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6-3-2 海事関係のODA実績
ダルエスサラーム魚市場建設計画に対する無償資金協力
<案件概要>
1. 援助形態:無償資金協力
2. 協力金額:7.89億円
3. 交換公文締結日:2000年6月29日
4. 協力内容:以下
 
 同地域を中心とした沿岸地域はタンザニア国内でも最も盛んな漁業地域であるが、バラック構造仮店舗が無秩序に展開して営業し、市場としての機能を失っている。また給排水等のインフラ施設や水揚げ・保管施設の未整備により品質を低下させる要因となっていた。水揚げ岸壁及び護岸・埋め立てやセリ・卸売り棟・小売市場等の建設、保冷箱の供与により、市場機能や衛生環境の向上、安定した水産物供給の確保、保管施設整備による漁獲後損失率が低下する効果が生じた。
 
ムワンザ市キルンバ魚市場建設計画に対する無償資金協力
<案件概要>
1. 援助形態:無償資金協力
2. 協力金額:6.24億円
3. E/N署名日:2003年11月28日
4. 相手国実施機関:タンザニア政府
5. 協力内容:以下
 
(1)日本政府は、タンザニア連合共和国政府に対し、「ムワンザ市キルンバ魚市場建設計画(The Project for Construction of Kirumba Fish Market in Mwanza)」の実施に資することを目的として、6億2,400万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が、11月28日ダルエスサラームにおいて、出木場一実在タンザニア大使とグレイ・ムゴンジャ同国大蔵次官(Mr. Gray S. Mgonja, Permanent Secretary, Ministry of Finance)との間で行われた。
(2)タンザニアに面するビクトリア湖は、アフリカ大陸最大の湖で、タンザニアの総漁獲量の約50%を生産している。ビクトリア湖南西部に位置し同湖の交易の中心的都市であるムワンザ市にあるキルンバ市場は、ビクトリア湖で漁獲される水産物の集散地である。とりわけビクトリア湖の主要漁獲物の一つであり、同国及び周辺国で地場消費されているダガー(コイ科の小魚の丸干し)は、9割以上がキルンバの市場を通じて流通している。
 しかしながらキルンバ市場には適切な陸揚げ施設がないため、ビクトリア湖畔に点在する漁村から運び込まれるダガー等は、浅瀬から直接浜まで揚げられており、これは危険な重労働であるだけでなく、産品が水に濡れることによる商品価値の低下を招いている。
 また、ダガーの盛漁期には袋に詰められ市場中に山積みされるが、現市場はビクトリア湖畔の砂浜であり、屋根等の施設がないため、雨天時には市場が開けないため流通が滞ってしまい、経済的な損失が発生している。さらに、ダガーが濡れてしまうとカビや害虫が発生して商品価値が低下してしまう上に、再乾燥させる必要があり、漁業関係者の大きな負担となっている。
 このような状況の下、タンザニア政府は、「ムワンザ市キルンバ魚市場建設計画」を策定し、水揚げ施設や屋根を備えた魚市場の建設に必要な資金につき、日本政府に対し無償資金協力を要請してきたものであり、これは、日本政府のタンザニアに対する援助重点分野(都市部等における基礎インフラ整備等による生活環境改善)にも合致するため実施するものである。
(3)この計画の実施により、キルンバ市場における水産物等の陸揚げ作業の安全化・効率化がなされ、また、降雨による作業の中断・停止が改善され、市場流通の安定化が期待される。さらに、ダガーの品質低下を防ぐことにより、漁民の収入向上及びタンザニア国内や周辺国への良質な産品の供給が可能となる。
 
7. マラウィ
7-1 概要
7-1-1 一般事情
(1)面積:11.8万km2
(2)人口:1,100万人(2000年世界銀行)
(3)首都:リロングウェ
(4)人種:バンツー系(主要部族はチェワ族、トゥンブーカ族)
(5)言語:チェワ語、英語(以上公用語)、各部族語
(6)宗教:キリスト教半分、その他イスラム教、伝統宗教
 
