会報 第24号
[財]日本太鼓連盟
NIPPON TAIKO FOUNDATION
発行・編集 2003年10月
〒107-0052 東京都港区赤坂1-2-2 日本財団ビル5階
財団法人日本太鼓連盟 理事長 塩見 和子
Tel. 03-6229-5577 Fax. 03-6229-5580
(演奏をご覧になる皇后陛下)
日本財団助成事業として日本太鼓全国障害者大会が、第5回を記念し、9月6日に初めて東京(青山劇場)において開催されました。当日は1,200名の観客で賑わいました。
今回は、主催・(財)日本太鼓連盟、主管・(財)日本太鼓連盟関東地区協議会、東京都支部、社会福祉法人富岳会、後援・厚生労働省、文化庁、東京都、東京都教育委員会等のもと行われました。
大会は、療育的な見地から日本太鼓に積極的に取り組んでいる18チーム、出演者255名が一同に会し、代表者による体験発表と太鼓演奏が行われました。各チームの体験発表は、自分たちが障害を持ちながらも太鼓との出会いにより勇気づけられ、友情が芽生え、生き甲斐を見つけるまでの経緯や現在の心境を、時には手話を介して真摯に語られていたのが印象的でした。また、会場のロビーを使って障害者による絵画展が開かれ、多くの方が作品に強い関心を示されておりました。
なお、当日は皇后陛下に行啓賜り、演奏終了後には出演者全員に親しくお声をかけていただきました。皇后陛下の優しいお言葉に出演者の方々は感動し、一生の思い出になると大変喜んでいました。
第6回大会は来秋に長野県諏訪市で開催予定
第6回大会は2004年10月3日(日)長野県諏訪市文化センターにおいて開催を予定しております。なお、詳細につきましては、財団事務局までお問合せ下さい。
(フィナーレを飾った富岳太鼓)
・勤労障害者長崎打楽交流団 瑞宝太鼓(長崎県)
・静岡県立静岡北養護学校 北龍太鼓(静岡県)
・和太鼓ちんどん(長野県)
・ファミリーユニット童鼓(岐阜県)
・すみれ太鼓(長野県)
・石川県立ろう学校 風神太鼓(石川県)
・糸口太鼓(大分県)
・金谷大井川川越し太鼓 チャレンジチーム(静岡県)
・伊予三島いわくら太鼓 鼓龍会(愛媛県)
・豊里学薗 和太鼓 鼓粋(大阪府)
・前野福祉園 太鼓倶楽部にこにこ(東京都)
・伊豆医療福祉センター どんつく(静岡県)
・仁寿太鼓(島根県)
・静岡ハンディキャップ太鼓の会(静岡県)
・古塔山びこ太鼓(長野県)
・恵那のまつり太鼓(岐阜県)
・甲州ろうあ太鼓(山梨県)
・富岳太鼓(静岡県) 《出演順》
|
|
岩本 友広
ぼくたちは2年前、プロになった。ぼくたちは、プロの太鼓打ちになることが夢だった。
プロは何回かコンサートや舞台でみたけど、すごかった。“ぼくも、あんな風に、かっこよく、うまくなりたいな”胸がドキドキするほど、そう思った。
でも、“そげんことは100年早か!毎日の仕事をちゃんとしとらんと、太鼓もできんぞ”と言われた。
でも、太鼓が好きだから、仕事しながら、残業しながら太鼓を続けた。
残業で練習もできなくて、おまけに休みも少なくて、からだもきつかったけど、休みの日に太鼓の依頼があると、すっとんでたたきに行った。
また次の日、仕事できつかったけど、でもボーと休んでいるより、太鼓をたたきにいく方がずっとましだと思った。
でも、だんだん仕事がいそがしくなって、練習もできなくなって、自分で思うような太鼓がたたけなくって、でも会社のおじちゃん、おばちゃんにはめいわくかけたくないし、でも大好きな太鼓はたたきたいし、ぼくなりになやんだ。会社のこと、仲間のこと、給料のこと、将来のこと。
でも決めた。やっぱりぼくは太鼓が好きだ。どこまでやれるだろうとか、いろいろ心配もあるけど、このままでいたくない。もっと上手になりたい。もっとたくさんの人の拍手がもらいたい。
あれから2年。最初は本当にこれからどうなるんだろう、と思った。
はじめて舞台にたった時も涙がでるほどめちゃくちゃ緊張したけど、太鼓を仕事にして、本当に給料がもらえるのだろうか、家賃が払えるのだろうか、太鼓でメシが食っていけるのだろうか、ハラハラしてた。
心配になって太鼓を楽しんでたたくことができんことがあった。でも、いっしょうけんめい、いっしょうけんめい、汗をポタポタ流して、まめいっぱいつくって、がんばってやってたら、少しずつうまくなった。新しい曲も早く覚えることができるようになった。そしたら、拍手も少しずつたくさんもらえるようになった。
おっかけみたいなおばちゃんもできた。年のおわりにはおもなできごとの1つに、ぼくたちの瑞宝太鼓ががんばっていることが新聞にのった。うそみたいと思いながら、とてもうれしかった。
今、ぼくには3つの目標がある。
1つめは、コンテスト入賞。去年「第1回東京国際和太鼓コンテスト」に全国100チーム以上の中から選ばれて本選出場をすることができた。でも緊張して頭が真っ白になって、自分たちの演奏ができなかった。
涙がとまらなかった。来年こそはとみんなと約束して、今年も本選にでれることが決まった。
みんなでばんざいして、今年こそ賞をとるぞとちかった。
2つめは、三重県でコンサートすること。遠くはなれた三重県でがんばっているおかあさん。そして兄弟たちの前で、ぼくのいっしょうけんめいたたく太鼓をみてほしい、おかあさんによろこんでもらいたい。
そして3つめは、結婚。ぼくには彼女がいる。
なかなか休みもあわなくて、あえることも少ないけど、でも彼女が好きだ。彼女も、ぼくが結婚を前提につきあって下さい、っていったら、“いいよ”と言ってくれた。みんなも応援してくれてる。
子どもも好きだし、いいおとうさんになりたい。もっとたくさん給料がもらえるようがんばりたい。大好きな太鼓と、大好きな仲間といっしょに。
9月16日から19日まで日本財団ビル1階ロビー「バウルーム」において、知的障害者による作品展(絵画・陶芸)「ピュア・アート・コレクション」が社会福祉法人富岳会主催のもと開催され、展示された作品は、大変素晴らしい色彩、構図で描かれており、非常に見応えがあるとの評価を受けました。4日間で、約700名の方々にご覧いただきました。
絵画を出展された方の中には、太鼓を打っている人もおります。このように、太鼓療育と絵画療育が障害者の自信と自立心を高める手助けになっています。
(ピュア・アート・コレクション)
|