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「官」から「民」へ
 
 今、景気はどこがいいんですか。第1位東京です。圧倒的に東京がよくなっています。第2位名古屋です。第3、4位ないです、第5位、やっと関西がでてきます。6、7位ないです。第8位にようやく福岡がでてきます。あと9、10位はその他の県という感じです。
 
 
 じゃあ、なぜ東京がよくて、地方がダメになっていったんでしょう。簡単です。東京も実は平成6年位から10年間むちゃくちゃ不況でした。建設業なんかバタバタ潰れていきました。さあ、それがどうなったんでしょう。今、東京は「官」から「民」に変わってきたんです。公共事業とかそれに依存している分野から、今度は民間主導の経営スタイルが中心になってきたからです。
 ちょうど1980年代のアメリカの不況の時に、好景気がラスベガスから始まったといわれていますが、まさに同じような状態が起こってきた。だから、皮肉なことに総理大臣を出している県は今、みんな貧乏です、はい。新潟、岩手、鳥取、広島、高松。なんででしょう。公共事業依存が強すぎたからです。みんな国からお金をひっぱってきたから。だから、建築、土木ばっかりになってきてですね、国が助けてくれるのが当たり前だと思ってるから、また国がそんなことやってくれると、まだ勘違いしてらっしゃる。
 東京を見て下さい。まず、汐留再開発、ワーッとJR貨物駅跡地を直しました。ぼんぼん作ってます、あと4棟高層ビルが建ちます。そして、東京駅を降りていただいて丸の内側を歩くとですね、あそこ、三菱村というんです。あそこから、有楽町、銀座、新橋、汐留と抜けます。まもなく汐留にチャオ・イタリアーノという50店舗のイタリア系の店舗が出来上がってきます。あっという間にきれいな商店街に変わってきます。
 東京駅見て下さい。今度は八重洲側壊して、大丸壊して、新しいツインビル2つ建てる。東京駅は今、地下2階、3階になってますが、あれを全部持ち上げる、3階に。東京駅の新丸の内。丸ビルが成功したんで、新丸ビルを壊してまたデカいの作ります。そしたら、これみんな三菱。三菱だけがなんで儲かってるんや。じゃあ三井は。三井は日本橋です。室町から日本橋が三井通りです。さあ、そこに超高層ビルを作り始めました、バカバカと。新宿駅は南口再開発で、これまた、あっという間に2010年に変わります。そして、東京で今一番人気のあるのがロクロクビルといわれる六本木の6丁目のビル。森ビルが開発しました。たった半年間で、千葉県の人口が全部行った位の人が来ました。同じ六本木の反対側に防衛庁があります。これは国の土地です。これが、今度は安田生命とかの民間デベロッパーが再開発します。
 見て下さい、全部民間主導です。官から民に変わったんです。また官と民の合同プロジェクト、これが成功し始めたんです。
 ところが、地方はどうですか、ないの、何もない。民なんか動いてないの、官ばっかり。だからいつになってもあがらないんです、景気感。名古屋見て下さい。今、中部国際空港、国際博覧会、こんなのやってますから、ものすごくいいんです。それから名古屋駅再開発で、トヨタが50何階のビル作ります。名古屋はトヨタだけです。トヨタがこけたら名古屋はこけます、はい。トヨタ自動車という民間企業がひっぱってます。これから民の時代なんです。だから民が立ち上がって、自分達で開発事業するとか、自分達が動かないと、あらゆる産業が全然伸びてこないんです。
 
お金の話
 
 今、不況は何が悪いかというと、もう外的要因、国のせいだ、景気のせいだ、いりません。内的要因、あなたがどう変わるかです。トラック業界や運送業界、造船業界、なくなりません。あんたがなくなります。分かりますか、あなたがなくなります。時代の時流に自分が目をあわせられるかどうか、ここが一番ポイントになってきました。ここが変わらないと何にも変わりません。
 だから、まず、お金の話をしましょう。お金がなければどうしますか。お金には4つの方法しかないんです。借りるか、集めるか、売るか、盗むか。あと方法はありません。
 金貸してくれません、銀行は。売るものもない。泥棒できない。じゃあ、何やるか。集めりゃあいいじゃないですか。集めるという作業をどうして忘れたんですか、社長は。戦前のわが国の中小企業の社長の9割は、金を借りるという間接金融はほとんどしなかったんです。みんな自分の金で集めた直接金融です。どうして戦後の人は忘れちゃったんです。銀行がやさしいから、銀行が楽だから、自分が頭を下げなくていいから。銀行に頭下げればよかったから、みんな依存しすぎた。変えましょうよ、いろんな制度があるじゃないですか。私募債もある、社債もある、いろんな制度がでてきました。
 
