5-5 空気圧縮機
44機の輸入空気圧縮機を対象とした調査では、Sperre(ノルウェー)の15機、J.P.Sauer&Sohn(ドイツ)の14機が、圧倒的な上位2社である。1996〜1997年に実施された調査では、Sperreが22機中11機、ドイツのメーカーは3機のみであった。(J.P.Sauer&Sohnが2機、Hatlapaが1機)その時点では、Hamworthy等の英国メーカーのシェアが5機であった。
表10 中国における輸入空気圧縮機のシェア
メーカー名 |
市場シェア(%) |
Sperre(ノルウェー) |
34 |
J.P.Sauer&Sohn(ドイツ) |
32 |
その他ドイツのメーカー |
27 |
その他欧州メーカー |
7 |
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5-6 換気用ファン
舶用換気用ファンには多くの種類があり、大規模な換気設備として何万ドルもするシステムもある。中国に製品輸出を行っているメーカー数も多く、オランダ、英国のメーカーが優勢である。日本のメーカーは、1996〜1997年の調査時点では、大西電機工業、久保田工業、大晃機械工業、インテックが市場参入していたが、今回の調査では大西のみが残っている。
表11 中国における輸入換気用ファンの国別シェア
メーカーの国別内訳 |
市場シェア(%) |
オランダ |
29 |
英国 |
26 |
スウェーデン |
13 |
デンマーク |
13 |
ドイツ |
16 |
日本 |
3 |
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5-7 空調・冷蔵設備
舶用空調・冷蔵設備には、一般市場向けの同種設備よりも、品質、信頼性において厳しい要求がなされており、中国メーカーの技術力は未だその水準に達しきれていない。そのため、輸入比率が依然として高い分野である。
2000年度の数字を見ると、輸入空調・冷蔵設備市場には数社が参入しており、Yorkを筆頭とした上位3社が大きなシェアを占めていることがわかる。YorkとSabroeというデンマークの2社だけで、36機中の13機、即ち36%のシェアを獲得している。
表12 中国における輸入空調・冷蔵設備の市場シェア
メーカー名 |
市場シェア(%) |
York(デンマーク) |
25 |
Heinen Hopman(オランダ) |
22 |
ダイキン工業(日本) |
20 |
ABB(スウェーデン) |
11 |
Sabroe/Hi-Press(デンマーク) |
11 |
その他 |
11 |
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5-8 造水装置
中国は造水装置の90%を輸入に頼っている。国産造水装置としては、デンマークAtlasとのライセンス契約により、南京緑洲机器廠でチューブ・シェル式の造水装置が製造されているが、評判は芳しくなく、現在毎年10機程度が中国で建造された船舶に搭載されるのみである。
従って、技術的に優位であるAlfa Laval(デンマーク)のプレート式造水装置が、輸入市場を独占する結果となっている。2000年度に中国に輸入された造水装置33機のうち、Alfa Lavalが31機受注という圧倒的な強さを見せ、残りの2機は同じくデンマークのAPV製である。
5-9 油分離機・油水分離機
2000年の調査では、デンマークAlfa Lavalが全19機を受注し、中国の輸入油分離機市場を完全に独占している。1996〜1997年の調査時には、Jowa(スウェーデン)、Westfalia(ドイツ)、三菱化工機、大晃機械工業等もある程度のシェアを確保していたが、現在はAlfa Lavalの独占体制である。
一方、輸入油水分離機市場では、全27機のうち、RWOが10機、DVZが4機等、ドイツ勢が56%のシェアを占めている。残りは、日本とスウェーデンのメーカーが各6機受注している。
5-10 汚水処理装置
2000年の調査によると、中国の輸入汚水処理設備市場は、英国Hamworthy KSEが72%のシェアを占めている。第2位は日本の大晃機械工業の16%である。
国産品としては、1980年代から南京緑洲机器廠がHamworthyとのライセンス契約によりSTシリーズを製造している。しかし、船主の要求する無人操作、非塩素殺菌等の新機能に対応できないSTシリーズのシェアは、1996〜1997年調査時の70%から2000年には30%以下に低下した。
表13 中国における輸入汚水処理装置のシェア
メーカー名 |
市場シェア(%) |
Hamworthy KSE(英国) |
72 |
大晃機械工業(日本) |
16 |
Format(ドイツ) |
8 |
Facet(ドイツ) |
4 |
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5-11 焼却炉
