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分科会
分科会の進行について
 分科会の時間配分(案)は次のとおりです。
 
11:30 昼食を取りながら、役割者(助言者、提案者、司会者)の顔合わせ兼打合せ
12:30 司会者による役割者の紹介及び進め方についての説明
12:35 助言者による基調講義(レクチャー)
(50〜60分程度)
13:30 提案者による提言又は実践報告(20分程度)
助言者によるコメント
14:00 休憩
14:10 助言者又は提案者から討議テーマの提示。
司会者によるグループ分け
(6人程度のバズグループを編成する)
14:20 バズセッション開始
15:10 各グループからの発表
助言者によるコメント
16:00 司会者による閉会(各分科会ごとに流れ解散)
 
<バズセッションとは>
 参加者各自がグループの共通の目的を意識し、互いの発言を通じ相互に影響し合い、目的達成をしていく過程を指している。
 多くの場合バズセッションというやり方をとるが、バズセッションとは何かというと、バズとは虫の羽の音をいい、音を出すことで即ち声を出して話をするということ。セッションとは会合のことをいう。
 
<バズセッションのすすめ方>
 メンバー全員が参画する方式で、7〜10人位を1グループとし、参加者の人員に応じてグループの数が増減する。
 円卓形式で行い、メンバーはおおいに活発に発言する。意見も出さずに終始控目で教えを乞いに来たといった態度は捨てる。
1. 全員が討議に参画すること。
2. 討議の中で相互作用があること。討議の中で人と人とのふれあいが行われることが大切である。
3. 討議には目的意識をもって臨み、目的に向かって討議の進行がなされるようリーダーを互いに選び、進行を効果的に行う。
4. リーダーは単に司会というのではなく自らも発言し、討議の進行を把握し、発言をしない人には発言の誘導をはかるようにする。
5. 討議の経路は、次のように行われる。
 
問題を提示する
問題点をあげる
問題の分析を行う(原因追求)
解決策をいろいろな角度から出す
名案の比較検討を行う
相互の意見を調整する
グループの結論をまとめる
 
6. 討議の雰囲気は、なんでも言える空気であることが重要である、この雰囲気によってメンバーは自分の発言を通じ「グループに貢献している」とする意識が高められる。
7. リーダーとメンバーの関係は形式化されたものではない。グループの状況によって、リーダーのコントロールには幅をもって望むことである。
 
 
 これらを通じて
(1)何が現実に起こっているかを判断し
(2)それに関連または含まれている諸問題を見分け
(3)可能な一連の処置を見出していく
 
乳児保育における家庭との連携
助言者 阿部 和子(聖徳大学短期大学部教授)
提案者 間庭 幸子(本庄市・小島南保育園園長)
司会者 高橋 保子(武蔵村山市・村山中藤保育園園長)
 
乳児保育における家庭との連携
阿部 和子(聖徳大学短期大学部教授)
 
プロフィール(略歴)
1970年 東京家政大学家政学部児童学科卒業
1972年 日本女子大学大学院家政学研修科児童学専攻修了
1977年 聖徳学園短期大学保育科専任講師
1999年 聖徳大学短期大学部保育科教授(現在に至る)
2002年 聖徳大学大学院児童学科児童学専攻保育学コース(兼務)
1998年 青山学院女子短期大学専攻科非常勤講師(現在に至る)
2001年 東洋英和女学院大学非常勤講師(現在に至る)
最近の主な著書
・共著「保育研究」新しい保育ニーズと保育所 1995
・編著 乳児保育−子どもの豊かな育ちを求めて−萌文書林(ほうぶんしょりん) 1995
・子どもの心の育ち−0歳から3歳まで− 萌文書林 1999
・続子どもの育ち−3歳から5歳まで− 萌文書林 2001
・乳幼児期の「心の教育」を考える フレーベル館 2001
・編著 乳児保育 ミネルヴァ書房 2002
・保育者のために家族援助論 2003(12月予定)など
 
I. はじめに
 同じように保育園の生活をしている子どもたちであるが、その光景は一人一人異なる。その子どもたちは、具体的な場(その子どもの家庭、通う保育園など)でのかかわりを通してそれぞれに発達する。
 具体的なやりとりを通して発達すると考えると、子どもは家庭や保育園において、どのような思いや考えで世話(やりとり)をされているかによって発達のおおよそが方向付けられると言える。さらに、家庭における生活と保育園における生活がおおよそ同じ方向にあるのか、異なる方向にあるのかにおいても、方向付けられる。このように、子どもの発達が具体的な場における具体的なやりとりに方向付けられることを考えると、それだけで一人一人異なった発達の姿を現す。
 多くの親(特に母親)が子どもの発達の姿に不安を抱き、どのように対応したらいいのか分らないと言い、子どもの発達にかかわる多くの専門家が、その親自身の在り方や親子関係の在り方が気がかりだと言う。
 子どもを取り巻く大人たちが、子どもが生活する、そして発達する具体的な場への心配のまなざしを強めている。
 
II. 1日24時間のなかで「子どもの生活」を考える
 発達初期の子どもの生活は、その時間の流れさえ意識できない混沌とした時間の中にいるのかもしれない。生理的なリズムのなかでまどろんでいる状態からスタートすると考えると、1日という単位ではなく、それぞれの子どもの生理的なリズムを単位として生活を組みたてるところからスタートしなければならない。この生活を十分に保証されることを通して、その場で生活する「生活のリズム」が獲得され、1日24時間のなかで子どもの生活を考える必要性が出てくる。乳児期(3歳未満)は、まさに、生理的なリズムから生活のリズムへ移行する時期である。発達初期の生活の基盤である生理的なリズムが十分に保証されるためにも、家庭と保育所の連携が重要になる。
 
1. 乳児保育における家庭との連携の重要性
(1)乳児の生活の特徴
(1)内外未分化
(2)周囲の大人の世話(欲求を満たす)を前提にした生活
 
・人は、今ある力を使って生活をする。生れたばかりの子どもは、「生きようとする欲求」とその生命を支える最低限の力を持って生まれる。その持って生まれた力を周囲の大人に読み取ってもらい、出来ない部分を手伝ってもらいながら生活を始める
・人は自分が何であるのか(周囲が何であるのか)を理解する前から、周囲と融合したような状態で、やりとりを開始する。
・融合した状態の周囲から欲求を満たしてもらうかかわりを通して、周囲を理解し「自分(自己)」を獲得していく。
 周囲を分化させ、その周囲から自分(自己)を分化させる(発達する)。
・周囲と融和したような状態で生活している(内外未分化)ということは、たとえて言うと、子どもを取り巻く周囲の雰囲気の中に漂っているような状態と比喩することができる。
・子どもの周囲が安定していて穏やかな雰囲気であるとしたら、子どもはそのなかにいて、その雰囲気を取り込んで「(自分自身が)穏やかになる」。
・周囲の人たちの安定した関係、穏やかな関係(連携)が重要になる。
 
(1)現代の家庭・親の育ちとの関係のなかで
・1960年代以降に生まれた親たち
(おおよそ1960年を境にして、生活が変わり価値観も変る)
・衣食住から衣食住遊へ −「遊」に重きを置いた生活
・子どもに同一化?親に同一化?
・たとえ、どこで生活しようとも子どもの発達に必要な経験群がある。
・家庭において、発達に必要な経験群が不足しているとしたら、とりあえず、それを補うところが保育園である。ここに、子どもの24時間を視野に入れた生活を考える必要性が出てくる。
 
2. 連携の取り方−親子関係を支えるという視点から
(1)子どもは関係のなかで育つ
事例1
 ゆうちゃんは、1歳児クラスの女の子です。あまり保育園にきません。ある月など2日間しか来ていません。登園時間も連絡なしで10時が過ぎていたり、迎えの時間もでたらめです。保育園でのゆうちゃんの様子は、登園時から、オムツがぐっしょりとぬれ、お尻は赤くただれています。朝ご飯も食べてきていないので、昼食は手づかみでほおばります。また落ち着きがなく、他の子が遊んでいる玩具を取り上げたり、叩いたり押したりと乱暴です。そしてよく泣きます。保育者は、ゆうちゃんの不安定な生活のリズムと行動が気がかりです。
 
(2)心を砕くこと − 期が熟すということ
事例2
 産休明けから入園してきたゆかりちゃん。母乳で育てられていたゆかりちゃんはなかなか哺乳瓶になれてくれない。保育園では担当の保育者や看護師が中心になり努力するが、一向に飲んでくれない。母親にも「先に哺乳瓶で飲ませる努力をしてほしい。それから、おっぱいを」と頼むと、母親は返事をするが、ゆかりちゃんは一向に飲む気配がありません。こんな小さなあかちゃんがミルクを飲まずに泣いていることに心をいためるとともに、これから夏にさしかかることもありどうしたらいいのか混乱します。
 
(3)価値観が異なる親との連携のために − 親が親になることを手伝うことを通して
・生まれた時から親だったわけではない。
・親の前に、一人の人間としても生きている。親になる前は誰かの子どもとして生きていた。
・結婚して親になることは、これまでの生活からすると未知の部分である。当然「こんなはずではなかった」部分があるはずである。
・「こんなはずではなかった」部分の修正が迫られるが、それを意識することが出来ずにいたり、この修正がうまくいかなかったりして、親自身が混乱する。
 
 子どもが小さければ小さいほど、親の混乱に巻き込まれた生活になる。生きることの基本的な力や生きる意欲を、親との生活の一こま一こまのやりとりを通して獲得する時期に、親が混乱し、子どもの生活を振りまわすことが、子どもの生きる意欲(今を越える欲求)を育てる環境としては好ましくない。
 
・親自身の混乱に付き合いながら、親が混乱を整理できるように手伝う。保育者は直接的には親の抱える困難に付き合うことになるが、そのことが子どもの育ちの環境を整えることにつながる。
 
 親が親になることを支えることになる。子どもは一人では生きられないこと、そして自立する過程においては、親が必ずしもよしと考えるような生活や行動ばかりではないことを具体的に伝えたり、子どもの保育を通して、つまり、子どもの育ちを通して伝える。「未熟な子どもを養育する義務」があることを確認する作業に付き合うことになる。もちろん、子どもを育てるのは義務だけではできません。親が「子どもとの生活」を引き受けてこれまでの自分自身の行き方を修正することに付き合う。
 
・これまでの生き方や考え方を裁くのではなく、その辛さを受け入れられることから親は勇気を出すことができる。親の親としての生き方を修正していく過程につきあう。
・人が集まるところにはもめごとがつきものである。親の苦しみや混乱に付き合いながら、親自身で混乱を整理したり、子どもとの生活を整理したりするのを手伝いながら、付き合いつづけることで、親は問題解決の方法を獲得していく
・連携は、特別にあるのではなく、日常の保育を通しておこなうものである。







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