●3人の青年
 私のところに、4年前1人の青年が来ました。「お前いくつや」「34才です」「何人でやってる、会社」「6人で始めました」「何やってる」「ITをやってます」「売れるの」「絶対成功すると思います」「で、どうしたの」「お金がないんです。金融機関、金貸さないんです。こんな訳わからんもの、いくら説明してもダメなんです」「ああそうなんだ。じゃあどうしたいの」「どこか、わたしらに金を貸してくれるとこ紹介して下さい」私は困りました。「ITねえ、ITに金貸す人いるかね。年寄り、ITなんかわからんからね。そうだ、埼玉県の秩父に、1人、金持ちがいるで。そのおじさん、そういうのが大好きだから、私の名刺の裏に書いてやるで、その人があんたに金出してくれたら、これはひょっとしたら本物かもしれん。この人がもし金出してくれなかったらあんたの仕事ダメかもしれん。だから行ってみ」私、名刺の裏にサインして出してやりました。この人が2年半前、たった1日で800年分の経常利益を売り上げる記録を作ってしまいました。誰ですか、「楽天」です。
 まだ28才の若者が私のとこに来ました。「何やってる」「いや、今ですね、防衛大学卒業しまして、日商岩井に入りました」それで何やってるかというと、キャバクラじゃないんだけど、いわゆるクラブをやって成功しました。だけど、乗っ取られちゃいました。で、次、何やったんだというと、ディスコみたいなのをやって成功しました。「変わったことしてるね。で、次、何やるの」「いやあ、何かないですかね。今、ちっちゃな人材派遣会社やってるんですけれど」「へえ、何人で」「20人位で」「お金ないんですよ」「お金ない、いいじゃない、集めれば」「集め方、わかんないですよ」「上場すればいいじゃないか。店頭公開法変わったじゃねえか、やれよ」「ウチ、こんなのできるんですか」「できるさ、あんたのプログラムがきちんとしてればできるよ」今はもう使えなくなったんですけれど、当時特別なものがひとつあったんです。店頭公開できる基準の中で、「これでやってごらん。全然利益出してなくても、これやれるで」で、私は彼と一緒にやりました。で、1日で80億円集めました。その金で、福岡の老人介護やってたハローコムソンを買いました。わかりましたか。「グットウィル」折口雅博です。
 
 
 私のところに来た28才の青年、「お金ない」っていって「何やってる」「エステティックサロンやってます」「儲かるか」「儲かるんですが、お金ないんです。出店したいけどお金ないんです」「今、何店舗ある」「3店舗です」「いいじゃないか」「いやダメなんです。こんなじゃ、赤字になっちゃうんです。でも銀行は金貸してくれません」「ああそう、じゃあいいことひとつ教えてやろうか。来週までにお前500万円作ってこい。持ってきたら教えてやるわ」「分かりました」「作ってきました。どうしたらいいんですか」「よし、お前、いま持ってるその変な車、これ、やめ。これからすぐ自動車屋にいって、BMWかベンツの中古、どっちでもいいから買ってこい」「えっ、ベンツですか」「おお、安くてもいいから、BMWかベンツ、どっちかにしとけ。それから、今、お前どこに住んでる」「何万円かのアパート」「そんなとこやめろ。この地区で一番高いマンション、お前、そこを借りろ。そこ使え。それから今、着てる背広いくらだ」「2万5千円です」「そんな背広なんかやめろ。伊勢丹行って20万位の背広にかえろ。そこからスタートや、さあ行くぞ」今、6年間で全国138店舗、売上げ160億円、社員数1200名です。
 
