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はじめに
 390年前の慶長18年(1613年)、宮城県石巻市月浦を出帆し、太平洋を渡った慶長使節船「サン・ファン・バウティスタ」(木造洋式帆船・500トン)が復元されて満10年が経過した。係留先の宮城県慶長使節船ミュージアム(愛称「サン・ファン館」同市渡波)では、これを祝って平成15年、多彩な記念行事を繰り広げたが、なかでも日本財団助成事業として展開した「海につどい船に学び、木の文化を知る」をテーマとした一連の事業と、三本マストのセール展帆事業の二つは大きな反響を巻き起こした。
 前者は、平成14年度に引き続いての継続事業だが、後者は同船の竣工式以来の本格的な展帆で、ミュージアムに本係留されて以来、初の快挙となっただけに、今後も定期的な展帆を望む声が多かった。
 「海につどい船に学び、木の文化を知る」事業は、参加型の体験学習を軸に、木工具を使って木船の工作を通じ、船の持つ曲線的構造を直接学んでもらうよう組み立てた。実際に木材に触れながら、木の持つ温かさや柔らかさを感じてもらった。他にボトルシップ講習会や船乗りの生活体験、蒸し釜で木を曲げる(外板づくり)作業、水密性を高めるための「ハダ打ち」など、船大工の特技を体験してもらった。いまや絶滅の危機にある木船造船技術の伝承のためにも、これらの活動を年々充実させて行きたいと思っている。
 展帆は、前年から専門家を含む調査委員会を立ち上げ、年間の気象状況の把握からヤードの強度テスト、セール、ロープの取り替えまで及んだ。メイン・セールは縦・横20m超の一枚帆の巨大なもので、メイン、フォア、ミズンの三本の展帆は慶長の昔を再現させた。航海訓練所から指揮官を招き、クレーン車二台を張り付けての“大仕事”で、経費も甚大だが、今後は地元ボランティアの育成を進めて、定期的に展帆してほしいという要望が多く寄せられた。
 以上、二つの事業は当館の目玉継続事業として続けて行きたい。
 
宮城県慶長使節船ミュージアム館長
跡部 進一
 
I
体験学習
海につどい船に学び、木の文化を知る 2003
1 実施スケジュール
 
実施日 実施体験学習
7月21日(海の日) 第1回 クラフトマンシップ船講座 〜木工教室 木を使って船を作ろう〜
8月10日(日曜日) 第2回 クラフトマンシップ船講座 〜ボトルシップ作りにチャレンジ〜
8月10日(日曜日) 木造船体験学習 〜船大工の技・船乗りたちの生活体験〜
9月21日(日曜日) 木の不思議発見 〜木を「蒸す(むす)」? 木が「曲がる」?〜
9月21日(日曜日) 第3回 クラフトマン船(シップ)講座 〜海からの贈りもの・・・流木で作ろう〜
 
