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――保育園を考える親の会から[25]――
保育園オリエンテーション(1)
保育園を考える親の会
 保育園を考える親の会では、毎年、四月入園の申請時期前後に「はじめての保育園」というオリエンテーションを開いています。この催しでは、これから保育園に子どもを預けようという親(親予備軍)を対象に、保育園の入園までの準備や入園後のこと、共働き生活のノウハウなどについて、参加者の質問を受けながら、先輩である会員・スタッフがアドバイスや情報提供をしています。
 今年度の「はじめての保育園」は、二月十六日(日)、東京渋谷区の東京ウィメンズプラザで開催しました。育児雑誌に情報が掲載されたこともあり、会場は満員。前半にグループトーク、後半に全体トークという構成で、たくさんの情報・アドバイスが交換されました。
 親たちがどんなことを心配し、また保育園歴の長い親たちはそれにどう答えたのか、今回と次回は、機関紙に掲載されたイベント報告の中から、保育園や家庭生活の日常に関連の深い部分をテーマごとに抜き出してご紹介しましょう。
 Qは参加者の質問で、Aは会員・スタッフの答えです。要旨のみになっていますが、実際にはいろいろな体験談をまじえながらの受け答えが行われました。なお、内容はテーマ別に分けましたので、発言順ではありません。
 
認可保育園に入れなかったら?
 
Q 認可保育園に申請しても落ちたらどうする?
A 私は役所に行って助成金が出ている認可外保育園のリストを入手してさがした。実際にまだ預ける必要がなくても認可外に登録して実績を作り、空きが出たときの優先順位を上げられるように準備した。役所に通ってアピールもした(効果があったかどうかはわかりませんが)。認可外の保育園には助成金の出ている保育所以外にも駅型、ベビーホテルなどもあり、質もさまざま。自分の目でしっかりと確かめること。
Q インターネットなどで保育園の評判を聞く方法もありますが。
A 認可外はいろいろあってひとくくりにできない。安心して預けられるいい認可外は親がコツコツ探していくしかない。インターネットは親の個人的な価値観が入るので、一〇〇%信用できないかも。ちゃんと自分で施設を見学する、保育士さんと話して相性をみるとかして探しましょう。
Q 園庭はあったほうがいいのか?保育園を選ぶ際に園庭はどの程度重要で、子どもにどんな影響があるか?
A 園庭があるのにこしたことはないが、なければ、かわりに近くに公園があるか、毎日お散歩をしていたりいろいろ工夫しているか、よく聞いてみたほうがいい。
A 園庭は乳児よりも二歳児以降、外遊びがほしい年齢にはより必要性が高いと感じる。
Q 子どもにとって、長時間預ける場合、どういう保育園がよいか。官庁街のある保育園は子どもの入れ替わりが多く、あまり友だちができないと聞いた。
A (そういうデメリットが気になるなら、ということで)私の場合は認可園プラス二重保育にして、十八時以降はシッターさんに家庭に連れて帰ってもらって、みてもらっていた。長時間同じ場所にい続けるより、家庭的環境に戻ることで、子どもも落ち着くようだ。
 
仕事を休みにくい、残業があるとき
 
Q 保育園の平日の行事はどうこなすか?
A 自治体によっては、それほど平日の行事がないところもあるし、前もって日程がわかるので、それで仕事を調整しておける。
A うちの市は平日の行事が多かったが、午前の二時間ぐらいで終わるので、半休をとって対応する人も。ただし半日で行事が終わると、そのまま親と帰宅できる子と、親が仕事に行くので保育園に残される子がいて、後者が泣き出すので、きちんと話して、子どもにわかってもらうことも必要。
Q 残業は多いし、土日に仕事が入ることがあるが?
A ファミリーサポートやベビーシッターさん、祖父母の手を借りるなどの方法もある。シッターさんは、前もって気の合う人を見つけておければ、その後も心強い。たとえば、余裕のある育休中に試しに頼んでみたりすると、予行演習にもなるし、プロから子育ての仕方を個人教授してもらえるチャンスにもなる。預けている保育園の非常勤の保育士さんに頼んだら、個人的に二重保育を引き受けてもらえた例もある。
Q 保育園でお迎えの遅刻って、どうなるんですか?
A 何の連絡もせずに遅刻!では信頼関係が築けない。保育園に「遅れる」という連絡をしておけば、待ってくれる。また、まだゼロ才児組では難しいかもしれないが、少し成長して親同士が仲良くなっておけば、ピンチのとき、お友だちのお迎えのときにいっしょに引き取ってもらい、少しの間そのお家に居させてもらう、ということもできるようになる。
Q 延長保育をお願いする予定だが、それでも急な事情でどうしてもお迎えに間に合わないとき、保育園は待ってくれる?
A ベビーシッター会社と契約しておくなど、緊急時の対策をしておいたほうがいい。保育園によっては遅刻にきびしいところもあるし、遅刻が度重なると信頼関係が築けない。子どもにもかわいそうなことになるので、保育園の閉まる時間を過ぎることのないように気をつけましょう。
Q 保育園にお盆休みはある?
A 認可の公立はまずない。認可の私立はあるかもしれない。園は開いていても、仕事を休めるなら休んでほしいという協力日とかがある(注:保育士の夏休みの関係で調整している。しかし厚生労働省の見解では、認可保育園は保護者に夏休みを強制できない)。
A うちの園では夏休みの予定を記入する書類を渡される。
A 十二月二十八日から一月三日の年始年末は公立も休みのところが多い。また年度始めの四月一日も準備日として休みにする園もある(注:厚生労働省の見解では、認可保育園の休業日は祝祭日・年末年始のみということになっている)。
 
