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 次に、オイルフェンスの開口比に対する抗力係数の傾向を実験値より求めてみると図II-8.14となる。
 この図から、大略的な開口比に対する抗力係数の傾向を求めると、曳航速度が0.2及び0.3m/sについては、ほぼ開口比に比例して抗力係数が変化するが、曳航速度が0.4及び0.5m/sの場合は、抗力係数を大略0.4の一定値としてもほぼ良いといえる。
 以上の成果に基づいてオイルフェンスの平水中における抗力係数は、大略次の手法により推定することが可能である。
 
a 抗力係数が2.0及び0.4で曳航速度に対して平行線を引く。
b 捲れ始めの曳航速度(V1m/s)を次式から推定する。
V1=0.1975・CP
 ここで、CPは開口比である。
c 抗力係数が2.0と捲れ始めの曳航速度であるV1との交点から曳航速度が0.1m/s増加すると抗力係数が0.83減少する直線を引き、抗力係数が0.4との交点を求める。
d 以上で図II-8.12に示す破線が求められるので、図II-8.12にならってオイルフェンスの抗力係数の特性曲線を引けばよい。
 なお、破線は次式で求められる。
CT =2.0・・・V≦0.1975・CP
CT=2.0-8.3(V-0.1975・CP)・・・
0.193+0.1975CP≧V≧0.1975・CP
CT=0.4・・・V≧0.193+0.1975CP
 
CT: 抗力係数
CP: 開口比
V: 曳航速度または潮流速度(m/s)
である。
 
図II-8.14 オイルフェンスの開口比に対する抗力係数(平水中)
 
(2)波浪中における曳航実験
 通常波浪中における曳航実験は、波長及び波高を系統的に変化させてオイルフェンスの曳航力を調べるのが一般的であるが、今回の実験では波浪中におけるオイルフェンスの曳航力特性を把握するために行った。
 波浪中における曳航実験において得られた資料からオイルフェンスの波浪中における平均抗力とその平均抗力に対して波で変動する抗力とに区別して取り扱うこととした。
 平均抗力は、平水中における曳航時の抗力と同様な手法で抗力係数を求めた。
 抗力変動は、同じ状態の平水中における曳航時の抗力の倍率を求めた。
 
イ 波浪中における平均抗力
 オイルフェンスを波浪中曳航した場合の平均抗力を平水中と同様にして抗力係数を求めた結果をオイルフェンスの長さごとに曳航速度に対して示すと、図II-8.15となる。
 これらの図から、実験値は多少バラツキ傾向があるが、大略実線で示す曲線にて平均抗力係数を代表できるといえる。その結果、オイルフェンスの開口比及び波長に関係なく、一つの曲線で表すことが可能であることがわかる。そして、波長が10m、波高が0.30mの波浪中における平均抗力は、開口比に関係なくオイルフェンスの長さに対して見ると図II-8.16となる。
ロ 波浪中における抗力変動
 オイルフェンスを波浪中曳航した場合、変動する抗力を平水中における抗力の倍率で求めた結果をオイルフェンスの長さごとに曳航速度に対して示すと図II-8.17となる。
 これらの図から、実験値はバラツキが平均抗力係数よりも大きいが、大略実線で示す曲線にて抗力変動を代表できる。その結果、オイルフェンスの開口比及び波長に関係なく、一つの曲線で表すことが可能であることがわかる。そして、波長が10m、波高が0.30mの波浪中における抗力変動は、開口比に関係なくオイルフェンスの長さに対して見ると図−II.8.18となる。
 以上の成果に基づいて図II-8.16及び図II-8.18を用い潮流と波浪とが重なった場合のオイルフェンスの平均抗力と抗力変動を概算することが可能であるといえる。
 なお、低速度では高い値を示し、高速度では大略平水中における抗力係数に近い値を示している。それらは、低速度では一般に言われている波浪中における抵抗増加があるので、この程度の増加量は大きい値ではなく、多少少ないといえる。
 それは、波による水粒子の運動でオイルフェンスのスカートが捲れ上がったり、捲れ上がらなかったりするためであろう。
 一方、高速度では波による水粒子の運動で平水中よりも早くオイルフェンスのスカートが完全に捲れ上がったためであろう。
 
図II-8.15 波浪中における平均抗力係数(波高30cm)
 
オイルフェンスの長さ20m
 
オイルフェンスの長さ40m
 
オイルフェンスの長さ60m
 
図II-8.16 オイルフェンスの長さに対する波浪中の平均抗力







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