――調査:人口研――
夫婦出生力の変化(1)
――結婚と出産に関する全国調査(平成12年)――
国立社会保障・人口問題研究所
高橋重郷・金子隆一・福田亘孝・釜野さおり・大石亜希子・佐々井司
池ノ上正子・三田房美・岩澤美帆・守泉理恵
I、少子化の現状と夫婦出生力
日本の人口総数は一億数千万人という大規模な人口を抱えながら、低い合計特殊出生率(以下「出生率」)のもと、年ごとに生まれる赤ちゃんの数が減少している。二〇〇〇年の出生率、つまり日本人女性一人が一生の間に生む子どもの数の水準は一・三六人、二〇〇二年が一・三二人という現状にある。一・三二人ということは、一人の女性が次世代の女性を約○・六四人生んでいることになる。このことは親世代と子世代の比率の関係から見て、下の世代ほど人口が少なくなっていくことを意味し、若年人口の減少と高齢化の進行、さらに日本の総人口の減少が生じることになる。
このような出生率低下を引き起こす人口学的要因は、直接的な要因として結婚した女性の子どもの産み方の変化(夫婦出生行動の変化)と結婚している人々の割合の変化(結婚行動の変化)がある。この二つの要因が一九七〇年代半ばから出生率低下にどのように影響したのかを分析すると、一九七五〜一九八○年の出生率低下のうち、八六・九%は結婚行動の変化、すなわち未婚率上昇に伴う結婚の変化によるものであった。また一九八○〜一九九〇年についても同様に八九・三%が結婚行動の変化によるものであった。しかしながら、一九九〇〜二〇〇〇年については、夫婦出生行動の変化によって出生率低下の六一・四%がもたらされ、一九九〇年代の出生率低下が結婚行動変化によるもののみならず夫婦出生行動の変化が強く影響し始めたことを明らかにしている。
図1 出生数及び合計特殊出生率の推移
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資料:厚生省大臣官房統計情報部「人口動態統計」各年版
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このように一九九〇年代から顕著にみられるようになった夫婦出生力の低下という少子化現象の新たな展開の中で、国立社会保障・人口問題研究所は二〇〇二(平成十四)年六月、第十二回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)を実施した。
表1 TFRの変化に対する結婚行動変化および夫婦出生行動変化の影響測定
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注1:この分析は、結婚行動や出生行動が極めて安定していた1940年〜51年生まれの女性を標準パターンとし、それ以降の世代で結婚行動および夫婦の出生行動に変化がないとした場合のTFRをシミュレーションによって求め、TFRの実績値と比較する事により、それぞれの行動変化の影響を測定したものである。この表は、国立社会保障・人口問題研究所の岩澤美帆氏の計算による。
注2:合計特殊出生率は、用いた分母人口が異なるため、人口動態統計公表数値と異なる。
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表II-1-1 |
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調査別にみた、平均出会い年齢、平均初婚年齢、平均交際期間、夫妻の平均年齢差
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調査(調査年次) |
夫 |
妻 |
平均
交際期間 |
夫妻の
平均年齢差 |
平均出会い 年齢 |
平均初婚 年齢 |
平均出会い 年齢 |
平均初婚 年齢 |
総数 |
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第9回調査(1987年) |
25.7歳 |
28.2 |
22.7歳 |
25.3 |
2.5年 |
2.9年 |
第10回調査(1992年) |
25.4 |
28.3 |
22.8 |
25.7 |
2.9 |
2.6 |
第11回調査(1997年) |
25.1 |
28.4 |
22.7 |
26.1 |
3.4 |
2.4 |
第12回調査(2002年) |
24.9 |
28.5 |
23.2 |
26.8 |
3.6 |
1.7 |
恋愛結婚 |
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第9回調査(1987年) |
24.1歳 |
27.3 |
21.6歳 |
24.7 |
3.1年 |
2.6年 |
第10回調査(1992年) |
24.2 |
27.6 |
21.9 |
25.3 |
3.4 |
2.3 |
第11回調査(1997年) |
24.2 |
27.9 |
22.1 |
25.7 |
3.7 |
2.2 |
第12回調査(2002年) |
24.2 |
28.0 |
22.7 |
26.5 |
3.8 |
1.5 |
見合い結婚 |
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第9回調査(1987年) |
30.2歳 |
30.9 |
26.3歳 |
27.0 |
0.7年 |
4.0年 |
第10回調査(1992年) |
31.1 |
32.0 |
26.9 |
27.8 |
0.9 |
4.2 |
第11回調査(1997年) |
32.0 |
33.0 |
28.0 |
29.0 |
1.0 |
4.0 |
第12回調査(2002年) |
33.2 |
34.3 |
29.3 |
30.4 |
1.1 |
3.9 |
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注:各調査時点より過去5年間に結婚した初婚どうしの夫婦(結婚の過程が不詳の夫婦を除く)について。出会いのきっかけ(恋愛結婚・見合い結婚)不詳については掲載を省略。ただし、総数にはこれを含む。標本数(総数、恋愛結婚、見合い結婚):第9回(1,289、974、314)、第10回(1,342、1,102、223)、第11回(1,145、997、123)、第12回(1,221、1,090、91)。
この調査自体は、戦前の一九四〇(昭和十五)年に第一回、ついで戦後の一九五二(昭和二七)年に第二回が行われて以降、五年ごとに「出産力調査」の名称で実施されてきたが、第十回調査(一九九二年)以降名称を「出生動向基本調査」に変更して今回に至っている。第八回調査(一九八二年)からは夫婦を対象とする夫婦調査に加えて、独身者を対象とする独身者調査を同時実施している。以下に報告する内容は、第十二回調査の夫婦調査についてのもので、夫婦の結婚過程、夫婦の出生行動、出生意欲、就業と出産・子育て、結婚・家族意識等についてまとめたものである。
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