概要紹介
近年、地方公共団体の借入金残高が増大し、公債費負担についても高水準で推移していることから、地方公共団体においては、将来に渡って地方債の発行及び償還を適切に管理することが重要となってきている。また、公的資金の貸付が重点化或いは縮減され、民間資金による調達のウェイトが高まる中、その調達に関し、手段の多様化と商品性の向上を図ることが一層重要となってきていることから、主に下記の項目について調査研究を行った。
(1)地方債の計画的な管理
地方公共団体においては、借入金残高が、減税による減収の補填や景気対策等のための地方債の増発等により急増しており、また、地方債資金については、一定の公的資金を確保する一方、地方分権の推進や財政投融資改革の趣旨を踏まえ、地方公共団体ができるだけ自らの責任で民間資金による調達を行うことが重要となってきている。さらに、平成18年度以降は、起債許可制から起債協議制に移行し、自己決定及び自己責任に基づく資金調達が強化される予定である。
こうしたことを踏まえ、地方債管理に関する自主的な取り組みを一層充実させる必要があることから、地方債管理について調査研究を行い、地方公共団体における計画的な地方債管理を推進し、地方債の発行・償還、情報提供及び収集、事務処理体制の整備といった地方債管理全般についてより適切な対応を図っていく上で参考となるよう、そのガイドラインの提示を行った。
(2)市場公募化の推進と市場公募地方債の商品性の向上
ここ数年の地方分権の推進や財政投融資改革の進展を踏まえ、地方債の資金調達にあたっては、市場公募地方債の充実を始め、民間資金調達における商品性の向上と調達手段の多様化を図り、より一層市場原理に則した様々な取り組みを行っていくことが求められている。
このような状況の下、過去の調査研究委員会においても、ミニ市場公募地方債の発行、市場公募地方債の発行条件決定における2テーブル方式の導入、共同発行市場公募地方債の創設等、様々な取り組みについて提言を行ってきたところであるが、今後もそれらを踏まえつつ、民間資金調達の柱となる市場公募地方債を中心に取り組みの一層の充実強化を図ることが必要であることから、地方債における市場公募化の推進と商品性の向上について調査研究を行い、市場公募化の必要性や留意点、共同発行市場公募地方債の商品性の向上・充実、ミニ市場公募地方債の今後の取り組みについて、具体的な提言を行った。
(3)今後の留意点
地方債については今後、(1)一般債振替制度(2)超長期債(3)減債基金のより有利な運用等について検討を進める必要があると考えられる。一般債振替制度は平成18年1月から導入される予定となっており、地方公共団体、引受金融機関等において、定時償還債の取扱いや移行に係る費用負担等の諸課題に留意しつつ的確な対応を図る必要があり、また、超長期債については、超長期資金である政府資金の減少を踏まえ、民間資金においても超長期債による資金調達が望まれている。さらに、減債基金については、安全かつ効率的な運用を図る中で、長期的視点に立った有利な運用に努めることが重要であると考えられ、これらの課題についての調査研究を行い、具体的な提言を行った。
上記の具体的な提言を受け、特に市場公募化の推進にあたっては、平成16年度から、福島県、群馬県、岐阜県、熊本県の4団体が新たに市場公募地方債の発行を予定している。新規公募団体の増加は、平成15年度のさいたま市に続き2年連続であるが、都道府県レベルで新たに市場公募地方債を発行することは、平成元年度の茨城県、新潟県、長野県以来、15年ぶりのことであり、本調査研究委員会での提言が重要視されている。
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