7-1-2 政治体制
(1)政体:共和制
(2)元首:ムルジ大統領
(3)議会:一院制(193議員)
(4)政府:首相なし
(5)略史:
 1891年英保護領となる。1953年ローデシア・ニヤサランド(現マラウィ)成立。1964年英国より独立。1966年マラウィ議会党による一党制移行。1994年独立後初めての大統領・議会選挙。
(6)内政:
 バンダ前大統領は、独立以来独裁政権マラウィ議会党(MCP)を維持してきたが、1993年6月国民投票が行われ、複数政党制へ移行された。1994年5月大統領・国民議会選挙が実施され、野党統一民主戦線(UDF)が第一党となり、ムルジUDF党首が大統領に就任した。UDFは野党民主同盟(AFORD)と連立政権を発足。1996年6月、AFORDが政策に対する不満から連立政権から離脱したため、UDFは議会で過半数に満たないまま単独政権へと移行した。しかしその後、補欠選挙、他党議員の離党等により、UDFは1998年初めには、議会での過半数を獲得した。
 1999年6月、第2回目の複数政党制による選挙が実施され、193議席中UDFが93議席(後に無所属4名が入党し97議席)、MCP66議席、AFORD29議席を獲得、ムルジ大統領が再選された。
 2000年8月、第一野党のMCPはチャクワンバ党首派とテンボ副党首派に分かれて党大会を開催し、それぞれを党首に選出した。この結果MCPは分裂状態となった。2001年1月、ムルジ大統領は欧米ドナーの評判が良かったチカオンダ蔵相を解任し、後任にジマンベ農業開発市場公社総裁を任命した。2002年5月、ムルジ大統領は大統領三選を認める憲法改正を行うことを宣言したが、7月の国会において憲法改正案は否決された。ムルジ大統領は2003年4月、今期限りで大統領職を引退することを公式に表明。
(7)外交政策:
 ブラックアフリカ諸国中、早くから南アフリカと外交関係をもつ等独自の路線をとっており、他のブラックアフリカ諸国より反発もあったが、近年周辺諸国との関係も改善。これを機にアフリカ統一機構(OAU)や南部アフリカ開発共同体(SADC)の場等で積極的な外交活動を展開。
 
7-1-3 経済
(1)農業に基盤を置き(GDPの約40%、輸出の90%)、労働人口の85%が農業及び農業関連事業に従事している。タバコ、紅茶、砂糖等の農産物が全輸出の85%を占めており、これら農産物価格の国際市況に外貨収入を左右されている。
(2)1980年代初めより経済構造調整計画を実施し、1989〜1991年には、平均実質成長率が6%に達するに至った。しかし、1992年、1994年は旱魃に見舞われ、旱魃救済支援のため政府の財政は厳しいものとなった。
(3)また、キャッシュ・バジェットを導入し、財政赤字を従来の二桁台から1996年度には5.7%、1997年度には4.4%に減らす効果が見られた。しかし、1998年度には、財政支出が増え、GDPの5.2%に達する等経済運営は不安定となっている。
(4)1999年、国内経済は製造業、運輸、流通等の分野で大企業から中小企業へと経済活動が移り、実質GDP成長率が当初の見通しを上回り4.7%を記録したが、財政赤字は27.3%と膨らんだ。
(5)クワチャの対米為替レートは2000年1月以来下落を続けている(1月に1米ドル=46.5MKであったが、11月には約80MKまで下落)。下落の理由として主要輸出産品のタバコ輸出額の減少及び輸入石油価格上昇が挙げられる。2000年の実質GDP成長率は2.5%程度となる見込み。
(6)2002年2月、ムルジ大統領は、洪水及び旱魃被害の影響により深刻な食糧不足状況にあるとして、食糧支援を緊急要請した。
 
主要経済指標(EIU2003見通し)
(1)GDP: 19億米ドル(世界銀行2000年)
(2)実質GDP成長率:1.7%
(3)国民一人当たりGDP: 170米ドル
(4)物価上昇率:11.6%(年間平均)
(5)失業率:不明
(6)国際収支:
・輸出総額(商品):4億5,370万米ドル
・輸入総額(商品):6億2,320万米ドル
・経常収支:9,810万米ドルの赤字
(7)主要貿易品目
・輸出:タバコ、紅茶、砂糖
・輸入:工業用原料、石油、輸送機械
(8)主要貿易相手国
・輸出:南アフリカ(14.8%)、米(8.8%)、独(8.5%)、オランダ(7.3%)、日本(4.5%)
・輸入:南アフリカ(36.1%)、ジンバブエ(18.2%)、ザンビア(8.1%)、日本(4.0%)
(9)対外債務:30億米ドル
(10)通貨:マラウィ・クワチャ(MK)、1米ドル=81.74MK
 
