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さまざまなホンモノ体験
■発掘体験プロジェクト
はじめに
 奈良はどこを掘っても何かが出てくる。このプロジェクトは、実際に遺跡や発掘現場を訪れ、本物に出会うことで古代の人々やそのくらしを想像してみる企画である。
「わくわく土器づくり」
 まずは昔の土器を自分たちで作ってみようと、本物の弥生式土器を見本に、自分だけのオリジナルの土器作りを行った。作業が始まると、黙々と自分の世界に入り、一生懸命に粘土をこね、土器の形をつくり、縄や竹串で絵を書いていた。子どもたちはすごく集中していたので、2時間があっという間だった。
【子どもたちの感想】
自分で自分の模様を作れたのがよかったです。
本当の土器にふれたことがよかった。
ねん土がかたかったから、形を作るのが難しかった。
「行くぞ!発掘体験」
 近鉄西大寺駅から歩いて5分の場所にあるマンション建設予定地が今回の教室。ショベルカーなどの重機や資材が所狭しと並ぶ工事現場ということもあり、サポートするスタッフにも緊張が走った。現場監督の方から簡単な説明を受け、道具の使い方を教わりながらそろりそろりと土を削りはじめる。足元には、奈良時代の瓦や茶碗のかけらが無数に顔を出しており、大事な埋蔵物を割ってしまわないかと心配したが、子どもたちは慎重に、根気よく掘り進む。炎天下での作業もあっという間に時間が過ぎ、気がつけば昼すぎになっていた。午後からは出土した瓦や土器を水とブラシを使って洗う「土器洗い」に挑戦。トントンとブラシで軽くたたくように土を落としていくと次第に文様が現れてくる。最初は後ろで所在なげに眺めているだけだった保護者も途中から参加、「子どもを手伝う」はずが子どもよりも真剣に楽しんでいた。
【子どもたちの感想】
僕も土器を見つけることができました。
はじめて奈良時代の土器をさわれてうれしかった。
奈良時代ってどんな時代?と思った。
「土器焼きの準備をしよう!〜いざ!薪割り〜」
 土器焼きの準備をしようと、土器を焼く現場周辺の草刈りと薪割りを行った。初めてナタを使う子どもも多く、2人1組になって薪を1本ずつ割っていった。慣れない危険な作業のため、スタッフも気を使ったが、野外活動好きのお父さんによるサポートで無事割り終えた。その後、火を起こしてバームクーヘンづくりに挑戦。
 長い竹にホットケーキミックスをかけ、少しずつ焼いていく。1本焼くのに約20分と、根気のいる作業だったが、食べるのは一瞬であった。
「わくわく土器焼き」
 雨で延期が続き、半年前に作った土器もカラカラに乾いていたので、割れてしまわないか心配しつつ、土器焼きを行った。土器を焼いている時間を利用して、3つの班に分かれて、勾玉づくり、発掘体験プロジェクトでやりたいことの話合い、火の番を行った。特に火の番の子どもは、作業はダンボールで背負子をつくって燃料にする落ち葉を拾ったり、バケツに水を入れて運んだり、火の勢いの弱そうなところに薪をくべたりと、自分たちでアイディアを出しあい、作業を行った。
 焼きあがった土器を冷まして、半年振りにみんなの手元へ。中には割れてしまった土器もあったが、みんな満足した様子だった。
【子どもたちの感想】
葉っぱをひろってくるのがたのしかった。
けむりが目に入ってなみだがでていたかった。
火がきえないようにかぜをおくるのがたいへんだった。
 今年のプロジェクトでの一番の発見は、「子どもの創作活動や興味のある活動は、決してあきない」ということである。土器づくりや勾玉づくりなど、創作活動がはじまると、2時間など簡単に集中してしまう。また、発掘作業などは炎天下での重労働であるが、「待ちに待った発掘作業だ!」「何か出てくるかもしれない」という期待感と充足感が、子どもたちを黙々と発掘作業に没頭させた。今回の貴重で豊かな経験が、子どもたちの今後の成長の過程でじわりと生きてくるのではないかと思っている。
 
 
