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スタッフ座談会
 2003年度の最後に学び舎に関わってきたスタッフが集まり、これまでの活動をふりかえり、成果や課題を出しあった。
 
1. 子どもの参画は実現できた
シャル:2年目になると子どもたちが元気になってきているし、「わからない」から「やりたい」に変わってきた。料理のとき、切るとか油で揚げるとかを怖がらずにするようになった。親も手を出さず見守るのにちょっと慣れてきた。親も「こんなに子どもが変わった。次はどうなるか楽しみ」と言ってくれた。だから参画を促せたと思う。
ジュン:少くとも参画を「促す」ことはできたと思うんですね。自立度が2年目はちがう。自分からアイデアが出てくるようになった。1年目は言ってもいいかどうかも分からなかったみたい。「夢は?」と聞いても「別に。特にない」という感じだった。でもほんとうは夢があって、「言ってもいい」というのがわかってきたよう。自分の意思を伝えると言うのは、参画への一歩だから、そこまでは促せたと思う。
ゲン:プログラムによっては子ども中心でやりやすいプロジェクトとそうでないのがあったんで、そのへんのちがいはプロジェクトごとに出てくる。でもみんな参画を目指してはいるんで、少しずつ取り入れていっているような感じですね。
ミチ:月2回のものづくりプロジェクトのうち、1回は「子どもたちがつくりたいもの」、もう1回は「担当からの提案」だったので、やっぱり提案すること自体が子どもの参画の足を一部引っ張っているとは思うんですね。ただ、なかなか触発されないと動かないというところがあったんで、そういうパターンをとったんです。
 最後にはビデオプロジェクトといっしょにクレイアニメーションをつくったんですけど、そのときには、かなり夢中になれるものだったようで、むしろこちらが「ちょっと休憩しようよ」と言わないといけないくらいにどんどん進めていったので、あれは子どもたちにとってはすごく参画できた体験だったんだろうと思います。
ケイ:ぼくは、アニメーションのストーリーづくりにもっと時間がかかるかと思ってたんですけど、実際は1時間ぐらいで終わったんですね。これは子どもたちが参画という、自分のイメージをちゃんと表現できる、他人に伝えることができるようになったからだと思います。
ミチ:本物のレベルから言ったらアニメーションとは言えないかもしれない。でも、映像が少々スムーズに動かなくても、自分たちだけでやったという、その財産のほうが子どもには大きいんじゃないかな。
ユウ:子どもたちが自分で一コマずつどう動かすか、考えてやってたんですか。
ケイ:最初に「全部で150枚必要」って言っておいたら、ちゃんとワンシーンに何枚撮るかを考えて進めていました。午後から粘土でキャラクターを作りはじめて、その後は夕方までずっとチームプレーで集中して撮っていましたね。
ミチ:この子どもたちっていうのはやっぱり1年間学び舎でいろんな体験をして、ある程度自分に自信ができてきたんだと思うんですよ。少々何が起こっても「わたしはやっていける」っていうような自信が。
ジュン:おうちの人たちに、変化の様子も聞きたいね。他のことにもそれって及んでいくはずでしょ
ユウ:自分たちで「好きなものをつくっていいよ」と言われた時間につくるものとかも変わってきましたか。
ミチ:ちょっと変わりましたね。一番最初はものすごく観念的なものしかつくらなかったんですね。それがすこし個性が出てきたかなって感じがしますね。
 
2. 子どもへの関わり方はうまくいった?
ジュン:リピーターがほとんどだったので、その子が分かってきて、より良い関わり方が可能になったかな。
ゲン:信頼関係ができるのはいいんだけど、慣れすぎて「なぁなぁ」になった面があった。子どもとの距離を見極めるのが難しいと思いました。
シン:来てくれた全部の子どもたちと関係は持てたかなと思います。最初は話しかけてもうんともすんとも言ってくれへんけど、だいぶ安心して甘えたり話ししてきたりっていう関係になれたっていうのがぼくのこの1年の達成かなと思います。
 ただ、人数が多かったので、一人ひとりの感想や声まで拾いきれない部分があったのも確かです。
ミチ:学び舎に行けば、いつでも受け入れてくれる大人がいるというのは子どもにとってうれしいことだと思う。
ユウ:その日にこなさないといけない作業で自分自身がいっぱいいっぱいで、子どもとのコミュニケーションが後まわしになってしまったとこがあったなー。
ゲン:プレイワーカー養成講座でもあったように、プログラムを始める前に遊ぶだけの日を設けて、そこである程度のコミュニケーションや状態の把握ができればいいかと思う。
 
学び舎通信の発行
 
 学び舎では定期的に「学び舎通信」を発行している。これは日頃の活動のようすと、今後のスケジュールを保護者の方に知ってもらうだけでなく、子ども自身の成長の記録となるように、子どもの意見や感想を中心に編集されている。
 
