日本財団 図書館


8. 長崎県・雲仙保育園
園長 金子 寿重子
〈保育園の沿革〉
 日本で最初の国立公園として全国にその名を馳せたここ「雲仙」にあって、雲仙保育園は昭和38年に財団法人雲仙会を設置母体として設立された保育園です。
 平成15年は、創立40周年を迎える記念すべき年でもあります。設立当時の昭和38年は翌年に東京オリンピックの開催を控え、日本の経済成長もまさに成長の一途をたどっていた時代であったと記憶しています。
 こうした時代の背景を受けて、国内の観光地は空前の観光ブームで沸いた時代でもありました。当然のことながら、当地においても連日観光客であふれ、それまで家庭のなかにいた専業主婦の多くは、地域の観光事業へとかりだされることとなったのです。
 反面、家の中に取り残された子どもたちの安全をいかに確保するかが、新たな問題として取り上げられてきました。
 当時、婦人会活動として全国表彰を受けた実績を持つ地元婦人会がいち早く保育園建設を提案し、婦人会自ら建設母体となるべく法人の設立へと手続を急いだのです。長崎県知事の認可による「財団法人雲仙会」がここに発足しました。
 ちなみに、何故社会福祉法人の設立ではなかったのかを申し添えると、当時、社会福祉法人の場合、申請から認可まで相当長い期間を必要としていたらしく、それに比べ財団法人については、それほどの期間はかからないで認可を受けていたことから推察しても、それほどまでに早急な保育園建設が求められていたことを伺い知ることができます。
 財団法人としての役員は、理事8名、監事2名で構成され、全て地元の旅館・ホテルの女将さんたちでありました。特筆すべきユニークな発足形態であったと思います。
 保育園建設用地は、小浜町町有地を無償で借り受けることができました。いまだにその恩恵を継続しています。
 木材は当時、全面改築のため解体が進んでいた近くの小学校の古材を譲り受けるなどして、負担を軽減するための様々な工面がなされました。
 かくして、総面積340平方メートル、木造平屋建、雲仙保育園園舎の完成の暁を見たのでした。昭和38年10月1日、児童入所定員60名、職員数、園長以下5名で構成された雲仙保育園は、地域の熱い期待を受けて開園となったのでした。地域の声で立ち上げられた保育園、まさしく地域に根付いた保育園としての典型ともいえるかと思います。
 財団法人から社会福祉法人へ法人変更を行ったのは設立から13年目の昭和51年5月でありました。
 入所児童も時代の流れをうけて変動してきました。保育園開設当時(昭和38年)の本町の人口と平成15年9月における人口の比較と入所児童の変化を取り上げてみましょう。
昭和38年 開設 入所定員60名 小浜町人口 約16,000人
昭和49年 園舎増築 入所定員 90名
昭和55年 園舎全面改築 鉄筋コンクリート造り2階建564,358m2
昭和62年 入所定員60名
平成5年 入所定員45名
平成14年 入所定員30名
平成15年 同上 小浜町人口 約11,200人
 当地は確実に過疎の方向へ向かっています。
 
 ここで本園の保育方針を紹介いたします。
保育目標・・・やる気、勇気、思いやり
保育方針・・・日本の伝統文化である茶道を通して、その心に込められている思いやりと感謝の気持ちをもって人々に交わる中で、一人ひとりを受け入れ、認められることの喜びを伝えて行きたい。そして、自らすすんで取り組もうとする心情、意欲、態度を身につけ、持てる力を発揮できるよう必要な援助をしていく。
 そのため、保育者は次に掲げる姿勢で保育に従事しなければならない。
努力事項・・・
(1)あるがままの子供の心情をうけいれてやる。
(2)保育者は子供達から多くの事を気付かされ、学ばされていることを知る。
(3)保育者は子供達にとって最も大切な環境である事を重んじ、保育者同士、互いに尊重した態度で交わること。
特色・・・本園は周りを山々に囲まれ、四季折々に変化する大自然の恩恵をほしいままに取り込み、毎日の保育が展開されています。
 特にもみじの季節の秋の茶会は今や地域あげて開催されるお山の文化祭のひとつとして取り上げられています。
 
○年間の主な事業活動
事項
4月 入園式 (保護者会 育児講座)
5月 こいのぼりパレード 親子遠足 母の日
6月 園児健康診断(内科・歯科)
7月 七夕パレード (保護者会 育児講座)
8月 納涼保育 はだしで遊ぼう雲仙参加
9月 敬老会参加 運動会 温泉神社祭礼
(お月見 お茶会)
10月 町民体育祭 遠足 保護者会 (育児講座)
11月 コンサート(毎年、音楽家を招いてのコンサート)
12月 御遊戯会 もちつき クリスマス会
1月 親子新年会 初釜(新年お茶会)
2月 節分 (保護者会 育児講座)
3月 ひなまつり会 お別れ遠足 卒園式・茶和会
  ※その他、毎月実施する茶道教室、誕生会、避難訓練、交通指導がある。
 
