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4 これらの活動についての考察
【地域活動についての考察】
 地域活動の中の、子育て支援活動の親子サークルについてですが、お母さん方から『毎日何を食べたかわからないくらい、ゆっくり食事を取れない。』『一日で良いからゆっくり寝たい。』との声を聞くことが多いので、子育て中の母親の育児ストレスは相当なものがあると痛感しています。近年核家族化により子育ての伝承もなく、孤立した育児が子育ての難しさを倍増していると思います。現在少子化が叫ばれている中、在宅で子育てされているお母さん方の育児疲れの解消のためにも、保育園児童館が今後担っていくべき使命も大きいものがあると考えます。子育ての楽しさがわからないと少子化に歯止めがかからないと思われます。
【学童クラブについての考察】
 近年、非行問題と向き合う関係者の間で『ギャングエイジの喪失』という言葉をよく耳にしますが、暴走する子ども達の多くが、幼児期から小学生の間にかけ遊びや仲間作りの体験を持っていないとの認識が定着しています。子どもの成長には友達(仲間)と遊び場(空間)と遊ぶ(時間)が欠かせないと考えます。まさにこの学童クラブでは大切な『遊び』と『仲間作り』をこの広い『空間』の中で体験をしていることになります。異年齢での体験は、特に最近一人っ子や兄弟が少ない中で大きい子が小さい子の面倒を見たり、けんかの仲裁をしたりして、リーダーシップを発揮することや自分を制する我慢が培われていきます。遊ぶときは徹底して『遊びきる』、何事も最後まで『やりきる』と、充実感と異年齢集団での社会性が生きる力をはぐくむと考えられます。今後もいろんな体験を与えることにより、子ども達の成長を見守っていきたいと思います。
 以上、当法人が運営する特別事業の事業例でありますが、特別事業そのものが異質なものではなく、普通の社会行動であることを改めて気づかせてもらいました。
 
5 今後の展望
 ベビーブームの中で、縁があり保育所運営に携わることになり、今日まで子どもの育ちを見守ってきました。今日も昨日も子ども達の未来へ向けた行動(好奇心・探究心)は、少しも昔と変化していません。「子どもは未来の希望である」。児童福祉法の理念を踏まえた行動がそこには自然に存在しています。保育園児童館に在園する子ども達の人間関係にそれらが見られる思いがします。当法人の理念である「元気に・なかよく・いたわり・やりぬく」ことが子どもの育ち中で忘れてはならないものと考えています。その為に、現代社会の便利さから子ども集団を遊離する必要性を日頃から感じています。児童館の中では、体力不足の不便・物に対する不便・心に対する不便・上手に出来ない不便・与えられない不便に対する不便を五感で会得し、他人との関わり合いの中で自然に不便を便利に変えていける能力を身につけることができ、自分自身の自信へとつながり、それが『生きる力』として変化発展していくものであると信じています。地域社会の中で消滅した子どもの集団遊びが出来る環境を確保すると同時に、不便体験がたくさんできる施設と仲間が求められています。子育てに対し、たくさんの社会資源を持っている保育園が、従来の姿のままでなく、0歳児から10歳程度まで一貫したカリキュラムの中で、子育ての喜びを感じ取れる多くの保育者が求められているのではないでしょうか。安全という名のもとに、丸められた遊具、衛生的と言われる過剰な消毒、集団行動を抑制し子ども達を管理する年齢別保育等々、子どもの行動を親・保育者・社会全体が抑制していることも考え直す時ではないかと、この実践を通して痛感しているところです。特別保育事業そのものが異質なものでなく、普通の社会行動であることを改めて気づかせてもらいました。この実践活動が他の地域にも広がることを願ってやみません。
 
(資料)
 
本園の理想
1. 保育の理念
 
 社会福祉法人あけぼの会の運営する保育園は、児童福祉法に基づき「保育に欠ける」乳幼児の保育を行うが、保育にあたっては子どもの人権や主体性を尊重し、児童の最善の幸福のために日夜、保護者や地域社会と力を合わせ、児童福祉を積極的に増進し、併せて地域における家庭援助を行う。
 尚、児童福祉を積極的に進める為に職員は、豊かな愛情をもって接し、児童の処遇向上のため知識の修得と技術の向上に努める。又、家庭援助の為に常に社会性と良識に磨きをかけ相互に啓発するものである。
 
