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九州運輸局だより
◆九州クルーズ振興協議会について
 
 平成15年11月29日、北九州市において九州クルーズ振興協議会設立総会が開催されました。
 
九州運輸局長あいさつ
 
 ただいまご紹介を頂きました九州運輸局長の大庭でございます。本日は、皆様大変お忙しい中、ご出席頂きありがとうございます。
 本協議会の設立を呼びかけさせて頂きました九州運輸局を代表いたしまして、一言ご挨拶を申し上げます。
 我が国に本格的なクルーズ客船が数多く就航致しましたのは、平成元年でございます。いわゆるバブル経済の真っただ中という時期でございました。そして、人口の高齢化が進みつつある中で、ゆとりのある生活が志向され、クルーズの魅力が認識されるようになってきたという状況であったと思います。
 
大庭九州運輸局長
 
 しかし、バブル経済が崩壊したことに加え、最近では米国での同時多発テロ、イラク戦争、SARS問題など社会不安を招く事件が相次ぎ、クルーズ事業の環境は非常に厳しいものとなっています。
 このような我が国のクルーズを巡る動向などに関しましては、本設立総会後、大阪府立大学大学院の池田良穂(いけだよしほ)教授から「九州振興の新たな戦略 クルーズ振興」と題して記念講演を頂く予定となっておりますし、また、全国的なクルーズ振興策については、本日のご来賓の国土交通省海事局、櫻井俊樹外航課長からご挨拶があると思います。従いまして、私からは、九州とクルーズの関わりをどう認識するかということに関し、三点お話をさせて頂きます。
 第一は、九州は、クルーズという海のレジャーを支えるインフラや産業が発達しているということであります。九州は、1万キロの変化に富んだ海岸線を持ち、古くから良港を擁してきましたし、海上輸送が発達してきた地域であります。同時に、世界でトップクラスのクルーズ船の建造を行う造船業があり、船員の供給地域を伴っています。
 このように九州は海事産業が発達した地域であるということに加え、大型空港が主要な都市に配置され、クルーズと空路とを接続することも容易であります。
 第二は、九州は、クルーズにとって魅力的な観光地を多く持ち合わせていることであります。クルーズの楽しさは、船上でゆったりとした時を過ごすこと、そして、寄港地で様々な観光地を訪れ、変化に富んだ非日常的な経験をすることにあると思います。
 九州は、歴史的にもアジア大陸への玄関口として発展を遂げて来ており、歴史的建造物や遺跡などが至る所にあります。
 また、阿蘇や雲仙、霧島、天草などの風光明媚な大自然を有し、更に、各地に温泉地もあり、観光資源に大変恵まれているのであります。
 第三は、以上述べたように九州は、クルーズの発展のための条件を備えているとは思うものの、それを現実のものとするためには、九州が一体となって努力していく必要があるということであります。
 大型クルーズ客船の需要はまだまだ限りがある現状を考えると、たとえば有明海や錦江港などの内海で、小型船によるクルーズ需要を発掘し、「クルーズの島九州」の名を高める努力を注ぐことも大事ではないでしょうか。
 クルーズ事業を取り巻く環境は、楽観を許しませんが、クルーズを軸にして九州地域の振興をはかるため、コストパフォーマンスの優れた多様な商品の開発を図ることも必要であると考えております。
 以上のような考え方から、従来関係者がそれぞれに取り組んで参りましたクルーズの振興策を、ご参加の皆様方と一致協力して、オール九州で総合的・効率的に推進したいと考え、「九州クルーズ振興協議会」の設立を提案した次第でございます。
 本日、「九州クルーズ振興協議会」が皆様のご賛同を得て発足し、今後本協議会の活動が結実して、クルーズ事業が大いに発展し、九州経済の活性化に寄与することを祈念致しまして、私の挨拶とさせて頂きます。
 
 
「クルーズ」って何ですか?
 
 わが国においては、高齢化社会の到来を迎え、ゆとりある生活が指向される中、あらためてクルーズ客船による旅行の魅力が認識されつつあります。
 しかしながら、わが国のクルーズ人口は、2002年実績で約17万人(国土交通省海事局外航課調べ)と、先進諸外国と比べるとまだまだ少ない状況で、国土交通省としてもより多くの国民にクルーズの楽しさへの理解を深めてもらう必要を認識し、特に地方においてのクルーズ客船に接する機会が少ないこと、大都市居住者に比べ地方居住者のクルーズに対する認識度が低いこと等に対し、今後クルーズ人口の着実な増加を図っていくために、地方のクルーズ参加者を開拓していくことを重要な課題として掲げています。
 
 
 このため、国土交通省は社団法人日本外航客船協会とともに、客船事業振興のための方策として、平成14年度から、地方単位で「クルーズ振興地方協議会」を設立することを進め、初年度においては、沖縄、関西において、本年11月7日には北海道において地方協議会が設立されました。
 九州運輸局におきましても立ち上げを開始させることとし、企画振興部及び海事振興部が連携して、本年6月に「九州クルーズ振興協議会(仮称)」設立のための準備会事務局を設置致しました。
 最初のステップとして、設立準備会をスタートさせるため、九州地方整備局、各自治体港湾管理部局及び観光行政部局、観光・港湾.交通関係団体、クルーズ客船団体等へ、準備会への参画及び連携呼びかけを行いました。
 平成15年9月12日に設立準備会が発足し、規約案、協議会設立手順等の検討が行われました。こうして平成15年11月29日北九州市門司区西海岸「海峡ドラマシップ」において設立総会を開催し、「九州クルーズ振興協議会」の記念すべき門出の日を迎えることができました。
 
 
 平成10年3月に、(財)九州運輸振興センターが日本海事財団補助事業として実施された「九州周辺海域における国際・国内クルージング航路の振興に関する調査研究」における報告書に取りまとめられておりますとおり、九州地域は、周辺を海に囲まれ、温暖な気候、美しい海岸線、島、山等、海からの景観・変化に富んでおり、多数の国立、国定公園指定地域を有し、自然環境に優れているほか、市街地やテーマパークなど観光地への港からのアクセスに恵まれています。
 また、韓国、台湾、中国に近いという地理的特性に加え、最近は韓国との国際定期航路旅客船の運航が増強され、相互の観光流動が大きくなる等、国際クルージングへの潜在的な需要も増加しているものと見られておりますが、現状においては、関東、関西を起点とする特定のクルーズ船が不定期に寄港するのみで、クルーズ船に接する機会も限られているため、せっかくの九州の好条件が、本格的クルーズの振興推進のため、十分に活用されていないのが現状であります。







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