ムラサキイガイ
小樽港の岸壁を歩くと、水際にびっしりと貼り付いている黒い貝を見ることができます。これはムラサキイガイという貝で地中海原産の外来種です。
ムラサキイガイは現在、世界中の温帯の海で見られます。彼らは船底に貼り付いたり、バラスト水(空荷のときに船のバランスをとるために船に取り込む水)に紛れたりして分布を拡大したと考えられています。日本に入ってきたのは1920年代で、1950年代から60年代にかけて北海道から九州まで分布を広げました。
また、ムラサキイガイは「ムール貝」という名前で知られる有名な食用貝です。ヨーロッパなどでは盛んに養殖が行われ、日本でもレストランでムール貝を使った料理がよく出されますが、日本での漁獲はわずかしかありません。
小樽にはよく似た固着性の在来種がいくつかすんでいます。これらの貝は、足糸という糸で岩などにくっついて生活するので、固着する空間をめぐってムラサキイガイとの競合が心配されます。しかし、豊井浜などの岩場の磯では、在来種のムラサキインコガイが優先し、ムラサキイガイはわずかにしか見られません。また、「ヒル貝」としておなじみの在来種エゾイガイとは生息環境が少し異なっています(エゾイガイの方が深い場所にすむ)。少なくともこの地区では、ムラサキイガイによる在来種への影響は認められません。むしろ、在来種の少ない港湾地域でムラサキイガイは繁栄しているようです。
また、北海道にはムラサキイガイに極めて近いキタノムラサキイガイという貝が分布していますが、この貝とムラサキイガイの分布が重なる太平洋沿岸からオホーツク海沿岸では、両種の雑種が生じている可能性が指摘されています。
小樽ではキタノムラサキイガイの生息は報告されていませんが、両者は極めてよく似ているため、正確な状況を知るためにはより詳しい調査が必要です。
ムラサキイガイ
ムラサキイガイのたくさん生息している岸壁
2002年10月28日 第三埠頭
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磯にも時々見られるムラサキイガイ 2003年4月 豊井浜 |
庭や道ばたでよく見かけるダンゴムシは、危険を感じるとボールのように丸まるユーモラスな習性がおなじみですが、もともとは日本には生息していなかった外来種です。
オカダンゴムシはコスモポリタン(汎世界種)と呼ばれる、全世界に広く分布する生き物で、もともとの分布域はよくわかっていません。人間の移動につれて世界中に運ばれ、定着したと考えられています。
日本に入ってきたのは明治時代だといわれていますが、これほど身近な存在になったのはつい最近のことです。しかし、北海道では現在でもそれほど多い生き物ではありません。小樽では市街地を中心に比較的たくさん見られますが、森や山ではほとんど見かけません。例外的に長橋なえぼ公園では林内にたくさんすんでいます。
また、ダンゴムシと混同されることも多いワラジムシも汎世界種として有名な生き物です。
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