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3-5. 海事産業
 フィジーで唯一特筆すべき造船業者はフィジー・シップビルディング・コーポレーション(Fiji Shipbuilding Corporation Ltd(SFL)である。同社はかつては100%国有であったが、政府が1996年に民間企業のカーペンターズ社(Carpenters)に株式の51%を売却した(約380万USドル)際に一部が民営化された。経営能力が十分でなかったため、同社は約300万フィジー・ドルの損失を出し、政府が資産を買い戻した。現在は理事会が存在し民間企業の経営組織を導入した公営企業として運営されている。
 
 SFLの中核事業は1,000t、500t、200t、及び100tの積載能力をもつリフトの備えられた4つの造船台の運営である。造船台には各種施設が完備している。機械的及び構造的修理はすべて現場でできるようになっており、国際基準に合致した塗装やブラスティングも可能である(また、漁船の整備点検のため、3,000tの浮きドックがある)。このビジネスは収益が高く、国内船だけでなく外国籍の漁船も対象としている。大型の観光用船舶の一部はSFLでサービスを受け、他の船はオーストラリアのケアンズに送られている。
 
 SFLの2つ目の事業は造船で、同社が建造した船に関しては付録3に記載されている。同社は、長さ90mまでのあらゆるタイプの鋼船とアルミ船を建造する能力を有している。同社の造船所では、1930年代から100隻以上の船を建造した。最近では、タヒチの顧客用に24mのトロール船を建造した。SFLの従業員はエンジニアリング、板金、木材、ぎ装品、及び船舶修繕の各分野で訓練を受け熟練した180人の職人で構成されている。
 
 SFLはフィジーや他の域内の船舶市場において、「標準」の24mの延縄漁船を販売することを希望している。延縄漁船は約50万米ドルで販売でき、SFLでは1年あたり最大10隻の建造が可能と思われる。
 
 またSFLは中古船の改装も引き受けている。改装に必要となる設備や機器は世界各国から調達され、特に好んでいるブランドはない。中古の舶用エンジンの市場は健在であり、多くの顧客がこうした割安な代替品を好んでいる。
 
 スバにはインダストリアル・アンド・マリンエンジニアリング社(Industrial and Marine Engineering Ltd(IMEL))が運営するもう1つの小型の造船台がある。同社では、150t級までの船の取り扱いが可能で、以前は建材運送船の修理に使用された。IMELはさらに小規模の船舶修繕も引き受けており、このために造船台を改良している。フィジーの造船及び修理施設は以下の通り分類できる。
 
(1)金属製船舶の建造
 小型のアルミ船及び鋼船を建造している造船企業が3社ある。すなわちスバのアロイ・ファブリケーターズ社(Alloy Fabricators)、ラウトカのウエルドテック社(Weld Tech Ltd)、及び同じくスバのインテグレーテッド・ウエルディング・インダストリーズ社(Integrated Welding Industries)である。
(2)ファイバーグラス製パワーボート及びプレジャーボート
 村で使用するための小型のファイバーグラス製「バナナ」ボートスタイルを造っている小規模な造船企業と、輸出向けの高速プレジャーボートを建造している企業が最低1社ある。
(3)膨張式ボート
 プレジャー用の膨張式ボートの小規模製造企業が1社ある。
 
3-6. 港湾設備
 フィジーの港湾はフィジー海事・港湾公社(MPAF)によって管理されている。MPAFは独立採算制をとっており、国際港湾協会のメンバーであると同時に南太平洋港湾協会(South Pacific Ports Association)の事務局である。MPAFは監督機関であるフィジー港湾局と商業部門を管轄するポート・ターミナル・サービスによって設立された。
 
 フィジーにはスバ、ラウトカ、及びレブカの3つの港がある。その他の港と水深の深い錨地がマラウ、サブサブ、及びブンダ・ポイントにある。税関手続き、入国手続き及び検疫施設は各港に整っている。
 
 フィジーの主要な港は以下の2つである。
 
(1)スバ港
 スバ港は取扱コンテナ数において国内最大の港である。同港はMPAFが所有し、キングズ波止場の貨物取扱いはポート・ターミナル・サービス社(Port Teminal Services Limited(PTL)が行っている。
 同港は自然の港であり、改善された沿岸の施設、近代的な造船設備及び機器が整備され、ターンアラウンドタイムが短く貨物取扱いが効率的で上質のサービスを提供している。スバ港では在来船が入港するにあたり、船舶の長さや喫水に関する制約がない。定期的に入港する大型船は4万2000tである。スバ港は、外国船及び国内船に対し、以下の停泊施設が整っている。
 
波止場名 長さ(m) 水深(m)
外国船
キングズ波止場 492 11.6
ワル湾 184 9.0
国内船
プリンセス 156 4.3
ワル湾No.1 73 3.0
ワル湾No.2 46 3.5
修理(船舶) 122 3.0
 
 スバ港では水先案内、安全な錨地、水深の深いバース、荷役、一般貨物取り扱い、コンテナとバラ積み貨物を収納するフリーザやクーラーを含む貨物及びコンテナの保管、くん蒸及び焼却、桟橋施設等、広範にわたるサービスを提供している。
 キングズ波止場の建設は1963年に完成したが、その後船の衝突によってひどく破損し、厳しい熱帯の海洋環境によって通常よりも早く劣化している。
 
(2)ラウトカ港
 ラウトカは、同国で2番目に大きな輸入港であり、フィジー産の大量の砂糖や木材チップの大型輸出貨物を取り扱っている。この港はスバの主要港に代わる港としてフィジー島の経済発展に大きな役割を果たしている。同港は、ヴィチレブ島の船舶輸送需要に応えるものであり、数多くの休日の行楽地や沖の島々へと乗客を運ぶ国内クルーズ船の母港となっている。ラウトカの係船施設は以下の通り。
 
波止場名 長さ(m) 水深(m)
外国船
クイーンズ波止場、西波止場 140 11.0
北波止場 78 7.0
砂糖及び木材チップ専用ターミナル 176 11.0
国内船
クイーンズ波止場、東路 140 3.6
クイーンズ波止場、南路 78 3.0
キングズ波止場 93 1.5
 
 MPAFは現在、アジア開発銀行の援助を受けて、スバとラウトカにおいて1700万USドルの波止場改良プロジェクトに着手している。このプロジェクトの内容は以下のとおりで、同港の域内における競争力を強化することを目的としている。
 
プロジェクトの目的
(a)キングズ波止場の耐用年数を15年延長する
(b)波止場では要求条件である耐震基準に準拠する
(c)貨物の増加に備え、波止場デッキとコンテナヤードを整備する
(d)港及び貨物取扱いの時間とコストを減らし、貿易の機会を拡大するためにラウトカ港を拡大する
 
プロジェクトの内容
(a)スバとラウトカの港の劣化を抑制する
(b)フィジー及びキングズ波止場で査定された国際的な耐震基準に準拠できるよう、同波止場の危険域を強化する
(c)貨物の増加に備え、キングズ波止場のデッキとコンテナヤードを拡大する
(d)ラウトカ港の係船スペースを合計で300m増やす
(e)ラウトカ港のコンテナ保管地を6ヘクタール拡大する
(このプロジェクトの詳細に関しては、付録4を参照のこと。)
 
 港湾局ではスバ、ラウトカ、及びレブカの各港において貨物取扱い及び船内荷役サービスを提供している。スバとラウトカの港の倉庫では通貨貨物、保税貨物、冷蔵貨物、及び一般貨物を取り扱っている。スバの港には現在、6つの倉庫があり、総面積は1万2200m2、ラウトカ波止場には3つの倉庫があり、総面積は6,030m2ある。スバとラウトカには、保税貨物及び積み替え貨物を取り扱う施設がある。内貨取扱所は、港の倉庫を補うとともに波止場から未通関貨物を撤去する時に活用されている。大型フォークリフトトラックやけん引車、可動式クレーン、トレーラーを含む貨物取扱設備は、フィジー港湾局が所有、運営している。
 
 MPAFが所有するラウトカの波止場に加え、この地域には、石油やガス、砂糖、糖蜜、及び材木チップを取り扱う、個人が所有するターミナル設備が数多い。また、地元の漁師のための漁港もある。
 
 フィジー周辺の他の波止場の規模と能力は場所によって様々である。大部分の小島では、こうした施設は非常に限られており、場所によっては貨物や乗客が海岸で積み下ろしされている所もある。
 
3-7. 経済協力の現状
 フィジーへの最大の援助供与国は日本で、フィジーへの総ODAの約半分を占める。次いで、南太平洋域内貿易経済協力協定(South Pacific Regional Trade and Economic Cooperation Agreement)を締結しているオーストラリア、ニュージーランドが多い。しかし、2000年のクーデター以降、援助が減額されている。1999年には3,500万ドルの援助を受けていたが、2001年には2,600万ドルとなっている。
 
図4. フィジーへの国際援助
Fiji
 
Receipts 1999 2000 2001
Net ODA (USD million) 35 29 26
Bilateral share (gross ODA) 85% 88% 85%
Net ODA/GNI 2.0% 1.7% 1.5%
Net Private flows (USD million) 28 -20 -23
 
For reference 1999 2000 2001
Population (million) 0.80 0.81 0.82
GNI per capita (Atlas USD) 2310 2160 2130
 
Top Ten Donors of gross ODA (2000-01 average) [USD m]
1 JAPAN 13
2 AUSTRALIA 9
3 NEW ZEALAND 1
4 UNICEF 1
5 UNTA 1
6 EC 0
7 FRANCE 0
8 UNDP 0
9 GERMANY 0
10 UNFPA 0
 
Bilateral ODA by Sector (2000-01)
出所:OECDウェブサイト
 
3-8. 日本の経済協力の現状
 フィジーは97年までの支出純額累計ではパプアニューギニアに次ぐ域内第二位の二国間ODA受取り国となっている。
 
 技術協力については、82年に青年海外協力隊派遣取極を締結し、JICA事務所を首都スバに開設した。通信・放送等の分野を中心とした研修員の受入れ、水産分野を中心とした専門家の派遣等を行っており、また、86年より太平洋青年招へい事業も実施されている。更に、海図作成や河川流域対策・洪水制御対策、海洋資源調査にかかる開発調査を実施している。
 
 無償資金協力については、フィジーの所得水準が高く、原則として一般無償資金協力の実施は困難であるが、フィジーが南太平洋の島嶼国の要所を占めていることに鑑み、周辺島嶼国にも裨益する緊急性の高い案件については協力の可能性を検討することとしている。「気象観測・予報設備整備計画」への協力を行い、サイクロンをはじめとする各種気象情報を周辺地域へ提供するための気象センターの建設、高層気象観測受信・解析装置等を整備した。98年度には、「植民地戦争記念病院新小児病棟建設計画」により、同病院における小児医療サービスの改善を実施し、「南太平洋大学通信体系改善計画」では、遠隔教育に対する支援を実施した。2001年度には、「新医薬品供給センター建設計画」を実施した。
 
 有償資金協力にしては、初の円借款案件として、98年2月に「ナンディ・ラウトカ地域上水道整備計画」を実施している。これは、給水能力の改善等を通じて、地域住民の健康・福祉の向上、観光等の産業用需要への対応を図るものである。
 
図5. フィジーへの援助額推移
出所:ODA白書







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