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「第15回特別展 ニシン漁の船」図録

 事業名 海と船の企画展
 団体名 北海道海事広報協会 注目度注目度5


船大工用具
 船大工は一般の家大工が使用しない船大工専用の特殊な道具を使用する。船大工特有の道具としては船釘を打つ穴をあける「鍔鑿(つばのみ)」、コーキング用の桧皮を挟み込む鑿打ち道具として「樋鑿(とよのみ)・ホーコンノミ」等がある。また、船の設計図を板に書き込んだ「コガタ」も今となっては貴重なものである。
 
内港での枠船の様子
 
〜船大工 故船越干代一氏について〜
 今回展示した大工道具は故船越千代一氏が使用していた船大工の用具一式である。船越家は青森県下北郡佐井村の出身で、代々船大工を家業としてきた家系である。千代一氏の先々代の福三郎氏は下北郡佐井村牛滝で船大工を家業としていた。そして、明治にはいるとニシン漁の盛んになった留萌地方へ出稼ぎの船大工として来るようになったらしい。明治27年の礼受町のカクダイ佐賀家漁場の精算帳に船越宇吉の名が見えることから、同年には佐賀家漁場のお抱え船大工として活躍していたらしい。この佐賀家漁場はやはり下北半島の下風呂の出であり、弁財船を数艘所有し幕末に活躍していた家柄である。船越家が佐賀家とつながりを持ったのはいつ頃か判断する資料はないが、かなり以前からだということは推測に難くない。
 二男浅吉氏は明治3年に生まれ、長男宇吉氏とは11歳違いであった彼も父の元で船大工の修行をし、宇吉について初めのうちは北海道に出稼ぎしたらしい。しかし二男ということもあって船大工として一人前になってからは北海道に移住し、独立して家業をなした。その結果佐賀家漁場のお抱え大工として、礼受に居を構えた。正式に礼受村に転住したのは明治42年のことである。ただ、明治38年の佐賀家の差引帳には浅吉の名前があり、平田船1艘、三羽(三半)船1艘、磯舟1艘を製作したことが記録にある。このことから明治38年以前から佐賀家漁場には関わっていたらしい。また、彼が佐賀家より漁場を借り受けニシン漁も経営していた。つまり浅吉は船大工のかたわらニシン漁も行っていたのである。
 明治41年に長男千代一氏が生まれる。彼も礼受小学校を卒業するや父について船大工の修行を始めた。23歳で4年間岩内町の伊野造船所で洋型発動船の技術を習得し、その後根室釧路地方へ1年半ほど出稼ぎし、帰郷してからは一貫して礼受で船大工を続けた。彼は主に留萌市礼受、増毛町阿分のニシン漁家がニシン漁に使用した船を製作した。当時はやはりお得意というものがあり、もっぱら礼受のカクダイ佐賀家漁場、阿分の相馬漁場、松江漁場の船を製作している。これは先代からのお得意でもあった。
 
廊下に保存される漁船(カクダイ佐賀家漁場)
 
 
船倉に保存される漁船(カクダイ佐賀家漁場)
 
 現在留萌市礼受町にあるカクダイ佐賀家漁場の船倉及び廊下には11艘の船が残されているが、製作年代の判るものとしては大正14年製作の磯舟、昭和6年、昭和10年、昭和29年、昭和31年製作の保津船、昭和29年製作の通船がある。これらの船は、総て船越家2代の手によるものであることは疑いの余地がないであろう。千代氏はもっぱらニシン漁に使用された和船を製作していた関係上、伝統的な和船作りの道具が主である。ただし彼は洋型木造船も手掛けていた関係と戦後は様式造船技術が和船にも応用されたため様式の道具も若干使用していた。
 
〜船大工道具解説〜
トオシ鋸:船材の接合面をすり合わせ密着させるのに使用する。
 
ガンガリ鋸:長い材料を切断または挽き割りするのに使用する。
 
バラメ鋸:大きな材の切断に使用し、目立は先が荒く元が細い。
 
ホソバラメ鋸:細身のバラメで直線や曲線の切断に使用する。
 
引きまわし鋸:切断方向の変更が容易で曲線を切断するのに使用する。
 
両刃鋸:縦挽きと横挽きの両用で船大工は小作業に使用する。
 
金切り鋸:折れを防ぐため自作したさやに市販の刃を挟んで使用。
 
自由ガネ:色々な角度が作れる定規で用途により使い分ける。
 
チョウナ:材の表面をえぐるように削り取る場合に使用する。
 
マサカリ:大きな材から形を削り出す時に使用する。
 
両ツバノミ:板材に船釘を通すための穴をあける時に使用する。
 
片ツバノミ:両ツバノミであけた穴の目違いを調整する。
 
船倉より漁船の先端がつき出す
(カクダイ佐賀家漁場)
 
