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10-1-2 運航及び維持費用の積算
 各種毎のRO-RO船の運航及び維持に必要な費用は次のように積算される。
 
運航されるRO-RO船
 1,000、2,000及び4,000DWTのRO-RO船の主要目は下表のとおり。
 
表10-1: RO-RO船の主要目
分類 DWT 船速(ノット) 船価(千円) 職員数 部員数
1. 小型 1,000 11 1,682,300 8 12
2. 中型 2,000 14 2,353,000 8 12
3. 大型 4,000 16 3,347,000 8 17
 
 船舶の運航費用は“運航費”及び“船費”からなる。
 
“運航費”は下記を含む。
−港費(パイロット料、トン税、岸壁使用料、タグ費等)
−貨物費(荷役費、代理店料、検数料等)
−燃料費(主・補機関用燃料及び積込費等)
−その他(通信費、割増保険料等)
 
“船費”は下記を含む。
−船員費(乗組船員給与、管理費等)
−船用品費(消耗品費、本船備品費等)
−潤滑油費(主・補機関用潤滑油及び積込費等)
−修繕及び保全費(入渠費、予備品費、検査費用等)
−保険料
−店費(役員報酬、従業員給与等)
−その他(海難費用、図書費等)
 
(1)運航費
1)港費及び貨物費
 本船に適用される港費はバンコク港の港湾手数料を元に積算。これには頻繁寄港割引料金が含まれる。貨物取扱い料金及び岸壁使用料の積算は港湾貨物取扱い業者の費用を含める必要が有り難しいが、RO-RO船の貨物取扱いにかかわるコストは在来型の貨物船又はコンテナ船よりはかなり低くなると思われる。結果トンあたり50バーツと仮定した。
 
表10-2: 港費
費目 備考
港費 10 1GTあたりのバーツ
割引 50% 頻繁寄港割引
岸壁使用料 8 バーツ/100GT/時間
貨物取扱い料 50 バーツ/トン
 
2)燃料
 各性状毎の燃料費及びその比重を表10-3に示す。
 
表10-3: 燃料費
燃料の性状 米ドル/トン 比重(kg/l)
C重油 $140 0.98
A重油 $300 0.90
 
 本計算において燃料消費率は主機関140g/ps/hとそれに補機関用として10%を追加して積算した。
 
表10-4: 燃料消費率(トン/時間)
RO-RO船の種類
(DWT)
主機関常用出力
(HP)
燃料消費率
(トン/hr)
1,000
2,000
4,000
850
2,800
5,440
0.13
0.43
0.72
 
(2)船費
1)船員費及び管理費
 
表10-5: 船員費等
費目 備考
船員費 N.A.  
職員 30,000 バーツ/月 x 8人
部員 10,000 バーツ/月 x 12〜17人
保険料 1% 対船価
代理店費 3% 対収入
管理費 6% 対収入
 
2)潤滑油費
 
表10-6: 潤滑油費
潤滑油の種類 米ドル/トン 比重(kg/l)
システム油 839 0.9
 
 本計算では主機関のシステム油の消費率を0.2g/ps/hとし、補機関用として10%を足して積算した。また、機関の稼働2,000時間毎に潤滑油は交換するものとする。
 
表10-7: 潤滑油消費率(トン/時間)
RO-RO船の種類
(DWT)
主機関常用出力
(HP)
潤滑油所比率
(kg/hr)
1,000(LOタンク5トン)
2,000(LOタンク10トン)
4,000(LOタンク20トン)
850
2,800
5,440
0.17
0.56
0.93
 
3)修繕及び保全費
 入渠費用として隔年毎に入渠が規則で求められている。従って船価の0.6%を隔年で計上する。
 修繕費用は年4%上昇すると仮定。
 
表10-8: 修繕費
入渠費 修繕費
船価の0.3%/年 船価の0.5%
 
(3)その他運航に係わる変数
 
表10-9: 運航に係わる変数
変数 単位
維持可能な最大積載率 80
1年当たりの運航週数 45
予想貨物取扱い率 1,000 トン/時間
1寄港当たりの予想デッドタイム 1.5 時間
複合一環輸送における陸上輸送距離 30 km
1トラックあたりの平均積載荷重 15 トン
車体重量 6 トン
 
