■国内路線形成の方向性
図8 国内路線形成の方向性
●多頻度化が不可欠
→需要の定着、利用率向上には多頻度化が必要
→航空も多頻度少量輸送時代
●需要路線は複数社運航が望ましい
→適正な競争による利用者利便性の確保
→新規航空会社の誘致・設立の可能性を検討
●イールドの高いビジネス航空需要の顕在化が必要
→北九州都市圏の航空需要を確保
→福岡空港並みの多頻度化ができれば、福岡空港並の交通機関分担率(対新幹線)となる可能性あり
(適正機材による名古屋・大阪路線の形成)
*現在、福岡〜名古屋路線16便(小型ジェット機クラス)、大阪路線6便(中型ジェット機クラス)
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そういった中で、これから国内路線をどうやって形成していったらいいかということですが(図8)、これは仮説になりますけれども、まずひとつ、多頻度化というのは時代の流れですし、不可欠な要素だと思います。基本的には多頻度化しないと需要は創造されないというのは、明らかにわかっているわけです。
航空も物流と同じで、多頻度少量輸送時代に入りつつあると思います。ヨーロッパにおいては、多頻度少量輸送ネットワークが形成されたのはもう10年以上前で、GDP規模が似たような都市が乱立しており、一方通行にならない状態で、かつ需要ポテンシャル自体が均等なので、ネットワーク形成上は多頻度化というのはし易いわけですが、中・長期的にアジアと地方が台頭してくるとなれば、そういった中での同等規模の都市間での多頻度輸送というのが出てくると考えられるわけです。ですから、今回の新北九州空港の活用に関しても、どうやって多頻度化するのかがポイントになるであろうと考えます。
それから、需要路線というのは競争原理を働かせるため複数社の運航が望ましいということになります。そういった中では、大手対大手という構図だけではなく、大手と新規航空会社という可能性もある。また、誘致ができなかったら、何らかの形で航空会社を作っていくということも、ひとつの方向性だと思います。
それから、もうひとつはイールド(※8)の高いビジネス航空需要を顕在化する必要があります。現に今の北九州空港の利用者の8割はビジネス客で、福岡空港もビジネス需要が多いわけですが、こういったビジネス客をいかに多く取り込むかというのが国内路線に関してはポイントになります。
もうひとつ、例えば名古屋、大阪といった路線形成を考えた場合に、現在新幹線を使っている方が、どのぐらいシフトするのかということですが、そのポイントは、やはり多頻度化、つまりどれくらい利便性があるかということです。適正な機材での多頻度化が出来れば、数十万単位の需要創造があり得るだろうと考えられるわけです。
現に幹線旅客流動調査等のデータをみると、福岡と関西圏でビジネス旅客が航空と鉄道を利用している比率はだいたい1対2ですが、これが下関・北九州と関西だと5対95という状況で、圧倒的に鉄道という状況になっています。関西だと鉄道からのシフトは価格と時間の両方で難しくなりますが、名古屋まで広げると、相当シフトの可能性があると考えられるわけです。
ちなみに今、福岡〜名古屋の路線は小型ジェット機クラスで16便、大阪路線では6便中型ジェットで飛んでいるといった状況です。やはり、名古屋ではこれだけ多頻度化しているというのが重要なポイントで、それによって相当量需要を汲み取っているというのが現状です。
図9 九州各空港の東京路線運航状況
空港 |
ジャンボ B747
(560席 クラス) |
大型 ジェット機
(410席 クラス)
B777 |
中型 ジェット機
(280席 クラス)
A300,B767 |
小型 ジェット機
(160席 クラス)
B737, MD90等 |
総便数
(片道 ベース) |
運航企業数 |
平成14年度
旅客数実績
(千人) |
福岡 |
14 |
17 |
14 |
|
45 |
3 |
8,425 |
鹿児島 |
|
2 |
14 |
|
16 |
3 |
2,327 |
宮崎 |
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|
6 |
9 |
15 |
3 |
1,387 |
熊本 |
|
3 |
8 |
1 |
12 |
2 |
1,637 |
長崎 |
1 |
1 |
9 |
|
11 |
2 |
1,534 |
大分 |
|
|
10 |
|
10 |
2 |
1,269 |
北九州 |
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4 |
4 |
1 |
248 |
佐賀 |
|
|
|
2 |
2 |
1 |
162 |
山口宇部 |
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|
8 |
|
8 |
2 |
900 |
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注:便数は2003年6月ダイヤ 熊本空港は8月より運航企業3社、中型ジェット機が5便増 旅客数は空港管理状況調書(速報値)
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これ(図9)はご参考までですが、九州の各空港の東京路線の運航状況を機材別に示したものです。やはり、便数が増えると需要創造が進むというのがわかるかと思います。
これを見てもわかるように、福岡以外の九州の投入機材は、中型ジェット機が中心となっていますが、新北九州空港においても中型ジェット機を中心に、いかに10便体制をとるか、中型が難しかったら宮崎のように小型を含めて、15便体制を作っていくのか、これはやはり、便数が少ないと厳しくなるというのは自明ですので、これはこれからの大きな方向ではないかと思います。
これ(図10)は、特定航空会社の東京路線の利用率ということでご参考までに出したのですが、これもやはり、2便しかない路線の利用率というのは、就航したばかりということもあり非常に厳しい状態です。ただ、6便体制くらいになってくると、非常に利用率が上がってくるわけです。こういうことからも、多便数化というのが重要なポイントになっているということです。
最後に、小型機のビジネスが最近広まってきております。路線形成を考えていくうえで、いわゆる大手の中型を中心とした運航を考えていくだけではなく、いかに利用回数を高めてせっかく造った空港を最大限利用してもらうかということになると、小型機での旅客・貨物の需要の創造が重要ではないかということです。
現在、福岡空港や羽田空港のような混雑空港への運航は発着枠の制約のために中型機以上が普通のものとなっていますが、新北九州空港においては、100席から150席程度の機材に小型化して多頻度化することが望まれます。空席のリスクを軽減すると同時に多頻度化によりビジネス需要を取り込むことが可能となります。
図10 特定既存航空会社の東京路線利用率
路線 |
札幌 |
宮崎 |
青森 |
徳島 |
鹿児島 |
福岡 |
会社 |
エア・ ドゥ |
全社 |
スカイ ネット |
全社 |
スカイ マーク |
全社 |
スカイ マーク |
全社 |
スカイ マーク |
全社 |
スカイ マーク |
全社 |
機材 |
B767 |
|
B737 |
|
B767 |
|
B767 |
|
B767 |
|
B767 |
|
便数 |
6便 |
45便 |
6便 |
15便 |
2便 |
8便 |
2便 |
6便 |
3便 |
16便 |
7便 |
45便 |
利用率
(%) |
H14.12 |
52.7 |
64.7 |
56.5 |
52.3 |
|
|
|
|
55.9 |
57.2 |
73.9 |
58.8 |
H15.1 |
60.8 |
64.6 |
64.5 |
57.1 |
|
|
|
|
62.6 |
56.9 |
73.8 |
57.8 |
2 |
88.2 |
72.3 |
69.5 |
66.7 |
|
|
|
|
62.4 |
68.4 |
78.1 |
64 |
3 |
92.6 |
73.1 |
85.3 |
73.1 |
|
|
|
|
71.5 |
73.1 |
81.8 |
71.7 |
4 |
84.2 |
50.6 |
69.3 |
55.9 |
37.6 |
54.8 |
33.7 |
65.5 |
53.7 |
53.8 |
61.7 |
57.4 |
5 |
85.4 |
61.7 |
71.4 |
59.4 |
36.0 |
61 |
43.1 |
68.0 |
66.8 |
61.4 |
64.7 |
58.6 |
6 |
83.7 |
69.8 |
67.4 |
54.4 |
35.3 |
61.7 |
49.9 |
64.7 |
65.7 |
55.5 |
59.6 |
58.7 |
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それからやはりポイントになるのは、24時間運用可能な空港の利便性を最大限に活用するということで、これにより、都市圏空港のメリットが享受できるような路線形成がなされるわけです。
深夜早朝の時間帯の運航ということになると、航空会社側としても機材の稼働率を最大化することが可能になります。人件費は当然上がりますが、それがひとつメリットでございます。
それから、小型機で座席が少ないということは団体の取り扱いはできなくなりますので、結果的にはイールドを維持しやすいということになります。
やはり、新北九州空港の活用の考え方としては、大手航空会社が厳しい状況下で、路線をどうやって張っていったらいいかということを考えた場合に、新規の航空会社の誘致、または、小型機でのビジネス創造の拠点形成、こういうところも目指していくべきではなかろうかと思います。
また、新北九州空港というのは北九州都市圏を背景としておりますし、ビジネス需要が非常に高いということから言うと、成立する可能性も高いのではないかと考えられるわけでございます。
[4]おわりに
それで最後ですが、北部九州都市圏全体でどうやって捉えていくかということが重要ではないか、要するに新北九州空港と福岡空港との間に線を真中に引いて、そこで分けて物事が議論できるわけではないだろうということです。それは、これからの時代は大規模なインフラをどうやって有効に活用するのかという視点でものごとを考えなければならないのではないか、この視点に立てば複数空港の有効活用というのも自然とアイデアが出てくるのではないかと考えられるわけです。
それから、よく「市場原理に任せる」という言葉が出てきますが、ビジネスの創造には公共の基盤づくりと支援が不可欠です。市場原理だけでは地方振興は無いのではないかというのが、私が地方の行政のいろいろな調査をさせていただいた中で、よく感じるところです。
そうしますと、地域に新産業を創出するために、地域資源のひとつであり、公共財である空港を、最大限に活用することが重要だと常々感じているところです。そのためには、特区などの法制度などでインセンティブを作っていく。また、ハード面でのインフラ作りは最低限必要であるし、そういったものがなければ民間の需要創出というのも、なかなか難しいと思います。
やはり、今後とも公共がさまざまな支援をやっていくということをべースに、市場創造がなされるということでまとめさせていただきました。新北九州空港は新しい地方空港活用のモデルになる、ということが重要なポイントであると考えているところでございます。
※1 ベリー・・・旅客機の胴体下部に設けられた貨物室。
※3 フォワーダー・・・自ら輸送手段を所有しないで、船社・航空会社・トラック会社・JRなどの輸送機関を利用し、荷主と直接契約して貨物輸送を行う業者。
※4 FOB・・・本船渡条件。売主が本船に積み込むまでの諸経費を負担し、それ以降の海上輸送費などは、買主が負担するもの。
※5 インテグレーター・・・幹線の航空輸送から末端の集配トラック輸送まで、一貫した輸送サービスを自社で提供する運送会社のこと。FEDEX、DHLなどがこれに該当する。
※6 インターモーダル(トランスポート)・・・複合輸送。発荷主から着荷主まで、複数の異なる輸送機関を利用して貨物輸送を行うこと。複合一貫輸送、共同一貫輸送、通し運送と呼ぶ場合もある。
※8 イールド・・・運賃に係る実収単価
《自由討議》
岡田講師による基調報告の後、参加者を交えて討議が行われました。ここでは、その一部を紹介します。
・現在の北九州空港は就航率が低く、雨の日には福岡空港に着陸することも多い。新空港はそのようなことが無く、「いい空港ですよ」とアピールすることが肝要である。
・まずは、バスによるアクセスを小倉駅だけでなく、黒崎、折尾方面にも張るなど、充実させることが大事で、タクシーについても定額制を導入してはどうか。
・大阪便は伊丹空港の発着枠の問題があり、名古屋便は中部国際空港(2005年開港予定。名古屋市中心部から電車で30分程度)になるので、新幹線と競合する大阪便、名古屋便は難しいのでは。
・羽田枠と多便数化を考えると、新規航空会社の誘致、設立以外にないのでは。
・福岡空港よりもさらに朝夜プラス2時間ずつ開けるだけのコストを、CIQも含め行政側が本当に掛けてくれるのか。
・現在の北九州空港の就航率は離島空港並みで、第2種空港では一番低い方だと思われるが、搭乗率はかなり高く、観光路線でないためイールドも限りなく高い方である。ただ、小型機のためスケールメリットが活かせず、増便となると難しい。
・本当に、大手航空会社よりも新規航空会社を優先する政策が、今後も続いていくのかを見守る必要がある。
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