角ツバノミ:角形の釘を打ち込む穴をあける時に使用する。
 
丸ツバノミ:丸形の釘を打ち込む穴をあける時に使用する。
 
カエキノミ:船の補修で防水用の充填物を詰め込むのに使用する。
 
ツキノミ:表面をきれいに仕上げる時に使用する。
 
ダメキリノミ:船釘を打つ穴(ダメ穴)を彫る時に使用する。
 
タタキノミ:船大工では厚ノミを総称し穴あけや段欠きに使用する。
 
節彫りノミ:木材にある節の部分を削り取るために使用する。
 
丸ノミ:化粧板や船名板を彫刻する時に使用する。
 
ホーコンノミ:船の補修で防水用の充填物を詰め込むのに使用する。
 
トヨノミ:船の補修で防水用の充填物を詰め込むのに使用する。
 
平カンナ:材の荒削り面を平たんに仕上げるのに使用する。
 
丸カンナ:材の表面を曲面に仕上げるのに使用する。
 
反り台カンナ:材の表面を曲面に仕上げるのに使用する。
 
外丸反り台カンナ:材の表面を曲面に仕上げるのに使用する。
 
キワカンナ:材の隅や角の部分を段に削るのに使用する。
 
脇取りカンナ:幅広の溝の側面を仕上げるのに使用する。
 
手もみボールトギリ:ボールトを通す穴をあけるもので柄を持ち手で回す。
 
木工ドリルキリ:表面がなめらかで正確な穴をあけることができる。
 
ボールトギリ:ボールトを通す深い穴をあけるのに適している。
 
クリック用ボールトギリ:ボールトを通す穴をあける。クリック専用。
 
ポンコツ:ホーコンのみで充填物を打ち込む時に使用する木槌。
 
罫引(ケビキ):材の一面に沿って平行な線を引くために使用する。
 
クリック:先端に様々なキリを取り付け回転させ穴をあける。
 
袋スパナ:頭を埋め込んだボールトを締める時に使用する。
 
ハンドドリル:先端に様々なキリを取り付け回転させ穴をあける。
 
万力(マンリキ):小物の加工の時強い力で挟み込み保持するのに使用。
 
マンシュウ:部材を取り付ける時に材どうしを固定するのに使用。
 
金敷き(カナシキ):木材に打ち立てこの上で鋸面の狂い直しなどを行う。
 
ボールト抜き:打ち込んであるボールトを打ち込み抜き取る。
 
キリンキハンマー:主に洋船用の銅釘の打ち込み等に使用する。
 
かじや(バール):釘を抜いたり材をあおったりする時に使用する。
 
墨壼:材に直線や曲線を引いたり分銅の代わりに使用する。
 
墨さし:刃形の方で直線を引き筆形の方で文字や記号を書く。
 
漆べら:防水補修の時ウルシを大きな隙間に塗り込む。
 
漆ようじ:防水補修の時ウルシを小さな隙間に塗り込む。
 
漆板:防水補修の時ペースト状のウルシを必要量取り分ける。
 
漆樽:ウルシにおが屑・小麦粉などを混ぜペースト状にする容器。
 
油壼:綿状の物に鉄工具用の潤滑油を染み込ませておく容器。
 
スリヤ:トオシ鋸で摺り合わせる時材の隙間を調整する。
 
ツカミ(カスガイ):トオシ鋸で摺り合わせる時材の隙間を固定する。
 
釘シメ:釘の頭を材に埋め込むもの 角形は和釘、丸形は洋釘。
 
落とし釘:材と材を接ぎ合わせ一枚の材にする場合に使用する。
 
カヨリ釘:一般の釘と同じく材の取り付けに使用する。
 
通り釘:強度がいる接合部に突き出た先端を折り曲げ使用する。
 
平カスガイ:トオシ鋸で摺り合わせる時材の隙間を固定する。
 
桧皮(ヒカワ):防水補修の時浸水する材の隙間に詰め込む。
 
ナットボールト:構造上強度の必要な箇所の接合に使用する。
 
目立てヤスリ:鋸類の刃の目立てなどに使用する。
 
バーナー:材の加熱、折り曲げなどに使用する石油バーナー。
 
【参考文献】
1. 平秩東作 東遊記 天明4年 1784
 
2. 串原正峰 夷諺俗話 寛政4年 1840
 
3. 北海道庁内務部水産課
北海道水産調査予察報告 1892
 
4. 北水協会編 北海道漁業史稿 1935
 
5. 今田光夫 ニシン文化史 共同文化社 1986
 
6. 山田祐平著 船大工考 1993
 
7. 函館産業遺産研究会・編著
北の船大工道具
函館の刃物鍛冶と造船所 1999
 
8. 風間浦村 風間浦村史 2000
 
9. 留萌市海のふるさと館 収蔵資料目録4
故船越千代一氏使用
船大工道具資料目録 1993
 
10. 留萌市海のふるさと館
 郷土史料集第一輯 留萌漁業沿革史 1995
 
11. 留萌市教育委員会編
 留萌市ニシン漁撈調査報告 1995
 
12. 留萌市海のふるさと館 紀要第6号
 資料紹介 明治三十年十月十七日 旧記書類写 留萌 1995
 
13. 留萌市海のふるさと館
 郷土史料集第二輯
 河野常吉 明治三十年十月
 天塩国留萌郡調査 礼受村、留萌市街地、
 同殖民原野、三泊村、天登雁村
 天塩国調査第四
 明治三十年天塩国出張中 日記帳 1996
 
14. 留萌市教育委員会編 宮澤智士監修
 国指定史跡佐賀家ニシン番屋 2000







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