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はしがき
 本報告書は、日本財団の助成事業「船舶関係諸基準に関する調査研究」の一環として、RR-S603新燃料海上輸送分科会において平成14年度から15年度に実施した「新燃料の海上輸送に関する調査研究」の成果をとりまとめたものである。
 
RR-S603「新燃料海上輸送分科会」委員名簿 (敬称略、順不同)
 
委員長 有冨 正憲 (東京工業大学) (H.14.4〜H16.3)
委員 木倉 宏成 (東京工業大学) (H.14.4〜H16.3)
矢川 元基 (東京大学) (H.14.4〜H16.3)
岡村 敏 (H.14.4〜H16.3)
植木 紘太郎 (H.14.4〜H16.3)
遠藤 久芳 (海上技術安全研究所) (H.14.4〜H16.3)
小田野 直光 (海上技術安全研究所) (H.14.4〜H16.3)
吉田 公一 (海上技術安全研究所) (H.14.4〜H16.3)
有馬 俊朗 (日本海事協会) (H15.4〜H16.3)
尾崎 幸男 (電力中央研究所) (H.14.4〜H16.3)
八十川 欣勇 (日本海事検定協会) (H.14.4〜H16.3)
谷 弘 (電気事業連合会) (H.14.4〜H16.3)
林 昭宏 (電気事業連合会) (H.15.4〜H.16.3)
荒川 恵史 (電気事業連合会) (H.14.4〜H15.3)
横田 浩明 (三井造船) (H15.4〜H16.3)
入江 泰雄 (三井造船) (H14.4〜H15.3)
北村 欧 (三菱重工業) (H.14.4〜H16.3)
中山 一夫 (住友重機械工業) (H.14.4〜H16.3)
丸山 博記 (日本郵船) (H15.10〜H16.3)
佐々木 勝吉 (日本郵船) (H14.4〜H.15.9)
広瀬 誠 (原燃輸送) (H14.12〜H16.3)
秋山 秀夫 (原燃輸送) (H14.4〜H14.11)
志村 重孝 (オーシーエル) (H.14.4〜H16.3)
河井 健次 (辰巳商會) (H.14.4〜H16.3)
河野 晃 (原燃船舶) (H15.4〜H16.3)
小原 磯則 (原燃船舶) (H14.4〜H15.3)
辻 朝治 (関西電力) (H.14.4〜H16.3)
林 俊明 (東京電力) (H14.4〜H16.3)
村松 一嘉 (中部電力) (H.14.4〜H16.3)
落合 政昭 (日本原子力研究所) (H14.4〜H14.9)
関係官庁 森 雅人 (国土交通省海事保安対策官) (H14.7〜H16.3)
吉海 浩一郎 (国土交通省危険物審査官) (H14.4〜H14.6)
峰本 健正 (国土交通省検査測度課) (H15.7〜H16.3)
田淵 一浩 (国土交通省検査測度課) (H14.4〜H.15.6)
小芝 輝好 (国土交通省検査測度課) (H.14.4〜H16.3)
藤田 健雄 (国土交通省検査測度課) (H.14.4〜H16.3)
神志那 正幸 (国土交通省総合政策局) (H.15.4〜H.16.3)
西 敏英 (国士交通省総合政策局) (H.14.4〜H.15.3)
斉藤 敏夫 (経済産業省) (H15.7〜H.16.3)
濱田 哲 (経済産業省) (H.14.4〜H.15.6)
 
1. はじめに
1.1 調査研究の目的
 
 国際原子力機関(IAEA)で策定された放射性物質安全輸送規則(TS-R-1)は、国連の危険物輸送のモデル規則である「危険物輸送に関する国連勧告」(通称:オレンジブック)に取り入れられ、さらに輸送モードごとの国際機関(国際海事機関(IMO)、国際民間航空機関(ICAO))等による検討を経て、国際機関別の輸送規則として発行されている。海上輸送の安全性については、海上における人命安全条約(SOLAS条約)に定められた国際海上危険物規程(IMDGコード)がその役割を担っている。我が国は、使用済燃料、高レベル放射性廃棄物、MOX新燃料等の放射性物質を船舶により輸送する「輸送国」であるが、危険物船舶運送及び貯蔵規則(危規則)にIMDGコードを取り入れることにより国際整合を図りつつ、海上輸送の安全を確保してきている。
 放射性物質等の国際海上輸送に対して、輸送経路にある沿岸国の一部は輸送船に事故が発生した場合十分な安全対策がなされていないとして輸送の安全性に懸念を表明しており、これら沿岸国と輸送国とが輸送安全の問題について議論すべく、「放射性物質の輸送安全に関する国際会議」がIAEA・IMO他共催により2003年7月に開催が計画された。さらに、TS-R-1に規定された「放射性物質輸送のための放射線防護計画」に関する条項が、IMOによりIMDGコードに取り入れられるとともに、同コードが2004年1月に強制化されることになっていた。また、IAEAにおいて、主に原子炉施設を対象とした国際原子力事象評価尺度(INES)を放射性物質輸送時の異常事象や事故にも本格適用へ向けての動きがあった。
 このような背景の下に(社)日本造船研究協会は、平成14年度と15年度の2年間にわたり「船舶関係基準に関する調査研究」の一環として「新燃料海上輸送分科会(RR-S603)」を組織し、新燃料を中心とする放射性物質の海上輸送の安全性に関するIAEAやIMOにおける基準策定や改定、国内取入れなどに対応するため、
1)国際原子力機関における放射性物質の輸送安全に関する国際会議への対応
2)放射線防護計画モデルの作成
3)放射性物質輸送へのINESの適用
について調査研究を実施した。
 この報告書は本分科会の2年間にわたる研究成果を取りまとめたものである。
 
