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講演II
座長 大林一彦
(大阪小児科医会副会長)
演題 乳幼児の運動機能の発達
講師 小林 芳文(横浜国立大学教授)
プロフィール
専門領域:障害児教育学、発達運動学、ムーブメント教育療法学
 
 1944年生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了、教育学博士(東京大学)、東京大学助手(教育学部)。国立特殊教育総合研究所研究員。昭和54年、横浜国立大学助教授。昭和63年、横浜国立大学教授、現在に至る(障害児教育講座)。
 平成元年から平成2年までニューヨーク州立大学客員教授。平成7年から平成11年まで横浜国立大学附属養護学校校長を併任、平成7年から東京学芸大学連合大学院博士課程教授を併任。昭和61年から台湾台南師範大学、韓国テグ大学、中華民国自閉症総会など9回にわたって招へいされ、講義とムーブメント教育療法の実技指導を行う。
 
日本ムーブメント教育療法協会理事(平成2年〜)
藤沢市障害児教育協議会委員(平成4年〜平成13年)
放送大学講師(平成5年〜)
読売光と愛の事業団研究助成審査委員(平成2年〜)
横浜市障害児就学指導委員会委員長(平成10年〜)
日本レクリエーション協会 福祉レクリエーション推進委員会委員(平成15年〜)
 
主な著書名 出版社名 発行年 備考
ムーブメント教育の実践1、2 学研 昭和61年 共著
発達指導ステップガイド 日本文化科学社
ムーブメント教育実践プログラム全7巻 コレール社 〃62年 編著
重度重複障害児の感覚運動指導全3巻 平成4年
子どもの発達と運動教育 大修館書店 共訳
運動・動作の指導内容と方法 学研 〃6年
いきいきムーブメント教育
―保育・福祉の実践現場から―
福村出版 〃7年 編著
子どものためのムーブメント教育プログラム
―新しい体育への挑戦―
大修館書店 共著
幼児の体力発達
―平衡機能の実証的分析―
多賀出版 〃10年 単著
LD児・ADHD児が蘇る身体運動 大修館書店 〃13年
自立活動の展開と指導(全4巻) 明治図書 編著
医療スタッフのためのムーブメントセラピー メディカ出版 〃15年 編著
 
 
 子どもの全体発達や成長を支える大切な運動機能の役割について、医学や教育学など多くの領域から話題提供がされるようになりました。運動機能とは何か、そのプロセスは如何に行われるのか、心身の健康にそれはどのように位置づくか等について、特にこの機能の発達の支えを必要としている乳幼児を中心に障害を持つ子どもに結びつけた話題を進めたいと思います。
 
1. 動くこと(身体運動)は、生命の源である
(1)重度運動機能障害の脳性まひAさんに関わって
・楽しく身体を動かすことで笑顔が育てられる
・運動で脳幹が活性化できる
(2)運動機能の発達は他の諸機能の発達を促す
・行動の3軸「からだ・こころ・あたま」を刺激する
 
2. 運動には種類がある(広がり)
(1)安定性(姿勢の能力)一非移動性、身体軸を静止した状態での動き
頸の持ち上げ、座位、つかまり立ち、立位、片足立ち
 
(2)移動性(移動の能力)一垂直面、水平面での位置の移動の動き
這う、ころがる、歩く、走る、跳ぶ、スキップ、ギャロップ、ホップ
 
(3)操作性(操作の能力)一身体と物との接触による動きの能力
つかむ、はなす、にぎる、投げる、打つ、押す、引く、叩く、蹴る
 
3. 運動機能は、運動の種類が増えることで発達する
(1)操作性運動を支えるために、姿勢運動・移動運動が必要となる
・姿勢運動(身体軸)から操作性運動(手の参加)への発達
・移動性運動から操作性運動への発達
(2)多様な運動の機会が、運動の種類を広げる
・運動遊びの重要性
 
4. 運動発達の階段(流れ)
(1)運動発達ステージ(7ステージ)(小林芳文による)
第1ステージ(原始反射支配ステージ)0〜6ケ月
運動発達課題;定頸、寝返り
第2ステージ(前歩行ステージ)7〜12ヶ月
運動発達課題;座位、這いずり、膝立ち、つかまり立ち
第3ステージ(歩行確立ステージ)13〜18ケ月
運動発達課題;一人歩き
第4ステージ(粗大運動ステージ)19〜36ヶ月
運動発達課題;踏み越え、簡単な操作運動、早足
第5ステージ(調整運動ステージ)37〜48ヶ月
運動発達課題;片足立ち、ホップ、ギャロップ
第6ステージ(知覚運動ステージ)49〜60ヶ月
運動発達課題;目と手の協応運動、連合運動
第7ステージ(複合応用運動ステージ)61〜72ヶ月
運動発達課題;創造的運動
 
(2)MEPA(ムーブメント教育プログラムアセスメント)の7ステージ
・これは、障害乳幼児の運動支援の発達チェック表に使用されている
・参考;小林芳文編著「乳幼児と障害児の発達指導ステップガイド」日本文化科学社、1986
 
(3)運動発達7ステージを乗り越えること
・反射レベルから各レベルを越えて基本運動を獲得していく。
 
5. 身体運動の一般的法則を知り運動機能発達を支える
(1)中枢神経に支配される運動機能の傾向
1)頭部から足部への傾向
2)中枢から末梢への傾向
3)全体から部分への傾向
4)両側から片側への傾向
5)粗大から微細筋への傾向
 
(2)中枢神経系(CNS)の成熟レベルと運動発達
1)脊髄レベル・・・口角反射、吸てつ反射、交叉性伸展反射
2)脳幹レベル・・・頸反射・・・対称性・非対称性
3)中脳レベル・・・立ち直り反射一頭部、躯幹
4)脳皮質レベル・・・平衡反応、傾斜反応
 
6. 子どもの運動機能発達に役立つムーブメント教育
(1)「こころ・からだ・あたま」が関わる運動
・体育と異なる運動の展開
・様々な遊具を使って行う運動
 
(2)障害児に利益をもたらすムーブメント教育
・運動の面白さを経験するために
・様々な感覚を参加させる運動のために
 
(3)ムーブメント教育で統合保育に生かす
・ダウン症候群児の早期教育に
・ADHD(注意欠陥多動障害)の多動コントロールに
 
参考資料
小林芳文著「LD児・ADHD児が蘇る身体運動」大修館書店、2001







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