――食品衛生法を改正します(4)――
たべものの話(104)
道野英司
新年度が始まり、我が家の一人娘もとうとう小学六年生になった。最近は「チョー生意気」になって、私が「マンガを読むな!」、「テレビばかり見ずに勉強しろ!」などと言っても、「パパだってゴルフばかり見てるでしょ!」と間髪をいれずに反論してくる始末であり、父親の言うことなど聞く耳持たないという態度である。まあ、私も娘の年頃にはそれまで絶対的な存在だった親の欠点や自分の気にくわない部分に気付いて、何かと親に反発していたかなと思いつつ、足元を見られないように威厳を保とうと努力する今日この頃である。
さて、先月号に続き、今国会に厚生労働省が提出した「食品衛生法等の一部を改正する法律案」について、今月は厚生労働省や都道府県の食品衛生を確保するためのシステムがどのように変わるか紹介したいと思う。
まずは、大規模・広域食中毒対策についてである。現在、医師から食中毒患者の届出を受けた保健所長は原因を調査して、原因食品の流通をストップして、患者のさらなる増加の防止措置を図っているが、近年の食品の大量製造や流通の広域化を反映して、平成八年の堺市学童集団下痢症事件、平成十二年の雪印乳業食中毒事件などの大規模・広域食中毒が発生しており、その際にはひとつの保健所や都道府県では対応しきれない。今回の改正においては、大規模・広域食中毒の発生時に厚生労働大臣が都道府県知事に対して原因調査の推進を図るため、技術的なアドバイスをしたり、周辺都道府県との連携を促して、事件事故発生時には国が責任を持って対応することを明示した。
次に、国や都道府県が実施する食品安全対策の国民理解の推進である。本稿をお読みの方も国や都道府県、保健所がどのような食品の安全確保のための施策を講じているかあまりご承知ないのではないかと思う。例えば全国の四二〇万件の食品関係施設に毎年立入検査を行っているとか、毎年一〇万件以上の残留農薬検査が行われ、違反は数十件に過ぎないことなどあまりご存じないと思う。これは食品安全分野の行政情報が食中毒予防対策に偏っており、行政システムに関する情報提供が不十分であったためではないか、と考えている。また、マスコミ報道も危険情報は露出度が高いが、安全情報はほとんど扱われない。このため、厚生労働省が食品安全対策に関する基本的な考え方を示す「指針」を作成し、都道府県がそれぞれの地域の実情を踏まえ、年度毎にどのような検査などの監視指導を行うかの「計画」を策定することとし、これらの「指針」や「計画」の策定時に国民、住民からの意見聴取、監視指導の実施状況の公表などを行うこととした。
また、最近の食品安全問題はBSE、遺伝子組換え食品、残留農薬など高度かつ多様な検査技術が必要とされるが、検査件数の増加していることもあって、一部の都道府県が対応できない検査項目があったり、輸入食品検査ももっと件数を増やすべきという指摘もある。このため、一定の公正・中立性や検査能力を備える民間法人に国や都道府県が行う試験分析業務を委託することを可能とし、厚生労働省では平成十五年度から検疫所が行う検査の一部を外部委託することとした。
さらに食肉の安全性確保対策については、これまでも病原性大腸菌O-157による食中毒事件の発生に対応して、食肉処理段階における衛生管理基準を強化し、加工肉などの中心部まで加熱が必要な場合の食肉に対する表示の義務化を進めてきたが、我が国におけるBSEの発生をきっかけに、生産から消費に至るまでの一貫した食肉の安全性確保体制の充実が望まれている。このため、家畜の生産の状況に応じた安全検査の実施を行政の責務として法律上明確化し、さらに厚生労働大臣と農林水産大臣の連携、BSE発生時など緊急の場合、国が直接検査を行うことを明記した。
