●国内集約機能の強化に向けた方策
では、どういう方策をとればいいかということですが、まず国内の荷物を集めていくためには、物流拠点の強化。これは背後の地域と一体になって、国際的に事業展開する企業の物流ニーズに応えるということが必要なので、あらゆる面で国内輸送と国際輸送を統合する、さらには陸・海・空の物流を一体化していく。あるいは情報面でバリアができないようにしていく。そういう、いろんな所でのシームレス化をしていかないといけないだろうと思います。
もうひとつは、国内の輸送網を考えるうえで、響灘の場合には、鉄道駅あるいは高速道路網と、現状と比べれば少し離れてしまうわけですから、ここを、コストが上がる要因にしていかないようにするということの工夫が必要になってくると思います。
●国際積換機能の強化に向けた方策
それから国際積換機能の強化に向けてなんですが、船社を一気に引っ張ってこれればいいんですが、やはり基幹航路をひとつひとつ誘致していくということも当然必要で、そのためには、ある程度まとまった荷物が用意できるということが船社側としては必要になってきますので、そういう荷物を用意するということが当面重要な課題になってくると思います。
それから、もうひとつはコストメリットですね、コスト競争力を高めていくために、ターミナルの運営、オペレーションの効率化というのが必要なんですけれども、人件費水準でみたら、なかなかこれは競争が難しいわけです。ですから、本当にゼロベースで徹底的に効率化をしなくてはいけないと思います。ひとつはハード面の施設の稼働率を高めるということで、一隻あたりあるいは1TEUあたりのコスト、施設費用を下げていくということですね。
もうひとつは情報化、自動化をかなり大胆にやって、生産性を相当上げないと、これは難しいと思います。生産性を上げる意味で、ターミナルの自動化というのは、当然ひとつの課題だと思うんですが。これはよく考えて、新しい仕掛けを盛り込んでいければいいのかなと思っています。
7 実現に向けて
最後に、実現に向けてということなんですけれども、要するに、やはりトランシップ貨物を呼んでくるのはたくさん課題があるということです。特にコストの面と量的な部分で、基幹航路を呼んでこれるような量をどう確保するか、そのためにどうコストを下げるかということがメインで、たくさん課題があります。といって可能性がないというわけじゃないと思います。これはものの考え方次第だと思うんです。「そうは言っても問題多いよ」といってしまうと、前へ進みませんので、「問題は多いけれども前に進もうよ」と思うための意思統一ができるかというのが、大きなポイントだと思います。
まずは北九州港がひとつにまとまることが大前提だと思いますが、空港と比べると、港は関わってる主体の数が圧倒的に多いので、コンセンサスを作るというのが非常にエネルギーがいるところです。しかも空港と違って歴史がありますので、いろんな経緯が背後にあるわけですから、「じゃあ、1、2、3、はい」ですぐに決まらないということは承知はしているんですが、ただし、それが出来ないと課題が克服出来ないとも思います。
ですから、まず地域としての意思統一が図れるかどうか、その時には港湾の関係者だけではなくて、産業、物流、交通、コンテナ輸送に関わる背後の貨物の創出の方も含めて、あるいは物流機能も含めて、意思統一ができるかということが課題になってくると思います。
もうひとつは広域的な連携ができるかということですね。当然スーパー中枢の中でも、この問題提起はされていて、広域的な提携を前提とするということで、北九州であれば博多と連携しますと、たとえば海外のポートセールスは一緒にやりましょうとか提案されているわけです。神戸と大阪は少なくとも、国への提案というところでは歩調を合わせて共同提案はできたわけですね。京浜は、まだ先行き不透明ですが首都圏連合、一都三県で広域連合を作ろうなんて話がありまして、もしそれが実現すれば、港湾管理者の連合体を作るということも、何年後かわからないけれども可能性が開けてくるかもしれません。そういう時に、博多、北九州、下関はどうするかということですね。各々で頑張るという選択肢はあると思いますから、もし、そういう選択肢をとるのであれば、相当の努力はいると思います。
どっちがいいというわけじゃないんですけれども、少なくとも香港とか釜山とかは、非常に大きな規模の港湾ですから、それに対して、連携をするのかしないのか、するならどういう連携をするのかというのが求められているので、ここも大きなポイントになってくると思います。