1.2 調査研究の概要
 
 この報告書は、下記の3つの課題から構成されている。
(1)国際原子力機関における放射性物質の輸送安全に関する国際会議への対応
 「放射性物質の輸送安全に関する国際会議」がIAEA・IMO他の共催により2003年7月に開催された。この国際会議は、様々な国々・NGOが様々な立場から参加し放射性物質の輸送に関する安全性を種々多面的な角度から技術的に検証するとともに、IAEAの策定する輸送規則、IMO等の国際機関が策定する輸送モードごとの諸規則の合理性を確認するものである。この国際会議で得られた成果は、必要に応じTS-R-1に取り入れられるとともに、国際機関別の輸送規則にも反映されることが想定された。このため、「輸送国」である我が国としても、国際会議において現行規則の適切性を紹介し、海上輸送の安全性の国際的周知が重要であるとの観点により、「放射性物質の輸送安全に関する国際会議」の対応を本調査研究で実施した。
 本分科会では、この国際会議の概要をまとめるとともに、その対応策として以下の論文や関連資料の作成を行った。
1)9m落下試験と現実的に想定される輸送物の落下事故
2)機関室火災発生時の安全評価
3)日本における放射性物質海上輸送時の船内及び荷役における放射線安全確保
4)放射性物質輸送時の沿岸国に対する通報
5)IAEA規則の2年間隔での改定
 
(2)放射線防護計画モデルの作成
 2004年1月からのIMOの定めるIMDGコードの強制化により、放射性物質を輸送する場合、放射線被ばくによる乗組員の健康被害を未然に防止するため放射線防護計画(RPP)の策定が義務付けられることとなった。
 このRPPにおいて採用する被ばく防護のための措置等は、それぞれの船舶における放射線被ばくの程度及びその可能性に関連付けられたものでなければならない。我が国の海上輸送においては、各種の放射性輸送物を内航貨物船、カーフェリー、コンテナ船、使用済燃料専用運搬船等多種多様な船舶で実施しており、船舶所有者は各船舶の運航形態に応じた合理的及び組織的に系統化され、かつ、各船舶において容易に実行可能なRPPを船長に供与する必要がある。このため、本分科会では、IMDGコードを反映した船舶による危険物運送及び貯蔵規則の施行に先立って、ガイドラインとなるRPPのモデルを構築することとし、IAEAの放射線防護計画ガイド文書の内容を調査検討するとともに、我が国において放射性物質の輸送に従事している船舶の代表例である使用済燃料専用運搬船及び海外からの放射性物質輸送に従事するコンテナ船をモデルケースとしてRPPモデルを作成した。
 
(3)放射性物質輸送へのINESの適用
 INESは、原子力関係者と公衆、マスコミが共通の土台で原子力事故・事象の大きさの理解を共有するためのツールであり、主に原子炉施設を対象としてIAEAが策定したユーザーマニュアルに基づき1992年より運用されている。放射性物質の輸送については試用の位置付けであったが、本格運用に向けた追加ガイダンスが2002年3月に策定され、各国での2年間の試用経験を反映してユーザーマニュアルに取り込まれることとなった。
 我が国においても、将来、INESを放射性物質輸送事象へ本格適用することが考えられることから、IAEAのINESユーザーマニュアル及び追加ガイダンス並びに原子炉施設での運用状況を調査検討するとともに、我が国の放射性物質の海上輸送を対象として想定される事故・事象に対するINES運用マニュアルを策定した。さらに、追加ガイダンス等へのコメント及び本格運用に際して解決しておくべき課題を摘出した。







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