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4. 横浜市・きらら保育園
園長 森田 倫代
1 保育園の概要
 平成12年4月に横浜市金沢区能見台に新しい保育園を開園しました。当時、待機児童日本一といわれた横浜市が市の土地を無償で貸与し、社会福祉法人が保育所を建てて運営するという事業が始まりました。神奈川県厚木市でみどり保育園を運営していた社会福祉法人みどり会として応募し、横浜市の事業の2年目に開園することになりました。
 駅から歩いて7分くらいの距離にあり、周りは賃貸・分譲の高層のマンションが何棟も建っています。また、その周りに一戸建ての住宅地があります。新しく開発された町でまだまだマンションは増え続けています。「女性に優しい町」をコンセプトに、マンションのパンフレットには必ずといっていいほど保育園の紹介があります。中には、マンションのモデルルームを見ながら見学に来る方もいます。マンションを購入する方は、夫婦で働いている若い世代が多いのでしょう。
 横浜市からの要請で、90名定員で産休明けからの保育をしています。その当時低年齢の子どもの待機児童が多かったので、0歳児の子どもが少しでも多く入園することができるように、0歳児から5歳児まで15名ずつの同じ人数の定員になっています。その結果、0歳児は4月に入らないと途中からの入園が大変難しくなってしまいました。それ以上の年齢では退園、転園する子どもがいた場合に、1人2人の単位での入園がやっとできる程度です。
 また、兄弟がいても同じ保育園に入園することがなかなか難しくなっています。特に年度途中での入園や2月、3月に生まれて1年間育児休業をとる方は4月には1歳児になってしまうので枠がなくなってしまうのです。園児の弟妹の妊娠が多いのですが、0歳児の4月入園を目指し、育児休業を返上して職場復帰をしているのが現状です。学校の先生方は3年間の育児休業が認められていますが、保育園の入園を考えるととれないようです。
 最近は育児休業が普及して、多くの園で4月当初の0歳児の定員割れが出てくるようになりました。今後はそのように変わっていくのかもしれません。できれば1歳以降の育児休業明けに対応できる体制が望ましいのだと思います。現在は定員の緩和措置がとられていますので、どの年齢も18名前後で全員で108名になっています。来年度は0歳児は定員どおりの15名で行い、1歳児以降に3人でも入る枠を増やしたほうがよいのではと考えております。
 新しい施設だということで特別事業も多く、障害児保育、延長保育、一時保育、そして12年度10月から保育園でも行うことになった病後児保育も実施しています。
 保育内容としては、モンテッソーリ教育を取り入れています。保育士は保育終了後、上智大学のコースに何人か通い資格をとっています。なかなか厳しいようですが、4年目を迎え保育士たちの考え方に共通なものが増えているのを感じます。また、年々子どもたちが自分でできることが増えています。それは保育士たちが子どもをよく見て理解することができるようになったことが大きいのではないかと思っています。
 3〜5歳児は縦割り保育の2グループで活動し、保育内容によっては年齢別の保育を取り入れ行っています。また、ランチルームを設置して2歳児以上はおやつ、昼食を同じ空間で食べられるようになっています。また、栄養士を中心に食育にも力を入れ始めました。3歳未満児の保育についても、横浜でモンテッソーリの乳児コースが受講できるようになったのを機会に勉強を始めました。
 保育参観のかわりに、1日保育士という制度を設けています。保護者の方は年に1度でも子どもといっしょに保育室に入ってもらい、見学しながらお手伝いをしてもらっています。お母さんが来ている子どもはいつもの様子とは違ってしまいますが、それでも普段の保育園の様子が見えるようになったと言ってくださいます。また、保育士が気づかないことをアドバイスしていただくことも多く、その後の保育の参考にさせてもらっています。
 
2 「保育所地域活動事業」に取り組むようになった動機
地域の老人施設との交流
 新しい保育園であることで、民生児童委員の方と話し合いをしながら地域の方との交流を進めてきました。また、隣にはショートステイ、デイサービスを行うケアプラザがあります。その施設との交流も行うことにしました。
 