要はどこまで踏み込むという選択をするかという、大きな選択肢が突きつけられているのが現状じゃないかと思いますので、それにどう答を出すかということが宿題ではないかと思います。
そういうことでお話しを終わらせていただきます。ありがとうございました。
関釜フェリー株式会社
「はまゆう」STEWARDESS
鄭 智允
「最初のボタンをきちんと止めないといけない」という韓国のことわざがある。そうだ、「はまゆう」って私にとって世の中への“お出掛け”という最初のボタンだった。
日本船「はまゆう」に乗ってから感じた日本の習慣等が、私の生涯に影響を及ぼし、一生の話題になるといっても過言じゃないほど、私は全面的に変った。学校、家族、友達という作られた枠の中で生活していたのが以前の私とすれば、今の私は、ある程度、基本の枠の上で自ら作って、考えて、解決する主体的な人間になった。
「日本」は私が“日本文学”を初めて読んだ時から憧れの的であった。しかし、なかなか直接「日本」と接する機会はあまりなく、勇気を出して友達と一緒に日本に旅行に行った以外には、学校の授業、本、インターネット等の間接体験だけが全部だった。それでいつも直接体験をしたい渇望が大きかった。「はまゆう」に乗組員として乗船する事になり、生まれてこのかた24年、私にこんな事が起こるとは、全然想像できなかった。私は、“神様”から貰った幸運だと思っている。
初めて家族と離れて知る社会生活、船旅もめったにしたこと無かったのに船内での生活、“STEWARDESS”というサービスの職業、全然違う言語を使うこと、日本人だけ居る所に初めて韓国人船員達が乗船するプレッシャー、私の憧れ「日本」に行くという期待感と興奮・・・。
しかし、実際に乗った時、私の自信はどこかに行っちゃって、実用日本語に慣れていないことからくる自信喪失、お客さんに対しての接客の方法、同じ東洋だけど違う文化・生活方式で結構大変だった。仕事と生活・・・二重に適応しないといけないストレスもあったけれど、それ以上に多くの事を教えてもらって、大切な人々に会って、今のところでは社会への「最初のボタンはきちんと止める事」が出来たと言えるのでは・・・。
乗船して事務長から言われた衝撃な言葉が一つある。“言われてするなら猿でも出来る!!”今もこの言葉は弛んだ時の私を再整備してくれるし、仕事中だけでなく、普通の生活の中でも私に緊張を与えてくれて、常に自分自身で周りを見るようにしてくれる。
今は笑いながら話せるけど、最初乗った時は慌てた時が結構あった。韓国人は日本人に比べて表現が直接的で、きつい方だ。韓国人同士では平気で使う冗談だったけれども、傷ついた人が居たら“文化の差”という言い訳で謝りたい。
又、韓国人の食事は、団結・団合・交際の意味が大きくて、集まったらどちらかといえばうるさい方だ。しかし、日本人は周りの人々に迷惑をかけない範囲で会話しながら食事をする。今は、声の大きさを調節出来るけど私も最初は本当に船員食堂でうるさかった。理解してくれた同僚達に感謝!!
一番大きな差は、“すみません”の文化でも分るように日本人は相手の事を考えてくれて心が大きい。頼む時、相手が過ちをした時も、直接的に言うのは“失礼”だからと“回して回して”言うけど、韓国人は親しい間では、頼んだり頼まれたりは“情”という文化で当然の事だ。私自身は、自分の事を他の人から言われるのは“失礼”と思うし、あまり好きじゃない。
又、韓国人は個人より「私達が」という心が強くて、最近の若者は親しくなったら、食事する時に一緒に分けて食べたり、自然に持ち物は共有したり、女の子同士は手をつないで歩いたりする。もし、「私」、「あなた」と区別すると相手から冷たい、寂しいと思われる。でも、日本人にとっては、親しくても相手の品物に触ったり、食事する時に断らずに相手の“おかず”を食べたら“失礼”だ。
仕事をしながら同僚間、お客さんとのこんな生活文化様式を合わせるのが一番難しいけれど、少しは両国の“失礼の差”という事を理解するようになった。しかし、“この差”を知らない、初めて日本船に乗る韓国のお客さんに、韓国の乗務員が同じ韓国人として“この差”を説明する時、「あなたも韓国人なのに・・・」という眼差しで見られて冷汗をかく時がある。
