態が増える傾向だが、造船所側でトラブルの前兆を捉えて警告するようなシステムがあれば保守管理に非常に有効であり、実現したい旨の挨拶があった。
事務局より配付資料の確認に次いで審議に移った。
2. 平成15年度日本財団助成事業「船舶修繕業における保船管理体制の調査研究」について
(1)事業計画について
(2)事業予算について
事務局より資料1-1に基づき、本事業計画の目的、実施事項、実施予算等について説明があった。特に事業の実施方法については、事業実施スキーム案に基づき座学研修、乗船海務実習、工務監督研修等を計画している旨説明した。また、事業実施に要する経費については、各費目毎に主な支出内容を説明した。
審議の末、部会は本件を原案通り承認した。
(3)事業分担金について
事務局より資料1-2に基づき、本事業は日本財団助成事業として80%の助成を得て実施するが、残る20%については受益者による負担を要すること、従来分担は参加会員による均等分担としてきたこと、ただし、本事業は育成する職員の数を勘案する必要があること等を説明した。これに対し、次のような意見が交わされた。
・ 中小企業では人数もぎりぎりで、複数の人員を長期の研修に出すことは考えにくい。
・ 研修に出す人選も難しい。充分な知識・技能とやる気のある人を出したいが、そういう人がなかなかいない。
・ 長期にわたって有能な人材が留守になるのは会社にとって痛手になる。
・ おそらく複数の職員を研修に出せる会員はいないだろう。人数割りは考慮しなくて良いのではないか。
・ これまで通り参加者の頭割りでいいと思う。
審議の末、部会は分担金徴収方法を従来通り参加会員による均等分担とした。
なお、事務局より現在の参加会員5社で分担すれば1社18万円となるが、徴収時期を年度末近くとして、それまでは参加募集を継続し、少しでも分担金額を安くしたい旨、付言した。
なお、本件に関連して次のような意見が交わされた。
・ 甲機両用が要点。一般的に機関担当者に甲板(船体)を担当させてもすぐ慣れるが逆はどうも難しいようだ。
・ 研修に出すのは機関担当者。あまり新人では内容についていけないが、ベテラン過ぎてもすぐに退職してしまう。30代くらいの人がいいだろう。
・ いずれにしろ、問題意識を持った人でないと出すだけ無駄。
・ これからの修繕ビジネスはキャッチアップ型でなく、アプローチ型に移行するはず。いくつかの有効な提案の中から船主に経済状態に応じた選択をしてもらうのがベスト。
・ 以前の修繕ドックは2〜3通りの対策を提示していた。今は「どうしましょうか」言われることが多い。
・ 求められるのは、手配を手際よく出来る人、マネージメントの出来る人。
・ ドック側も船主の懐具合が判らず、やむを得ず「どうしましょうか」というケースはある。また、ドック期間を考慮すると、1通りしかやりようのないケースもある。
・ 船主には1年間きちんと動くようにすることを期待される。向こう1年間保証できる経験と目(眼力)が求められる。
・ 造船所と船主の食い違いは殆ど全て仕様書の善し悪しが原因である。
・ 仕様書がきちんと出来ていれば、修繕費は1割程度の誤差で納まる。そうでない場合は思いも寄らないエキストラチャージが発生したりする。
・ ドック側も仕様書がきちんとできていれば収益を挙げやすい。
・ 国の保有船舶でも船毎に、地域毎に修繕内容(項目)が変わることがある。
・ 入渠工事前3ヶ月頃に準備として仕様書を作成する。これは大事な作業であり、充分な事前検討が必要である。
・ 監督の評価として修繕費のアロワンスが10〜15%程度なら合格といえる。
・ 以前なら入渠先は1社に決まっていたが、今は2〜3社の相見積もりで決定する。数社の見積から項目毎に安い金額を抽出し、全項目をその金額でお願いすることを目標に金額交渉を行う。
・ 船主からつけ込まれる見積のポイントを開示する予定である。
