はじめに
平成15年1月31日に小泉純一郎首相が国会で行った施政方針演説において「2010年までに訪日外国人旅行者数を500万人から倍増の1千万人」にするとの政府目標が表明され、平成15年4月、政府はこの数値目標達成のため国土交通省を中心に「ビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)」事業を開始しました。VJC事業は、日本政府が訪日外国人旅行者増加のために国として取組んだキャンペーンで、平成15年度には、韓国、台湾、米国、中国、香港を五大重点市場に位置付け、官民一体となった訪日旅行客誘致のための事業が集中的に実施されました。
さらに、同年5月と7月には観光立国関係閣僚会議が開催され、「観光立国行動計画」が決定され、9月には石原伸晃国土交通大臣が観光立国担当大臣に任命され、平成16年1月19日の小泉首相の国会での施政方針演説では、観光立国を積極的に推進するとの方針が強調されました。この結果、国土交通省は、平成16年度においては新たに欧州の英国、フランス、ドイツの3カ国を重点市場として位置付け、平成16年度のVJC事業対象国に加えることになりました。
このように、平成15年は政府において、訪日外国人旅客誘致を強力に推進する一方、中国から世界に広がったSARSと3月から開始されたイラク戦争で世界的に観光業は打撃を受けた年でもありました。このような中、平成15年度のウェルカム・イン参加登録施設は、予約斡旋は前年度を約15%下回る結果となってしまいました。これは、個人旅行客が多い欧米の国からの旅行者が減ったことによるもので、日本の宿泊施設ではSARSの感染がないにもかかわらず同じアジアということから、誤解・敬遠されたことが原因と思われます。
VJCのスタートの年に、折悪しく、このような世界規模の深刻な問題が起こってしまいましたが、世界平和のためにも重要な役割を果たす観光による相互支援と日本理解増進に少しでも貢献できますよう、財団法人国際観光サービスセンターとしまして、ウェルカム・イン予約センターの運営を通じた予約斡旋の増加、サービスの効率化を目指してまいります。本ウェルカム・イン予約サービス事業に多大のご協力を賜っております日本財団及び財団法人鉄道弘済会をはじめ、関係の皆様の暖かなご支援に感謝するとともに、少しでも外国からの旅客が日本で経済的で快適な宿泊サービスを利用できるよう、今後ともなお一層努力してまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
平成16年6月
財団法人 国際観光サービスセンター
理事長 合田 憲夫
我が国を訪れる外国人旅客の来日目的・嗜好は多様化しており、ホテルであっても日本らしさや個性を求めたり、小旅館、民宿、ペンションなどの家族経営の宿泊施設が提供する家庭的雰囲気やもてなしを大きな魅力と感じるようになってきている。
こうした外国人旅客のニーズに応えるためには、経済的で手頃な料金を提供する宿泊施設の利用の容易化を図る必要がある。しかしながら、これらの宿泊施設については、その宿泊料金単価が低く、支払い手数料が極僅かになるため、旅行会社の介在が採算上難しく、通常の商業ベースの流通経路には乗りにくいことから、外国人旅客にとって情報の入手及び予約が難しいのが現状である。さらに、言語障壁や文化・習慣の違いから、小規模経営の宿泊施設の間に、外国人旅客の受入れに逡巡が見られ、これが外国人旅客による低廉宿泊施設の利用を難しくする大きな原因となっている。
そのような状況に対処すべく、財団法人国際観光サービスセンター(ITCJ)においては、平成3年4月1日に、わが国を訪れる外国人旅客による低廉宿泊施設の利用の容易化を図るため、外国人旅客向け宿泊予約センター(通称:ウェルカム・イン予約センター)を設立し、わが国で初めての外国人旅客専用の宿泊予約サービスを開始した。
本予約センターは、外国人旅客向けの予約あっせん事業を中核事業とし、彼等の利用に適し、手頃な料金で積極的に受け入れる宿泊施設の拡大と、これらの宿泊施設の外国人旅客対応力の向上を支援することによって、外国人旅客が経済的で快適な日本旅行を楽しむことができるような受け入れ体制の整備に資することを目的とするものである。また、潜在的訪日外国人旅行者に対しては、訪日旅行に関わる言葉や費用に関する不安を少しでも軽減させることによって、さらなる訪日旅行者数の増大をも目的とするものである。本予約センターは平成15年度、関係機関の理解と協力を得つつ、下記の事業を実施した。
・予約斡旋事業
・加盟宿泊施設拡大事業
・外客対応力向上事業
・広報事業
・調査研究事業
本予約システムを図解したものが別図の通りである。
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なお、当予約センターは設立以来、宿泊料金の廉価性を維持するため、手数料に類するものは、外国人旅客及び宿泊施設のいずれからも一切徴収しないで運営されてきたが、平成14年8月から導入したインターネット簡易応答システムの維持管理のため、平成15年度より参加宿泊施設に対し、経費負担制度を導入することとした。
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