日本財団 図書館


(f)人工知能を利用した分類
 人工知能を利用した画像の自動解析システムとして、ブラックボード・モデルと呼ばれる制御方式がある。システムの構造は、図62(a)に示すように、ブラックボードと呼ばれる共通のデータベースを中心に多くの解析モジュールが配置されたものとなっている。各解析モジュールは、ブラックボードの内容を調べ、モジュール内に蓄えられている知識を用いて解析を行った後、その結果をブラックボードに書く。ブラックボードは、これを繰り返すことによって情報が更新され、また解析結果に矛盾があった場合の制御を行う。
 方法は、原画像(図62(b))を平滑化した後、スペクトル特性の同じ画素を1つの領域にまとめることにより、画像を領域に分割する(図62(c))。分割によって生じた領域の特徴を調べ、ブラックボードに記録し、学習データを蓄積する。
 
図59. ブラックボード・モデル
 
(a)ブラックボードの概念図
 
(b)原画像
 
(c)領域分割
 
(d)分類結果
資料:「画像解析ハンドブック」
 
 これらの分類法は、分類する画像の性質や分類項目、精度によって、使い分けが行われている。一般に複雑な画像を解析し、そこに写されている対象物を検出、認識するには、認識対象に関するさまざまな知識が必要である。認識対象に関する知識を表現するには、人工知能の分野で開発されたさまざまな知識表現法によるモデル化が利用できる。一般的にリモートセンシング画像には、森林や草地、川などの自然物が多く含まれ、それらの形状をうまくモデル化するのは非常に困難である。一方、家やビル、道路といった人工物は、形状が明確で、周囲とのコントラストやスペクトル特性の差が大きく比較的容易に抽出できる。
 
(2)グランドトルスデータを用いない分類
 グランドトルスデータを用いないで、画像データのスペクトル的特徴またはテクスチャ的特徴のみを利用して同質と思われるクラスに分類する方法である。分類する手法は、グランドトルスデータを用いる方法と同じであるが、分類されたクラスが、地上でどのような意味をもつかを後で調べる必要がある。
 
(5)まとめ
 レーダを用いた地球表面の観測では、得られたマイクロ波の位相と偏向のデータを基に、グランドトルスデータとして、調査地域を直接観察あるいは容易にサンプルを採取し、両者の評価ができることから、これまでに数多くの論文で分類結果が報告されている。一般に観測波長帯が多いほど、分類精度の向上が期待できるため、対象物の分光反射特性(または周波数特性)を利用し、さまざまな波長域(または周波数特性)に分けて観測を実施している。その結果、対象物に関する多くの情報が既に蓄積されている。
 近年の画像解析と理解では、地図情報を強力な知識源として活用している。例えば近年では、GISシステムにSAR画像を載せ、他のデータと統合的に解析処理することが可能となっている。これは、海岸線やおもな道路といった安定な特徴を用いることにより、画像と地図との位置合わせや地図情報をもとにした画像の解析が実現できる。またリモートセンシング画像を解析した結果は、最新の地域の状況を表しており、それをもとにしてデータベースに蓄えられている地図情報の内容を更新することができる。このように、リモートセンシング画像の解析システムと地図データベース(地図情報システム)とは、相補的な関係にあり、両者をうまく統合することによって、総合的な地域情報システムが実現できる。
 一方、音波を用いたサイドスキャンソナーによる海底面探査では、1バンドしか使用できない上に、グランドトルスデータを容易に採取することができない。観測範囲そのものをとっても、これまでに調査された海底の範囲は、陸域と比較にならないほど、極めてわずかな範囲である。またその画像を利用するユーザーが陸域に比べて限りなく少ないため、音波による底質の分類技術はレーダに比べて遅れをとっている。
 陸上のリモートセンシング画像の分類技術から学ぶことは、分類精度の向上のためには、対象物の周波数特性の膨大な基礎データの蓄積が必要不可欠であることだが、目的すなわち何を分類・識別するかによって、基礎データの種類、量が異なるものと予想される。
 ここに紹介した分類結果は、成功した例ではあるが、レーダによる地表面の探査は、地表の底質に対する電磁波の特性に関する大量の基礎データの蓄積により、分類技術もかなり確立されつつある。今後、音波による海底底質の分類技術の向上には、複数の周波数によるデータ収集及びグランドトルスデータとの比較、解析結果の蓄積が極めて重要である。
 
2.2.1.3 ソナー方程式に関する資料収集
 後方散乱強度モデルを用いた底質及び凹凸のパラメータの推定には、表9に示すソナー方程式に含まれる各パラメータの情報が必要不可欠である。SeaBat8101及びANKOUシステムの各パラメータについての資料収集を実施した。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION