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 例えば東京でいきますと、賑やかな町、下北沢とか吉祥寺とか賑やかでございますが、実はものすごい数の人が住んでるんですね。熊本もそのような傾向がございます。
 で、こちらはですね、同じように中心部に住んでる方、夜間人口の数をプロットしたものですが(図6)、結構熊本では町なかに人が住んでいます。一方で鹿児島というのは平均線ぐらいかなと。一方で札幌とか名古屋というのは、あんまり住んでないのですね。夜間人口が少ないというのは、だいたい東京と同じような感じですね。通いで町なかに来る。そういう方は、じゃあ土・日まで町中に来たがるかというと、必ずしもそうじゃないですね。見ていただきますと、おもしろい町と呼ばれるのは、住んでいる方がいる町の方が多いんですね。福岡もそうです。京都、仙台、長崎、熊本、金沢、こういった町が平均線より高いですね。
 
図6 住む人の集積状況
(注)実勢都市圏人口:中心市の人口+周辺市町村の人口の一部(中心市への通勤通学依存度に応じて加算)
 
図7 地方交通事業者の財政状況
財務状況を示す数値は「実質破綻」を示している
(百万円:年)
事業者 資本勘定 資本金 借入金残高 当期損益 借入金残高/当期損益
バス A ▲ 281 27 1,253 5 250.6
B 187 100 800 9 88.9
C ▲ 710 76 1,812 ▲ 348
D 776 1,000 16,294 20 814.7
E 1,834 780 15,091 43 351.0
鉄道 F ▲ 307 60 880 12 73.3
G 551 2,300 12,645 ▲ 666
H 3,933 2,000 18,382 ▲ 73
I 16,997 504 18,820 57 330.2
 
 
[3]財務面からみた地域交通産業の実態
 
 バスの輸送人員は全国平均的にみましても、ずっと低下の一途でございます。また、公共交通の分担率も、特に地方圏での低さというのは驚くべき数字だと思います。
 ちょっと財務運営のお話をいたします。これ(図7)は、交通事業者からサンプリングしておりますが、財政状況、バランスシートを示したものでございます。見ていただきたいのが借入金残高と、当期損益の部分でございます。
 当期損益、いわばキャッシュフローでございますね。本来ならば減価償却を戻したものをキャッシュフローと呼びますが、地方の交通事業者の場合、減価償却がそのまま、ほぼ更新投資に充てられておりますので、フリーキャッシュフローにならないわけです。従いまして、借入金残高を当期損益で割ったものが、実質的にあと何年で債務を、自然体のキャッシュフローで返せるかという数字になります。キャッシュフローマイナスのもの、それから250、これはあと250年すると借金返せますよという姿ですね。この数字は金融から見れば厳しい数字と言わざるを得ません。
 じゃあ、そのしんどい交通事業をどうやって支えてきたのかというと、内部補助に頼ってきたということでございました。いわばオーソドックスな民鉄経営モデルというのは、交通部門のキャッシュフローの赤字をその他の兼業部門で埋めていたということでございます。まあ、この兼業部門をやることによって、交通の需要も高めていきましょうというのがいわゆる小林一三経営モデルということでございます。
 いま、地方の中小鉄道事業者の収支状況をみると、鉄道事業も赤字、全事業でみても赤字の会社がほとんどでございまして、では黒字の会社は何かなとみると、鉄道事業のウェイトが全社に占めるウェイトの低い会社が黒字になっているようです。
 それでは、金融のほうはどうなってるかといいますと、金融検査マニュアルというのが平成11年からスタートしております。これは何かといいますと、単純にいいますと金融機関が融資している貸し出し債権の相手先を信用ランクごとに分けましょうというものでございまして、分け方といたしましては正常先、要注意先、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先、こういうふうに分けましょう(図8)、分けた結果、要注意先以下についてはそれなりの貸倒引当をして下さい、そういうことです。
 基本的に要注意先というのはどういう企業かといいますと、赤字企業で短期的に黒字化する可能性が低い債務者というのは要注意に入れましょう、じゃあ創業赤字は見逃してくれよ、いいでしょうと。じゃあ計画と比べて3割以上、売上げが乖離したら要注意ですよと、こういう使い方です。
 
図8 金融検査マニュアル
 
○不良債権の定義
 ・債務者区分による「要注意先」、「破綻懸念先」、「実質破綻先又は破綻先」に対する債権のうち、優良担保・優良保証でカバーされない分
 
○要注意先:赤字企業で短期間に黒字化する可能性が低い債務者
(創業赤字で当初事業計画との比較で3割以上乖離している場合、要検討)
○破綻懸念先:経営改善計画などの期間が5年を上回る、または計画の策定後売上高等が事業計画に比べ8割を下回る債務者
 
 金融からいきますとね、貸倒引当がつきますと、基本的に要注意の下半分から破綻先のほうというのは、新規の融資はほぼ出来ないということです。といいますのは、貸した瞬間に同時に、損失を立てないといけない。これは株主代表訴訟の対象にもなりかねませんので、もうできないというのが実態です。
 交通事業者の財務状況を見ると、金融としては厳しいものが多いということでございます。







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