2. 保育の基本方針
●職員が保育に臨む基本的姿勢にあたって、子どもや家庭に対してわけ隔てなく保育を行い、人権を尊重し、プライバシーを保護することを第一義とする。
●家庭や地域社会との連携を図り、保護者の協力の下に家庭養育の補完を行う。
●子どもが健康、安全で情緒の安定した生活ができる環境を用意し、自己を十分に発揮しながら活動することが出来るようにすることにより、健全な心身の発達を図る。
●養育と教育が一体となって、豊かな人間性を持った子どもを育成する。
●乳幼児などの保育に関する要望や、意見、相談に際しては、分かりやすい用語で説明をし、公的施設としての社会的責任を果たす。
 
3. 保育目標
 
(1)基本的生活習慣の自立に向けて、“やりたい”と言う気持ちを大切にしながら、身辺処理(食事・排泄・睡眠・着脱衣)のできる自立心を育てます。
(2)3・4・5歳児の異年齢で兄弟グループを作り、家庭的な雰囲気の中で子ども達が過ごすことにより、子どもが子どもの中で育ち合う環境を作ります。
(3)豊かな言葉のある環境に留意し、正しい言葉を身につけさせ表現力の基礎を培い、情操の安定を図ります。
(4)生活や遊びの中で、自分の意思や考えが表現できるようにします。又、相手の人権を尊重し、思いやりのある心を育てます。
(5)生活や遊びの中で、考えたり、工夫したりする、素材を積極的に与え、知的興味や関心を育て、豊かな感性と創造性の芽生えを培います。
(6)生活や遊びの中で、子どもの驚きや不思議に思うことを大切に受け止め、思考力・認識力を培い、科学的に観察する力を養います。また、生活や遊びの中で何事も最後までやりぬく粘り強さを身につけます。そして何より必要な“生きる力”を育てます。
 
4. 保育内容
異年齢保育〈クラス編成〉
●乳児クラス(0〜3歳未満児)●
 個々の成長、発達に合わせた月齢(年齢)でクラス編成をし、ゆったりとした雰囲気の中で、運動・休息・栄養をとり、規則正しい生活習慣を身につけることを基本としています。また、遊びの中に混合保育(0〜2歳児が一緒に過ごす)や、担任以外の保育士と関わる機会を設けて、意欲的に遊ぶ力を育みます。その遊びの中で、同年齢だけの生活では感じられなかった刺激を受けさせ、成長へとつなげていきます。
 
●幼児クラス(3〜5歳児)●
 3・4・5歳児の混合クラスを6組編成しています。日々の生活の中で、遊びや生活のルールを教えたり考え出したり、年上の子を敬い、頼り、又、年下の子の労を助け合うことなどを子ども同士のかかわりの中で、自然と身につけられるよう配慮しています。ここで大切にしている事は、「自分のことは自分でできるようにする」「友だちと一緒に良くなる(出来るようになる)」ということです。甘える時、見守る時、叱る時を見極め配慮しながら日々の保育をしています。
 
《5つの育》
 “生きる力”を実現するために、5つの育(徳育・体育・美育・知育・食育)をバランスよく育んでいきます。
徳育・・・行為の善悪を判断する基準として、一般に承認されている規範の総体をいう。
*本園では、異年齢保育や絵本・ビデオを通して取り組んでいます。
体育・・・健全な身体の発達を促し、運動能力や健康で安全な生活を育む能力を育成し、人間性を豊かにすることを目的とする教育。
*本園では、かけっこ・体育遊び(専門講師による)など、戸外で活動を十分に楽しめるよう、取り組んでいます。
美育・・・美の鑑賞と、創作の能力を養うことによって、人格を向上させる教育。
*本園では、音楽遊び(専門講師による)・絵画(専門講師による)・製作を中心に取り組んでいます。
知育・・・知的認識能力を高めることを目的とする教育
*本園では、知恵遊び・シール遊び・そろばん(5歳児のみ)・絵本を通しての保育を、中心として取り組んでいます。
食育・・・食に関する基本的な知識を、広い視野から育む。
*本園では、給食・おやつ・クッキングを通して取り組んでいます。







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