今日も、「はまゆう」は韓国から日本へ向かって行く。韓国にいるより、日本にいるより、家にいるより、もっと長い時間を過ごしている「はまゆう」の“STEWARDESS”の私には、第2の国、第2の家かもしれない。
はまゆう
関釜フェリー株式会社
「はまゆう」STEWARDESS
田村京子
平成10年8月29日、下関と韓国・釜山を結ぶ国際フェリー「はまゆう」が就航しました。
「はまゆう」とは、海岸に生えるヒガンバナ科の植物で、夏に白い花を咲かせ下関市の花となっています。総トン数16,187トン、全長162.0m、幅23.60m、定員数438名の本船は、速力18ノットで航行し、内部にはゲームコーナー、カラオケルーム、ディスコ風の大ホール、日本食・洋食・韓食が揃ったレストランや免税売店など、さまざまな施設が整っております。
いつも船内は、韓国の団体のお客様や、顔馴染みの方達で賑わっており、大ホールでは韓国のお客様達がミラーボールの下で、年を感じさせない素晴らしいダンスで私達を楽しませてくれます。又、夏休みや冬休みの時期になると、連日何百人という学生の団体が乗船され、毎日忙しい日々を送っています。
平成13年4月16日、「はまゆう」乗組員は大きな転機を迎えました。日本人と韓国人の混乗船となったのです。日頃から、韓国の方達と接してはいるものの、一緒に働き、ましてや常に生活を共にするのは初めての事なので、最初は正直不安でした。文化の違いや言葉の壁など、いろいろな問題が起こるのではないかと・・・。しかし、みんな明るく、素直で優しくて、親しみ易く、いつも船内は賑やかです。日本語もとても上手で、今では山口弁も移って上手く使いこなすようになりました。(笑い)仕事も自ら積極的に行い、一生懸命にやってくれますし、よく気が利きます。自分の意見もはっきり言うので、いい参考になります。彼らの仕事ぶりを見ながら、自分が反省させられる事も多いです。それに、韓国の子達がいろんな場所に連れて行ってくれるので、それまで知らなかった事や、お勧めスポット、美味しい店など知る事ができ、仕事にも役立つようになりました。日頃、韓国のお客様が多いので韓国人スタッフに頼る事も多く、今は「はまゆう」にとって欠かせない存在となっています。
さて、ここで釜山について少し紹介させて頂きます。
釜山の人口は約400万人で、街は活気に溢れており、交通量も激しく、沢山の車が行き交っています。市場も多く、道に広がる屋台では、気さくなおばちゃんが“おでん”“するめ”“チヂミ”など売っており、安い値段で食べる事ができます。
物価も日本に比べてとても安く、タクシーは初乗り1,500ウォン(約160円)、地下鉄は1区間700ウォン(約70円)なので、気軽に利用できます。
韓国の人達は、とても感情豊かで笑う時は手を叩きながら思いっきり笑い、嬉しい時は体を躍らせ、怒る時は堂々と本人に意見をぶつけます。声も大きく、発音が強いので、喧嘩と間違える事もよくあります。
韓国は学歴社会です。いい大学を卒業して資格を沢山取らないと、就職するのは難しいし、結婚も親が反対するそうです。目上の人に対する言葉使いや礼儀にも非常に厳しく、それは船の中でもよく感じます。
私が入社する前、韓国の人達は常に“キムチ”や“ニンニク”を食べているというイメージがありました。正にその通りで、どこのレストランに行っても、日本食にキムチ、洋食にキムチです。この船にも、お客様が荷物が重くなるにも関らず、沢山のキムチや漬物、カップラーメンなどを持ちこみ、みんなで食べています。日本人で言えば“梅干し”を持って行くみたいなものなのでしょうか?食べる時、片膝を立てて食べる人をよく見かけます。日本ではいけない事ですが、韓国では普通の事です。街を見渡せば、女の子同士が手をつないで歩いているし、店の営業が始まっているのに、みんなマイペースで化粧をしたり、食事をしたり・・・。このような文化の違いは数え切れない程ありますが、日本人も韓国人も同じ心を持っている人間です。最近では、韓国でも日本の歌を流せるようになり、日本のCDも発売され、日本と韓国の間にあった溝も埋められつつあります。
私は、この「はまゆう」に乗り、韓国の人々や文化と接するという貴重な経験ができました。そして何より、沢山の友達が出来た事が一番の喜びです。今も、この船で働いている事を誇りに思います。
みなさんも機会があれば、是非この「はまゆう」に乗って韓国へ行ってみて下さい。きっと素晴らしい旅になる事と思います。
これからも、お客様に喜んで頂けるよう、安全運航と快いサービスに努めていきたいと思います。
|