■オープニング
草野 満代氏 (ニュースキャスター)
1989年に日本放送協会入局、金沢放送局へ赴任。1991年から3年間NHKモーニングワイド、1994年から3年間NHKのサタデースポーツとサンデースポーツのキャスターを務める。1992年リレハンメル五輪開会式の実況中継、1995年・96年に紅白歌合戦総合司会、1996年アトランタ五輪現地キャスターを担当。1997年2月NHK退職後、同年10月から筑紫哲也NEWS23のキャスターを務めている。今は、映画や音楽、プロ野球観戦、ワイン等を趣味として楽しんでいる。得意分野はスポーツとロック系音楽。
<要約>
オープニングでは、ニュースキャスターの草野満代氏から「スポーツNPOに対する期待と注文」ということで、参加者へのエールが送られた。
草野氏は、8年のNHK勤務時代、スポーツキャスターとして3年間スポーツに係わられていた。そして、NHKのスポーツ放送の大イベントである、オリンピック放送を成功させるという大きなテーマの中で、取材等を通して感じたことは、組織では歴史が積み重なって伝統となり、それにより組織そのものが硬直化してしまい、その打開策がないまま、それを受け入れざるを得なくなり、そしてそれとうまく付き合っていくしかないということだそうである。
当時の日本のスポーツは大きくわけて学校スポーツと企業スポーツという構造で、純粋にスポーツを楽しみたいという人が何か横に置かれてしまうという漫然とした疑問を感じていたという。そのような中、企業スポーツが衰退し、スポーツを楽しみたいという人がその有り様を見て、一種の失望感を感じるようになったそうだ。しかし、学校スポーツ、企業スポーツから新しいかたちのスポーツの有り方を模索しはじめた時期でもあったため、その結果として、スポーツの有り様は、不況の波というものがかえってその変革の後押しをするようになり、NPOの急増ということで動き出してきた。「今、事は動いている」、そのような中で自信をもって進んでほしいという。
草野氏は、スポーツは、日常の中にある大が小をのみこんでしまうという構図をひっくり返したり、そうではないというところを見せ付けられるところに素晴らしさがある。一般会社組織の中でもみられるような構図がスポーツの世界でも同じように見られるというふうになってしまうと、スポーツそのものがつまらなくなってしまう。そのような気持ちがずっと心の中に芽生えていたという。また、ニュース番組を担当していて、「行き場を失った中で今何かが起きている。」と感じるそうだ。凶悪な犯罪が恐ろしいスピードで増えている現在、特に少年犯罪の動機が「むしゃくしゃしたのでやった」というのがほとんどだという。あるジャーナリストによると、「昔から今まで変わらずに少年のその時期はむしゃくしゃする時期」という。それでは何がちがうのか。昔は話を聞いてくれるプロセスやコミュニティーがあり、受け皿があった。
ストレスを発散させたいと思うのは、年齢、性別に関係なく誰にでもある。少年達のストレス発散の場であったスポーツ等の環境が、今の日本の社会からそぎ取られているのではないか。教育においても、公立学校の週休2日制をゆとり教育の一環というが、受け皿があってこそのゆとり教育ではないか。今は受け皿となるべき地域コミュニティーが完全に崩壊している。また、子供たちの連れ去り事件も多く、外になかなか出ていけない世の中で、子供たちがどんどんうちに閉じこもってしまっている実態があるのではないかと感じている。
過去の良さばかりを懐かしむのではなく、新しい形で何かをやろうという模索が必要で、それをスポーツNPOに期待している。自発的に誰でもが気軽にハードルが低く参加できる場面が、今一番求められているのではないだろうか。また、日本には、スポーツはお金がかからないという意識が非常に深く浸透してしまっている。しかし、自分が楽しむためにはそれ相応の対価を支払う。そういう気持ちの構造改革も必要なのではないか。
今、自分のできる範囲で自分のできることをやろうという機運が広がっている。国の組織を動かしたり、既存の組織を動かすのは、ひとりの人間では現実的には難しい。しかし、自分のできることから何か始めよう。大きなことでなく、小さなことでもいいと自分に言い聞かせれば何かできる可能性はたくさんある。スポーツに携わる参加者の方々が、スポーツを楽しみたいと思っている人たちをどんどん引っ張ってほしい。そういう期待感をスポーツNPOに持っているという。
そして、注文として上手なPRと効率的な運用をあげた。日本の社会は縦社会でその弊害として組織の硬直化が繰り返されている。それを突き崩すのは横のネットワークであると感じているという。このサミットにより、横のつながりをもっと広げていって、参加しやすい環境を作ってどんどんPRしてほしい。また、資金面だけでなく施設面も含めて、学校スポーツや企業スポーツをどんどん取り込んでほしい。そして、空洞化したり不況で取り残された部分も戦略的に取り込んでいってほしいという切なるお願いがあった。
そして、最後に情報発信と横のネットワーク作りというものを大切に、これからも頑張ってほしいとのエールでオープニングが締めくくられた。
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