 ここに示された積載率は、前節で記述した維持可能な最大積載率である。ただし、輸送量に季節変動のあること、特定の貨物の形状により空きスペースができること等の理由から積載率が100%となることでは必ずしもない。復路の積載率は、復路における潜在市場の相対的な規模による。これについては、以下に航路ごとの分析を示す。
 船舶は平均して週6航海、1年に45週運航=年間270航海をバンコク〜バンサファン、バンコク〜スラータニー、バンコク〜ソンクラー間で行うと仮定した。また、東部海岸地域〜バンサファン、及び東部海岸地域〜スラータニー間は週3航海、1年に45週運航=年間135航海、一方東部海岸地域〜ソンクラー間は週2.5航海、1年に45週運航=年間112航海と仮定した。
 この運航スケジュールにより規則で既定された1年に1ヶ月間の乾ドック入り又は岸壁修理が可能となる。
 貨物取扱率は毎時1,000トンと仮定した。トラック(または、トレーラー)1台あたりの平均積載荷重を15トンと仮定すると、これは毎分1台強のトラックが運行する量に等しい。これは控えめな仮定であり、実際には大部分のRO-RO船は、より大きな積載荷重率及び荷揚げを実現できると考えられる。ただし、これは本計画の結果に大きな変化を与えることはない。さらに、船舶輸送の場合、1寄港あたり、待機や遊休時間として1.5時間を仮定している。RO-RO船を利用した複合一貫輸送における陸上輸送の平均距離は、航路の始点及び終点で、30キロメートルと仮定した。
 船舶の燃料消費量と保守コストはともに船舶の仕様による。主機関はC重油を使用し、補機関はA重油を使用すると仮定し、使用した変数を表10-3,4に示す。
 船舶は貨物トラックをそのまま積載して輸送を行うと仮定した。従って、船の積載荷重容積(トラックで運ばれる貨物の正味重量)は、トラック自体の重量を考慮して、実際の船舶の総積載量よりも少なくなる。一方、荷主は貨物の正味重量に基づく輸送料金しか支払う意思がない。これらの要因を考慮に入れて、トラック1台あたりの平均積載荷重とトラックの平均重量を試算する必要がある。これらを正確に算出するには、使用されるトラックの種類やその割合、すなわち、6輪、10輪及び18輪トラック並びに動力ユニットなしで移動するトレーラーのそれぞれが、使用されるトラック全体に占める割合についての詳細な分析が必要である。表10-9は予想値であり、ここでは18ホイールトラックの結合装置から分離されたトレーラーの割合が相対的に高くなると予測している。
 
(4)為替レート
 本積算で使用した為替レートは2003年8月時点のものである。各レートを表10-10に示す。
 
表10-10: 為替レート
通貨 為替レート
1米ドル 39.9バーツ
100円 33.3バーツ
 
(5)財務に係わる変数
 銀行貸付の金利は、船舶のように価値が大きく変動する資産に対する融資の場合、リスクが比較的高いことを考慮して標準の輸出入銀行の貸出し金利に多少の割増が加えられている。ODAによる円借款および事業金融の貸付けの場合の金利及び返済期間はJBICのガイドラインによるものとする。
 
表10-11: 融資元の条件
  元本据置期間
(年)
返済期間
(年)
金利
(%)
銀行貸付:CL 0 7 7.75
事業金融:PF 0 10 1.65
ODA 10 40 0.75
 
 最も有利な条件は現在金利0.75%、返済期間は40年までに延長されている(10年の元本返済据置き期間を含む)。
 
表10-12: 財務に係わる変数
費目 金利/備考
法人税 最初の8年間 0%
9年目以降 30%
物価上昇率 3.0%/年
貨物増加率 GDP伸び率に比例
融資割合 銀行貸付及び事業金融の場合、総事業費の70% ODAの場合総事業費の85%
運転資金の金利 5%
残存簿価 初期投資額の5%
 
 必要とされる運転資金は年間現金支出の20%と推定した。これは控えめな数字であり、掛売りの固定客の割合が高いと仮定した。不定期の利用者は荷積の前に貨物輸送費を払う為に必要な運転資本は少なくてよい。
 物価上昇は全ての財務指標に均等に適用される。このためキャッシュフローは現在価値のみとして計算した。船舶の残存簿価はスクラップ時点における代替船舶の額面価格の5%として計算した。
 船の資本価値は元の調達価格から減価償却累積額を差し引いて計算した。この値は船舶の市場価格に対する物価上昇率の影響を反映し、物価上昇率に伴って増加させている。
 修繕および維持費用は船齢の増加に伴って増加すると仮定できる。この費用の相違の範囲は船舶の過去の運航状況や所有者がどの程度船を航海に堪える状態に保つように努めていたかによって大きく異なるであろう。
 
10-1-3 キャッシュフロー
 上記のような前提条件を元に、1隻のRO-RO船の運航及び維持に必要な収入及び費用を次のように計算した。本計算の結果は各目標航路別および適用する融資条件毎にキャッシュフローシートの様式に纏めた。
 次項以降にキャッシュフローの計算を下記の順番で示す。
 
サービス 航路 融資条件
航路1 バンサファン〜バンコク 銀行貸付 JBICによる事業金融 ODA(円借款)JBIC
航路2 スラータニー〜バンコク
航路3 ソンクラー〜バンコク
航路4 バンサファン〜東部海岸地域
航路5 スラータニー〜東部海岸地域
航路6 ソンクラー〜東部海岸地域







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