地域の子育て支援のサークル
 みどり保育園で行っていた育児サークルの経験から、そのニーズが多いのではないかと考えました。そこで開園してしばらくして少し余裕が出てきたので、育児サークルの参加者を募集してみようかという話になりました。とりあえず、園の前にある掲示板に募集のポスターを貼ってみました。思ったより効果があり、次々に参加申し込みがあり驚いてしまいました。中には、いつもの公園に行っても友達がいないと思ったら保育園の園庭で遊んでいたので、という問い合わせもありました。結局、園前の掲示板だけで参加者がいっぱいになってしまいました。
 あまりたくさんの方への対応は難しいと思ったので、1日10〜12組の親子を定員にして整理しました。そして、4グループに分け、1ヶ月に1度くらい参加できるように組みました。
 
3 「放課後児童の保育」に取り組むようになった動機
 開園したばかりの園でしたので、最初の年は年長児5歳児の希望者は少なく15人の定員に対し6人入園しました。途中で1人転園してきて、卒業のときは7人でした。卒業を前にして3人の保護者の方から、小学校へ行ってからの放課後の保育について相談されました。せめて、2年生までは保育園で過ごせないかとの要望でした。
 横浜には「はまっ子ふれあいスクール」という制度があります。保育園から一番近い能見台小学校でも、ちょうど13年度から始まりました。
 ここで「はまっ子ふれあいスクール」について少し触れたいと思います。趣旨は次のように紹介されています。『学校施設の一部を活用して、子どもの「遊び場」を確保し、遊びを通じた異年齢児間の交流を促進することによって、創造性や自主性、社交性等を養い、子どもの健全育成を図ることを目的としている』ということです。時間は授業終了後から18時までとなっているのですが、16時以降は保護者のお迎えが必要です。また中心的な活動は「遊び」ということで宿題や勉強をすることはしないようです。子どもたちの自主的な「遊び」を重視しながらチーフパートナー、サブパートナー、アシスタントパートナーという3名のスタッフが安全に安心して遊べるように子どもたちの遊びの世話をしています。参加できるのはその小学校に通学している1〜6年生で申込書を提出し登録をします。費用はかかりません。「管理者付き校庭開放」と、市長は議会で言っています。
 一方、学童保育は共働き家庭、一人親家庭のような昼間親が家にいない世帯の子どもたちの居場所を確保するためのもので「親の都合と子どもの都合と、どちらも大切」というためのシステムとなっています。子どもの出欠の確認、予定外の出欠に対して親に確認する。子どもの様子を親に連絡する連絡帳。指導員と父母が子どもの様子などを相談する父母会が全ての学童にあります。また、おやつがあるのが「はまっ子」との大きな違いでしょう。
 はまっ子ふれあいスクールは「遊び場を提供する事業」、学童保育は「遊び場と生活の場を提供する事業」となっているようです。
 このような状況の中で、はまっ子ふれあいスクールだけでは不足の部分を学童保育施設のない能見台地区で保育園が補ってほしい、というのが保護者の要望でした。はまっ子ふれあいスクールを16時に出てきてその後保育園で今までのように過ごすことができないかと言うことでした。主任たちと何とか預かる方法があるか考えました。金沢区内では保育園の敷地内で行っているところがありましたので見学に行きました。敷地内にあり、建物も法人で建設していますが運営は別に組織を作り行っていました。また、希望する児童の兄が以前、横須賀で保育園内にある学童に通っていたということでしたので、そちらにも見学に行きました。そこは園内の一部屋を使って行っているということでしたが、隣の敷地にある塾が閉鎖するとの事でそちらへの移転を考えているということでした。どちらも保育園内の敷地で行っていますが、保育園が直接行うのではないということでした。
 地域開放の専用の部屋をいずれ作りたいと思い、新築中に計画していたスペースがあったのですが、その後病後児保育の依頼がありその目的のために使っていました。そのため、その部屋を放課後小学生に開放することは不可能になっていました。4時以降のランチルーム、2階の幼児クラス前の小ホールが、空いているスペースでした。
 とりあえず、男児1人女児2人合計3人の卒園児をそちらのスペースを使って宿題や勉強をし、そのほかの時間は、卒園まで縦割り保育でいっしょに生活していた幼児クラスの子どもたちと園庭や室内で遊ぶということで、やってみようかということではじめました。主任が以前いた幼稚園で行われる小学生の勉強会を担当していたということだったので、そこでやっていたことを参考に行うことにしました。







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