・ 「現拝」は極力無くす。あれは見積とは言えない。
3. 事業実施方法について
オブザーバーの宇部興産海運(株)・今澄氏より参考意見として、資料1-3に基づき同社の想定する工務監督研修に関して次のような説明があった。
・ 洋上という環境の特徴は。Gの存在。
・ 海上の業務は、主としてデイリー、ウィークリー、マンスリーで構成されている。
1ヶ月の乗船はこれを理解するため。
・ ISM認証について、SCM(船側の業務)は海に出て経験しないと判らない。
・ かといって、499型や699型では乗船してもあまり意味はない。
・ ISMを取得した大型船(1万DW以上)、中型船(5千〜8千DW)、小型船(3千〜4千DW)を乗船対象として考えている。大型は「しんえい丸」、中型は「第5こうえい」、小型は「おきはら」。
・ 各船とも1ヶ月の乗船期間に甲板部、機関部の全ての作業に当たる。
・ 船の大きさで海上業務の内容が変わることはないが、航海期間は大きい船ほど長くなる。 一方、小型は入出港が頻繁になる。
・ 当社の機関長は、船内整備班に所属し全てを管理するが、研修生は機関長に直属とし、マンツーマンで指導を受ける。
・ そのため1回の乗船研修は2名までが精一杯となる。
これに対し次のような意見が交わされた。
・ 1ヶ月の乗船は研修生にもドックにも負担が大きい。まず大丈夫とは思うが、船酔いの問題も考えられる。
・ 乗船期間には配慮が必要か。
・ 1往復(1航海)単位という方法もある。これなら大きさの違う船にも乗れる。船員は研修生には手厚いので心配は要らない。
・ 乗船期間は会社都合も勘案してもう少しフレキシブルにする。
・ 地元運輸支局と相談し、乗船時の研修生は「その他」の乗員とすることで乗船研修の実施が可能である旨の確認は得てある。「旅客」扱いでは設備等に問題が出る可能性がある。
審議の結果、参加会員各社は研修参加者を人選し、よく打ち合わせたうえで自社ドック能力等も勘案し、最良の船型、最良の乗船期間を申し出ることとされた。
なお、当該調査票は後日事務局から送付することとされた。
4. 事業実施スケジュールについて
引き続きオブザーバーの宇部興産海運(株)・今澄氏より参考意見として、資料1-3に基づき同社の想定する船舶保守管理業務研修に関して次のような説明があった。
・ 現在のスケジュールで適当と思われるのは、1月の中型船2隻、大型船1隻入渠時期。
・ これに合わせて3ヶ月前の10月に機器別検査工事監督作業研修(座学)及びドック仕様書草案作成を行う。座学は先に済ませた方がよい。
・ なお、当社にJG船はないので、機器別検査工事監督作業マニュアルはNK船級船用であることを予めお断りする。
・ こちらの座学研修は10日、工務監督実習は3〜4日、両方で14日程度を予定している。
・ 作業は当社内にデスクを用意し、宿泊は最寄りの海員会館に2食付きで格安交渉してある。
審議の結果、座学研修、ドック仕様書草案作成は10月に4日間程度、工事監督研修は1月に10日間程度、乗船研修は各社都合により適宜行うこととされた。入渠先については今のところ(株)笠戸ドックが有力だが、中小造工会員会社となる可能性もある。
また、今後の部会開催スケジュールとして、第2回部会は8月末頃・第3回部会は10月の座学研修直前、第4回部会は3月の年度末にそれぞれ開催することとされた。
5. テキストブック(骨子)について
事務局より資料1-4に基づき、船舶修繕業が船舶保守管理業務を遂行する上で必要と思われる項目について事務局案を説明した。ただし、これはあくまでも事務局案であり、各位のご意見により項目の過不足調整、章立ての整理等を行ったうえで各項目に肉付けをして本事業の成果として年度内に作成したい旨付言し、各位のご意見を後日ファクスでお送りいただくよう要請した。
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