子どもの病気のとき
 
Q 病気の時の呼び出しは?
A 預け始めはよく呼び出される。三七・五度を超えると親の職場に連絡を入れることになっている保育園が多い。シッターさんとか呼び出しされたときのマンパワーを確保した方がよいかも。実際は夫婦で交代で休んだりしてしのいでいる人が多いのでは。
A 男性は病気の呼び出しのときこそ職場に(子どもの存在を)アピールするチャンス(男性スタッフ)。
A 入所して時間がたつと、保育士と親との間に信頼関係ができたり、子どもの体調が保育園でわかってくるようになって、三七・五度で電話連絡はあるが、即お迎えしなくてもいい場合もある。私の場合は、子どもは熱があっても元気な子なので、三九度でも五時までみてくれる。さすがにぐったりしているようなときは、すぐにお迎えに行きますが。
Q 発熱などによる保育園からの呼び出しって?
A 預けはじめの初年度は、だいたい年間二十日くらいは病気になるという調査結果があるので、覚悟は必要。たいていの場合は、保育園からは「今すぐ来てください」と言われるよりも「できるだけ早くお迎えにきてください」と言われることのほうが多い。親はなるべく早く行きたいが、仕事の都合によっては困難な状況も。そういうときは、相談すると「別室で静かに休ませてようすを見ましょう」と言ってくれることもある。いずれにせよ、夫婦で連絡を取り合うなど、最善の対処をしよう。たとえば病気でお休みが長引いたときなども、どちらか片方の親がずっと休みを取るより交替で休むなどすれば、お互いに少しでも楽になるはず。
Q 入園後のフォロー、子どものケアで気をつけることは?
A 入園後しばらくは子どもの病気が多く、入院も経験した。保育士から「お子さんは集団保育に向いていないかも」と言われ、傷ついた。今はすっかり慣れて、保育園生活を満喫している。
A 保育士の言葉には、特に第一子の親は傷つきやすい。うちは、一番上の子(小学生)の習いごとの送り迎え用にシッターさんを確保しているので、保育園児の下の子たちの病気のときも、そのシッターさんにお願いしている。親も段々といろんな知恵がついてくる。
 
 
長時間保育で大丈夫?
Q 保育園に長時間預けた場合の子どものストレスは?
A 私の子どもはもう大きいので、保育園時代のことを聞くと「だんだんみんな帰って暗い園に残されるのはさびしかったけど、楽しいこともたくさんあったよ」と言っている。親が心配するほどストレスは感じていないし、それがあってもしっかり乗り越えている。
A 異年齢の子どもと遊ぶ、保育園でゆっくりした時間を持つなどは、保育園でしかできない体験。夕暮れは人数が少なくてさびしいかもしれないが、先生やおもちゃを独占できてうれしいという気持ちだってある。プラスの要素を見つけていくといいのでは。
A 保育園でいっぱい動きすぎて帰宅するとぐったり、ということがあった(一歳二、三カ月のとき)。入って半年は長時間保育は子どもにしんどい。生活のリズムを崩さないことが大切。
A 延長保育を利用したりして長時間保育をするのは、家庭生活のほうが忙しくなってたいへんな部分もある。子どもが起きている時間帯は子どもと向き合わない作業は後回しにして、子どもと触れ合うことを大切にしていきましょう(そうできるように、夫婦で協力する)。ただし、長時間保育が悪というわけではない。保育時間の長さよりも、親が自信をもって子育てをしているかどうかのほうが子どもの心身の発育に影響があると言われている(夜間保育園連盟調査)。子どもと短くても密な時間をもち、自信をもてるようにすることが大切。
(次号へ続く)
(保育園を考える親の会代表 普光院亜紀)
*「保育園を考える親の会」は保育園に子どもを預けて働く親のネットワーク。情報交換、支え合い、学び合いの活動をしている。







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