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■世界と奈良をつなぐプロジェクト
はじめに
 世界と奈良をつなぐプロジェクトは、食文化を通して異文化理解を深め、世界とのつながりに気づくプロジェクト。
 昨年はコメ・マメ・野菜など、毎回1つの食材をテーマに設定し、国によって調理方法や食べ方が違うことを学んだ。
 2年目である今年の企画は、「去年はいろんな国の料理を作れてよかった。おいしいからもっとたくさんの人に食べさせてあげたい」という子どもからの感想と、「もう一歩進んだ取り組みを」という保護者からの希望を基にみんなでゼロベースから考えた。食材の調達から販売までを目標に定め、具体的には11月に開催される「なら出会いウイーク」に出店することを決定、1年間の活動がスタートした。
当日までの経過
 夏休みの一日、学び舎の親子、講師、スタッフなど総勢20名で神戸へ出かけた。中華街では中国のお店で食材の説明や効用、料理の種類などについて講義を受ける。インドの食材店では、様々な香辛料の数と臭いに圧倒されながら、必要なものを購入した。
 9月、10月にはインドと中国の料理(大根餅)に挑戦。1年目の成果を発揮して、ほとんどの調理は子どもたちが関わり、年少の子どもも油の揚げ物などに挑戦した。親やスタッフはできるだけ見守るという姿勢を通した。調理したものを試食した後、何を販売するかを話し合った。その結果、インド料理のシシカバブ・チャイ・サモサ・サフランとアーモンド入りミルクを出すことに決定した。
バザー当日奮戦記
 「なら出会いウイーク」には、約80のNGOが参加し、エスニック料理などもたくさん出店される。そのなかで子どもたちのお店はどんな奮闘をするのだろうか。チラシ、値札、写真など参加者の足を止めさせる工夫をしながら出店の準備、商品の陳列、同時に炊事場ではチャイやミルクの用意も始めた。昼食前からお客さんが並び出し、チャイやサフラン入りのミルクはすぐに売り切れた。調理法を聞く人への説明、おつりの計算、品切れになった商品の補充などで子どもたちは大忙し。小さな子どももお金の勘定が早くなり大人をびっくりさせた。
 午後になってお客さんの数が減ると、残った商品を数えて売り切り作戦会議。値引き率、店の外での販売、商品を運ぶトレイなど子どもの頭はフル回転。「今、入ってきたばかりの人を狙ったよ」と売れ筋を狙って販売していた。すっかり売り切ったときの「ふうー」というため息、笑顔、売上金を計算する真剣な目、儲かった!という大きな歓声。「お疲れさま!」「おめでとう!」、親やスタッフから自然に声が上がった。
利益の使い道
 子どもたちはバザーで手にした9,000円の利益の使い道についても自分たちで決めたいと考えた。みんなで話し合った結果、他のプロジェクトに参加している子どもたちやスタッフを招待して、年末交流会を開くことに決定。汗を流して稼いだお金をやりくりしながらすてきなパーティーをみんなにプレゼントできたことで、子どもたちは自信にあふれた表情をしていた。
保護者からのコメント
 初めはもどかしさを感じたが、食材の買い出し、調理、販売、交流会とやってのける子どもたちのパワーに大感激!年々子どもたちの気持ちが形になるよう。長い目で見守りたい。
 一連の流れのある取り組みだった。子どもが一歩も二歩も前進したと思う。引っ込み思案の娘も大声を上げて売り歩き、いろんな人に声をかけられるようになっていた。『みんな売れたよ!』と言う笑顔に親も何か吹っ切れて嬉しかった。『お母さん、もう来なくていいよ』と、自分の意志で参加しようと考えている娘が頼もしい。
 







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