3. 活動していて困ったことは?
シャル:タイムマネジメントが必要だと思った。早く、早くと言わないようにしないといけない、子どもの意見を尊重しないといけない、料理のことだけではなくその料理のルーツであるインドのことも教えたい、国際理解・多文化共生なども入れてやりたい、でも時間がない。そこがもっと上手な時間の使い方ができなかった。
ゲン:ボランティアが少ないプロジェクトがあったのが困ったところかな。
シン:プロジェクト担当(責任者)のスタッフも少ない。責任の持てる人の確保が必要かな。
ゲン:ボランティアリーダー的な人ですね。今年はボランティア説明会も企画していますし、事務局でしっかりトレーニングして、引継ぎもきっちりやりたいと思います。
シン:どういうふうにして子どもを参画につなげていくかっていうのは終始迷い続けていた。こんなプログラムを組んだけど、これでいいのかとか。
ユウ:ほんまにそう。どうやって子ども参画型でやっていくかっていうのは、ずっとつねに悩むところ。「困ったこと」って言ったらそれに尽きると思う。
ミチ:例えば、発掘プロジェクトだと、歴史を知らなくてもできるような、「発掘したその時代のその社会はどういう暮らしだったのか、リアルな人間をイメージする」とか。
 子どもたちは勝手なことを言ってもいいと思うんですよ。それをイメージすることによって客観化できる。自分だけのことを考えるんじゃなくてほかの人のことを考えられるというような、そういう方向にいってもいいかもしれない。
 
4. 活動の事前準備はできていたか?
シン:下見とか、事前の準備はできたかな。事前の出欠確認の電話も1週間前に必ず入れたし。
ゲン:全部下見に行ってくれたもんね。安全面とか確認してくれて。
ジュン:神戸への食材買出しツアーも下見が必要だったね。帰りばらばらになってしまった。
ユウ:今年は食べたいものをつくるプロジェクトには学生ボランティアが3人も来てくれたんで司会進行とか役割分担して、ボランティアの参画も促そうとしたんですけど、そのスタッフ間の事前事後の打ち合わせが欠けていた。いつも、今回はなにをねらいにやるかちょっとした仕掛けを考えておくんですけど、それをスタツフ間で共有できないままやってしまった。
 
5. スタッフ間の連携はうまくいったか?
ユウ:プロジェクトスタッフ間の連携・事後打ち合わせが足りなかったと思う。たくさん知らないスタッフが集まったときの役割分担とか、事前に打ち合わせする時間ってほしいなと思った。
ゲン:活動を始める前に、5分でも10分でもスタッフ間で、今日の流れと、役割分担と、いざというときの動きと、そういう打ち合わせは必要かな。
ケイ:今後どう進めていくかみたいなのを、今日の座談会みたいにスタッフで共有できる場っていうのを持っていけたらいいと思います。
ミチ:子どもの多様なものの見方みたいなのは、しょっちゅういろんな形で入れていくべきなのかなと思います。社会に問題意識を持たないと参画はできないわけじゃないですか。だから全部のプロジェクトが足並み揃う必要もないと思うんですよ。逆にちがうこと、矛盾することをわーって入れてもかまわないと思うんですね。そこで自分の考え方がどんどんまとまっていって、社会とつながっていける可能性が出てくる。子どもたち自身が考えるきっかけをつくるっていうのをやっていけたらいいのかな。
 
座談会に集まった人
ジュン:世界と奈良をつなぐプロジェクト担当
ミチ:ものづくりプロジェクト担当
シャル:世界と奈良をつなぐプロジェクト担当
ゲン:「もうひとつの学び舎」事業全般担当
ケイ:ビデオプロジェクト担当。発掘、保存科学スタッフ。
シン:発掘体験プロジェクト、保存科学プロジェクト担当。
ユウ:食べたいものをつくるプロジェクト担当
 
学び舎参加者データ
 
相澤美樹 アダルシュシャルマ 天沼春樹 石川泰司 石田智子
岩田茉莉江 内海眞子 江野朋子 大石ミレン 大國万希子
大津幹太郎 桂良太郎 金井敬造 川上文雄 川波太
北浦由香 北河原孝子 吉川卓也 京谷もえ 草あけみ
小島道子 小城寛子 小谷仙嘉 ゴトムバイラギ 笹谷ハヤティ
佐野万里子 仕田原みどり 清水雅允 田中伸一 筒井寛昭
坪内信行 寺西孝一郎 寺本智草 寺本未来 寺本文香
徳永智史 内藤圭吾 長尾理沙 仲川順子 永田美穂
長谷圭城 中西明子 中村有香 西畑智子 西山要一
二本柳幸絵 服部高侑 花見昌子 林一平 原田佳代
引馬由紀子 平田信利 廣瀬一郎 福岡真理子 古川琴葉
前田潤 松原恵 光長功人 村上良雄 森本扶
森本有香 山内民興 山岡望都 山中英里 李洋
渡辺康子 王フェイイ
                       敬称略50音順
 
協力団体
NPO法人 宙塾
NPO法人 ならボランティアプロダクション
NPO法人 歴史体験サポートセンター楽古
グローバル エデュケーション センター
自由空間ねん
ディア マイ フレンズ
手づくり工房 木の子村
ナラ・ファミリー&フレンド
ならNPOプラザ
ならグリーンネットワーク
奈良手段の会
NPO環境計画 はぐるまねっと
(社)奈良まちづくりセンター
(財)元興寺文化財研究所
(株)集英社
(株)エス アイ ピー
日本グッドイヤー(株)
(株)奈良シティエフエムコミュニケーションズ
(株)プリンクス
リューズデザイン
奈良新聞社
毎日新聞社
奈良県囲碁協会
日本棋院
大阪歴史博物館
堺市博物館
福井県立恐竜博物館
奈良教育大学実習園
奈良大学文学部文化財学科
京都産業大学放送局
奈良県
奈良県教育委員会
東大寺
 
もうひとつの学び舎
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