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3. 応募事業35件とその分析
 第1回「パートナーシップ大賞」に応募のあった35件の協働事業の内容は以下の通りです。
 
●応募事業一覧
事例
No.
協働事業 実施内容
1 地方金融機関のNPO支援、パートナーシップ制度 シニア層の多彩な経験や知識・技術を有する人を、ボランティアとして支援機関を通じて地域NPOへ派遣する制度の推進。
2 高齢者介護事業 企業とNPOが協働して、高齢者の身体介護・家事援助などのケアサービス事業を推進することにより、抵抗感を軽減して介護が受けられる体制作りをし、社会福祉向上・発展を目指す。
4 廃食用油再燃料化装置導入並びに未回収廃油リサイクル促進事業 これまで未回収であった事業者や家庭の廃油を対象として、生成過程を視認できる機械を選定し学校等の教材としても活用しつつ、再燃料化・リサイクル化を事業化。
5 市民活動のためのサポート資源の提供システム開発・運用 企業人の社会参加の促進やNPOとの交流・提携を狙いとし、ボランティア活動・市民活動を支える新しいサポート資源提供システムを共同開発。
6 障害者の文化・芸術活動グループ支援、ワークショップ 障害のある人たちの文化・芸術活動を可能性の芸術としてとらえ、自立・自己実現を応援。場所は既設のだけでなく社寺・廃校などを活用。
7 こどものための科学実験教室 子どもの理数離れが懸念される中、工作や実験ショーのイベントを提供し、科学の楽しさの再認識をしてもらうきっかけとし、長期観点で科学技術の振興を目指す。
8 歩行者のためのデジタル地図情報のユニバーサルデザイン化協働事業 デジタル地図情報のユニバーサルデザイン化という視点から歩行者、特に高齢者・ベビーカー等の「交通弱者」を主眼とする情報収集とデータベース化を推進。
10 アジア体験を通した健康・企業・社会を担う人づくり アジアの草の根での保健開発活動に触れ、生活体験を持つことによって、パートナー企業社員にアジアの人々の暮らし・健康を広い視野でとらえる機会を提供。
11 NPO法人と企業との協働による痴呆対応グループホーム運営 痴呆高齢者が共同生活により、痴呆の進行抑制に努め、人としての尊厳を保ちながら、潤いのある老後を送ることのできるホームづくりを行う。
12 地域のゴミ0運動促進のためのイベント開催 ごみの減量・リサイクル・省資源・省エネルギー活動を進めることで、地球環境・地域環境保全、地域福祉発展を目指す。(資源リサイクルシステム展示・エコ商品紹介・チビッコリサイクル教室など)
13 雑木林・竹林整備 市内の雑木林保全を狙いとして、侵入する竹の除伐、竹やぶ整備などの市民活動を協働で実施。
14 市民活動ネットワーキングのためのコミュニティプラザ運営 大都市近郊ニュータウンの世代格差・人のつながりの希薄化が進む中で、市民交流の新たな活動拠点を目指す。(インターネット・TVの情報通信コーナー、子育て中の親支援、住まいの無料相談など)
15 企業の環境アニュアルレポート共同企画 環境報告書作成にNPOが企画段階から関わることで、より身近で、信頼性・透明性・専門性の高い環境報告書を作成するとともに、全事業領域で環境への配慮の取り組みが進むよう、本質的な環境経営の実現を目指す。
16 こどものためのインターネットスクール インターネットが普及する中、違法情報・有害情報・個人誹謗中傷・個人情報の流出などの犯罪が多発傾向にあるため、子どもと保護者のためのインターネット上のモラルを教えるカリキュラムを作成。
17 クラシック音楽の啓蒙と普及活動 クラシック音楽に大きな影響力のある古楽に関するレクチャー・コンサート・レポート配布による啓蒙と普及。
20 NPOによる企業内喫茶店の運営 企業内喫茶運営をNPOが担い、身障者の働く場を確保し、その収益を活動資金とするとともに、企業の社員・福利厚生に寄与。
21 車いすの集荷・海外への配送事業 国内で車椅子の集荷を行い、アジアに寄付するNPOを、運送会社がその特色を生かして、経済支援・場所を提供。
22 チャリティクリスマスカードによる紛争・被災地域の子ども支援 紛争・災害などで肉親を失うことにより、精神的に傷を負った子どもに対して、物心両面から支援活動を行うとともに、世界の子どもの絵を募集し、クリスマスカードを作成・販売し、収益金で子どもを支援。
23 植林事業 10年間の森の賃貸契約を結び、上流部で水を育む森に感謝し、植林を記念事業の中心的行事とする。
24 生活協同組合売店における障害者作成の洋菓子販売 知的発達・精神障害者が作った洋菓子を、生協と連携して、企業本社・地域総合病院・市役所で販売することにより、障害者の社会参加促進・地域社会のノーマライゼーションを推進。
25 人形劇場の運営 人形劇公演・人形劇情報誌発行・脚本賞設置・ワークショップや講座開催など、人形劇文化の発展を促すことで、地域の芸術・文化活動に貢献。
26 地域紙におけるNPO広報活動 新聞紙面を活用した継続的な週刊NPO情報を提供することにより、ネットワークづくりと市民参加を進め地域力を高める。
27 アジアを中心とする発展途上国の障害者への車いすテニスの紹介 アジアを中心とする発展途上国の障害者に対し、車いすテニスの普及活動を行う。テニス大会年2回開催・講習会・指導・未知の障害者の招待など)
28 市民活動、ネットワーキング支援 市民・市民団体から「私の企画」を募集し、選ばれた企画者が実施。企業が支援、NPOがコーディネートする3者共同事業。
29 バリアフリーの街づくり 大型ショッピングセンターを一つの街とみなし、障害を持つ人や高齢者が安全で安心して社会参加でき楽しめる街づくりを94年から継続。
30 療育音楽療法の理論と実践講座 楽器演奏や歌唱によりストレスを発散し、音楽に乗って体を動かすことで残存機能の維持・強化を図るという音楽療法を普及し、高齢者・障害者の心身のリハビリを促進する。
31 チャリティコンサート(クラシック音楽) 地域における無料コンサートの実施、音楽ファン層を拡大して、地域文化の振興に寄与するとともに、募金活動への協力を促し、福祉団体への寄付を実施。
32 村おこし事業のドキュメンタリービデオの製作および上映会開催 知的障害者更生施設園生のかぼちゃづくり挑戦の過程をビデオ収録して上映会を開催、地域の村おこし実現を目指す。
33 市民のための環境公開講座 市民の環境問題理解・解決への具体的な行動を喚起するため、野外を含む環境公開講座を、93年以来年20回程度開催。幅広い市民の受講を得る。
34 地域福祉実現に向けた遠隔医療 高齢社会が進展する中、地域の福祉・医療サービス改善のために情報通信活用(TV会議・医療データ送信など)による遠隔医療システムを構築。
35 太陽電池によるイルミネーションイベントの企画 自然エネルギー普及・市民企業行政の協働、地域の明るい話題発信を目指して、目抜き通りのイルミネーションを太陽電池で灯そうという企画を推進。身近でアピールするための新素材・新デザインを採用。
*掲載番号はパートナーシップ・サポートセンター事務局受付順なお一部の事例については応募者の都合により掲載を控えさせていただきました。
 