また、BSE全頭検査が一昨年から始まったが、この検査は六時間程度かかるため、皮革加工の原料にする牛の皮も肉とともにBSE検査が終了するまでと畜場内で保留されている。ところが皮の冷蔵保管施設がないため、気温が高い夏場には皮が腐ってしまって皮関係の事業者に大きな影響が発生するようになった。元来、皮にはBSEの感染性はないので、検査終了前に腐敗防止のため、と畜場外の定められた場所で塩漬け加工ができるように今回の法律改正で対応することとし、規制の強化だけではなく、合理性が欠ける部分については見直しを行った。
上記の内容は今回の改正の一部であるが、上記のほか国民の意見の聴取の推進、行政の国民への情報提供機会の確保なども新たに規定を定め、食品衛生確保への国や都道府県の新たな取り組みを推進することとしている。
(厚生労働省食品保健部監視安全課課長補佐)
平成15年度保育所職員研修会実施予定表
種別 |
開催別 |
開催場所 |
開催日 |
〈保育所長研修会〉 |
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保育所長ゼミナール |
全国 |
東京都江東区(ホテルイースト21東京) |
H15年9月17日(水)〜19日(金) |
初任保育所長研修会 |
全国 |
静岡県熱海市(ホテル大野屋) |
H15年9月30日(火)〜10月3日(金) |
主任保育士(初任者指導保育士)
研修会 |
北海道・東北地区 |
宮城県松島海岸(ホテル松島大観荘) |
H15年9月2日(火)〜5日(金) |
関東地区 |
川崎市幸区(川崎市産業振興会館) |
H16年2月17日(火)〜20日(金) |
北信越・東海地区 |
石川県加賀市(ゆのくに天祥) |
H15年11月18日(火)〜21日(金) |
近畿・中国・四国地区 |
岡山県倉敷市(倉敷アイビースクエア) |
H16年1月20日(火)〜23日(金) |
九州地区 |
沖縄県那覇市(沖縄ハーバービューホテル) |
H16年2月3日(火)〜6日(金) |
地域子育て支援センター担当者
研修会B型 |
全国 |
東京都千代田区(ホテルエドモント) |
H15年12月2日(火)〜5日(金) |
地域子育て支援センター担当者
研修会A型
−保育ソーシャルワーク研修会− |
全国 |
東京都豊島区(サンシャインシティプリンスホテル) |
H15年7月29日(火)〜8月1日(金) |
障害児保育担当者研修会 |
全国 |
千葉県浦安市(東京ベイホテル東急) |
H15年7月8日(火)〜11日(金) |
乳児保育担当者研修会 |
全国 |
千葉県浦安市(東京ベイホテル東急) |
H15年6月24日(火)〜27日(金) |
障害児保育担当保育士研修会 |
各県単位で実施 |
各都道府県(2回) |
実施都道府県が指定する日 |
乳児保育研修会 |
各県単位で実施 |
各都道府県(5回) |
実施都道府県が指定する日 |
保育所健康・安全保育研修会 |
各県単位で実施 |
各都道府県(5回) |
実施都道府県が指定する日 |
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日本財団補助事業
(仮題)保育所保健関係職員セミナー |
東日本地区 |
未定 |
未定 |
西日本地区 |
未定 |
未定 |
保育所子育て相談推進セミナー |
東日本 |
未定 |
未定 |
西日本 |
未定 |
未定 |
子どもの感性を育てる表現研修会 |
各県単位で実施 |
未定 |
未定 |
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独自事業
平成15年度保育を高める全国研修大会(日本保育協会創立40周年記念事業) |
全国 |
東京都千代田区(砂防会館)
(懇親会は赤坂プリンスホテル) |
H15年10月23日(木)〜24日(金) |
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その他
第25回全国青年保育者会議 |
全国 |
栃木県宇都宮市
(ホテル東日本宇都宮) |
H15年7月8日(火)〜10日(木) |
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(新しい情報は日本保育協会のホームページを参照)
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社会福祉施設等におけるレジオネラ症防止対策の状況把握について(概要)
1 目的
一部の社会福祉施設において国の基準値を大幅に超えるレジオネラ菌が検出されており、また、一部の入浴施設においては、レジオネラ症集団感染により、数名の死者を含む極めて多数の患者が生じたことから、循環式浴槽を保有する社会福祉施設等におけるレジオネラ症防止対策の状況を把握し、今後のレジオネラ防止対策の参考に資するため調査を行った。
2 調査概要
(1)調査期間
平成十四年十二月十三日〜平成十四年十二月二六日
(2)調査内容
社会福祉施設における循環式浴槽の保有状況、衛生状態、各地方自治体による指導の状況等について
(3)調査方法
都道府県、指定都市、中核市に調査票を送付し、(4)の調査対象施設について、平成十三年度以降に各地方自治体が実施した監査等及び施設が行った自主検査により、既に把握している内容について記入。
(4)調査対象施設
救護施設、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、身体障害者療護施設、知的障害者更生施設(入所)、知的障害児施設(自閉症児施設を除く)、精神障害者生活訓練施設、乳児院、児童養護施設、児童自立支援施設
○八九都道府県市からの有効回答率は、八九・三%である。
○地方公共団体が施設における循環式浴槽の保有状況を把握している割合は、四二・四%である。
○循環式浴槽を保有しているのは、九、三二五施設のうち一、七六六施設(一八・九%)である。
特に、介護老人保健施設については、二、五〇一施設のうち八二七施設(三三・一%)が循環式浴槽を保有している。
○循環式浴槽の衛生状態を把握していないのは、一、七六六施設のうち六九八施設(三九・五%)である。
特に、知的障害者更生施設においては、九四施設のうち四四施設(四六・八%)、特別養護老人ホームにおいては、七三一施設のうち三二五施設(四四・五%)について循環式浴槽の衛生状態を把握していない。
○循環式浴槽の衛生状態を把握しているのは、一、七六六施設のうち一、〇六八施設(六〇・五%)であり、このうち、衛生状態が不適正であったのは一四三施設(一三・四%)である。
特に介護老人保健施設については、五四一施設のうち八九施設(一六・五%)が不適正となっている。
○衛生状態が不適正であった一四三施設のうち、地方公共団体が改善指導を行ったのは一二四施設(八六・七%)であり、このうち指導後に改善された施設は八〇施設(六四・五%)であり、指導後の改善状況を把握していない施設は三七施設(二九・八%)である。
〈15・3・3 厚生労働省雇用均等・児童家庭局資料〉
3 結果の概要
|
施設数 |
循環式浴槽の保有 |
循環式浴槽の衛生状態 |
保有
して
いる |
保有
して
いない |
把握
して
いない |
把握状況 |
衛生状態 |
不適正な施設に
対する改善指導 |
指導後の衛生状態 |
把握
して
いる |
把握
して
いない |
適正 |
不適正 |
実施 |
未実施 |
改善 |
未改善 |
把握
して
いない |
a |
b |
c |
d |
e |
f |
g |
h |
i |
j |
k |
l |
m |
施設数 |
9,325 |
1,766 |
3,949 |
3,610 |
1,068 |
698 |
925 |
143 |
124 |
19 |
80 |
7 |
37 |
割合
(%) |
|
b/a |
c/a |
d/a |
e/b |
f/b |
g/e |
h/e |
i/h |
i/h |
k/i |
l/i |
m/i |
|
18.9 |
42.3 |
38.7 |
60.5 |
39.5 |
86.6 |
13.4 |
86.7 |
13.3 |
64.5 |
5.6 |
