図II-8.6 曳航展張
図II-8.7 流し展張
3 オイルフェンスの使用法2)(誘導法)― 昭和54年 ― 日本財団
流出油事故現場の風潮流が速く、オイルフェンスによる流出油の拡散防止や滞留が困難で油回収作業が出来ない場合、油回収作業が可能な海域へ流出油を誘導する誘導展張法(Deflection deployment)がある。
この誘導展張法の調査は、オイルフェンスの誘導限界速度及び展張形状等について、水槽実験及び海上実験(東京湾)を実施した。
(1)水槽実験
平水中におけるオイルフェンスの斜め誘導展張角度は、20°、30°、40°及び50°の5種及びオイルフェンスの曳航速度(海上では潮流速度となる)は、0.3、0.5、0.7m/s及びオイルフェンスから漏油する限界速度としている。
波浪中実験は、オイルフェンスの展張角度20°及び40°、波浪条件は波長10m、波高0.3mで曳航速度は平水中と同じである。
実験に使用した油は、B重油相当の潤滑油(30℃ 100 cSt)である。
水槽実験の成果は、次のとおりである。
水槽実験よりオイルフェンスを水流に対し斜め展張した場合における流出油の挙動について定性的な特性がかなり明らかにされたが、特に漏油の状況には油滴漏洩と帯状漏洩の2つの現象について観測されている。油滴漏油は概して帯状漏洩の発生する以前に発生しており、図II-8.8、9で見られるように漏油状況の全般的傾向は帯状漏油の場合とほぼ似ているが、漏油量は極めて少ないので、実行の海上流出油の場合、オイルフェンスによる油の誘導という使用方法を考察するに当たっては、漏油量の大きい視認の容易な帯状漏洩を対象とせざるを得ないと考えられる。
帯状漏油を主対象として実験結果を要約してみると、次のことが言える。
1)展張角度20°の時
オイルフェンスの全長(20m)にわたって誘導可能なのは流速0.3m/sまでで、その誘導幅は約6.8m(20m×sin20°)である。
オイルフェンスの長さの3/4(15m)にわたって誘導可能なのは流速0.7m/sまでで、その誘導幅は約5m(15m×sin20°)である。
2)展張角度30°の時
オイルフェンス誘導可能なのは流速0.3m/sまでで、その誘導幅は約10m(20m×sin30°)である。
オイルフェンスの長さ3/4(15m)にわたって誘導可能なのは流速0.5m/sまでで、その誘導幅は約7.5m(15m×sin30°)である。
3)展張角度40°及び50°の時
オイルフェンスの全長(20m)にわたって誘導可能なのは流速0.2m/sまでで、その誘導幅は約13〜15mである。
オイルフェンスの長さ1/2(10m)にわたって誘導可能なのは0.5m/sまでとなり、その誘導幅は約6〜8mとなる。
4)展張角度30°において単独展張と重ね展張を比較した場合、帯状漏油の生ずる位置が単独展張時の流速0.5m/sと重ね展張時の流速0.9m/sにおいてほぼ一致し、重ね展張の有効性が認められる。
図II-8.8 油滴漏油
図II-8.9 帯状漏油
引用文献
2)「海上防災の調査研究」、オイルフェンスの使用法に関する調査研究II(誘導法)
海上災害防止センター、調54-1、昭和55年3月
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