 これらの応募事業の特徴をいくつか整理してみたいと思います。
 
(1)1対複数の事業
 応募事業は圧倒的に1NPO対1企業の協働が多かったのですが、1対複数の事業がいくつかありました。また、企業の場合、社会貢献部門が音頭をとっての全社レベルでの取り組みのほかに、1営業所、支店、支社単位でローカル・コミュニティのNPOと地域のために何かをする、という例があったことも特筆すべきでしょう。
 
1協働事業に関わるNPO数・企業数
NPO数 事例数
1団体 29
2団体 5
7団体 1
35
 
企業数 事例数
1社 28
2社 2
36社 1
支店・支社・営業所単位 2
会社グループ単位 2
35
 
(2)規模
 NPO・企業の規模別分布は以下の表の通りです。50人未満の小規模なものから、1万人以上の会員数、従業員数を誇る大きな団体まで、幅広い応募がありました。多くの社会貢献事業を手掛ける大企業から、複数の応募があったことも興味深い点です。中小企業とNPOとの協働はまだ数としては少ないものの、NPO支援センターが中小企業十数社をまとめて支援する仕組みづくりを始めている例もあり、少しずつ進んでいるといえます。
 
NPO・企業の規模別分布
NPO(会員数) 事例数
50人未満 9
50〜100人 2
100〜500人 10
500〜1,000人 5
1,000〜5,000人 4
5,000〜10,000人 1
10,000人以上 2
会員制度なし 2
35
 
企業(従業員数) 事例数
50人未満 3
50〜100人 2
100〜500人 3
500〜1,000人 2
1,000〜5,000人 7
5,000〜10,000人 1
10,000人以上* 15
不明 2
35
*10,000人以上の企業には、1社が5件、3社がそれぞれ2件ずつ応募したものを含む。
 
NPO規模別分布(会員数)
 
 
企業規模別分布(従業員数)
 
 またNPOと企業の組み合わせとしては、特に規模の大小は問われず、内容・クオリティが協働の条件となっているようです。但し、全国的に活動する大企業が、全国に多くの会員を持つ大規模NPOと協働するケースは少なくないようです。
 
NPO・企業の規模別組み合わせ
NPO(会員数)
企業(従業員数)
100人
未満
100〜
1,000人
1,000〜
5,000人
10,000人
以上
100人未満 3 1    
100〜1,000人 3 2 1  
1,000〜5,000人     2  
10,000人以上 2 8 1 2
*一方が不明のものを除く。
 
(3)事業分野
 応募事業の分野別の内訳は、以下の通りです。障害者支援やバリアフリー化などの「医療・福祉」、地域の環境保全や自然エネルギー普及などの「環境」分野が多いことが分かります。また、単に福祉だけでなく、それ以外の分野との複合的な事業が多かったのがもう一つの特徴といえるでしょう。「国際協力」と「医療・福祉」、「子ども」と「教育」、「医療・福祉」と「文化・スポーツ」などです。
 
事業分野別分布
カテゴリー 事例数
医療・福祉 13
環境 9
街づくり 7
国際協力 6
文化・スポーツ 5
子ども 3
教育 2
男女共同参画 1
45
*重複を含む
 
(4)協働の期間
 今回の「パートナーシップ大賞」では、応募の条件として「1998年12月1日以降に行われた(行われている)事業」を対象にしましたが、特に協働の期間について条件を設定しませんでした。その結果、企業とNPOの協働としてはまだ実績のないところがいくつかありました。また協働の期間が長くなれば、それだけの積み重ねがプラスの成果をもたらすことも考えられ、今後はある程度の期間継続していること(例えば1年以上)を条件とすることも検討が必要かもしれません。
 
協働事業の期間別分布
協働事業期間 事例数
1年未満 6
1年 4
2年 8
3年 9
4年 1
5年 1
9年 2
10年 3
13年 1
35
*協働事業の開始から応募時までの期間。申告を基準とした。







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