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はじめに
本書は、平成15年度に日本財団の助成を受け実施した海上防災訓練の充実強化事業の報告書である。
独立行政法人海上災害防止センター(以下「センター」という。)は、その設立目的を達成するため、平成15年12月現在、全国の主要港湾に所在する147の業者及び外洋対応としての12の業者を契約防災措置実施者(以下「契防者」という。)として契約を結び、油等の流出事故が発生した際は、センターの指令により直ちに防除活動が実施できるように体制を整備しているが、契防者には、港湾運送、港湾曳船、港湾土木を本業とする業者が多く、防災事業を専業とする業者は極めて少ないのが現状である。
このような状況に対し、平成11年度までセンターとしては契防者等が、防除作業を迅速、的確に実施する能力を保持するために、各現地において実際に即した流出油事故を想定して海上防災訓練を実施し、排出油等の防除に必要な知識及び技術の習得並びにその錬磨向上を図ってきたところである。
しかしながら、このような各地で実施してきた訓練においては参加船艇及び人員の連携に重点が置かれていたことから、高度な技能の修得には時間的、設備的に制約があり、大規模災害現場において指揮ができるエキスパートを育成するには至っていなかった。
特に、平成9年に発生したナホトカ号事故では、冬季の日本海で防除措置の極めて困難な高粘度化した流出油が大量に沿岸に接近・漂着し、さらに被災現場が広域に及んだことから、防除措置現場において高度な技能が求められながら、これらを習得した者の不足により被害の拡大を招き、人材育成の必要性が痛感されたところである。
このようなことからセンターにおいても防除措置体制の主体である契防者において高度な技能を有する人材を育成することが急務となってきたところである。
横須賀のセンター研修所では平成8年度から新設の油防除訓練施設において実際に油を使用し、実経験を取り入れた実践的な油防除訓練を実施しており、この施設を活用し契防者を対象とした高度な防除技術の習得を目的とした訓練を実施することが可能となってきたことから、平成14年度に引き続き平成15年度においても各契防者から選抜された者を横須賀に招聘し、同研修所で集中的に訓練を行うことで人材育成が効率的に実施できることとなり、これにより大規模災害へ対応できる人的体制の整備を図ることとした。
また、実際に現地で油防除に従事する多数の者を対象とした地域に即した防除措置の指導は、今後とも欠かせないものであり、センター派遣講師による油防除技術等に関する研修会を開催し、地域における海上防災能力の向上を図ることとした。
大規模な排出油防除措置作業の際に核となるべき高度な技能を有する人材を育成するため、当センター横須賀研修所において排出油防除訓練を行い、大規模災害へ対応できる人的体制の整備を図ることを目的とする。また、地域に即した防除措置の指導のため、当センター派遣講師による油防除技術等に関する巡回研修会を開催し、地域における海上防災能力の向上を図ることを目的とする。
平成15年
4月1日 NF第2002007133号により助成金交付決定知書受理
4月9日 海防防第4・5・6号により関係海上保安本部及び同部署長並びに関係契約防災措置実施者に対し巡回研修会実施の協力依頼書送付
4月22日 海防防第9・10号により関係契約防災措置実施者に対し排出油防除訓練の参加協力依頼書送付
5月28日 山形地区巡回研修会
6月2日〜6日 排出油防除訓練
6月27日 福井地区巡回研修会
7月31日 長崎地区巡回研修会
10月21日 茨城地区巡回研修会
10月24日 岡山地区巡回研修会
12月5日 全ての支払いを完了
同日 同事業の完了
別紙記載のとおり
1. 実施期間
平成15年6月2日〜6月6日 5日間
2. 訓練参加者
契約防災措置実施者から選出した28名
大規模な排出油防除措置作業の際に核となるべき高度な技能を有する人材を育成するため、横須賀研修所において排出油防除訓練を行い、大規模災害へ対応できる人的体制の整備を図ることを目的として次の内容による訓練・研修を実施した。
(1)排出油事故対応措置の検討・評価
(2)洋上浮流油及び沿岸漂着油への対応措置
(3)排出油防除資機材の使用方法及び使用限界
(4)排出油防除資機材を使用した洋上訓練及び実油を使った海岸清掃実習
(5)排出油事故対応における戦略と戦術
なお、今回は、横須賀研修所における本コースが契約防災措置実施者専用コースとなった為、同研修所内において防災連絡会議を実施し、油流出事故発生時の各地域における体制確立手順指揮命令系統の確認、原因者への費用請求及び作業実施者への支払手続き等に関し協議を行った。
開講式
(1)講義
a. 試験
本研修を受講することによる排出油防除活動に関する知識・技術等の習得状況を評価するため、研修初日及び最終日に、同一の想定問題による現場対応に関する試験を行った。
本評価方法については、研修生を4グループに分け、それぞれ条件の異なった想定(風向・風速・潮流等)問題について、その具体的な戦略と戦術等を作図・回答させた。この研修生の作図と回答について、予め作成した「想定問題評価基準」(別添3-2 参照)等に従って、客観的に評価した。この結果、研修初日に実施した試験では平均点20点であったものが、最終日の試験においては平均点77点の成果を上げ、格段の向上が認められた。
試験風景
b. 防除活動記録
実際の防除活動の際に実施した業務の記録は、適切な防除活動が行われたという証拠の記録となるとともに、油防除活動に要した費用の請求の際の基礎資料となる重要な記録となることから、本研修全体をひとつの防除活動と捉え、これを日々記録することで実際の防除活動記録の作成方法を習得させることとした。
c. 流出油の種類及び性状
油の成分と性質、種類、経時変化(拡散、蒸発、分散等)、自然浄化作用等を中心に、石油類が海上に流出した場合に、石油類の精製過程あるいはその成分により、また、気象海象により、油類が変化し流出油防除活動にどのような影響を及ぼすかを中心に講義を行った。更に、石油類が流出した際に発生する可燃性ガスや有毒性ガスと風速との関係等に関する基礎知識について講義した。
講義風景1
講義風景2
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