日本との経済関係
(1)対日貿易(2000年)
対日輸出:12億円
対日輸入:56億円
(2)主要品目
対日輸出:葉タバコ、茶
対日輸入:自動車・バス、電話・電信用機器、モーターバイク
(3)日本からの直接投資
なし
 
7-2 海事事情
 マラウィは内陸国で港はないが、マラウィ政府は貨物の迅速な流通のために、タンザニアのダルエスサラーム港と同港から750km西のMbeya(マラウィの国境から90kmにあるタンザニアの町)に貨物センターを設置している。
 主な施設:倉庫、35トン積載できる高架クレーンを備えたコンテナー設備、貨物積み降ろしのための側線、12,000m3のディーゼルタンク、7,700m3の石油タンク。
 
7-3 日本政府によるODA実績
7-3-1 日本の援助実績
 
日本のODA実績
(単位:百万ドル)
  贈与 政府貸付
  無償資金協力 技術協力 支出総額 支出純額 合計
1996年 28.49 12.58 41.07 27.17 22.92 63.99
1997年 8.72 12.72 21.44 20.00 13.69 35.13
1998年 41.37 12.30 53.67 - -6.25 47.41
1999年 27.12 14.56 41.68 - -7.64 34.04
2000年 33.02 15.44 48.46   -9.93 38.53
2001年 14.26 12.42 26.68   -8.38 18.29
出典:「日本政府の政府開発援助、マラウィ」
 
2000年度までの累計
・有償資金協力:341億3,600万円(交換公文ベース)
・無償資金協力:346億7,000万円(交換公文ベース)
・技術協力:186億8,300万円(JICA実績ベース)
 
研修員受け入れ(1999年度までの実績、以下同様):569人
専門家派遣:145人
調査団派遣:433人
協力隊派遣:1,094人
機材供与:19億5,370万円
プロジェクト技術協力:3件
開発調査:18件
 
年度別・形態別実績
年度 無償資金協力 技術協力
90年度までの累計 101.65億円 76.47億円
研修員受け入れ 116人
専門家派遣 10人
調査団派遣 76人
協力隊派遣 789人
機材供与 635.0百万円
開発調査 3件
91年 24.09億円
穀物倉庫建設計画/医療機材整備計画/食糧増産援助/ノンプロジェクト援助/食糧援助/債務救済
6.98億円
研修員受け入れ 18人
調査団派遣 18人
協力隊派遣 40人
機材供与 115.6百万円
開発調査 1件
92年 20.92億円
ムチンジ地下水開発計画(1/3期)/食糧援助/食糧増産援助/債務救済
9.03億円
研修員受け入れ 24人
専門家派遣 2人
調査団派遣 29人
協力隊派遣 41人
機材供与 81.8百万円
開発調査 1件
93年 22.45億円
ムチンジ地下水開発計画(2/3期)/リロングウェ市下水道整備計画/医療機材整備計画/食糧援助/食糧増産援助/債務救済
10.27億円
研修員受け入れ 21人
専門家派遣 7人
調査団派遣 30人
協力隊派遣 25人
機材供与 174.6百万円
開発調査 2件
94年 19.39億円
リロングウェ市下水道整備計画/ムチンジ地下水開発計画(3/3期)/債務救済/ノンプロジェクト援助/債務救済
8.50億円
研修員受け入れ 40人
専門家派遣 17人
調査団派遣 32人
協力隊派遣 29人
機材供与 79.6百万円
開発調査 1件
プロジェクト技協 1件
95年 19.39億円
リロングウェ市下水道整備計画/債務救済/食糧援助/食糧増産援助/草の根無償(1件)
8.50億円
研修員受け入れ 39人
専門家派遣 23人
調査団派遣 32人
協力隊派遣 45人
機材供与 121.1百万円
開発調査 1件
プロジェクト技協 1件
96年 24.29億円
食糧増産援助/債務救済/リロングウェ市下水道整備計画/ムジンバ西地区給水計画/ブワンジェバレー灌漑開発計画/緊急無償洪水災害/草の根無償(12件)
14.25億円
研修員受け入れ 50人
専門家派遣 13人
調査団派遣 55人
協力隊派遣 22人
機材供与 160.4百万円
開発調査 1件
プロジェクト技協 2件
97年 45.10億円
ムジンバ西地区給水計画/ブワンジェバレー灌漑開発計画/ノンプロジェクト無償/*マラウィ大学農学部水産学科施設整備計画/債務救済/草の根無償(9件)/食糧援助/食糧増産援助
15.35億円
研修員受け入れ 69人
専門家派遣 18人
調査団派遣 43人
協力隊派遣 32人
機材供与 224.7百万円
開発調査 4件
プロジェクト技協 2件
98年 31.51億円
ブワンジェバレー灌漑開発計画/マンゴチ橋架け替え計画/ムジンバ西地区給水計画/債務救済/食糧援助/食糧増産援助/草の根無償(11件)
16.77億円
研修員受け入れ 96人
専門家派遣 27人
調査団派遣 76人
協力隊派遣 30人
機材供与 254.4百万円
開発調査 2件
プロジェクト技協 2件
99年 26.27億円
ブワンジェバレー灌漑開発計画/マンゴチ橋架け替え計画/ムジンバ西地区給水計画/食糧増産援助/債務救済/草の根無償(8件)
16.90億円
研修員受け入れ 96人
専門家派遣 28人
調査団派遣 42人
協力隊派遣 41人
機材供与 106.4百万円
開発調査 2件
プロジェクト技協 2件
2000年 3,302万ドル
食糧増産援助
1544万ドル
開発調査 5件
2001年 1,426万ドル
予防接種体制整備計画/食糧増産援助/リロングウェ地下水開発計画
1242万ドル
開発調査 5件
注)「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力については交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベース
 