[雲仙保育園 年間指導計画]
保育目標 0歳児 ・快適な環境と、園と家庭との一貫した生活リズムの中で、気持ちよく過ごす。
1歳児 ・いろいろな経験を通して、言葉に興味・関心をもち、言葉で思いを表わそうとする。
2歳児 ・保育士との安定した関係の中で、身の回りのことを自分でしようとする。・一緒に遊ぶ事の楽しさを知る。
年齢 保育のねらい
6か月未満児 第1期
4月〜6月
・個々の子供の家庭と生活を把握し、一人ひとりが安定した園生活を送れるようにする。
第2期
7月〜9月
・子どもに応じて心身ともに快適な状態をつくり、情緒の安定を図る。
第3期
10〜12月
・安心できる人的・物的環境のもとで、聞く、見る等の感覚が豊かになるようにする。
第4期
1月〜3月
・あやしたり、はなしかけたり、喃語を育む。
6ヵ月〜1歳3か月未満児 第1期
4月〜6月
・保育士のふれあいを大切にして、情緒の安定を図り、新しい園生活に無理なく慣れるようにする。
第2期
7月〜9月
・個人差を考慮し、食事、排泄、睡眠等の生理的要求を満たし、生命の保持と安全を図る。
第3期
10〜12月
・安全で衛生的な環境を整え、座る、はう、立つ、握る、持つ等の機能の発達を助ける。
第4期
1〜3月
・優しく語りかけたり、発声や喃語に応答したりしながら発語の意欲を高める。
1歳3か月〜2歳未満児 第1期
4月〜6月
・個々の子供の状態や成育歴を把握し、新しい生活の場に無理なくなじめるようにする。
第2期
7月〜9月
・子供の言葉をしっかり受け止め、保育士が優しく話かけながら発語をより促していく。
第3期
10〜12月
・個々の子供の心情を理解し受容することにより、子どもとの信頼関係を深め、自分の気持ちを素直に表現できるようにする。
第4期
1〜3月
・安心できる保育士のもとで、食事、排泄、衣服の着脱等、簡単な身の回りの活動を自分でしようとする。
2歳児 第1期
4〜6月
・新しい環境に慣れて自分の好きな遊びを充分に楽しむ。
第2期
7月〜9月
・いろいろな遊びを通して、保育士や友達と一緒に遊ぶ楽しさを味わう。
第3期
10〜12月
・生活に必要な言葉が少しずつわかり、したい事と、して欲しい事を言葉で表わす。
第4期
1〜3月
・大きくなった喜びを感じながら、身の回りのことを自分でしようとする。
 
[雲仙保育園 年間指導計画]
保育目標 3歳児 ・情緒の安定した生活の中で、必要な基本的生活習慣が身につくようにする。・友だちと遊ぶことを楽しみ、人との関わりを深めていく。
4歳児 ・保健的で安全な環境の中で、欲求を十分に満たし、安定した生活ができるようにする。・自意識の芽生えを大切に育て、豊かな情緒を育む。
5歳児 ・人との関わりの中で、社会に於ける必要な習慣や態度を身につけ主体的に行動し、充実感を味わう。
年齢 保育のねらい
3歳児 第1期
4月〜6月
・新しい環境に慣れ、保育者やクラスの友達に親しみを持つ。
・園生活の流れを知り、園生活の仕方に慣れる。
・好きな遊びを見つけ、自分で楽しむ。
第2期
7月〜9月
・園生活がわかり、簡単な身の回りの始末を自分でしようとする。
・遊びや生活には、決まりや約束があることを知り、守ろうとする。
・安心して生活し、好きな遊びを十分にするなかで、友達とのつながりができる。
第3期
10月〜12月
・いろいろなことに対して、意欲が高まり、自分もやってみようとする。
・友達とかかわって遊ぶことを楽しむ。
・保育者や友達と共に生活することを喜び、話したり、聞いたり、会話を楽しんだりする。
第4期
1月〜3月
・基本的生活習慣が身につき、自信を持ってのびのびと行動する。
・作ったり、描いたり、歌ったり、動いたりして、自分なりに表現する。
・大きくなったことを喜び、進級に期待を持つ。
4歳児 第1期
4月〜6月
・園生活に慣れ、安心して過ごす。
・生活の仕方がわかり、出来ることは自分でしようとする。
・自分で好きな遊びを見つけ、保育者や友達と楽しんで遊ぶ。
第2期
7月〜9月
・雨期、夏期の保健衛生に留意し、健康や安全など生活に必要な基本的生活習慣を身につける。・異年齢児と関わりながら感性を豊かにする。
・身近な自然に触れたり、見たりして、遊ぶことを楽しむ。
第3期
10月〜12月
・気温や活動に応じて、衣服の調節など自分でできることに喜びを持ち、薄着の習慣を身につける。
・気の合う友達と簡単な目的を持って遊ぶ。
・好きな遊びをする中で、友達とのかかわることの楽しさを味わう。
第4期
1月〜3月
・寒さに負けないで、規則正しい生活をして健康に過ごせる様にする。
・いろいろな遊びに興味を持ち、それぞれが自分の力を発揮して、活動に取り組む。
・年長になる期待を持ち、遊びや仕事を進んでする。
5歳児 第1期
4月〜6月
・新しい環境に慣れ、友達との遊びや生活を楽しむ。
・年長児としての自覚を持ち、生活に必要な決まりを守る。
・個々の子どもの欲求を十分満たし、情緒の安定を図る。
第2期
7月〜9月
・梅雨、夏の暑さによる心身の疲れをいやし、快適に生活できる様にする。
・友達とのつながりを深め、共通の目的を持って遊びを進める運動遊びに取り組む。
・自然や、身近な環境とふれあい、見たり、試したり、考えたりして楽しむ。
第3期
10月〜12月
・戸外で体を十分に動かし、友達と一緒に遊びや仕事を進める楽しさを味わう。
・身近な事象を見たり、触れたり、扱ったりする中で、発見したり、感動したりすることを楽しむ。
・感じたこと、考えたことをさまざまな方法で表現する。
第4期
1月〜3月
・友達の存在を認めながら、協力して遊びや仕事を進め、充実感を味わう。
・入学という自覚から、自信を持ってやり遂げようとする態度を温かく見守り、満足感、成就感を味わう様にする。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION