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議連世話人会で橋本会長が挨拶
 平成十五年三月六日、自由民主党全国保育関係議員連盟世話人会が開催された。熊代昭彦事務局長の司会で開会、冒頭に橋本龍太郎会長は「今また保育所の周辺がざわざわし始めた。経済財政諮問会議では六月を意見集約の時期としており、私はこのように子どものことを経済的な面からのみ議論していることがいいと思っていない。
 二度目の幼保一元化論争の際に、私は保育側の参考人として臨教審の面々に対してこうお答えした。保育所保育指針の中で最大の特徴は子どもの一日の暮らしのリズムの中に教育を取り入れていく、そこが大切なことで、乳幼児の発達段階に応じた教育を考えるときに、学校教育法に定めるようなカリキュラムを持った教育というものはなじまない。当時臨教審においてこの主張を認めていただき、幼保それぞれの特色を生かして今日まで来た。
 今、保育所を取り巻く環境が大きく変わり、その保育所が子どもたちに与えていかなければならない家庭に変わる環境というものも、早朝保育から深夜保育まで含めて非常に大きなウエートを占めるようになった。家庭に変わる環境としての保育施設にとって調理室がないということで、本当に家庭に変わる機能を果たせるのか」などと挨拶した。
 高井厚生労働省保育課長より昨今の保育をめぐる動向の説明があり、これを受けて各世話人から活発な意見が出された。その後、上村芳夫日本保育協会理事が、幼保一元化と調理室撤廃への反対について理解と協力を求めた。時間を大幅に超過して活発な議論が交わされ、最後に田村憲久事務局次長より、議員連盟若手議員による保育の勉強会の設置が提案され、了承された。
 
 当日の参加議員は次のとおり。
 津島雄二、長勢甚遠、宮腰光寛、宮下創平、田村憲久、斎藤十朗、伊吹文明、熊代昭彦、橋本龍太郎、真鍋賢二、太田誠一、持永和見、南野智恵子、下地幹部(敬称略、本人のみ)
 
 
 
――日保協速報15・2・14――
構造改革特区で幼保合同活動事業
 厚生労働省は十四日、構造改革特区での保育分野の規制改革について、幼児数の減少により集団保育が困難な状況にあり、幼児の健全育成のために特に必要があるとして認定を受けた市区町村を対象に、保育所と幼稚園との併設施設での合同保育を特例として認める方針を決定しました。
 共用化指針による施設において、原則として定員の範囲内であって、(1)児童福祉施設最低基準を満たしている、(2)職員が保育士資格と幼稚園教諭免許を併有している、(3)保育内容は保育所保育指針と幼稚園教育要領に沿ったものであるなど、保育所児の処遇が確保されるような一定の条件のもとで、保育所の保育室において保育所児と幼稚園児を合同保育することを認めたものです。
 
 厚生労働省の対応案の概要とイメージについては別紙のとおりです。
 
<イメージ>
※0〜2歳児は対象外
 
別紙
保育所の保育室における保育所児と幼稚園児の合同活動事業
(構造改革第2次提案への対応案)
[1. 対象地域]
 幼児数の減少、幼児同士の活動機会の減少等により、適正規模の集団保育が困難な状況にあり、幼児の健全育成のため特に必要があるとして認定を受けた地方公共団体
 
[2. 特例の内容]
 共用化指針による施設において、一定の条件を満たす場合、原則として、定員の範囲内で保育所の保育室において、保育所児と幼稚園児を保育することを認める
 
[3. 条件(保育所児の処遇の確保)]
(1)保育所児と幼稚園児を一緒に保育する保育室は、幼児(保育所児・幼稚園児)数の合計により児童福祉施設最低基準(面積・職員配置)を満たしていること
(2)この場合、職員は、保育士資格と幼稚園教諭免許を併有し、保育士及び幼稚園教諭を兼務していること
(3)保育内容は、保育所保育指針と幼稚園教育要領に沿ったものであること
 
――日保協速報15・2・20――
規制改革の動向について
 去る二月十七日、総合規制改革会議では「規制改革推進のためのアクションプラン」を経済財政諮問会議に提出し、同日に了承されました。中では重点検討事項として「幼保一元化」が挙げられ、「遅くとも二年以内に規制改革を実施する旨の実施時期の目標を設定する」ことと明言しています。また構造改革特別区域推進本部との連携を強化し、構造改革特区での実現も視野に入れています。今後、経済財政諮問会議を中心とした各会議の動向には注目する必要があります。
 当協会では、これら規制改革の動きに対し、これまでどおり施設の共用化の枠の中で行うべきもので、制度的な一元化には反対しており、別添のとおり全国保育関係議員連盟の各議員への要請活動を展開しています。
 各支部においても、地元選出の議員への要請活動を積極的にお願いいたします。
 
規制改革推進のためのアクションプラン
(平成十五年二月十七日 総合規制改革会議)
1、基本方針
 「官製市場」(医療、福祉、教育、農業など)、「都市再生」、「労働市場」などの分野を中心に、規制改革の加速的推進を図ることにより、新規需要・雇用の創出、豊かな国民生活の実現を図ることが重要である。
 このため、総合規制改革会議は、これらの分野等における最重要事項を「重点検討事項」と位置付け、本年六月までの間を当面の目標として、当会議等が有するあらゆる機能・権限等を行使しつつ集中審議を行い、その成果を「重点検討事項に関する答申(仮称)としてとりまとめ、公表する。その際、「重点検討事項」は、遅くとも二年以内に規制改革を実現する(新たな法制度等の施行を完了する)旨の実施時期の目標を設定する。
 なお、これらの検討の際には、「構造改革特区での実現」をも視野に入れつつ、構造改革特別区域推進本部との一層の連携強化を図る。
 
2、当面のスケジュール
(1)総合規制改革会議は、「重点検討事項」のうち、二月下旬に予定されている構造改革特別区域推進本部において「特区で実施可能な規制の特例措置」として「構造改革特別区域基本方針」に盛り込まれる事項について、構造改革特区推進本部に対し、最大限の協力を行う。
(2)当会議は、「重点検討事項」のうち、上記「構造改革特別区域基本方針」に盛り込まれない事項について、経済財政諮問会議、構造改革特別区域推進本部とも一層の連携強化を図りつつ検討を行い、本年六月を目途に、「重点検討事項に関する答申(仮称)」をとりまとめ、公表する。その際、関係各省に対して、現在当会議及び規制改革担当大臣が有するあらゆる機能・権限等を行使する。
(3)なお、経済財政諮問会議においても、「重点検討事項」についての集中審議等を行い、得られた成果と残された課題を、六月の「基本方針2003」に反映させることを期待する。
 
3、実現に向けた具体的手法
(1)総合規制改革会議令(第五条第一項・二項)に基づく、当会議による関係行政機関の長に対する「資料提出・意見開陳・説明の要求等」
(2)総合規制改革会議(ワーキンググループを含む)におけるプレス等も含めた「公開討論」の実施、議事録の公開等
(3)規制改革担当大臣や総合規制改革会議議長と関係各省の大臣又はハイレベル事務方との直接折衝
(4)内閣府設置法(第十二条第二項)に基づく、規制改革担当大臣による関係行政機関の長に対する「勧告の実施」
 
4、重点検討事項
(1)医療
(1)株式会社等による医療機関経営の解禁
(2)いわゆる「混合診療」の解禁(保険診療と保険外診療の併用)
(3)労働者派遣業務の医療分野(医師・看護師等)への対象拡大
(4)医薬品の一般小売店における販売
(2)福祉・保育等
(5)幼稚園・保育所の一元化
(3)教育
(6)株式会社、NPO等による学校経営の解禁
(7)大学・学部・学科の設置等の自由化
(4)農業
(8)株式会社等による農地取得の解禁
(5)都市再生
(9)高層住宅に関する抜本的な容積率の緩和
(6)労働
(10)職業紹介事業の地方自治体・民間事業者への開放促進
(7)その他特区において一部認められているものの、早急に全国展開を図る必要性の高いもの
(11)株式会社等による特別養護老人ホーム経営の解禁
(12)株式会社等による農業経営(農地のリース方式)の解禁
 
規制改革・構造改革特区の飛躍的な推進に向けて
(平成十五年二月十七日 牛尾治朗 奥田碩 本間正明 吉川洋)
 規制改革は、経済的規制を中心に着実に進み、構造改革の“目に見える成果”である。「構造改革特区」という新たな手法も、規制改革の突破口として、高く評価できる。しかし、医療・福祉・教育など社会的規制の分野では、いまだ改革が遅れている。この分野でのサービスの向上や雇用機会の創出は、高齢化が進む日本にとってきわめて重要であり、ここで飛躍的に規制改革を進める必要がある。
 そこで、下記の事項を平成十五年における規制改革の目標として設定し、その進捗状況をフォローアップすべきである。
1、政府は、「重点検討事項」についてアクションプランを着実に実施し、遅くとも二年以内に規制改革を実現(新たな法制度等の施行を完了する)していただきたい。諮問会議は、当面、三か月後を目途に進捗状況を把握し、必要に応じて集中審議等を行うこととする。そして、その成果と残された課題を、『基本方針2003』にとりまとめる。
2、生活に身近なサービスの充実、地域での雇用創出や経済活性化の観点から諮問会議は特に下記項目の改革を重視し、全国か特区かのいずれか最適の方法での早期実現をめざす。また、規制改革が実際にどのような効果をもたらしたかについて評価を行い、十分な効果が生まれるまで改革を進め、「成果主義の規制改革」を実現する。
・株式会社、NPO等による学校経営の解禁
・株式会社等による医療機関経営の解禁
・いわゆる「混合診療」の解禁(保険診療と保険外診療の併用)
・医薬品の一般小売店における販売の解禁
・幼稚園・保育所の一元化
・株式会社等による農地取得の解禁
3、特区で実施した規制の特例措置については、民間有識者を中心とする評価機関を、なるべく早期に特区推進本部に設置し、総合規制改革会議と連結しつつ、規制所管省庁ではなく内閣主導での評価体制を整える。
4、規制改革推進体制を強化するために、次期推進組織への勧告権の付与等を検討することが必要である。
 
第3回経済財政諮問会議資料抜粋
(構造改革特区の検討状況について:鴻池祥肇構造改革特区担当大臣提出)
[2. 教育・福祉分野]
[要望内容]
 幼稚園と保育所を併設し一体的に運営するという形ではなく、同一の設置主体が同一の施設、職員により運営するという完全な「幼保一元化」を実現したい。そのため、以下の規制改革を実現して欲しい。
(1)「保育に欠ける」子だけではなく、誰でも保育所に入所できる。
(2)保育所の「調理室」設置義務の廃止等により幼稚園と保育所の施設整備基準を統一する。
(3)幼稚園教諭免許と保育士資格の違いによらず、保育又は幼児教育のどちらも行えるようにする。
(4)幼稚園教諭と保育士の配置基準や、幼稚園教育要領と保育所保育指針を一本化する。
 
[文部科学省及び厚生労働省の回答ぶり]
・保育所を所管する厚生労働省、幼稚園を所管する文部科学省ともに、保育所、幼稚園のそれぞれ異なる機能、役割があるとした上で、制度を一元化するのではなく、運用の改善ですでに保育所と幼稚園を一体的に運営できるようにしていると主張。(厚生労働省は、今回保育所における保育幼児と幼稚園児の合同保育を容認)
 
[当方の考え]
・保育所、幼稚園の機能、役割については国が一律に規定すべきものではなく、多くの地方公共団体等から提案が出されていることを踏まえ、特区において幼保の制度的な一元化を試行してみるべき。
 
第3回経済財政諮問会議資料抜粋
(規制改革を加速的に推進する「12の重点検討事項」:宮内義彦総合規制改革会議議長提出)
福祉・保育等
5. 幼稚園・保育所の一元化
 幼稚園と保育所については、単に両者の併設と連携を推進するということにとどまらず、「幼児教育・保育サービスを総合的に提供する機関」として、同一の設置主体・施設・職員による運営が可能な「幼保一元化」を実現するため、例えば、以下の「制度統一」を実施。
 
(1)施設設備基準の統一:保育所のみに義務付けられている「調理室」設置義務の廃止など。
(2)資格・配置基準の統一:幼稚園教諭と保育士
(3)入所(園)対象の統一:保育に欠ける子のみならず誰でも可能に。
 
〈厚生労働省・文部科学省の反対理由〉
 幼稚園・保育所にはそれぞれ異なる機能・役割があるため、制度の統一(一元化)は困難。運用の改善により、両者の連携強化を推進することで、一体的な運営が可能。
 
〈当会議の考え方〉
 幼稚園・保育所に求められる機能・役割は、むしろ地域毎に異なるのが当然。根拠に乏しい。「保育所における調理室設置義務」などについては全国規模での規制改革を進めるとともに、例えば特区においては、幼稚園と保育園に関する様々な「制度の統一」を断行してみるべき。
 
幼保一元化と保育所調理室撤廃の議論について
 政府の構造改革特別区推進本部は、構造改革特区第二次提案を公表しました。そのなかで、幼保一元化及び調理室の必置要件の緩和などが提案されております。
 構造改革特区に幼保一元化施設を作り、実施するもので、特定地区での幼保一元化の成功事例をもとに、全国的に実施しようとするものです。
 保育園と幼稚園はそれぞれに異なった機能をもち、これまでの政府の方針のとおり、施設の共用化の枠内で行うべきであり、私どもは、制度的な幼保一元化に反対します。
 また、「保育園の調理室必置要件を緩和」すべきと提案されていますが、保育園の給食は、健康状態や成長にあわせた食事が提供されており、身体や心の栄養として乳幼児の健全な発育のために不可欠なものです。効率性優先の調理室廃は絶対に避けるべきです。
(平成十五年二月十三日 社会福祉法人日本保育協会)
 
 
 
――図書――
日本子ども資料年鑑 2003
 編集/日本子ども家庭総合研究所
 子どもを本当に知っているだろうか。子どもに関するあらゆるデータがこれ一冊でそろいます。
 読者からは「これだけの情報を独自に入手することは不可能」、「子どもに関わる重要なデータを総合的に収集していることが他にない特長」、「職員研究会や研究紀要に使用」などがある。
◇主な内容は次のとおり
1、人口動態と子ども 2、家族・家庭 3、発育・発達 4、保健・医療 5、栄養・食生活 6、子どもと家族の福祉 7、教育 8、保育・健全育成 9、子どもの生活・文化・意識と行動 10、子どもの行動問題 11、子どもをめぐる生活環境 〈巻末資料〉「小児慢性特定治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会報告書」、「子ども年表(2001年〜2002年10月)」。
定価/9000円+税 発行/KTC中央出版 TEL0120-160377 FAX0120-400377







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