29.8 |
|
*都道府県等から有効回答があったものについて記載(有効回答率・・・89.3%)
新版レジオネラ症防止指針(概要)
1、これまでの経緯(略)
2、レジオネラ症について
(1)レジオネラ属菌
・レジオネラ属菌は、自然界の土壌と淡水に生息するグラム陰性の桿菌であり、菌体の一端に一本の鞭毛があり、運動性である。
・一般に二〇〜五〇℃で繁殖し、三六℃前後で最もよく繁殖する。
・レジオネラ属菌はアメーバなどの原生動物の体内で増殖するため、これらの生物が生息する生物膜(バイオフィルム)の内部にレジオネラ属菌が保護されている。
(2)レジオネラ症
1)レジオネラ症
レジオネラ属菌の感染によりおこる疾患であり、レジオネラ肺炎と肺炎にならない自然治癒型のポンティアック熱の二つの病型がある。
なお、レジオネラ症は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」において四類感染症に指定され、患者をレジオネラ症と診断したすべての医師は診断後七日以内に患者の年齢、性別、病状、診断法等について最寄りの保健所へ届け出なければならないこととなっている。
2)レジオネラ症の感染源
これまでに給水・給湯設備、冷却塔水、循環式浴槽、加湿器、水景施設、蓄熱槽等からの感染が報告されている。
3)レジオネラ症の感染経路
汚染水のエアロゾルの吸入のほか、汚染水の吸引、嚥下・経口感染等が考えられる。
(3)レジオネラ属菌の検査について(略)
3、給水設備におけるレジオネラ防止対策
水道水は塩素による消毒が義務づけられていることから、水道水におけるレジオネラ汚染の可能性は低い。しかしながら、簡易専用水道に該当しない一部の小規模の貯水槽などのうち維持管理が適正に行われていないために、水道水の滞留による残留塩素の消失や水温の上昇、あるいは藻類等の微生物による著しい汚染がみられる給水系統では注意が必要である。
設計・施工及び維持管理に関するレジオネラ防止対策の基本となる考え方は以下のとおり。
・外部からのレジオネラ属菌の侵入防止
・できるだけ水温を二〇℃以下に維持
・機器及び配管内におけるスケール、スラッジ、藻類などの発生防止
・死水域の発生防止
・残留塩素の確保
・エアロゾルを発生する機器の使用を避ける
また、「中央管理方式の空気調和設備等の維持管理及び清掃等に係る技術上の基準」(昭和五七年厚生省告示第一九四号)(以下「厚生省告示」という。)に基づき貯水槽の清掃を行う必要がある。その際、作業者のレジオネラ汚染を防止する観点から、マスク等の防護対策をとって作業することが必要である。
さらに、建築物における衛生的環境の確保に関する法律(以下「ビル管理法」という。)に基づく水質検査項目を検査するとともに、感染因子の点数に対応したレジオネラ属菌の検査を行う必要がある。
4、給湯設備におけるレジオネラ防止対策(略)
5、冷却塔水におけるレジオネラ防止対策(略)
6、循環式浴槽におけるレジオネラ防止対策
循環式浴槽とは浴槽水を循環させ、その循環経路に粗大汚濁物を除去する装置(プレフィルタまたはヘアキャッチャ)を設けるとともに、ろ材を充填したろ過器を設置して浴槽水を浄化し、水の消費量と排出量を抑制するものである。
循環式浴槽では、湯が閉鎖系内を循環しているため、これらの微生物が生物浄化方式のろ材表面及びその内部、浴槽、管路系の内壁等に定着し、各種微生物が入浴者の体表等に由来する有機物質を栄養源として増殖する。
平成十年五月には都内特別養護老人ホームにおいて生物浄化方式の循環式浴槽を感染源とするレジオネラ症患者が十二例発生し、うち一例がレジオネラ肺炎で死亡したほか、平成十一年六月愛知県において自宅の二四時間風呂で水中分娩で出産した新生児がレジオネラ属菌が原因と疑われる肺膿瘍で死亡するなど、循環式浴槽はレジオネラ症の感染源となっている。
このため、汚染と感染を防止するためには、循環式浴槽の使用に当たって、以下の点に留意して設計、設置、及び維持管理を行う必要がある。
・設定段階から適切な衛生管理が可能となるよう配慮
・製造者等はシステム全体の安全性に関する管理マニュアルを作成し、維持管理者に提示
・浴槽水をシャワー、打たせ湯などに使用しない
・気泡ジェット等のエアロゾル発生器具の使用を避ける
・塩素剤による浴槽水の消毒を行う場合は、遊離残留塩素濃度を〇・二〜〇・四mg/Lを一日二時間以上保つ
・浴槽の換水は、衛生管理の水準を保つよう定期的に行うことが望ましい
・浴槽の全換水を行うときは、塩素剤による洗浄・消毒を行った後に、浴槽の清掃を実施する。ろ過器を設置した浴槽の場合には、ろ過装置、配管を含めた洗浄、消毒を行う。
・浴槽内部、ろ過器等の毛髪、あか及び生物膜の有無を定期的に点検、除去
・レジオネラ属菌の検査を感染因子の点数を目安に定期的に実施
なお、家庭で使用される循環式浴槽(いわゆる二四時間風呂)についても、上記を踏まえ維持管理等を行う必要がある。
7、加湿器におけるレジオネラ防止対策
加湿器のうちレジオネラ症の原因となる可能性のあるものは、超音波方式と回転霧化・遠心噴霧の二方式である。
そのうち、ビル空調機に組み込まれている加湿器については、そこで使用される水が水道水質基準に準じることとされているため、使用期間中レジオネラ属菌による汚染が起こることは少ないと考えられるが、使用開始時及び終了時には水抜き及び清掃を確実に行う必要がある。
家庭用の加湿器については、タンクの汚染が起こりやすく、長期間水を貯めたまま放置される可能性が高く、またタンク内に生成される生物膜も保持されるため危険である。平成八年には、病院の新生児室において家庭用の超音波加湿器が感染源と思われるレジオネラ症が発生し、一名死亡した。
加湿器の使用の際には、タンクの内面を絶えず洗浄して清潔にしておくことが安全上重要である。
8、水景施設におけるレジオネラ防止対策
水景施設とは、噴水、池などの人工的に造られた水環境をいう。近年では、このような施設がホテルのロビー、地下街等屋内に設置される場合も多く、レジオネラ属菌の汚染が報告されている。汚染防止対策としては、エアロゾルがあまり発生しない水景施設を選択するとともに、風向き等に注意することが必要である。
〈11・11・26 生活衛生局長通知〉
爽やかな春、四月。小学校に入学する子どもたち、進学する若者たち、そして新しく社会人になる青年たち。節目の時であり、それぞれの人生に幸多かれと祈りたい。
前回までで「規制改革論」について概ね論じ尽くしたように思う。それほど深みのある議論ではなく、特に社会福祉や医療の「規制改革論」は「補助基準の改正論」と同義であり、用語として不適切であったように思っている。
そこで今回から私たちの仕事の原点に立ち戻って、「社会福祉における医療との連携」について考えてみたい。
かつて社会福祉には保健や医療が包摂されていた。偉大な社会事業家には、必ず優れた医師が盟友として存在していた。社会福祉が「貧困」と「病気」に因る死を限り無く遠ざけようとする営みである以上、当然であろう。その意味でハンセン病や結核の療養所は、医療・福祉施設であり、赤ヒゲの医者は、医師であるとともに社会事業家であった。
戦後、生活保護制度が確立し、そこから児童福祉、障害者福祉、老人福祉などの諸制度が生み出される。一九六〇年代になると国民皆保険が成立し、その後、医療制度と社会福祉制度が分立する中で、それぞれの制度の充実が図られていく。
今、例えば保育所において、「病後児保育」や「子どもの食事」が大きな課題になっているが、そもそも「福祉の世界」から保健や医療を排除したところに、問題の発端があったように思う。逆に、言えば、医療や保健が「福祉の世界」から撤退したことが、保育所の苦労の始まりであったように思っている。
私たちは必要から考えることを忘れ、制度から考え行動するようになってしまった。先の二つの問題や行き詰まりの原因はここにあるのではあるまいか。
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