*マラウィ大学農学部水産学科施設整備計画
<案件概要>
1. 援助形態:無償資金協力
2. 協力金額:7.67億円
3. 交換公文締結日:1997年
4. 協力内容:施設機材提供
 
7-3-2 マラウィ援助における重点分野
(1)日本政府は、1992年から1994年にかけて民主化の遅れ及び人権状況を理由に新規の国際収支支援型の援助を一時停止していたものの、民主化促進の動きが見られたため、マラウィの民主化・経済改革努力を支援するため、有償資金協力、無償資金協力及び技術協力の各形態により積極的に援助を実施してきた。
 1997年2〜3月には、無償資金協力及び技術協力に関する政策協議を、1999年8月にはプロジェクト確認調査を実施した。今後は、農業分野における生産性向上を目的とした農村地域の開発と貧困層の生活環境改善のための基礎生活分野に対する支援(食糧増産、教育、保健・医療、環境保全)を中心に可能性を検討することとし、また、長期的な視点から、構造調整支援に加え、同国の民間活動の活性化と、経済成長のため、電力・通信・運輸等経済基礎インフラ整備に対する支援の可能性を検討する方針。
(2)有償資金協力については、空港及び通信施設の整備等に円借款を供与してきたが、近年はプロジェクト案件の実績はなく、また、マラウィは、重債務貧困国(HIPC)であり、ケルン・サミットでの合意に基づいて成立した「拡大HIPCイニシアティブ」による債務削減措置の適用を求めていることから、新規の円借款の供与は困難である。今後は、同国に対して無償資金協力及び技術協力を中心とする協力を検討していく方針。
 無償資金協力については、食糧援助・食糧増産援助をはじめ、農業分野、水供給分野等基礎生活分野を中心に援助を実施している。また、同国の構造調整努力を支援するため、1999年度までに合計241億円の円借款及び合計26億円のノン・プロジェクト無償資金協力を供与した。
 技術協力については、特に青年海外協力隊による協力が早くから進んでおり(隊員派遣数の累計はアフリカ地域で第一位、全世界でもフィリピンに次いで第二位)、保健・医療、社会基盤、行政、工業等多岐にわたる分野に隊員が派遣され、同国における評価も高い。また、農業、運輸、保健・医療、教育等で開発調査を実施している。
(3)マラウィ政府は「貧困削減戦略ペーパー(PRSP: Poverty Reduction Strategy Paper)」(暫定版)を鋭意作成中であり、我が国としてもこの作業に積極的に貢献していく方針。







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