2 実施結果について
(1)第1回 クラフトマン船(シップ)講座 〜木工教室 木を使って船を作ろう〜
(1)実施日:平成15年7月21日(海の日)
(2)実施場所:ドック棟(東ウイング)ライブラリー
(3)所要時間:10:30〜15:30(12:30〜13:00 昼食休憩を除く)約4時間30分程度
(4)参加人数:41名
(5)実施目的:各種木工具を使用して、船の工作を行う。木工具の特徴を体験的に学び
ながら、製作を通じ船の持つ曲線的構造を直接的に学ぶことを目的とする。また、何よりも実際に木材に触れながらの作業過程で木のもつ温かさや柔らかさを感じることを目的とする。
(6)実施内容:木製ボート型模型「サン・ファン・ボート」の製作
1)使用する材料・工具
1: 材料ボート本体部・・・外形略整形済み部材(杉材)
風防部・・・枠部:略整形済み部材(朴材)
風防部:アクリル板
留具:木ネジ
マスト部・・・丸材(朴材)
台座部・・・略整形済み部材(杉材・朴材)
留具:木ネジ
塗料・・・水性塗料(白・赤)・油性ペン(黒)
2: 工具 鋸・鉋・鑿・ハンマー・ドライバー・紙やすり・刷毛・曲金(まがりかね)・万力ほか
2)製作手順
1: 外形の調整
ボートの形に、外形を略整形した部材の表面を、紙やすりで表面調整をする。
2: 風防部の取り付け(1)
甲板に風防部の枠部を取り付ける際、甲板のキャンバーの曲線にあわせ、枠部を鑿で削り、木ネジで固定する。
3: マスト部の整形
鉋を使用し、鉛筆削りの要領で丸材の先端部を細く削り、紙やすりで表面調整をする。
4: 台座部の作成
1: 船体受部の作成船底外板の角度にあわせ、受部となる部材に曲金を使い、線をひき、それを鑿で削り整形する。
2: 船体受部を台座となる板に木ネジで取り付ける。
5: 塗装
船体及び台座部を白の水性塗料で塗装する。また吃水線下は赤の水性塗料で塗装する。
6: 風防部の取り付け(2)
アクリル板を、曲金を使用し風防部の枠部にあわせて切り取り線を書き入れ鋸で切り取り、木ネジで取り付ける。
(7)講師
当ミュージアム講師:施設船舶課長 ?島 利昭
船舶担当 茂木 隆・芳賀 亨・山田登志雄
臨時 津花 一男
 
 
 
(8)所感
1)今年度の実施当日、雨天のため当初予定していた屋外での実施が不可能となった。
2)実施時間の関係で、塗装は家庭に戻ってから行う計画に変更したほうがよい。木目を残した完成でも実施上、意義は保持できると思われる。
3)当日参加希望者が事前想定より多く、事前広報の成果及び当日の実施状況はおおむね良好であったと考えられるが、雨天による空間的制約のため、当日参加希望者を受け入れることができなかったことが課題となった。
 
(2)第2回 クラフトマン船(シップ)講座 〜ボトルシップ作りにチャレンジ〜
(1)実施日:平成15年8月10日(日曜日)
(2)実施場所:ドック棟東ウイング(ワーク・ショップスペース及びライブラリー)
(3)所要時間:10:30〜16:30(12:30〜13:15 昼食休憩を除く)約5時間15分程度
(4)参加人数:26名
(5)実施目的:今から約200年前、帆船に乗り組んでいた水夫たちが長い航海中の遊びとして
生まれたボトルシップ・ホビーを通じて、かつての船員たちの船上生活の一端に触れるとともに、船舶にまつわる文化としてのボトルシップ・ホビーを多くの人々に知ってもらうことを目的とする。
(6)実施内容:ボトルシップの製作
1)使用する材料・工具
1: 材料 ガラス瓶(各1本)・サン・ファン・バウティスタのキット(各1セット)
2: 工具ボトルシップ製作用特殊工具一式・ハサミ・接着剤等
2)製作手順
1: 瓶の外で、中に組み込む帆船模型(サン・ファン・バウティスタ)の仮組み
2: 瓶の中に組み込めるように、「1」で仮組みした模型を解体
3: 「2」で解体した模型を再度、瓶の中で本組み→完成
(7)講師
外部講師:東日本ボトルシップ愛好会
会長 新明 國由氏・会員 磯部 郁夫氏・会員 高橋 壽氏
(8)所感
1)講師の人数に対し26名の参加者ということもあり、概して滞りなく実施することができた。
2)前年度の参加者も数名おり、ボトルシップ製作講習会の人気が定着しているように思われる。
3)実施の日程について、今年度8月10日(日曜日)ということで、参加者の方からお盆前の日曜日で、なかなか参加したくてもお盆の準備で参加出来ない方が地域に多いという情報をいただいた。実施日の再考が望まれる。
4)開催場所が、ガラス張りのドック棟東ウイング(ワーク・ショップスペース及びライブラリー)ということもあり、午後の部に入ると室温が上がり過ぎて参加する子供たちの取り組みが芳しくなくなってしまった。そのため保護者が中心に製作をするという形になってしまった。実施の場所を、その日の天候等で柔軟に対応できるような配慮が必要と考える。
 
ボトルシップの製作







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