現在、中国の舶用焼却炉市場は、ほぼ完全に輸入またはライセンス生産による外国製品に占められている。
2000年の調査では、輸入焼却炉全15機のうち、ノルウェーのTeamtecが13機を受注している。残りは2社が各1機。1996〜1997年時点の調査ではTeamtecと互角であった日本のサンフレムは、今回の調査からは姿を消している。
国産品市場では、Teamtecのライセンス供与を受け南京緑洲机器廠が生産を行っているOG、DGSシリーズが、70〜80%のシェアを誇っている。
5-12 防錆・防汚装置
2000年の調査では、輸入された31機の防錆・防汚装置のうち、イタリアのACGが23機を受注し、圧倒的第1位である。第2位のWilson Wanton(英国)は、3機の受注に成功したのみである。
1996〜1997年の調査では、Wilson Wantonが4機、ACGが1機となっており、数年間で市場の状況が大きく変化したことがわかる。
表14 中国における輸入防錆・防汚装置のシェア
メーカー名 |
市場シェア(%) |
ACG(イタリア) |
75 |
Wilson Walton(英国) |
10 |
Cathelco(英国) |
3 |
米国のメーカー |
6 |
その他 |
6 |
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6. 中国舶用企業の実力
前章で見た通り、中国企業は新技術開発力と技術革新で遅れをとっているため、外国製品の直接輸入、または外国企業の特許使用や現地ライセンス生産を通じて、海外の技術に頼っているのが実情である。
加えて、ライセンスがカバーしているのは、先端技術というよりも既に確立された技術が多く、中国企業が新技術を開発する助けになるものではない。また、欧州企業が中国企業にライセンスを供与する場合でも、主要部品の現地生産を認めず、中国企業はローテクな機械部品のみの製造を行っている。この戦略により、中国企業は欧州企業のパートナーであっても競争相手にはなり得ず、常に欧州製品の市場は確保されていることになる。中国企業は、今後も海外、特に日本と欧州からの新技術に依存する状況が予想される。
しかし、中国企業は、技術面での遅れを価格競争力で補っている。これを可能にしているのは、豊富で安価な労働力である。
製造業における中国の労働力は主要アジア諸国で最も安く、特に日本、韓国と比較した場合の安さは群を抜いている。造船業を見ると、日本の造船所労働者の平均月給は約3,000ドル、韓国は約2,000ドルである。一方、中国では僅か250ドル程度で、その差は歴然としている。なお参考までに、製造業全般については以下の統計が出ている。
表15 主要アジア諸国の製造業平均賃金比較(1998年)
国名 |
中国 |
香港 |
日本 |
シンガポール |
韓国 |
マレーシア |
タイ |
フィリピン |
インド |
平均賃金(月)
単位USドル |
148 |
1170 |
3936 |
1682 |
2177 |
436 |
201 |
199 |
246 |
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注:香港は1997年、マレーシア・インドは1999年、シンガポール・韓国は2000年、中国は2001年の数字。
出所:Drewry,ILO資料より作成
7. 中国政府の政策
中国政府は自国企業の国際競争力を高めるために、数々の措置を導入してきた。以下にその概略を述べる。
まず、外国企業が中国国営または部分的に中国政府が所有する企業と提携する場合、外国企業には当該中国企業のエンジニアを特定比率でトレーニングする義務がある。中国政府は、日本、韓国、欧州の造船・舶用企業で働いた経験を持つ自国エンジニアが、将来的に海外の技術、工法、ノウハウ等を自国企業に移転させることを期待している。
また、高品質の船舶建造を目的に、自国造船所が輸入部品を用いて輸出用船舶を建造する場合には、輸入部品への関税及び付加価値税が免除される。これにより中国の造船所は、完成品に地方税等の追加コストを上乗せせずに、高品質の輸入部品を使用することができ、価格競争力の維持が可能である。
中国の舶用企業は、海外技術への依存度を改善するために、自国企業からの部品調達比率を高めることで、裾野からの技術革新を狙っているが、その道のりは長い。
中国政府は、上記の目的で2000年までに舶用企業の自国部品調達比率を80%に引上げるという目標を掲げていたが、目標達成には程遠かったようだ。これは国産の舶用部品の品質が、多くの場合、要求水準に達していなかったためだ。現地企業の資金不足を考えると、急速な品質改善は望めないため、今後も輸入品に依存する状況が続くと予想される。
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