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(2)−2 キンダー南館保育園の実践―放課後児童の保育―
 当園の放課後児童の保育は、正式名が山形市南沼原地区児童育成クラブキンダーシューレです。法人の人格はありませんが、山形市の児童福祉課が所管となり、地区、特に学区割で実施しています。従って当放課後児童の保育は、キンダー南館保育園を卒園した子ども達、一時保育として実施している低学年児童、更に同地区の幼稚園、保育園を卒園した子ども達が、現在73名在籍しています。当園は、昭和61年4月にオープン致しました。開設した理由は、保育園を卒園した保護者のこんな声からです。「保育園時代は、早朝から夕方遅くまで保育をしてもらい、安心して働くことが出来ました。でも、学校に入ると放課後の過ごし方が心配で仕事を辞めなければならない」等々でした。社会状況が増々変化する中、男女共同参画社会が進む中で、親も安心して働き続けたいと思うのは当然の事と思います。しかし、留守家庭になる子どもを思い「もし、子どもが交通事故に遭ったら・・・」「火の始末が心配」といった不安や、一人で過ごす寂しさを考えたら、友達と楽しく生き生きとした放課後を過ごさせたいと思うのが親です。その受け皿となる学童保育は、とても大きい存在です。学童保育を始めてからは、毎年利用者も多く「小学校に行っても学童があるから安心」と喜ばれています。
 全国では、5月1日の時点で、入所児童が53万8千人に上り、5年間で1.6倍に増加しています。(全国学童保育連絡協議会調査)山形市内でも、今年開設された2クラブを含め28クラブになりました。児童数は1222人です。当クラブの子ども達は、山形市南沼原小学校に通っています。従来から生徒が多い地区でありましたが、現在もなお、市内1のマンモス校となりました。キンダー南館保育園と同様、日々都市化が進み、周囲には大型電器店やスーパー等が出店し、住宅が建ち並び、驚くばかりの土地開発が進んでいる地区です。児童数も増え、全学年で955名となり、教室が不足し15年度には、プレハブの教室が建ちました。学校も教育改革がなされ、平成13年から取り組んでいる「さんさんプラン」、少人数学級(1年〜5年生は1学級児童数が33人以内とし、6学年は担任の他に1名の教師を加配)としています。実施以前は、40人クラスもあり、「人数が多く、一人一人手をかけてあげられない」という言葉が担任の先生から聞かれ、ゆとりの無い事を痛感しました。平成15年には市内でも少ない2学期制が導入されました。学校・家庭・学童と連携を持ち、親にお便りや口頭で伝えたり、学校との連絡も、担任の先生に様子を聞いたり相談しています。急速に変化する時代において、今は公園や原っぱで小さい子も混じって遊ぶ姿も見られず、昔は、危険な事や悪い事等見つけたら、自分の子どもではなくても叱ってくれる人もありました。テレビゲーム等が流行し、家の中で友達といながらも、一人でゲームをしているというのが、実情のようです。これでは、社会性が育ちません。学童保育は、遊びを通して人と触れ合い関わり学べる良さがあります。
 平成10年4月1日より、学童保育は法制化され、「放課後児童健全育成事業」という名称で、児童福祉法と社会福祉事業法に位置づけられた事業となりました。又、児童福祉法の条文には、「遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業」と位置づけられています。毎日の保育は、「ただいま」という子ども達の元気な声で始まります。私達指導員は、一人一人の児童を大切に考え、学童に3つの目標を置いております。
1. 遊べる子になろう。
●体を使って外でたくさん遊びましょう。
●遊びのルールを覚え、危険を予測したりトラブルがあった時、自分で考えられる子になりましょう。
2. 生活習慣を身につけましょう。
●身の回りの、整理整頓が出来る子になりましょう。
3. 学習の定着。
●宿題、自主勉強を進んでしましょう。
 