●コミュニティ・クレジット
 みんな金借りました。集めたんですよ。平成7年の神戸大震災の時、私は神戸の町に行って愕然としました。町が全部廃墟です。この人達がどうやってこれからやっていけるんだろう。そこで私はこの青年達と一緒に勉強会を開きました、経営の。どうやってやればいいのか。よし、直接金融研究会をやろう、金の作り方を教えてやろう。そして私がそれをやってるうちに、だんだんだんだん若い人達が集まってきました。JC(日本青年会議所)の方も来ました。経済同友会の方も来ました。みんなが来ました。気がついたらもう400人にもなっていました。そして、この中から店頭公開が3社出てきました。そして、これをみた日本政策投資銀行が「おもしろい」と、ここで初めて、一緒になって新しい金融を考えませんかということで、私共共同で作ったのが「コミュニティ・クレジット」。これはどういうことかというと、日本政策投資銀行から1億円を私、借りました。そして何をやるかというと、30人のメンバー全員がその1億円を保証します。その仲間の中から、こうやってみんなの前でプレゼンテーションして、俺はこれだけ儲けさせるから、この中の3000万円貸してくれといって、我々がみて、それがいいといったら貸すし、ダメだったら貸さない。それでやって、昨年の11月全員倒産せず、全員が金を返しました。これで竹中さん(竹中平蔵 経済財政政策担当大臣)が国会で、これからの中小企業の新しい金融のやり方はコミュニティ・クレジットであると言って、中小企業白書にも出ましたし、小泉総理の演説の中にも出てきました。
 
会場風景
 
●銀行が変わる
 今、銀行がむちゃくちゃ変わったんです。皆さんの考えていらっしゃる金融機関はもうないと思って下さい。営業なんかいらない。5億円以下と5億円以上の金の貸し方を変える。5億以下の金の融資の仕方は、まったくこれから形を変えていきます。ですから、みなさんからみれば、お金を借りに自分が行く時代なんです。
 なぜか。あなたの会社はみんな第一分類、第二分類、第三分類、第四分類と、みんな債務者区分されちゃったんです。これ、なんですか、正常取引先と要注意取引先、破綻懸念、破綻。みんな分けられているんですね、債務者区分で。そして、その中でちゃんとはっきりとルールが決まりました。第一分類、正常取引先。今、何をやってるかというと、貸しすすめをやってる。要らねえのに、金貸します。「どうぞ、どうぞ、借りて下さい」今そういわれている人、第一分類です。第二分類、要注意取引先、貸しおき。そのまんま置かれています。あんまり貸しもしませんけど、ぐちゃぐちゃも言われません。第三分類、破綻懸念、貸し渋り。もう、ちょっとお宅ダメ。第四分類、破綻に近いものになってきたら、これは貸し剥ぎです。
 昔と違ってみんな一緒じゃないです。債務者区分によって、全部変わってきたんです。あなたの会社は何なのかを金融機関からちゃんと聞いておかないといけない。
 今、社長の性格、社長の気分、もういりません。全部定量制、スコアリングシートというやつです。金融庁はもう社長の顔なんかどうだっていいんです。都市銀行9対1。90%、もう会社の社長の顔見てない、決算書だけ。地方銀行8対2。20%はまだ社長の顔見てくれる。第二地銀7対3。信金・信組6対4、定量が60%、社長の顔が40%。だから、都市銀行で第三分類になってる人が信用金庫に行くと、第一分類になるんです。第三分類になったら金、借りられないんです。引当処理されちゃうから。
 
発想の転換
 
 阿蘇町に呼ばれて講演した時にですね、阿蘇の商工会議所の人が、「阿蘇なんか人口いねえ。観光客しかいない。だから商売発展しない」「アホか、あそこの国道に、こんなに車いっぱい走ってるのに、あんた、あれ、人間が走ってるんだよ。タヌキが運転してるんじゃないんだよ。あの人に金、落とさせればいいじゃないの」「どうすりゃいいんですか」「簡単だよ、トイレ作りゃいいじゃん」ものすごい綺麗なトイレ作って、女性の方でも安心して使えますと言ったらね、必ず停まる。停まったらどうしますか、何か飲みたい。ジュースか何か、売店に置いとけばいいじゃん。道の駅ですよ、これ、まさに。こういうこと考えればいいじゃないですか。停めればいいじゃん。停めれば、金、落とすんだから。そういう発想をやらない。
 







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