 又、毎日の習慣として実践している事は、(1)帰って来てからの手洗い、うがい。(2)宿題です。休日前以外は、宿題を終えて遊ぶという約束をしています。一人ずつ点検をしていますが、個人差もあり1対1で指導する場合もあります。季節の行事等も入れて、日々の保育にめりはりをつけています。普段は、室内でお絵かき(女の子が好きで、友達を書いたり、時には指導員も書いてくれます)、トランプ、ベーブレード(男の子に人気で、家の人から持って来てもらっているおもちゃ)、折り紙等。戸外では、隣にあるキンダー南館保育園の園庭で、ドッチボールやサッカー、鬼ごっこ、砂遊び、縄跳び、近くの公園に出掛けたり遊んだりしています。遊んだ後のおやつも格別です。当番表を作成し、その日の当番がテーブルを拭いたり、おやつを準備したり片付けたりと、責任ある仕事をします。その結果、自分から生活している場を、きれいにしようという気持ちが芽生えてきます。春には、川原でよもぎを摘んで、自分達で団子を作ったりして食べます。きゅうりやスイカ、栗、りんごと自家製の差し入れもあったりで、おやつが豊かになります。春夏冬の長期や、臨時休業の一日保育の場合は、8時30分より開園しています。
 夕方は、親の要望もあり、5月から7時までの延長保育も実施しています。学習時間は、午前中の涼しい9時から10時までの1時間ですが、毎日の積み重ねが大切だと思います。ほとんどの子が、書店で購入した物を持って来る中で、その子の為に苦手な所を含め父と母が交替で、手作り問題を作成したものを持参する子どもがいます。わが子に対する親の深い愛情が伝わり、指導員も胸が熱くなりました。どんなに忙しくても、親として出来る事を子どもにしてあげる。何よりの愛情かと思いました。今年の夏休みは、体験学習として、仙台の科学博物館に行く計画を立てました。3年生全員が中心となり、1・2年生をどの様に誘導し、参加させるかという事を考えました。その結果、班行動をする事に決定し、3年生をリーダーとして自分たちで班編成、しおり作りに奮闘しました。バス、電車、地下鉄と乗り換え、現地館内では迷子になった子もいたりで、リーダーとしての役割は容易な事ではありませんでした。しかし体験する中で思いやったり、感じたりすべてが学びにつながりました。毎年秋には、学校とは別にキンダー・キンダー南館・キンダーシューレの大運動会で、初めての試み「よさこいソーラン」にチャレンジしました。毎日の練習に汗を流し、みんなで協力して成し遂げた喜びを共に味わい、一人一人の自信にもつながりました。親からも、「難しい踊りではありましたが、よく体を動かして鳴子もよく響いていましたので、感動して見ていました」「とても新鮮に感じました。娘もしっかり踊っていたので、こっちまで嬉しくなりました。一つ一つが成長を感じられる事なので、来年も続けて欲しい」等々嬉しい言葉をもらいました。1年生のRちゃんが書いた作文です。「私は、運動会に出ました。運動会は楽しかったです。練習よりも上手に踊れて嬉しかったです。みんなに会えて嬉しかったです」みんなと一緒だから楽しかったし嬉しかったのです。小さい子が、お母さんの所まで一生懸命走ってゴールする姿、年長児さんの立派なマーチング。色々な姿が、この子の目に映ったに違いありません。
 青少年の犯罪が、頻繁に報道されている世の中です。どうしてもっと早く対処出来なかったのかと、残念でなりません。特に学童期は事の善し悪しの判別に乏しく、学童内でも誰かがやったから、自分もやったという話をよく耳にします。大人が、きちんと教えていかなければいけない事です。体験を通して色々な事を学び、心身共に豊かに育ってくれる事を、私達は願っています。又、たくさんの子ども達と出会い、この仕事が出来る事を、一生の宝にしたいと思います。
 
保育園の運動会に参加
「よさこいソーラン決まってるネ!!」
 
おやつ作り
「この桜もちおいしいよ」
 
(3)これらの活動についての考察
 今回、地域活動並びに放課後児童保育の保育活動を実践して考えられる事は、地域の子育て支援は、保育園が地域に開かれた社会的存在としての位置づけと、地域の中での人材発掘、つまり人材の資源や地域で求めている支援の中味、住民の実態の把握等どれだけの情報が保育園として得ることができるのか、果たして、努力をしていくことができるのか等、地域との連携がとても大事になってきます。また保育園自身が保育に関する事をしっかり学び、専門機関と情報を交換し合いながら窓口を大きく開き、広い意味での子育てを応援するという意識も大切なことです。時代が複雑化し解決していく事柄も多いのですが、保育者である前に『人』であることを自覚し、人格を磨き、知識を得る向上心も又必要条件と思います。
 
(4)今後の展望
 家庭で保育に専念している親は、外に出て働いている親に比べて、子育てや自分自身の生き方に対して漠然とした不安や、自分の生き方や子育てに自信を失っている傾向が見られます。従って、子育てをして行く方法もなかなか見出せず、育児ノイローゼ等の現象も見られます。地域活動や放課後児童の保育は、地域社会においての子育て支援として欠かすことができません。子育て支援を突き詰めて考えてみますと、保育園は地域の子どもたちが健全に育って行く応援者として、また、子どもや児童の親をサポートしながら、子どもの育ちを通して、親になる喜びを実感できるようにすること、保育園は地域の中で、いわば連携役としての働きをしていくことが、大きな子育て支援となるのではないでしょうか。保育園は地域の中での「家庭」であります。いつ、どんな時でも、子どもは勿論のこと親や祖父母、また、これから結婚しようとする人、母親になる人、誰でもが相談や、あるいは見聞できる場であり、それを受けとめることが大切と思います。今求められている保育園へのニーズと役割をしっかり自覚し、常に研鑽と努力が必要であると思います。保育園が従来から担ってきたいろいろな使命を充実させ、各部門・専門機関と情報を提供しあい、子どもの成長していくプロセスを社会に対し積極的に提言していく姿勢を今後の課題として、さらに前進して行くべきと考えています。







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